人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

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第五章

自由を取り戻し1

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「今は誰ともお会いになられない!」

 用件がなんであれ誰も入れるな。
 そう命令されたこともあるけれど、フードを目深に被って顔も出さない連中など平時であっても中に入れはしない。

「いいからさ、あの時の奴隷ですって伝えてくれればいいよ」

「そんな意味の分からない伝言を伝えるわけがないだろう!」

「……じゃあしょうがない。ルフォン、ラスト、頼むよ」

「任せて!」

「やったるよ!」

 基本的に女性とは戦いたくはない。
 トゥジュームの貴族が従える兵士も結構な割合で女性がいる。

 女性の相手なら女性がするのがいい。
 ためらいのないルフォンに殴られて門を守る女性兵士が倒れる。

 リュードたちは今とある町にある屋敷を訪れていた。
 平和的に話し合いで解決で済むならそれで終わらせるつもりであった。

 けれど頑なな態度を取るならしょうがない。
 とっくのとうにリュードの堪忍袋の緒は切れていた。

 門を切り裂きリュードたちは屋敷に押し入っていく。
 ワラワラと人が屋敷から出てきてリュードたちを止めようとしてくる。

 暴力的なことはあまり好かないリュードたちだけれど今回ばかりは事情が違う。

「お前の嫁さんスゴいな……」

 リュードたち3人に加えてウロダも来ていた。
 ウロダはルフォンとラストの戦いを見て呆然としている。

 魔物や悪魔との戦いでも凄かったが何度見ても凄いものは凄い。
 ウロダはルフォンとラストのことを嫁さんと呼ぶ。

 嫁さんじゃないと言っても嫁さん呼びするので諦めた。
 嫁さん呼ばされてルフォンとラストも強い否定もせず、嬉しそうに受け入れているので一人だけ変に否定するのも出来なくなった。

「何事だ!」

「おっ、ようやく知った顔が出てきたな」

「お、お前は!」

 騒ぎを聞きつけて奥の部屋から女性兵士が出てきた。
 女性兵士はリュードの顔を見てサッと顔を青くして、リュードは反対にニヤリと笑った。

「覚えていてくれたようで嬉しいな」

 ウバの横に仕えていた女性兵士であった。
 最初にウバのところに奴隷として集められた時に偉そうな態度をしていた奴隷の腕を折って制圧していたあの兵士である。

 幽霊でも見たような顔をしてリュードを見て、数歩後ずさる。
 リュードは死んだものだと思っていたので目の前に現れたのだから驚くのも当然である。

「なんだっけ? お嬢様……に少し話があるんだけど通してもらってもいいかな?」

「奴隷の分際で何を…………そういえば貴様首輪はどうしたのだ」

「それについては後々じっくり話そうか」

「ダメだ、今は通せない!」

「……あんな目に遭わせられてはいそうですかと退くと思うのか?」

「自由になったのなら大人しく帰ればいいものを!」

 女性兵士は剣を抜いてリュードに切りかかる。

「悪いがこっちだってやるべきことがあるからな!」

 前に出ようとしたルフォンを制してリュードが女性兵士の剣を受け止める。
 リュードの黒い剣は折れてしまったので今は予備に持っていた普通の剣を使っている。

 いつもなら相手の力量を測るように待ちの姿勢で始めることも多いリュードであるが、今日は強く女性兵士を押し返して攻めの姿勢を取る。
 一太刀ごとに女性兵士が押されて大きく後退する。

 こんなにリュードの実力が高いとは思わず女性兵士は焦った表情を浮かべる。

「あっ!」

 リュードの猛攻に耐えきれず女性兵士の手から剣が離れてしまった。
 剣が飛んでいき無防備になる女性兵士は殺される、と目をつぶる。
 
 無理矢理奴隷にした挙句優しい態度も取らなかった。
 怒っていても当然のことで剣を止める理由がない。

「寝てろ!」

 どうせなら一思いにスパッとやってほしい。
 身構えているがいつまで経っても痛みは来なくて、額にとんとリュードの指が当てられた。

「きゃああああ!」

 次の瞬間リュードの指から放たれた電撃が女性兵士の全身を駆け巡った。
 自分の意思とは関係なく全身がピクピクと跳ね、痛みに気絶して倒れる。

 兵士たちの中でも実力者だった女性兵士をいとも容易く制圧してみせたリュードの圧倒的強さとそんなリーダー的な存在であった女性兵士が全身を震わせて悲鳴を上げて倒れるなんていう光景に兵士たちが引いてしまう。
 リュードが雷属性を使うなんて知らず、雷属性そのものもほとんど知られていないために女性兵士がどんなものにやられたのか皆、不安そうな顔をしていた。

 相手を辱める意図はなかったのだけれど辱めて倒したようにも見えなくもない。
 もっとわかりやすく倒せばよかったかもしれないとちょっとだけ反省する。

 敵対心のこもった視線に冷ややかさも加わってきているが、リュードはもう二度と会う相手でもないので構わないと割り切って先に進み出す。
 もうリュードを止める人はおらず、大事に守られている奥の部屋に向かう。

 丁寧にノックなんかしない。
 木の扉を切り壊してリュードは中に入った。

「……な、何事ですか!」

「なんだ、この臭い……」

 部屋に入るとベッド横にいたウバが驚いて立ち上がる。
 立ち込める臭いにリュードが顔をしかめる。

 ルフォンも思いきり臭いを嗅いでしまって泣きそうな顔になる。
 ポーションを作っている時に近い薬草を煮詰めている時のような臭いに似ていた。

 ベッドサイドのテーブルの上に置いてあるお灸のような何かを固めたものに火をつけたそれが臭いの原因であった。

「あ、あなたは……そんな」

 ウバもリュードの顔を見て驚愕していた。
 リュードは死んだとウバも思っていた。

 あんな騒動の中どうやって生き延びたというのか。
 魔力を抑えられる首輪をつけられて、悪魔が空を飛び交っている中で生きてマヤノブッカを出られることなんてあり得ない話であるのに。
 
 ウバたちも他の貴族と協力して犠牲を出しながらどうにかマヤノブッカを抜け出したぐらいなのだから無力な奴隷がこんなところにいるはずがなかった。
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