480 / 550
第七章
白き姫を取り戻せ9
しおりを挟む
「きゃああああっ!」
雪が舞い、砕けた氷が飛び散る。
飛んできた氷の破片がリュードの頬をかすめて浅く切り裂く。
飛び上がったリュードは投げて壁に刺した剣の上に着地し、抱きかかえたラストに覆いかぶさるようにして氷の破片から守る。
「……ダ、ダリル!」
逃げるのに必死でダリルの方まで気が回らなかった。
ようやく轟音が止んで振り返ると、そこには砕けた氷壁が山となっていた。
リュードたちがいる位置よりも下では氷と雪の煙がまだ状況を隠している。
少しばかり無理矢理過ぎた。
ただまさか上部全体が崩壊するだなんて思いもしない。
ようやく晴れて来たけれど、見えるのは氷の山でダリルの姿はない。
「そんな……ダリル…………」
こんな大量の氷の下敷きになったら助からない。
万が一命があっても見つけ出すことは不可能に近い。
リュードの顔から血の気がひく。
こんなところで死んでいい人ではないのに。
みんなになんと説明したらいいのだと失意の視線でダリルの痕跡はないかと雪と氷の山を見下ろす。
「……とりあえず、降りようか」
地面に降りてラストを下ろす。
ラストも同じようなことを考えているのか泣きそうな顔をしている。
「ぬうわあっ!」
氷の山の一部が爆発する。
「ぬおおおっ!」
「ダリル……!」
「リュード、行こう!」
一瞬氷が吹き飛び、ダリルの声が聞こえてくる。
ただ吹き飛ばしても、雪と氷はすぐに崩れて来て再び埋まってしまう。
リュードとラストは顔を見合わせ、すぐに爆発が起きたところを掘り始めた。
「ぐぬぬ……こうなったら!」
この際、魔力の残量など気にしてられない。
火属性はあんまり得意じゃないけど魔力量だけならある。
リュードはとにかく熱を重視して火を起こす。
爆発させると衝撃で雪と氷の山が崩れてくる。
だからと言って手で掘り返していくのにも雪と氷は重たくて難しかった。
「うおおおっ!」
「私もやるよー!」
ラストも魔法で火を起こす。
基礎の基礎として火を起こすぐらいのことはラストも習っている。
二人で氷を溶かしていく。
想像していたよりも解けるのに時間がかかりダリルのことが心配になる。
「待ってろダリルー!」
ーーーーー
「ふっ……助かったよリュード。よくテレサに言われたものだ、もう少し考えて力を使いなさいとね。今ようやくその意味がわかった気がするよ」
こんな二次災害はリュードとて予想できなかった。
さらに三次災害としてビッシャビシャになったが、ダリルを無事に救い出すことができた。
上から氷を溶かしたために下にいたダリルは溶けた氷水を全て浴びた。
その甲斐あって助けられたのだけど、少しだけ溺れかけた。
「体を拭きながらでも早くここを移動しよう」
今は穴を開けた上部だけが今は崩壊しているが、他のところも崩壊しないとも限らない。
体を乾かすにしてもここにいては危険である。
もう一度生き埋めになったらそれこそ助からない。
ダリルは無傷であったが、それは神聖力による防御魔法を咄嗟に張ってなんとか氷に潰されずに済んでいたのだ。
リュードたちが頑張ってくれたから、ダリルも希望を捨てずになんとか持ち堪えていたのである。
「すまないな……」
神聖力も魔力も脱出のために使い果たしたダリルはぐったりしている。
あと少し助けるのが遅かったら危険であった。
リュードに肩を抱えられて氷の山を登っていく。
「誰かに肩を貸してもらうことなど長らく記憶にないな」
滑らないように気をつけて雪と氷の山の頂点を過ぎて降りていく。
これでようやく氷壁に囲まれたところから抜け出せた。
「リューちゃーん!」
「この声は……ルフォン!」
氷の山を降りたところで離れたところにルフォンたちの姿が見えた。
無事に帰って来たリュードやラストの姿を見て嬉しそうにルフォンが走ってくる。
「ダリルさん大丈夫?」
唯一無事でなさそうなのはダリルに見えた。
ルフォンがサッとリュードとは逆に回って肩をかす。
「力を使い果たしてしまった。少し休めば大丈夫だろう」
