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第五章
始まる悪魔の大会6
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「周りの人全てが敵です。倒して、殺して、生き残ってください。この勝負が終わりを迎えるのはいつなのか、それはお教えできません。始まりましたら、周りに落ちています武器はご自由にお使いください。では始めてください」
「えっ?」
盛大な合図もなく、ぬるっと始まるバトルロイヤル。
全員があっけに取られたように動きが止まる。
動き始めるのが早かったのはやはり闘技場に早く上がったような人たちだった。
「トーイ!」
リュードは近くに落ちていたメイスをトーイに投げ渡す。
どう見てもトーイに戦いの心得はない。
当然剣なんか振ったこともないだろうし扱い方も分からないはずだ。
それなら剣を持つよりも殴るだけでいいメイスの方が扱いやすいのではないかと思った。
剣よりも頑丈だし、振り回しているだけで脅威になる。
次にリュードは長剣を拾い上げる。
「おい、それは俺が目をつけていたやつだぞ!」
スタートの合図があまりにもあっさりとしすぎていて出遅れてしまった男が手近にあったナイフを取ってリュードに襲いかかる。
男もリュードの拾った剣に目をつけていたのだがリュードに先に取られてしまい逆上した。
「るせえ、早いもん勝ちだ!」
男の動きは早くない。
リュードは男の手からナイフを弾き飛ばすと接近して頭を掴んで床に叩きつけた。
前歯ぐらいはぐらつくかもしれないけど死ぬよりはいいだろう。
ジワーっと鼻血が広がり、男が動かないのを確認してリュードはトーイのところに戻った。
武器を取り合う者、すぐに武器を見つけて戦う者、全く何もできずにやられる者。
阿鼻叫喚の闘技場の上に熱い歓声が降り注ぐ。
命をかけた戦いを見せ物にして興奮しているのはおそらく貴族たちであろう。
「チッ……くだらない……!」
一方では命をかけて必死に戦い、一方ではそれを娯楽として見ている。
なぜ同じ人でもこれほどまでに立場が違うのか。
怒りが湧いてくる。
「わ、私はどうしたら……」
「このまま気配を消して突っ立ってるのが1番いい。もし見つかったら俺が戦うし、俺が間に合わなかったらそのメイスを振り回して敵を近づけちゃいけないぞ」
「わ、分かりました!」
青い顔をするトーイはメイスを持つ手が震え、今にも倒れそうになっている。
ここで倒れたら死あるのみなので何とか踏みとどまっていた。
トーイに戦闘経験がないこともそうだが、こんなに萎縮してしまってはとてもじゃないが戦えない。
まだリュードの村の子供の方が強い。
けれどリュードたちも二人固まっているせいか手を出してくる人もいない。
わざわざ二人もいるところに手を出す必要がないからだ。
「こんなところで何静観決め込んでいるんだい、お嬢さん」
ただしそれも乱戦極まる最初のうちだけである。
人が減り、乱戦が徐々に落ち着いてくると二人固まって突っ立っているリュードたちは目立ってくる。
ここまで戦っていないリュードとトーイ。
一人は顔も青いし細っこく、リュードの方はまだ実力が分からない。
リュードも竜人族の身体的な特性上筋肉がつきにくくガタイがいいように見えにくい。
非常に引き締まった体ではあるが、筋肉が大きく目立っているのではないので外見だけで周りと比べるとさほど強そうにも見えない。
戦ってこなかったと言うことはそれほど強くないから隠れていたのだろうと考える人がいてもおかしくない。
残っているのはそれなりに戦える人が多い。
終了の条件が時間なのか、人数なのか分からないがライバルは減らしておいて損はない。
少なくとも弱いことがバレバレのトーイぐらいはやってしまおうと大男がニヤついてリュードたちの前にやってきた。
「みんなが勝手に戦ってるだけさ」
男の武器は斧である。
すでに誰かの頭をかち割った後なのか血が滴っている。
大男が斧を振り下ろし、リュードが一歩前に出てそれを剣で受け止める。
苦しそうな表情を浮かべて何とか受けたようにみせた。
「フハハハハっ!」
リュードも簡単に倒せそうな相手であると大男は思った。
調子に乗って斧を振り回し、周りの人も大男に任せておけばライバルが減るだろうとリュードたちのことは放っておくことに決めた。
何回かギリギリのところで防いでみせる。
斧を受けてふらついたリュードに大男はチャンスだと大きく斧を振り上げた。
リュードは足元にあったナイフを軽く蹴った。
「ぬっ、おっ!」
スッと床を滑ったナイフはリュードの頭をかち割らんと踏み出そうとした大男の足の下に入った。
突然足の下に異物が入ってきて、大男は足を滑らせた。
盛大に足を滑らせた大男は後ろに倒れて頭を打ち付ける。
それで気でも失っていたならよかったのに、大男の頭は固くてひどい痛みを受けただけだった。
「ぐ……」
「そのまま寝ておけばよかったのにな……」
周りから見たら偶然の出来事だった。
斧の勢いを殺しきれずにふらついたリュードの足に落ちていたナイフが当たった。
それがたまたま大男の足の下に滑り込んで、大男が足を滑らせた。
リュードは大男に近づくと思い切り大男の頭を蹴り飛ばした。
首が飛んでいきそうな一撃は優男にも見えた男が放つ威力ではなく、しっかりと鍛え上げられたものの蹴りだった。
しかしリュードが実は強かったと理解したのは蹴り飛ばされて蹴りの威力を身をもって知った大男だけであった。
「はい、そこまででございまーす!」
リュードが大男を倒したタイミングで係員が呑気に終了の合図を出した。
闘技場の上に立っているのはおよそ十人ほど。
半分にも及ばない奴隷だけが生き残り、バトルロイヤルは終了した。
「えっ?」
盛大な合図もなく、ぬるっと始まるバトルロイヤル。
全員があっけに取られたように動きが止まる。
動き始めるのが早かったのはやはり闘技場に早く上がったような人たちだった。
「トーイ!」
リュードは近くに落ちていたメイスをトーイに投げ渡す。
どう見てもトーイに戦いの心得はない。
当然剣なんか振ったこともないだろうし扱い方も分からないはずだ。
それなら剣を持つよりも殴るだけでいいメイスの方が扱いやすいのではないかと思った。
剣よりも頑丈だし、振り回しているだけで脅威になる。
次にリュードは長剣を拾い上げる。
「おい、それは俺が目をつけていたやつだぞ!」
スタートの合図があまりにもあっさりとしすぎていて出遅れてしまった男が手近にあったナイフを取ってリュードに襲いかかる。
男もリュードの拾った剣に目をつけていたのだがリュードに先に取られてしまい逆上した。
「るせえ、早いもん勝ちだ!」
男の動きは早くない。
リュードは男の手からナイフを弾き飛ばすと接近して頭を掴んで床に叩きつけた。
前歯ぐらいはぐらつくかもしれないけど死ぬよりはいいだろう。
ジワーっと鼻血が広がり、男が動かないのを確認してリュードはトーイのところに戻った。
武器を取り合う者、すぐに武器を見つけて戦う者、全く何もできずにやられる者。
阿鼻叫喚の闘技場の上に熱い歓声が降り注ぐ。
命をかけた戦いを見せ物にして興奮しているのはおそらく貴族たちであろう。
「チッ……くだらない……!」
一方では命をかけて必死に戦い、一方ではそれを娯楽として見ている。
なぜ同じ人でもこれほどまでに立場が違うのか。
怒りが湧いてくる。
「わ、私はどうしたら……」
「このまま気配を消して突っ立ってるのが1番いい。もし見つかったら俺が戦うし、俺が間に合わなかったらそのメイスを振り回して敵を近づけちゃいけないぞ」
「わ、分かりました!」
青い顔をするトーイはメイスを持つ手が震え、今にも倒れそうになっている。
ここで倒れたら死あるのみなので何とか踏みとどまっていた。
トーイに戦闘経験がないこともそうだが、こんなに萎縮してしまってはとてもじゃないが戦えない。
まだリュードの村の子供の方が強い。
けれどリュードたちも二人固まっているせいか手を出してくる人もいない。
わざわざ二人もいるところに手を出す必要がないからだ。
「こんなところで何静観決め込んでいるんだい、お嬢さん」
ただしそれも乱戦極まる最初のうちだけである。
人が減り、乱戦が徐々に落ち着いてくると二人固まって突っ立っているリュードたちは目立ってくる。
ここまで戦っていないリュードとトーイ。
一人は顔も青いし細っこく、リュードの方はまだ実力が分からない。
リュードも竜人族の身体的な特性上筋肉がつきにくくガタイがいいように見えにくい。
非常に引き締まった体ではあるが、筋肉が大きく目立っているのではないので外見だけで周りと比べるとさほど強そうにも見えない。
戦ってこなかったと言うことはそれほど強くないから隠れていたのだろうと考える人がいてもおかしくない。
残っているのはそれなりに戦える人が多い。
終了の条件が時間なのか、人数なのか分からないがライバルは減らしておいて損はない。
少なくとも弱いことがバレバレのトーイぐらいはやってしまおうと大男がニヤついてリュードたちの前にやってきた。
「みんなが勝手に戦ってるだけさ」
男の武器は斧である。
すでに誰かの頭をかち割った後なのか血が滴っている。
大男が斧を振り下ろし、リュードが一歩前に出てそれを剣で受け止める。
苦しそうな表情を浮かべて何とか受けたようにみせた。
「フハハハハっ!」
リュードも簡単に倒せそうな相手であると大男は思った。
調子に乗って斧を振り回し、周りの人も大男に任せておけばライバルが減るだろうとリュードたちのことは放っておくことに決めた。
何回かギリギリのところで防いでみせる。
斧を受けてふらついたリュードに大男はチャンスだと大きく斧を振り上げた。
リュードは足元にあったナイフを軽く蹴った。
「ぬっ、おっ!」
スッと床を滑ったナイフはリュードの頭をかち割らんと踏み出そうとした大男の足の下に入った。
突然足の下に異物が入ってきて、大男は足を滑らせた。
盛大に足を滑らせた大男は後ろに倒れて頭を打ち付ける。
それで気でも失っていたならよかったのに、大男の頭は固くてひどい痛みを受けただけだった。
「ぐ……」
「そのまま寝ておけばよかったのにな……」
周りから見たら偶然の出来事だった。
斧の勢いを殺しきれずにふらついたリュードの足に落ちていたナイフが当たった。
それがたまたま大男の足の下に滑り込んで、大男が足を滑らせた。
リュードは大男に近づくと思い切り大男の頭を蹴り飛ばした。
首が飛んでいきそうな一撃は優男にも見えた男が放つ威力ではなく、しっかりと鍛え上げられたものの蹴りだった。
しかしリュードが実は強かったと理解したのは蹴り飛ばされて蹴りの威力を身をもって知った大男だけであった。
「はい、そこまででございまーす!」
リュードが大男を倒したタイミングで係員が呑気に終了の合図を出した。
闘技場の上に立っているのはおよそ十人ほど。
半分にも及ばない奴隷だけが生き残り、バトルロイヤルは終了した。
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