さるのゆめ

トマトふぁ之助

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鬼さぐり

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 Bさんは仕方なく、半べそのAさんを連れて実家の寺に向かった。跡目を継いでいた兄に頼んで簡易なお祓いを済ませ、寝るのが怖いとごねるAさんに付き合うことにした。成人式まであと一年はあったが、こっそりと兄の晩酌用のビールを持ち出して袋菓子を開け、子供に戻った気持ちで夜更かしを楽しむ。
 ほろ酔いのAさんが机にもたれて唸りをあげた。
 「怖えよぉ。あんで俺がこんな目に」
 「行かなくていいとこ行って、やらなくてもいいことしてるからだろ」
 祓いを済ませてよほど安心したらしい。対戦用ゲーム機のコントローラーを指先で弄りながら、泣き言をこぼす。Aさんが何かに取り憑かれただの祟られた呪われただの騒ぐのは、実は今回が初めてではない。寺に生まれ育っただけのBさんに毎回助けを求めにくるのだ。
 「安心しろよ。どうせまた気のせいだろ」
 本当に、Bさん自身もそう思っていたのである。

 ががピピ。ザザ、ザァあ。
 映画の画面が切り替わるような唐突さで、二人は別の場所にいた。Bさんは辺りを見回す。出入り口が一つしか見えない個室に、古臭いカラオケ機材。少し時代遅れなデザインの花柄の壁紙。丁度サビを歌い終えたAさんが隣に座っていて、涙目でこちらを見つめていた。
 「あ、あれ……っ!?な、何で……?」
 「……これ、例の夢か」
 確かに何をか引き摺るような音が近づいてくる。
 AさんとBさんのいる部屋まで距離が狭まり、ずるずるみしみしと建物を軋ませていた。
 突然スピーカーから音が止んだ。ぶつんと勢いよくテレビ画面がブラックアウトする。数秒の間がとてつもなく、重い。
 すぐに液晶は待機画面へと復旧したが、そこには入れた覚えのない予約曲が表示されていた。
 「…………うしろやぐら?」
 金属の擦れる音。すぐ隣の部屋で扉の金具が悲鳴をあげる。様子を伺いたかったが、Bさんの体はピクリとも動かない。金縛りだ。指先ひとつ持ち上げることができない。
 『ひ、ヒィッ!!なんだってんだ……!?化け物、くるなァッ!!』
 ざらついたノイズが急により合わされ、悲鳴を喚き散らす。この部屋のものではない。スピーカーから吐き出される重い毛束を引き摺る音。防音加工をしていてもカラオケ施設の壁は薄い。何か途轍もなく大きな生き物が、体を入り口に引っ掛けながら隣の部屋に入って行ったことが振動からもわかった。
 ぐひゅぐひと不気味な含み笑いが聞こえる。
 『やめろっ!は、はな……ッ!!ひ、……ぁ、ぁあっ』
 揉み合うような音。布が裂ける気配もあった。
 『ぁ。あっ』
 がたんごとん。びりびり、ぶちっ。
 隣部屋での陵辱劇が想起された。暴れる獲物は二十代後半の男だ。カラオケには場違いな作業服を着ている。ニッカポッカをティッシュでも裂くように取り払われ、下着も手荒に破られていた。怪物の目から映る世界がBさんの視界をジャックしたかのようだった。暴れさせないために首を片手で固定。腰の留め具を容易く千切ると、手荒に下半身を露出させる。日焼けした上腕がばたつく度に太腿の白さが際立って見えた。
 ……怪物は男の股ぐらへと頭を沈め、唾液たっぷりの舌を伸ばす。
 じゅっ。じゅるっぐっちゅ、じゅるるっじゅぞぞっ♡♡♡!!
 『ヒィッ!!どこなめっ……!!やめ、はな、せぇッ!!』
 甘い苦悶の声が響く。獣の両手が男の腰をしっかり掴み、淫らがましく甘露を啜る。いやだ、やめろと抵抗する声も長い責めを経て弱々しくなっていった。AさんとBさんはお互いの顔を伺うこともできず、耳への拷問を受け続ける。
 永遠とも思える時間が流れた。一時間以上はそうしていただろう。
 スピーカーから漏れる呼吸がぐったりとしている。男は既に三度達していたが解放の兆しは見えない、……その都度獣の口内に精液を搾り取られて放心状態だ。喉を鳴らして嚥下する巨獣は満足するどころかより興奮を露わにしていた。
 『…………っ?あぉっ……!?』
 軽々と体を反転させると白い背中が眩く映える。くすんだ紫のボックス席にうつ伏せにされ、男は腰を持ち上げさせられた。尻を突き出す屈辱的な格好だ。
 ずぬ、と槍の穂先があわいに割り入る。
 『ひ、や、やめ……ッ!!……おぉっ…………!!』
 そのひと突きで流れが変わった。ばちゅんっと濡れた音が響き、しんとした空白に荒い呼吸だけが横たわる。
 『…………っぁえッ……?へ、ぁあっ、あっあっあっ』
 低い唸りと共に激しい交尾が始まった。獣の視界から突然解放され、Aさんたちは金縛りの解けた体を身震いさせる。二人とも声を殺して互いの顔を見た。隣の部屋から伝う軋みは生々しく、己の征服行為を誇示しているかのようである。
 『や、はな、せぇッ……!!ぁ、ンぐぅっ!奥、おく、ぁめ……っ!ヒィッ!ヒんっ!!』
 ばちゅんばちゅんっごちゅっずっちゅっ!!
 男の喘ぎが上擦り、性感を帯び始める。
 『グオオッ……!グゥアオオッ!!』
 『や、なに……ッ!?ぁ、あっ!?』
 咆哮と共に肉を打ち付ける交接音が止んだ。グチュグチュと腰を回す水音が取って代わり、獣が悍ましくも心地良さそうなため息をつく。
 (……射精してる)
 Bさんの脳裏に人間の腹へと精を放つ雄の猿が思い描かれた。毛むくじゃらの巨体。理由もなくその正体を「猿」だと理解した。
 『あ……あぁ、なっ……そ、んなぁ……っ!!中で……っ!!』
 『グォオ……ッ♡オッ……!!オォウッ♡』
 『くそ、抜けよぉ……っ!ま、まだ……どんだけ出す気で……っ!あ、あっ……。』
 びゅぅうっ……!!どぐっ♡どぐ……っ♡♡♡!!
 Bさんの下腹が蕩けるように疼き出した。金縛りが解けてもぐったりと背もたれに体を預け、立ち上がって逃げ出すことさえできない。隣のAさんはというと、こちらもテーブルに突っ伏して息を荒くしていた。
 『あ、あっ……?ヒッン♡!!ひぅっ!!や、はぁっ!……ァんっ♡!!あん♡!!ぃ、イくぅッ♡♡♡!!』
 逞しい腹筋を内から突き上げる勢いで、獣の魔羅がピストン運動を再開した。急に大声で喘ぎ出した隣部屋の犠牲者に瞠目しながら、AさんとBさんは下腹を押さえて呼吸を噛み殺した。
 「ぁっ……ん……♡な、なにこれ……何なんだよコレ!」
 「……ぁ、は……っ♡ぅ、ぐんッ♡んぅ……!!」
 壁を突き抜けて響いてくる声とスピーカーから流れる喘ぎ声が重なり合う。毒々しい壁伝いの軋みに合わせて、二人の下腹をぞくぞくとあらぬ感覚が貫いていく。
 『アぁんッ♡!!そこ、ぁオォッ♡♡♡!!ィイッ♡!!すげえいいよぉッ!!』
 じゅわじゅわと弄ったこともない尻穴が疼く。奥からもったりと、濡れて痺れた甘さが伝い落ちる。Bさんは両手で腹を庇いながら、ああ、隣の男はここに出されたんだなと、静かにそう思った。
 (感覚が共有されてるのか……!?)
 グチュンッ、ズッチュン!!と恥知らずにも響く獣の腰振りに合わせ、二人は隣の男と喘ぎを重ねた。全身が熱く火照り、直腸が痙攣を繰り返す。力が抜ける。Bさんはボックス席に体を倒して悶えた。Aさんも同じ状態らしく、テーブルから床へ体勢を崩して倒れ込む音がする。
 「やだ、これ、……っぁあ……ッ!」
 「ぃぎっ♡!ァ、んだよっこれぇ……!!」
 『あォッ♡ぉんっ♡ぃいんっ♡♡♡!!ひんっ♡!!ひんッ♡!!』
 隣部屋の行為はいよいよ盛り上がっているらしかった。貪られる彼は箍が外れたように喘ぎ狂い、腰を揺らして獣の腰振りに応えている。下腹の熱さが性感を煽った。射精してなお全く萎えない獣の竿が精液を馴染ませるように往復を繰り返す。かえしで弄ぶ感覚が心地いいのか、ゴリゴリと腹部の行き止まりである結腸奥を鞣し続ける。
 数十分もたっただろうか。犯しつくした温かな尻穴から、怪物はいきなり巨根を引き抜いた。
 『ひ、ぃん…………ッ♡……ぁ……っぁえ…………♡』
 「ふー、ふぅう……っ♡」
 「ぁ~ッ……♡……はァっ……♡!」
 既に解されきった肉穴が寂しげに疼く。AさんとBさんも同時に軽い虚脱感を味わっていた。二の腕に締められるような圧迫感。……隣の男の腕が掴まれ、ビニルのシートから引っ立てられるのがわかった。
 シミの目立つ古い壁紙。両手をつかされ、犯され尽くしてがくがく震える腰を人間離れした大きな手に掴まれる。後孔のふちに、カリ高の亀頭が幾度もキスをして。
 『……ぁ、入れて……入れてくれっ、ァッ♡ァアアアァンッ♡♡♡!!』
 濡れた肉を割って突き立てられた魔羅に、三人は声をあげて屈服した。AさんとBさんはそれぞれ同時に精を放ち、共有される激しい律動に涙を流して悦がり続ける。腸壁の襞を鰓が削る甘い感覚、奥までみっちりと収められる雄々しい圧迫感、虐められ続けて苦しささえ覚える前立腺の快楽。
 全てが肉体の上を嵐のように駆け抜けていく。
 『い、行きます……。俺、そっちにいきますから……もうゆるして……』
 数時間後、全身を貪られ尽くした男が床へと崩れ落ちた。巨木の如き獣の腕で担ぎ上げられ、俵抱きにされる。交尾の感覚共有を受けて息も絶え絶えの二人には、隣の部屋の扉が開く音、そしてただ巨獣の足音と、揺れるたびに漏れる弱々しい喘ぎがはっきりと聞こえた。徐々に気配は遠のいて、エントランスの自動ドアが無機質に開閉する音が夢を締めくくる。
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