人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜

犬型大

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第六章

共に生きる2

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「もう一度……言ってもらえるかな?」

「キラービーとドワーフで共生するんです」

 そもそもハチを自由にしたところで平和的な解決を望むことは難しい。
 なぜなら自由にしたらハチたちはまたお家を探すことになる。

 そうなるとまた魔物の大移動やキラービー討伐の必要が出てくる。
 今の世界に棲み良く、空いている場所なんてほぼほぼ存在しないので問題が起こることは間違いない。

 このままドワーフが受け入れてくれて共生することができればハチはお家が見つかり、ドワーフは他の魔物が逃げ出すぐらいの防衛力を得られる。
 プラスしてハチミツの生産と言った副産物もある。
 
「何を言っているのか分かっているのか!」

 リュードの説明にドゥルビョが再び怒り出す。
 メリットは理解できないものではない。

 実現できれば双方にとって良い提案であるが大問題がある。

「魔物と暮らせというのか!」

 キラービーは魔物だ。
 越えられない絶対的な壁が人と魔物にはある。

 決して相容れない存在であって、リュードの提案は一般的に考えて非常に異質なものだった。

「何も同じ屋根の下にいろというんじゃないですよ」

「ならどういうことだ!」

「落ち着きなさい、ドゥルビョ。そんなに怒鳴りつけては建設的な話し合いも望めないですよ」

 サッテがドゥルビョをなだめる。
 リュードの提案の詳細としては、キラービーには鉱山にこのまま棲んでもらうつもりだった。

 そしてそこでハチミツの生産を行い、そうしながらも必要があればドワーフの鉱石掘りもすることもできるようにするというものである。
 ドワガルの町の中で一緒に棲めということではない。

「それもまた難しい話ですね……」

 なだめたサッテではあるが、なかなかに受け入れ難い話であることは同感だった。
 冒険者であるリザーセツやルフォンやラストも呆然としている。

 それどころかハチも驚いていて、いかにリュードの提案が荒唐無稽なものか分かる。
 使えるものなら使い、手を取り合えるなら取り合う。

 これはおそらくこの世界でもかなり特殊な、異世界出身のリュードであるからこその提案であった。

「ふむ……」

 全員が押し黙る。
 魔物であることを除けば互いに利益のある話で実現もできそうな話だ。

 ハチを自由にしたときのリスクも説明されたので、ただ自由にもできないことは理解できた。
 倒してしまえばいいと思わなくもないが、それを口にできる権利がドワーフにないことも分かっていた。

「すぐには答えは出ないと思います。ただ良く考えてみてください」

 不倶戴天の敵である魔物と仲良くしろと言われても困るはずだ。
 リュードから見れば魔物にも動物的だったり知性的な側面があることは理解できる話でも、この世界の人にとって魔物は敵である。

 落ち着く時間、考える時間も必要だろうと話し合いは微妙な空気のままお開きになった。

 ーーーーー
 
 ハチはリュードが責任を持って連れ帰る。
 流石のドワーフたちもリュードの側にハチがいるので寄っていけずに遠巻きに眺めているだけだった。
 
 酒漬けにされなさそうでちょっと助かったと思ったのは秘密だ。

「あっはっはっはっ! 私は大歓迎だよ!」

 宿に連れて行くのも嫌がられるかもしれない。
 不安に思いつつハチを連れていったけれど、ケルタは度量が違った。

 宿屋のおばちゃんの最上級は一味も二味も違う。
 説得の文句も考えていたのだけど、連れていってハチがちゃんとおじぎをしたらケルタは大笑いして受け入れた。

 ただ大キラービーについては羽ばたいて飛行している都合上宿の中には入れなくて宿の屋根にいることになった。

「リュードォ! 酒飲むぞ!」

 ただハチはメスなのでリュードと同部屋はよろしくない。
 なのでルフォンたちと同じ部屋にいることになった。
 
 そうしてハチもいるし今日はのんびりできるなとのんびりしていると外から声が聞こえてきた。
 変な勇気を出したのは誰だと興味を持ったので表に出てみた。
 
 そこにいたのは最も頑なな態度を取ることが多いドゥルビョであった。
 荷車に大きなタルを積んでそれを引いてきたようで、リュードが出てくるとフッと笑った。

「おお、いたか。俺はお前さんのことを良くは知らない。周りのものはお前さんを信頼できるとか何とかいうが俺は、俺の目で確かめたものしか信じない!
 だが今回のことには信頼が必要だ。どうすればお前さんが信頼できるか考えた。そして一つの答えに辿り着いた」

 ドゥルビョは懐から袋を取り出してその中から大きめのジョッキを取り出した。

「酒だ。酒を飲み交わせばお前さんのことを知れる!」

 なんともドワーフ的な思考だとリュードは思った。
 結局のところそこにたどり着くのがドワーフというものである。

「俺はかつてドワーフの中でも指折りの大酒飲みだった。年を取って少しは衰えたかもしれんがまだまだお前さんのような若造には負けはせんわい!」

「…………ふぅ。分かった、受けて立つ」

 別に酒飲み勝負では負けたところで構いやしないと思っていた。
 しかしこの勝負は負けられない気がするとリュードも気合を入れる。

 ドゥルビョは荷車に乗せたタルを一つ下ろして蓋を開ける。
 金属で作られたジョッキに中のお酒を並々と注いでリュードに渡す。

「これって……」

「果実酒だ。俺は甘いものが好きで甘い酒を自分で作っていてな」

「わあっ! 甘くいい香り!」

 蓋を開けた瞬間に甘い香りが広がった。
 リュードが何をしているのだと窓から見ていたハチも甘い香りに誘われて窓から飛び降りてきた。
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