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第一章
善きことをしようとする男1
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教会のある大きな町に来た。
こうなった時に泊まる場所であるがテシアとハニアスは教会にお世話になり、キリアンは宿に泊まることになっていた。
教会の方に空きがあるなら教会に泊まってもいいのではなんて思ったのだけどキリアンがバカ真面目に宿に泊まりますと辞退したのだ。
別にそこまで強く引き留めることはないので教会があるときはバラバラに泊まることにしたのである。
「まさか水筒に穴が空いてしまうとはね」
ちょっと食料の買い出しに行こうと思って荷物を整理していたら水浸しになっていた。
何事かと思ったら水筒に穴が空いていたのだ。
そんなに古いものでもなかったがどこかにぶつけて壊れてしまったのかもしれない。
道中の水は大事である。
水筒はちゃんと買っておかねばならない。
教会の人に聞いて良い商会を教えてもらったので食料品の買い出しのついでに水筒を買いに行こうとしていた。
「ビノシ商会があるところで壊れてくれればいいものを」
そうすれば安くて良い品のものが確実に手に入ったのにとテシアは思う。
「あそこにいるのはキリアン様ではありませんか?」
「どれどれ? あ、本当だ」
お店を探してキョロキョロとしていたハニアスが離れたところにいるキリアンの姿を見つけた。
おばあちゃんと並んで歩いているので何をしているのかと見ているとどうやら荷物を持ってあげているらしい。
キリアンは善いことをしなければならないらしい。
本人が多くを語らず含みのある言い方をするものだからテシアたちにもその理由は分かっていない。
善行を行うことを自分に課しているというよりは何かの理由から積極的にそうしなければならないかのようにキリアンは言う。
そのためテシアたちが巡礼の一環として善行を積むことにキリアンも手伝ってくれたりする。
それ以外にもこうして町にいる時にはキリアンも個人で人を助けたりすることがあった。
「まあ良いことだからね」
特に問題を起こしているのでなければテシアも別に何も口を出すことはない。
小さく頑張れと応援の言葉を口にしてテシアとハニアスはその場を離れていった。
ーーーーー
「お安くしてもらえましたね」
「そうだね。確かに良いお店だった」
「ちょっと買いすぎてしまいましたね」
「それは食べちゃえばいい」
おすすめされるだけはあって店主の人柄は良く、少し値引きまでしてくれた。
そのせいで少し買いすぎてしまったかもしれないけれど許容範囲の買い物ではある。
買いすぎた食べ物を無理やり荷物に詰め込むことはなく、先にお腹に入れてしまえばいいのだ。
「良い水筒もありましたね」
水筒も質の良いものを置いていた。
満足のいく買い物ができたとテシアも上機嫌だった。
「…………なんでしょうか?」
教会に帰ろうと歩いていると子供の泣き声が聞こえてきた。
町中ならどこかで子供が泣いていてもおかしくはないけれど気になったので見にいくことにした。
「あっ、えと……泣かないでくれるかな?」
「……何をしてるんだ、あいつは?」
「さて? 子供を泣かせているんでしょうか?」
声の方に向かってみるとそこは市場で子供が泣いていた。
そしてその前にいるのはキリアンであった。
泣いている子供を目の前にして慌てるキリアン。
そのせいかまるでキリアンが泣かせているみたいに周りはざわざわとしている。
「どうしますか?」
「キリアンはともかく泣いている子供は放ってはおけないだろ?」
キリアンが困っていても自分でなんとかしてもらうしかないが泣いている子供を無視して帰ることはできない。
「キリアン、何をしているんだ?」
「あっ、テ、テシアさん」
「何を泣かせているのですか?」
「俺が泣かせたわけでは……」
「まあそうだろうけどさ」
キリアンが子供を泣かせるような人物でないことは分かっている。
迷子になった子供を見つけて声をかけたら泣き出してしまった、そんなところだろうとテシアは思った。
「初めまして、僕はテシア。君のお名前は?」
キリアンが怖い顔をしているなんてこともない。
しかしかなり高身長なキリアンは子供の視線で見た時に大きくて威圧感があってしまう。
親切なのはいいけれど子供の扱い方というものを分かっていない。
テシアは片膝をついて子供と視線を合わせる。
出来る限り柔らかい声を意識して声をかけてやる。
「……ジナ」
ヘルムを被っているのでちょっと不安だったけれど子供は答えてくれた。
テシアがハンカチで涙を拭いてよく見ると可愛らしい顔をした女の子であった。
「ジナか。可愛い名前だね」
先にキリアンで泣いていたせいかテシアが穏やかに話しかけるとジナはすぐに泣き止んだ。
「迷子になったのかい?」
「……うん」
「お母さんと来ていたのかな?」
「……うん」
少しずつ、ジナの返事を待って話を聞いていく。
ジナは市場に母親を買い物に来ていたのだけれどふと露店の綺麗な髪飾りを見ている間に母親とはぐれてしまったのである。