リュードたちはウィドウたちと合流する。
どうやらみんなの方も無事なようでリュードはホッと一安心した。
「よほど激しい戦いだったのですね……」
「いや……これは……」
「はい、激しい戦いでした」
ダリルの言葉を遮ってリュードがにこりと笑う。
考え甘く氷壁に穴を空けようとして生き埋めになって死にかけましたなんて言えない。
「神聖力を使い果たしてしまったにゃ? ならば休息を取るしかないにゃ」
ニャロがダリルの体を確認する。
魔力や体のケガと違って、神聖力を回復する手立ては自然回復しかない。
使い切ってしまったらゆっくりと休む他ないのである。
「リュードも無事で何よりだ」
「そちらの方もご無事で」
「ああ、むしろスノーケイブキングが抜けたことで、楽になったよ。ヤツが精神的支柱であり、リーダーとして指揮を取っていたんだろう。いきなりリーダーがいなくなってスノーケイブは動揺してしまってな。数はいたんで大変だったが倒すことはできたよ」
スノーケイブキングのあの行動は、スノーケイブたちにとってはいきなりリーダーが離脱したことに他ならない。
引くべきか闘うべきかの判断も勝手に下せないスノーケイブたちには動揺が広がり混乱した。
ウィドウたちはその隙をついてスノーケイブを倒すことができた。
スノーケイブを倒したウィドウたちはさっさと荷物を片付けてリュードたちを探しに来たのであった。
待つよりも向かった方向に探しに行ったほうがいい。
まるでスノーケイブの襲撃に合わせたような吹雪もいつの間にか止んでいたので、リスクも承知で探していたのだ。
「とんでもない轟音が聞こえてきて、お前たちだろうと思ったんだ」
なんの音かは分からないけど何かがあったことは明らか。
音のした方に向かって来たらリュードたちがいたのであった。
「ルフォン~!」
「大丈夫?」
「だいじょばないよぉ!」
ルフォンにも抱きしめてもらうラスト。
なんとかかんとか、スノーケイブキングを討伐することに成功したのであった。
雪が舞い、砕けた氷が飛び散る。
飛んできた氷の破片がリュードの頬をかすめて浅く切り裂く。
飛び上がったリュードは投げて壁に刺した剣の上に着地し、抱きかかえたラストに覆いかぶさるようにして氷の破片から守る。
「……ダ、ダリル!」
逃げるのに必死でダリルの方まで気が回らなかった。
ようやく轟音が止んで振り返ると、そこには砕けた氷壁が山となっていた。
リュードたちがいる位置よりも下では氷と雪の煙がまだ状況を隠している。
少しばかり無理矢理過ぎた。
ただまさか上部全体が崩壊するだなんて思いもしない。
ようやく晴れて来たけれど、見えるのは氷の山でダリルの姿はない。
「そんな……ダリル…………」
こんな大量の氷の下敷きになったら助からない。
万が一命があっても見つけ出すことは不可能に近い。
リュードの顔から血の気がひく。
こんなところで死んでいい人ではないのに。
みんなになんと説明したらいいのだと失意の視線でダリルの痕跡はないかと雪と氷の山を見下ろす。
「……とりあえず、降りようか」
地面に降りてラストを下ろす。
ラストも同じようなことを考えているのか泣きそうな顔をしている。
「ぬうわあっ!」
氷の山の一部が爆発する。
「ぬおおおっ!」
「ダリル……!」
「リュード、行こう!」
一瞬氷が吹き飛び、ダリルの声が聞こえてくる。
ただ吹き飛ばしても、雪と氷はすぐに崩れて来て再び埋まってしまう。
リュードとラストは顔を見合わせ、すぐに爆発が起きたところを掘り始めた。
「ぐぬぬ……こうなったら!」
この際、魔力の残量など気にしてられない。
火属性はあんまり得意じゃないけど魔力量だけならある。
リュードはとにかく熱を重視して火を起こす。
爆発させると衝撃で雪と氷の山が崩れてくる。
だからと言って手で掘り返していくのにも雪と氷は重たくて難しかった。
「うおおおっ!」
「私もやるよー!」
ラストも魔法で火を起こす。
基礎の基礎として火を起こすぐらいのことはラストも習っている。
二人で氷を溶かしていく。
想像していたよりも解けるのに時間がかかりダリルのことが心配になる。
「待ってろダリルー!」
ーーーーー
「ふっ……助かったよリュード。よくテレサに言われたものだ、もう少し考えて力を使いなさいとね。今ようやくその意味がわかった気がするよ」
こんな二次災害はリュードとて予想できなかった。
さらに三次災害としてビッシャビシャになったが、ダリルを無事に救い出すことができた。
上から氷を溶かしたために下にいたダリルは溶けた氷水を全て浴びた。
その甲斐あって助けられたのだけど、少しだけ溺れかけた。
「体を拭きながらでも早くここを移動しよう」
今は穴を開けた上部だけが今は崩壊しているが、他のところも崩壊しないとも限らない。
体を乾かすにしてもここにいては危険である。
もう一度生き埋めになったらそれこそ助からない。
ダリルは無傷であったが、それは神聖力による防御魔法を咄嗟に張ってなんとか氷に潰されずに済んでいたのだ。
リュードたちが頑張ってくれたから、ダリルも希望を捨てずになんとか持ち堪えていたのである。
「すまないな……」
神聖力も魔力も脱出のために使い果たしたダリルはぐったりしている。
あと少し助けるのが遅かったら危険であった。
リュードに肩を抱えられて氷の山を登っていく。
「誰かに肩を貸してもらうことなど長らく記憶にないな」
滑らないように気をつけて雪と氷の山の頂点を過ぎて降りていく。
これでようやく氷壁に囲まれたところから抜け出せた。
「リューちゃーん!」
「この声は……ルフォン!」
氷の山を降りたところで離れたところにルフォンたちの姿が見えた。
無事に帰って来たリュードやラストの姿を見て嬉しそうにルフォンが走ってくる。
「ダリルさん大丈夫?」
唯一無事でなさそうなのはダリルに見えた。
ルフォンがサッとリュードとは逆に回って肩をかす。
「力を使い果たしてしまった。少し休めば大丈夫だろう」
リュードたちはウィドウたちと合流する。
どうやらみんなの方も無事なようでリュードはホッと一安心した。
「よほど激しい戦いだったのですね……」
「いや……これは……」
「はい、激しい戦いでした」
ダリルの言葉を遮ってリュードがにこりと笑う。
考え甘く氷壁に穴を空けようとして生き埋めになって死にかけましたなんて言えない。
「神聖力を使い果たしてしまったにゃ? ならば休息を取るしかないにゃ」
ニャロがダリルの体を確認する。
魔力や体のケガと違って、神聖力を回復する手立ては自然回復しかない。
使い切ってしまったらゆっくりと休む他ないのである。
「リュードも無事で何よりだ」
「そちらの方もご無事で」
「ああ、むしろスノーケイブキングが抜けたことで、楽になったよ。ヤツが精神的支柱であり、リーダーとして指揮を取っていたんだろう。いきなりリーダーがいなくなってスノーケイブは動揺してしまってな。数はいたんで大変だったが倒すことはできたよ」
スノーケイブキングのあの行動は、スノーケイブたちにとってはいきなりリーダーが離脱したことに他ならない。
引くべきか闘うべきかの判断も勝手に下せないスノーケイブたちには動揺が広がり混乱した。
ウィドウたちはその隙をついてスノーケイブを倒すことができた。
スノーケイブを倒したウィドウたちはさっさと荷物を片付けてリュードたちを探しに来たのであった。
待つよりも向かった方向に探しに行ったほうがいい。
まるでスノーケイブの襲撃に合わせたような吹雪もいつの間にか止んでいたので、リスクも承知で探していたのだ。
「とんでもない轟音が聞こえてきて、お前たちだろうと思ったんだ」
なんの音かは分からないけど何かがあったことは明らか。
音のした方に向かって来たらリュードたちがいたのであった。
「ルフォン~!」
「大丈夫?」
「だいじょばないよぉ!」
ルフォンにも抱きしめてもらうラスト。
なんとかかんとか、スノーケイブキングを討伐することに成功したのであった。
1
あなたにおすすめの小説
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる