510 / 550
第七章
みんなの道は1
しおりを挟む
宴の準備が進められる中で、ギルドの方でもダンジョンの消滅が確認されダンジョン攻略が認められた。
これで国とギルドのお墨付きを得たことになる。
いよいよお祝いの雰囲気が高まり、宴が始まる時が訪れた。
ちなみに攻略不可ダンジョンが攻略されたことは、ギルドを通じて世界中に公表された。
攻略不可ダンジョンは攻略不可ではなかった。
攻略者たちが莫大な褒賞金を受け取ることも噂され、世界におけるダンジョン攻略の機運も高まったのだ。
「みんな、集まってくれて感謝する。もはや知らぬ人はいないほどに広まっているのでみな知っているとは思うが我が国にとって喜ばしいニュースがある。……私の懐妊ではないぞ?」
フロスティオンの言葉に、リュードはそれを笑っていいのかわからなくて曖昧な表情を浮かべた。
けれど周りの人たちは笑っているのでよく言う冗談なのかもしれない。
普段は公開されない氷宮のホールに、グルーウィンの貴族や今回極寒のダンジョンを攻略したリュードたちが集まっていた。
何か特別なイベントでもなければ王城たる氷宮で宴などやらないのだけど、今日ばかりは特別なイベントがある。
攻略不可ダンジョンが攻略された。
そのお祝いのパーティーが開かれるのだ。
「長年我々の頭を悩ませてきた悪夢のようなダンジョンがなくなった。グルーウィンは新たなる一歩を踏み出したのだ!」
フロスティオンの発表に集まっていた貴族たちから歓声が上がる。
氷子であるフロスティオンからの発表は噂で聞くのとは違う正式な発表だ。
実際もはや噂どころでなく話は広まっていた。
だな攻略がなされたと噂ではなく、正式にダンジョンが消滅したことも合わせて発表には改めての驚きと喜びがあった。
攻略不可と呼ばれて久しく不安が大きかった。
もたらされる利益よりもダンジョンの管理や積立金、討伐の費用などがかさむダンジョンだったので、ダンジョンがなくなってみんな大喜びだ。
ダンジョンがなくなったからといって利用価値のある土地でもないけど、高めのランクの冒険者を集めて僻地に送り出すのは結構な負担だったのである。
リュードたちが同行した時に怪我人はいなかったけれど、これまでの討伐では死傷者が出ることも珍しくなかった。
「ついては盛大にこのことを祝おうと思う。今日より三日、ダンジョンの消滅を祝した宴の期間とする。そして! 不可能を可能にした冒険者たちを紹介したい!」
リュードたちが前に出る。
事前に流れは聞いていたので、スムーズに動くことができる。
国王であるフロスティオンに敬意を払って一礼。
そして一列に並んで貴族たちにお目見えとなる。
「彼らが此度ダンジョンを攻略してくれた冒険者たちだ! 大きな拍手を! 彼らは英雄だ!」
割れんばかりに拍手が降り注ぎリュードたちを讃える。
この列の中にダリルとコユキはいない。
ダリルはまだ体調が万全でもないので紹介されることを辞退した。
コユキは何するか分からないし、攻略メンバーの中にいるのは不自然だからダリルに任せておいた。
子供は嫌いじゃないらしく、コユキもダリルのことは意外と気に入っていた。
チラリとみるとダリルに肩車されてコユキはリュードたちを見ていた。
周りに合わせてパチパチと拍手をしていたが、リュードと目が合うと手を振ってくれている。
「みな、楽しんでくれ!」
宴が始まってリュードたちは貴族に囲まれた。
グルーウィンに住むつもりはあるかとか、パートナーとなる人はいるかとか質問攻めにされる。
ウィドウや貴族の扱いにも慣れているアルフォンスなどの聖職者たちも押されている。
貴族との交流が少ないリュードなどが敵うはずもない。
なんとなく笑って誤魔化しながらやり過ごし、フロスティオンが止めてくれるまで貴族がかわるがわる話を聞きにきていた。
当然のことながらリュードたちを抱え込もうと縁談話も多かった。
すっかり気疲れしてしまったリュードは隙を見て会場を抜け出して部屋に戻ってきた。
お腹は空いているので給仕に頼んで部屋まで料理を持ってきてもらうことにした。
「かぁ~疲れた……」
「こんなところに逃げていたのか」
「勘弁してくださいよ……魔物に囲まれるまだマシです」
気づけば一人、また一人と避難をしてきて、いつの間にか、そしてなぜかリュードのところに集まっていた。
結局は気心の知れた仲間たちとささやかにパーティーを行うことになった。
「俺なんて年増の貴族にケツ揉まれたんだぜ!」
まずみんなの口から飛び出したのは、餌を前にした魚のように群がってきた貴族たちに対する愚痴だ。
ブレスはゴタゴタの隙に乗じてお尻を揉みしだかれたりなんかしていた。
女性陣の方はフロスティオンの配慮でちゃんとガードされていたのだけど、男性陣の方は結構フリータイムだったのだ。
「……しかし本当に攻略不可ダンジョンを攻略したとはな」
お酒の入ったグラスを傾けながらウィドウが感慨深そうに呟く。
依頼を受けた以上は当然に成功させるつもりあったが、やはり攻略不可ダンジョンは一筋縄でいかないと思っていた。
死ぬことも覚悟していたし、なんなら教会にも死んだら家族の面倒を見てほしいとまで頼んでいた。
冒険者が最後に憧れるのは英雄譚だ。
自分だけのストーリー。
語り継がれる偉業の達成である。
不可能を可能にした冒険者。
偉大なる伝説にも引けを取らない。
一方でケーフィス教の中では長らく失われた神物を取り戻した英雄でもある。
これ以上のことはきっとなし得ない。
これで国とギルドのお墨付きを得たことになる。
いよいよお祝いの雰囲気が高まり、宴が始まる時が訪れた。
ちなみに攻略不可ダンジョンが攻略されたことは、ギルドを通じて世界中に公表された。
攻略不可ダンジョンは攻略不可ではなかった。
攻略者たちが莫大な褒賞金を受け取ることも噂され、世界におけるダンジョン攻略の機運も高まったのだ。
「みんな、集まってくれて感謝する。もはや知らぬ人はいないほどに広まっているのでみな知っているとは思うが我が国にとって喜ばしいニュースがある。……私の懐妊ではないぞ?」
