2 / 5
個体名コウタロウ
『おはよう、そろそろ遅刻するぞコウタロウ』
円形ポッドの中央に、細胞片から再生させた人間が拘束されている。観察のためポッドの外殻を透過させ、我々研究員と隔たりのないよう見せかけてもいる。蘇生にはそれなりの気を使うのだ。分厚い壁の向こうで、若いオスのニンゲンはシートに括り付けられた手足をばたつかせてもがく。
「おい。何してる、被験体で遊ぶな」
「妙だな……。脳波を測定して、肉親の声を再現してみたんだが」
コウタロウとはこのオスの個体名だろう。研究員たちは次々に、ポッドの中へ人間の肉声をアナウンスしていく。
「……どうせやるんなら脳波が落ち着くやつを頼むぞ」
「わかっているとも」
『コウタロウ、コウタロウ』『一緒に飯食おうぜ』『たまには帰ってきなさい』『先輩あれ歌ってよ』『うま』『優しいねえ』『大丈夫だって』『ありがとなコウ』『お巡りさん、またね!』
「う、うわ、うわぁあッ!!やめろやめろやめろっ!!」
鼓動が大きく乱れ、人間はついに暴れ出した。下手くそめ。私は同僚から操作していたパネルを奪う。
「全部流してどうする。番に絞れ」
「それらしいデータが無いからランダムにかけてやってるんじゃないか。同族の声を聞くだけで落ち着くだろ?哺乳類はみんなそうだ」
知った顔で嘯くこいつは、つい先日自分の人間をもらったばかりだ。この無神経さではろくろく世話もできていなかろう。あの人間がストレスで弱っていなければいいが。
「まぁいい……さっさと寄生させるぞ」
内側から支配してしまえば負担も軽減できる。いくら怯えて暴れたところで四肢はベルトで固定されていて、唸ってバタつくニンゲンの胴体へといくつものアームが伸びていく。ポッドの中は無菌空間で安全に施術を行うことができるのだ。金属製アームの先にはフラスコが一つ取り付けられており、その中で艶々と玉虫色に光る蟲が蠢いている。真っ直ぐ人間のはらわたへ、透明な捕獲瓶が近づいて、ひたりと丸い口がその臍を覆った。
「ンンンン゛ッッッ!!!ング、うっヴぅうううっ!!!」
他のアームで轡を噛ませて人間の舌を保護。両手足の拘束が外れる様子もない。パネル操作で捕獲瓶のカバーを外せば、それは勢いよく柔い腹肉に張り付いた。しばらく皮膚を這い回り感触を確かめていたが、五本の鋭く長い爪で恙無く臍にわり入っていく。痛みがあるのだろう、人間は必ずこのタイミングで涙を流して失禁する。気を失うことはできない。蟲が絶えず腹の内側で余分な肉を啄むからだ。
「不思議だよなぁ」
「何がだ」
「ここでいっつも勃起する。性的快楽に関わる器官には触れないはずなのに」
蟲の引っ越しが終わるまで30分ほど、研究員は手持ち無沙汰だ。白目を剥いて失禁する宿主を眺めて過ごすしかない。可哀想にと言いつつ、同僚は興奮したように瞳を輝かせている。人間を保護した宇宙人たちは皆同じようにこの施術を好むようになる。
「ニンゲンは心地よくても泣くんだ。可愛いって、こういう感覚のことを言うんだな」
恍惚と漏れた呟きには答えなかった。ポッドの中央で、自分のものになるニンゲンが勢いよく精を漏らしていた。
円形ポッドの中央に、細胞片から再生させた人間が拘束されている。観察のためポッドの外殻を透過させ、我々研究員と隔たりのないよう見せかけてもいる。蘇生にはそれなりの気を使うのだ。分厚い壁の向こうで、若いオスのニンゲンはシートに括り付けられた手足をばたつかせてもがく。
「おい。何してる、被験体で遊ぶな」
「妙だな……。脳波を測定して、肉親の声を再現してみたんだが」
コウタロウとはこのオスの個体名だろう。研究員たちは次々に、ポッドの中へ人間の肉声をアナウンスしていく。
「……どうせやるんなら脳波が落ち着くやつを頼むぞ」
「わかっているとも」
『コウタロウ、コウタロウ』『一緒に飯食おうぜ』『たまには帰ってきなさい』『先輩あれ歌ってよ』『うま』『優しいねえ』『大丈夫だって』『ありがとなコウ』『お巡りさん、またね!』
「う、うわ、うわぁあッ!!やめろやめろやめろっ!!」
鼓動が大きく乱れ、人間はついに暴れ出した。下手くそめ。私は同僚から操作していたパネルを奪う。
「全部流してどうする。番に絞れ」
「それらしいデータが無いからランダムにかけてやってるんじゃないか。同族の声を聞くだけで落ち着くだろ?哺乳類はみんなそうだ」
知った顔で嘯くこいつは、つい先日自分の人間をもらったばかりだ。この無神経さではろくろく世話もできていなかろう。あの人間がストレスで弱っていなければいいが。
「まぁいい……さっさと寄生させるぞ」
内側から支配してしまえば負担も軽減できる。いくら怯えて暴れたところで四肢はベルトで固定されていて、唸ってバタつくニンゲンの胴体へといくつものアームが伸びていく。ポッドの中は無菌空間で安全に施術を行うことができるのだ。金属製アームの先にはフラスコが一つ取り付けられており、その中で艶々と玉虫色に光る蟲が蠢いている。真っ直ぐ人間のはらわたへ、透明な捕獲瓶が近づいて、ひたりと丸い口がその臍を覆った。
「ンンンン゛ッッッ!!!ング、うっヴぅうううっ!!!」
他のアームで轡を噛ませて人間の舌を保護。両手足の拘束が外れる様子もない。パネル操作で捕獲瓶のカバーを外せば、それは勢いよく柔い腹肉に張り付いた。しばらく皮膚を這い回り感触を確かめていたが、五本の鋭く長い爪で恙無く臍にわり入っていく。痛みがあるのだろう、人間は必ずこのタイミングで涙を流して失禁する。気を失うことはできない。蟲が絶えず腹の内側で余分な肉を啄むからだ。
「不思議だよなぁ」
「何がだ」
「ここでいっつも勃起する。性的快楽に関わる器官には触れないはずなのに」
蟲の引っ越しが終わるまで30分ほど、研究員は手持ち無沙汰だ。白目を剥いて失禁する宿主を眺めて過ごすしかない。可哀想にと言いつつ、同僚は興奮したように瞳を輝かせている。人間を保護した宇宙人たちは皆同じようにこの施術を好むようになる。
「ニンゲンは心地よくても泣くんだ。可愛いって、こういう感覚のことを言うんだな」
恍惚と漏れた呟きには答えなかった。ポッドの中央で、自分のものになるニンゲンが勢いよく精を漏らしていた。
あなたにおすすめの小説
オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜
トマトふぁ之助
BL
某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。
そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。
聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。