人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

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第六章

お家を探して1

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「帰ってこないだと……」

 パーティーが失踪した。
 このことは大きな衝撃をみんなに与えた。

 失踪したのはミスリルリザードの鉱山を調査に行った冒険者パーティーでゴールド-の冒険者が率いていた。
 実力も確かで無理をするパーティーでもなく、失踪したことは予想外のことである。

 戦闘ではなく調査に行ったのだから全滅する可能性も高くはないはずだった。
 それなのに鉱山を取り戻しに行った冒険者たちが鉱山を取り戻して帰ってきても調査に出たパーティーは帰ってこなかったのだ。

「やはり何かが起きている……」

 話し合いが行われて鉱山の奪還は一度止めて、ミスリルリザードのいた鉱山の調査と失踪したパーティーの捜索を優先することになった。
 そもそも複数の鉱山をそれぞれ違う魔物がほとんど同時期に占拠するというのも異常事態だった。

 魔物がナワバリを変えることは滅多にない。
 ミスリルリザードが棲んでいた鉱山を捨てて移動することも異常だし、その原因がミスリルリザードがいた鉱山にある可能性は高い

 そうリュードたちは結論づけた。

「防衛に回したり一緒に来てもらったり悪いな」

「いえ、大丈夫ですよ」

 ドワガルの防衛力に不安は残るが、鉱山に起きている事態が予想もできない以上一緒に行く戦力は多い方がいい。
 リザーセツからの提案でリュードたちも鉱山の調査に共に赴くようにお願いされた。

 こうなったら乗り掛かった船である。
 解決しないことにはリュードだってドワガルを離れられないので三人の総意で快諾することにした。

「君たちが来てくれると心強い」

 リザーセツは戦いとなればリュードたちが大きな戦力となってくれることに期待を寄せていた。
 失踪したパーティーを探すなら早く見つけ出さなければならない。

 早速冒険者一行はミスリルリザードいたディンダルという鉱山に向かった。
 依頼の責任者であると言い張ってデルデも付いてきていた。

 さらにこの件には関係のないダリルも付いてきてくれることとなった。
 聖職者は一人でも多い方が安心して戦えるのでとてもありがたいことである。

「まさかこのようなところで使徒様にお会いできるとは思いもしませんでした!」

 ユリディカは歩きながら胸の前で手を組んで神に祈りを捧げている。
 ユリディカとダリルは信仰している神様が違う。

 ダリルは主神、創造神であるケーフィスを信仰していている。
 ユリディカは愛の神ソフィヤを信仰している。

 けれど神様にも派閥みたいなものがあり、特にケーフィス一派の派閥では信仰する神様が違っていても大きく見ると同じ宗派のような感じなのだ。
 ケーフィスとソフィヤは仲良し神様グループとして階級的なものの考えがほとんど同じである。

 そのために他宗教の使徒でもユリディカから見るとダリルは格上の聖職者となる。

「そのようにかしこまることもない」

「いえ、破壊の救い手に出会えたこと光栄です!」
 
 ついでにユリディカから初めて聞いて驚いたのがダリルの二つ名についてだった。
 破壊の救い手と呼ばれるダリルは有名な使徒であった。

 戦うことで人を救う使徒にも有名な人は何人もいて、その中の一人がダリルなのだ。
 破壊の救い手などいかにも物騒な二つ名だけど、実際にダリルの戦いぶりを見てあの破壊力を見れば納得の呼び方だ。

 話に聞くとダリルは女性の聖者とペアで活動しているらしいが、今は単独で動いているようだ。
 多くの人を救ってきたことでも有名でお高くもとまらない性格で人気もある。

 ユリディカはダリルとの出会いに感謝をしていた。

「よせ、私は何もしていない。人を救っているのはテレサの方だ」

 尊敬の眼差しを向けられてもダリルは微笑んで驕ることもない。
 ダリル本人としては尊敬されるべきは自分ではないと本気で思っている。

 ダリルと組んで活動しているパートナーのテレサの方が崇高な精神を持ち、その能力で人を救ってきた。
 だからその尊敬の向きはテレサに向けられるもので自分に向けられても嬉しくはないのである。

「ご謙遜なさらずともよろしいのに……お噂に聞き及んでいらっしゃいますダリル様がご一緒でしたら非常に心強いです」

「私は私に出来ることをするだけだ。過度な期待はよしてくれ」

「分かりました」

 特にユリディカが感動しているので目立たないけれど、ダリルは他の冒険者にも知られていた。
 こうした神の使徒や聖者は冒険者の間でも名が知られているものだ。

 ダリルは対価を要求することもなく善意で人を助けるので冒険者にとっても良い使徒で有名だったのである。

「ダリルさんってすごい人だったんですね」

「ルフォンまでやめてくれ……」

 ダリルは困った顔をする。
 本当に自分がそんな風に言われる人だと思っていないのである。

「リューちゃん……」

「ああ……」

「みんな静かに!」

 冒険者の一人が口に指を当てて黙るように指示する。
 熟練の冒険者たちはサッと押し黙り周りの警戒を始める。

 静かになるとよく聞こえる地鳴りのような低い羽音が響いてきていた。
 ルフォンやリュードには冒険者よりも早くに聞こえ始めていて、今やっとみんなにも聞こえたのである。
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