もしはぐれてしまって迷子になったら市場の入り口にいなさいと言われてジナはその通りにしていた。
こうなった時に泊まる場所であるがテシアとハニアスは教会にお世話になり、キリアンは宿に泊まることになっていた。
教会の方に空きがあるなら教会に泊まってもいいのではなんて思ったのだけどキリアンがバカ真面目に宿に泊まりますと辞退したのだ。
別にそこまで強く引き留めることはないので教会があるときはバラバラに泊まることにしたのである。
「まさか水筒に穴が空いてしまうとはね」
ちょっと食料の買い出しに行こうと思って荷物を整理していたら水浸しになっていた。
何事かと思ったら水筒に穴が空いていたのだ。
そんなに古いものでもなかったがどこかにぶつけて壊れてしまったのかもしれない。
道中の水は大事である。
水筒はちゃんと買っておかねばならない。
教会の人に聞いて良い商会を教えてもらったので食料品の買い出しのついでに水筒を買いに行こうとしていた。
「ビノシ商会があるところで壊れてくれればいいものを」
そうすれば安くて良い品のものが確実に手に入ったのにとテシアは思う。
「あそこにいるのはキリアン様ではありませんか?」
「どれどれ? あ、本当だ」
お店を探してキョロキョロとしていたハニアスが離れたところにいるキリアンの姿を見つけた。
おばあちゃんと並んで歩いているので何をしているのかと見ているとどうやら荷物を持ってあげているらしい。
キリアンは善いことをしなければならないらしい。
本人が多くを語らず含みのある言い方をするものだからテシアたちにもその理由は分かっていない。
善行を行うことを自分に課しているというよりは何かの理由から積極的にそうしなければならないかのようにキリアンは言う。
そのためテシアたちが巡礼の一環として善行を積むことにキリアンも手伝ってくれたりする。
それ以外にもこうして町にいる時にはキリアンも個人で人を助けたりすることがあった。
「まあ良いことだからね」
特に問題を起こしているのでなければテシアも別に何も口を出すことはない。
小さく頑張れと応援の言葉を口にしてテシアとハニアスはその場を離れていった。
ーーーーー
「お安くしてもらえましたね」
「そうだね。確かに良いお店だった」
「ちょっと買いすぎてしまいましたね」
「それは食べちゃえばいい」
おすすめされるだけはあって店主の人柄は良く、少し値引きまでしてくれた。
そのせいで少し買いすぎてしまったかもしれないけれど許容範囲の買い物ではある。
買いすぎた食べ物を無理やり荷物に詰め込むことはなく、先にお腹に入れてしまえばいいのだ。
「良い水筒もありましたね」
水筒も質の良いものを置いていた。
満足のいく買い物ができたとテシアも上機嫌だった。
「…………なんでしょうか?」
教会に帰ろうと歩いていると子供の泣き声が聞こえてきた。
町中ならどこかで子供が泣いていてもおかしくはないけれど気になったので見にいくことにした。
「あっ、えと……泣かないでくれるかな?」
「……何をしてるんだ、あいつは?」
「さて? 子供を泣かせているんでしょうか?」
声の方に向かってみるとそこは市場で子供が泣いていた。
そしてその前にいるのはキリアンであった。
泣いている子供を目の前にして慌てるキリアン。
そのせいかまるでキリアンが泣かせているみたいに周りはざわざわとしている。
「どうしますか?」
「キリアンはともかく泣いている子供は放ってはおけないだろ?」
キリアンが困っていても自分でなんとかしてもらうしかないが泣いている子供を無視して帰ることはできない。
「キリアン、何をしているんだ?」
「あっ、テ、テシアさん」
「何を泣かせているのですか?」
「俺が泣かせたわけでは……」
「まあそうだろうけどさ」
キリアンが子供を泣かせるような人物でないことは分かっている。
迷子になった子供を見つけて声をかけたら泣き出してしまった、そんなところだろうとテシアは思った。
「初めまして、僕はテシア。君のお名前は?」
キリアンが怖い顔をしているなんてこともない。
しかしかなり高身長なキリアンは子供の視線で見た時に大きくて威圧感があってしまう。
親切なのはいいけれど子供の扱い方というものを分かっていない。
テシアは片膝をついて子供と視線を合わせる。
出来る限り柔らかい声を意識して声をかけてやる。
「……ジナ」
ヘルムを被っているのでちょっと不安だったけれど子供は答えてくれた。
テシアがハンカチで涙を拭いてよく見ると可愛らしい顔をした女の子であった。
「ジナか。可愛い名前だね」
先にキリアンで泣いていたせいかテシアが穏やかに話しかけるとジナはすぐに泣き止んだ。
「迷子になったのかい?」
「……うん」
「お母さんと来ていたのかな?」
「……うん」
少しずつ、ジナの返事を待って話を聞いていく。
ジナは市場に母親を買い物に来ていたのだけれどふと露店の綺麗な髪飾りを見ている間に母親とはぐれてしまったのである。
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