人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

文字の大きさ
309 / 550
第五章

諦めぬ意思を持つ仲間2

しおりを挟む
「おんも!」

 朝になったので荷物を片付ける。
 リュードの剣を回収しようとしてラストがその重さに驚く。

 リュードは黒重鉄出てきている。
 ラストが普段見ているリュードは普通の剣のように振り回していたのに持ってみるととんでもなく重たくて驚いた。

「うにぃ~!」
 
 それでもリュードの剣だからと引きずらないように気をつけてなんとかマジックボックスの袋に入れた。
 もしマジックボックスの袋がなかったり人攫いに持っていかれたりしていたら剣は隠して置いていくしかなかったので助かった。

 リュードの分の荷物も全て袋の中に入れてルフォンたちは出発した。

「つ、次はどうするの?」

「予定通り町まで行こう。そして少しでも情報を集める」

 ルフォンが早くに目を覚ましたお陰でリュード以外の荷物には一切手をつけられていなかった。
 お金もそのまま無事なので何かをするにも困ることがなかった。

 これまではのんびりと旅をしてきたが早足で次の町へと移動をする。
 宿で部屋を取ると女性だけだと少し割引されるなんてことが発覚しつつ、荷物を部屋に置いて冒険者ギルドに向かった。
 
「ここ最近出るって噂の人攫いについて聞きたいの」

 急いで移動したので町についた時間は昼前だった。
 ルフォンはやや閑散とした冒険者ギルドの酒場スペースにあるカウンターのバーテンダーの前に行く。

 ルフォンはお酒を飲まないし焦りの大きくてまだお腹も空いていないので食べ物やお酒を注文するのではない。
 お金を置いて注文したのは情報だった。

 こういうことを聞きたい時は依頼の方のカウンターに向かうのではなく、酒場などの方で聞くのが正解である。
 それはリュードから聞いていた話だった。

「……申し訳ありません。それについてお話できることはありません」

「どーして……」

「これでも?」

 食ってかかろうとするラストを制して、ルフォンは懐からさらにお金を出して重ねる。
 世界広く、お金で解決できないことはあるけれどもお金で解決できることも多い。

 さらりと増えたお金を見て、少しだけギルド員の目の色が変わる。

「最近はギルドも大変でしょ?」

 ルフォンはギルド員の目の色が変わったことを見逃さずさらにもう一押しする。
 もう一枚乗せられたお金を見てギルド員はさりげなく周りを確認する。

 ギルド員も人間だ。
 もらえるならお金は欲しい。

 磨いていたグラスを置いて、そっとお金を懐に入れる。
 酒場担当は大変だけどこうした役得があるからやめられないと内心で思う。

「詳しいことは俺の首もかかってくるから言えないんだ。ただこんなふうに言えば分かると思うが、人攫いに関してはこの国のお偉い人が関わっている。…………ギルドに圧力がかけられるぐらいのお偉い人がな。だから一介のギルド員である俺には噂以上の入ってこない」

 声をひそめてギルド員は教えてくれた。

「ありがとう」

 お金も欲しいが仕事も失うわけにはいかない。
 お金を受け取ったので話せることは話した。

 短くて一見何もないような情報であったが相手の正体がただの人攫いではなさそうだということが分かっただけでも少し進展があるとルフォンは思った。
 想像よりもリュードは厄介で大きなことに巻き込まれたのかもしれない可能性が出てきた。

「ル、ルフォンカッコいい……」

 ギルドを出て悩ましげな表情を浮かべるルフォンをラストはキラキラとした眼差しで見ていた。
 食ってかかりそうになったラストと違ってルフォンは大人の対応をしてみせた。

 あくまでも冷静に大人の交渉を続けて情報を引き出した。
 ラストのように食ってかかっていたら周りの目も集めてしまうし、なんの情報も得られなかっただろう。

 ただお金を出しただけなのにあたかも余裕があるように見せかけたルフォンの堂々たる態度にラストは大人っぽさを感じていた。

 ルフォンもあれが正解だったのかは分かっていない。
 でもリュードならあんな時でも言葉荒らげることはしない。

 そう思ってやってみただけだったけど結果的に正しい行動であった。

「そ、そう?」

 こんな大人っぽさを取り上げて褒められたことなど少ないので照れてしまう。
 なんだかんだルフォンも旅を続けて成長している。

 旅人としての大人の風格が備わってきているのかもしれないとちょっとだけ鼻が高い気分になった。

「でも……どうする?」

 けれど引き出せた情報はほとんどない。
 人攫いがただの人攫いでないことが分かっただけで他にヒントとなるようなことは何もなかった。

「そうだね……まずはちょっと歩こうか」

 ルフォンがラストに目配せした。
 その意味は分からないけれどラストはうなずいてルフォンについていく。

 少したわいのない会話をする。
 夜に何を食べたいとかそんな会話をしながら少し歩く速さを上げる。

 角を曲がり、グルリと振り返る。

「うっ!」

「誰? 私、今はあんまり機嫌良くないよ?」

 早足で角を曲がってきたフードをかぶった女性がいた。
 ルフォンは服を掴んで壁に押し付けるとナイフを首に当てる。

 ギルドを出た時からずっとついてきていた。
 ルフォンは尾行に気づいて相手を罠にかけたのである。

「ま、待ってください! 悪気はなかったんです!」

 本当に首を切り落としてしまいそうな冷たい殺気を感じて相手は慌ててフードを下ろして顔を見せる。
 フードをかぶったままでは話も受け入れてもらえそうにない。

 ルフォンが捕らえたのは若い女性だった。
 明るい栗色の髪と目をしていて、両手を上げて敵意はないと引き攣った笑みを浮かべる。

「悪気なくても人を尾行するのは良くないことだよ。何の用?」

「お、お話が聞きたくて……」

「今は誰かとおしゃべりしている暇はないんだ。ごめんね」

 今は知らない人と仲良くお話している時間なんてものはない。
 特に害するつもりもないのならこれ以上時間を割くことはないとルフォンがナイフを引く。

「お、お仲間の男性が誘拐されたんですよね!」

 回りくどく話していては聞いてもらえないと思った女性が話の核心部分を口に出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜

九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます! って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。 ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。 転移初日からゴブリンの群れが襲来する。 和也はどうやって生き残るのだろうか。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

処理中です...