フロスティオンの言葉に、リュードはそれを笑っていいのかわからなくて曖昧な表情を浮かべた。
けれど周りの人たちは笑っているのでよく言う冗談なのかもしれない。
普段は公開されない氷宮のホールに、グルーウィンの貴族や今回極寒のダンジョンを攻略したリュードたちが集まっていた。
何か特別なイベントでもなければ王城たる氷宮で宴などやらないのだけど、今日ばかりは特別なイベントがある。
攻略不可ダンジョンが攻略された。
そのお祝いのパーティーが開かれるのだ。
「長年我々の頭を悩ませてきた悪夢のようなダンジョンがなくなった。グルーウィンは新たなる一歩を踏み出したのだ!」
フロスティオンの発表に集まっていた貴族たちから歓声が上がる。
氷子であるフロスティオンからの発表は噂で聞くのとは違う正式な発表だ。
実際もはや噂どころでなく話は広まっていた。
だな攻略がなされたと噂ではなく、正式にダンジョンが消滅したことも合わせて発表には改めての驚きと喜びがあった。
攻略不可と呼ばれて久しく不安が大きかった。
もたらされる利益よりもダンジョンの管理や積立金、討伐の費用などがかさむダンジョンだったので、ダンジョンがなくなってみんな大喜びだ。
ダンジョンがなくなったからといって利用価値のある土地でもないけど、高めのランクの冒険者を集めて僻地に送り出すのは結構な負担だったのである。
リュードたちが同行した時に怪我人はいなかったけれど、これまでの討伐では死傷者が出ることも珍しくなかった。
「ついては盛大にこのことを祝おうと思う。今日より三日、ダンジョンの消滅を祝した宴の期間とする。そして! 不可能を可能にした冒険者たちを紹介したい!」
リュードたちが前に出る。
事前に流れは聞いていたので、スムーズに動くことができる。
国王であるフロスティオンに敬意を払って一礼。
そして一列に並んで貴族たちにお目見えとなる。
「彼らが此度ダンジョンを攻略してくれた冒険者たちだ! 大きな拍手を! 彼らは英雄だ!」
割れんばかりに拍手が降り注ぎリュードたちを讃える。
この列の中にダリルとコユキはいない。
ダリルはまだ体調が万全でもないので紹介されることを辞退した。
コユキは何するか分からないし、攻略メンバーの中にいるのは不自然だからダリルに任せておいた。
子供は嫌いじゃないらしく、コユキもダリルのことは意外と気に入っていた。
チラリとみるとダリルに肩車されてコユキはリュードたちを見ていた。
周りに合わせてパチパチと拍手をしていたが、リュードと目が合うと手を振ってくれている。
「みな、楽しんでくれ!」
宴が始まってリュードたちは貴族に囲まれた。
グルーウィンに住むつもりはあるかとか、パートナーとなる人はいるかとか質問攻めにされる。
ウィドウや貴族の扱いにも慣れているアルフォンスなどの聖職者たちも押されている。
貴族との交流が少ないリュードなどが敵うはずもない。
なんとなく笑って誤魔化しながらやり過ごし、フロスティオンが止めてくれるまで貴族がかわるがわる話を聞きにきていた。
当然のことながらリュードたちを抱え込もうと縁談話も多かった。
すっかり気疲れしてしまったリュードは隙を見て会場を抜け出して部屋に戻ってきた。
お腹は空いているので給仕に頼んで部屋まで料理を持ってきてもらうことにした。
「かぁ~疲れた……」
「こんなところに逃げていたのか」
「勘弁してくださいよ……魔物に囲まれるまだマシです」
気づけば一人、また一人と避難をしてきて、いつの間にか、そしてなぜかリュードのところに集まっていた。
結局は気心の知れた仲間たちとささやかにパーティーを行うことになった。
「俺なんて年増の貴族にケツ揉まれたんだぜ!」
まずみんなの口から飛び出したのは、餌を前にした魚のように群がってきた貴族たちに対する愚痴だ。
ブレスはゴタゴタの隙に乗じてお尻を揉みしだかれたりなんかしていた。
女性陣の方はフロスティオンの配慮でちゃんとガードされていたのだけど、男性陣の方は結構フリータイムだったのだ。
「……しかし本当に攻略不可ダンジョンを攻略したとはな」
お酒の入ったグラスを傾けながらウィドウが感慨深そうに呟く。
依頼を受けた以上は当然に成功させるつもりあったが、やはり攻略不可ダンジョンは一筋縄でいかないと思っていた。
死ぬことも覚悟していたし、なんなら教会にも死んだら家族の面倒を見てほしいとまで頼んでいた。
冒険者が最後に憧れるのは英雄譚だ。
自分だけのストーリー。
語り継がれる偉業の達成である。
不可能を可能にした冒険者。
偉大なる伝説にも引けを取らない。
一方でケーフィス教の中では長らく失われた神物を取り戻した英雄でもある。
これ以上のことはきっとなし得ない。
1
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
タイム連打ってなんだよ(困惑)
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」
王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。
パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。
アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。
「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」
目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?
※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。
『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる