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第8話
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手紙に綴られた文字には、その人の人間性が垣間見えると、聞いたことがある。
大事な人に送る手紙はより一層丁寧に書く。
それは、俺の中で特に大事にしていることだ。
今回の手紙も例外ではない。
丁寧に1字1句間違えないように、丁寧に便箋に書く。
面識もないのになんでこんなに律儀に手紙を書くのか?そう問われても、すぐには答えられない。ただ言えるのは、昔からそうやって手紙を書いてきたので、そうする方法しかないと言うのが正しいかもしれない。
こじんまりとしたちゃぶ台の上で、ボールペンをもち、とめ、はね、はらいを気をつけて書く。
足立美沙さんと、文通するようになってあれから二カ月あたり、こうやって自分の生活を振り返るとなかなか楽しい学校生活を送ってるんじゃと思うようになった。
毎日、楽しい友達と一緒にダラダラして笑う。
こう考えると、なかなかすごい。
なぜ、足立美沙さんと文通しているのか?それは、二カ月前に話を戻さないといけない。
あの、昼休みでの出来事だ。
足立咲さんに呼び出されて、俺は屋上に向かう。そして、メロンパンをもぐもぐと食べてた足立咲さんにこう言われた。
「手紙をさ書いてあげたらどうかな?」
普通の人ならこの出来事になんの問題があるのか?なんて思うかもしれない。でも、人見知りな性格が仇となり、なかなかそれができないのが俺だ。
そんなことを言われてもなどと口ごもってなかなか答えることができなかった。
そして、去っていった足立咲さんの後ろ姿を見ていた。
屋上の網にもたれかかり、天を仰いだ。
その日の空はひどく青かった。
足立咲さんに言われたその日の晩、俺はちゃぶ台の上で悩んでいた。
黒のボールペンと便箋の前で腕を組んでない頭で考えていた。
ここまで考える必要あるのか?と言われても仕方ない。
何せ手紙など書く機会もない。
どうやって切り出せばいいのか?前のように書くのも不自然だ。
こうやって悩んでいると、だんだんマイナス思考のスパイラルにはまりそうだ。
こうして、小1時間悩んだ結果、本の感想から入ろうという、なんとも最初に考えつきそうなものにした。
まぁこれで最初の1文が書けた。
そこから、スラスラと書けた。しかし、最後の最後でまたもや大きな壁にぶつかった。
まさか、締めの言葉があったとは、なんという盲点。
うなだれている余裕なんてあるはずがなく、またうんうんと悩む。
これだ!!そう思った言葉を締めの言葉にする。
『 拝啓、足立美沙さん。元気にしてますか?俺の方は元気です。
さて、最近読んだ本で、気になった本があるのですが、俺は昔この本を読んだような記憶があります。
題名は、『時空旅行』と言う本です。
ご存知でしょうか?なぜかこの本を懐かしいなんて思ってしまいました。
この本と足立美沙さんは何か関係があったりなんかしてと思い手紙を書きました。
それでは、お身体に気をつけて。
敬具 仲間悠。』
丁寧に手紙を折って便箋に入れる。
この手紙が届いたら、また、俺の知らない記憶が明らかになる。
そんな事を考えながら、杉さんに電話する。
「プルルルル」ワンコールで杉さんは電話に出た。
「もしもし、仲間様ですか?」
「は、はい」
「ご用件は?」
「あ、あの、手紙書いたんで、取りに来てくれませんか?」
「承知しました。では、明日取りに行きます」
「よろしくお願いします」
そう言って電話をきる。
もう、夜も8時もすぎた。そろそろ晩ご飯にしよう。
その日は、なぜかぐっすりと眠れた。これが俗に言ういい睡眠というやつなのだろうか?
アラームがなる前に目が覚めてしまった。
毎朝訪れる体のだるさもない。
今日はいい1日になるな。そんな事を考えながら、朝の支度をする。
朝ごはんは何にしようか。冷蔵庫をゴソゴソとあさる。
さてと、ハムと卵がある。ハムエッグ決定だな。
あとは、何かあるだろうか?うん、案の定何もない。
今日、買い物行くか。
そんな事を考えながら、ハムエッグを作る。
よし、ハムエッグができた。あとはご飯を持って朝食完成。あとは弁当だな。
いつもより時間に余裕があるため、じっくり考えることができる。
さてと、おむすびにしようかな。そんな事を考える。
いつもより余裕がある朝食。こんな日もいいな。
なんて事を考える朝だった。
青い空と、鳥達の鳴き声、車の音に囲まれたアスファルトの通学路を歩く。
学生服をきた違う高校生も登校中で、葉桜が咲き誇る河川敷を歩く。
いつもよりはやく目が覚めたおかげで、いつもより5分はやく家をでた。
杉さんは、あの手紙を回収したのだろうか?そんな事を考えながら、コツコツとローファーを鳴らしながら歩く。
俺なんかの手紙で本当に元気になるのかな?どうなんだろ。今度、足立咲さんに聞いてみよう。そしたら、咲さんはどんな反応をするのだろうか。
まさしく、口元がにやけきった顔をしたであろう、俺の顔を見て近くの人からヒソヒソ話が聞こえてきた。
こりゃいかんなと思い、両頬を力いっぱい叩いた。
『バチン』と鈍い音が響いて、じわじわと痛みが脳内を侵食する。
これで現実世界に戻ってこれた。さぁ学校だ。
スタスタと歩き始めた。
学校につくなり、俺の机の前に、足立咲さんがいた。
「あ、待ってたよ。仲間君」
そう言って、ニコニコと笑顔を向けてきた。
「う、うん」
俺は、苦笑いを向けて極力普段と同じ振りをした。
「何か用かな?」
「うん。実はね。」
「ゴクリ」と生唾を飲み込んだ。
自分の書いた手紙に何か不備があったのか?そんな妄想を抱いていた。
「お姉ちゃん喜んでたよ」
「えっ」
その言葉を聞いて、思わず驚いた変な声を出した。
「だって、朝起きてからずっと鼻歌とか歌って御機嫌だったんだよ」
「そうなんだ」
その言葉を聞いて、ほっと胸をなでおろした。
な、なんだろう。この、得も言えぬ満足感は。やけに久々な感じがする。
高揚感が胸の中を支配する。
俺は、自分でこの気持ちをどうにかしようと落ち着かせるが、どうやら制御できなかったらしい。
「仲間君。ふふっ。顔が面白いよ」
見事、表情に出てたらしい。
それからというもの週1のペースで、手紙を書いている。
この1週間なにがあったのか。今の自分の気持ちやら、いろいろと書いている。
普段は、メールなどで友達とやり取りしているために、こうやって紙に字を書いて送るという行為がとても新鮮で、楽しかった。
手紙を書いて送ると、その翌日に返事はくる。それがまた楽しい。
手紙の中の世界が、普段の自分の世界と違く、俺と足立美咲さんだけの世界で、会話もたくさん弾む。
楽しくて、毎週何を書こうかそれを考えて生活していた。
「最近、楽しそうだな」
「そうか?」
「あぁ」
そう言って、肉うどんをすする国木田を見る。
場所は、校舎から少し離れた学食だ。
生徒たちの喧騒が部屋中をつつなか、本間は、カレーを食べ国木田は、肉うどんをすすっていた。
俺は、自分で作った弁当をもぐもぐと、食べていた。
普段、食事をしている俺達に会話など存在せずに各々、黙々と昼飯を食べるのだが、急に国木田が話しかけて来たので、内心びっくりしながら、国木田の質問に答えた。
「なんか最近、いい事でもあったのか?」
「いんや、別に」
「そうか」
「なんだ、急に話しかけて来て、俺がなんか変だったのか?」
「そうだな」
「どこが」
「さぁな」
「そうか」
また食事に戻る。
いつもなら、いろんな会話に首を突っ込む本間は、カレーに夢中だった。
あの手紙は、俺だけの秘密だ。
なんでかって?疑問に思う人もいるだろう。
あそこは、俺と足立美咲さんだけの世界。
誰にも邪魔されたくない。2人だけの世界。
だから、いくら気心しれた友人でも、この事を邪魔されたくない。
これは、俺の独りよがりで残念な考えて方だと思うけど、これだけは絶対に教えたくない。
国木田は、感の鋭い奴だ。
最近の俺の様子を見て変だと思ったのだろう。
なんて、俺の考え過ぎか。
「ごっちそうさまぁぁ」
カレーを食い終えた国木田は、雄叫びとも呼べる大きな声で、ごちそうさまを言い、それに続いて、国木田も小さく、「ごちそうさま」と言った。俺もちょうど弁当を食べ終えて、弁当をつつみにつつんだ。
「昼休み何して遊ぶ?」
テンションの高い本間が、国木田に聞く。
「寝る。」
そう答えた国木田。
相変わらず、犬と猫見たいな関係だなと思った昼休みだった。
学校が終わり、スーパーによって、買い物をした。
買い物カゴを持って、野菜コーナーを物色していた。
今日は、野菜炒めにしようか?それとも、野菜たっぷりカレーにしようか?
頭の中にたくさんのレシピが思い浮かぶ。
「ねーねーおにーさん」
後ろから女の子の声がした。
後ろにいたのは、この前助けた女の子だった。
紺色のセーラー服を着ていて、胸の真ん中には、大きな赤いリボンがついていた。
「君は、この前の」
「あの時は、ありがとうございました」
ペコリと頭を下げて、お礼を言う。
「い、いや別にあれは、普通のことだから」
普段、お礼を言われる事になれてない俺は、どう反応していいかわからずあたふたしていると、「ふふっ」と笑い声がした。
「面白い人ですね」
そう言って微笑む姿は可憐だった。
それから、セーラー服の女の子と少し会話をした。
「ところでさ、君はなんて名前なの?」
「私の名前ですか?私は、市ノ瀬ますずといいます。」
「そうなんだ」
「あなたは?」
「俺は、仲間悠って言うんだ」
「仲間さんですか。よろしくです」
市ノ瀬さんはニコッと明るい笑顔で俺の顔を見た。
「うん、よろしく」
俺は笑顔で返した。
「仲間さんは、今日の夕飯は何にするんですか?」
「あ、ああ俺はひとり暮らしだから、献立考えてて」
「そうなんですか!」
「市ノ瀬さんは?」
「私は、お母さんのお手伝いで、玉ねぎと人参とか買いに来ました」
「とすると、今晩はカレー?」
「惜しいですね、肉じゃがです」
市ノ瀬さんはクスっと笑いながらそう言った。
「偉いですね。仲間さんは。」
「なんで?」
「私と年齢変わらないのに、ひとり暮らしだなんて。すごいです!」
尊敬の眼差しで見られてる気がするのは、気のせいだろうか?あつい視線を市ノ瀬さんから感じた。
「そんなことないよ。ひとり暮らししたいのはこっちのわがままでさ、全然すごくないよ」
俺は、苦笑いを浮かべながら返答した。
「いえ、ひとり暮らししてるだけでもすごいです!!」
市ノ瀬さんは、まゆをキリッとさせてそう言った。
「そうかな?」
「そうですよ」
どうやら市ノ瀬さんは、ものすごくひとり暮らしに憧れてるみたいだ。
それから、市ノ瀬さんと話した。
学校の事などたくさん。そして、後ろのおばさんから冷たい視線をかんじて、ようやく話を中断させて、晩御飯の話題になった。
俺の今日のメニューは何にするのかとか、自分達の得意料理とか、いろいろ話した。
そして、俺の今日の晩御飯は、カレーになった。
なぜかと言うと、市ノ瀬さんと話していたら、急にカレーが食べたくなったのだ。
理由は不明だが、人には、何かをむしょうにやりたくなる時がくる。
それが今回たまたまカレーになっただけだ。
一緒にレジを済ませ、スーパーの扉の前で、メアド交換してから解散になった。
今回の事を足立美咲さんとの手紙に書こう。
そう思った。
~とある街の病院~
「ふふっ。そんな事があったのね」
「あっ、お姉ちゃんまた、仲間君の手紙読んでる!」
「いいじゃないの。だっていつ読んでも面白いもの」
「別にいいけどさ、身体の事とか気おつけるんだよ」
「わかってるわよ。咲」
「うん、ならいいけどさ」
「それに」
「ん?」
「これは、私と仲間君との、唯一のつながりだもの」
「そうだね」
「そんな悲しい目をしないのよ。咲」
「うん、」
「あなたはまだ力があるでしょ?」
「あるけどさ」
「じゃあ、その力を大切に使いなさい。それが私とした約束事でしょ」
「うん、でも、もしも…」
「咲。この世の中にね、もしもはないのよ」
「…」
「あるのは、必然だけ。これは、お母さんも言ってたことでしょ」
「うん、でも、お姉ちゃんの力がもしも戻るのなら…」
「咲。私は巫女ではないのよ。そんな事できないわ」
「そうだね」
「えぇ」
「そろそろ時間だね。私、帰るね」
「うん、また明日ね」
「バイバイ、お姉ちゃん」
大事な人に送る手紙はより一層丁寧に書く。
それは、俺の中で特に大事にしていることだ。
今回の手紙も例外ではない。
丁寧に1字1句間違えないように、丁寧に便箋に書く。
面識もないのになんでこんなに律儀に手紙を書くのか?そう問われても、すぐには答えられない。ただ言えるのは、昔からそうやって手紙を書いてきたので、そうする方法しかないと言うのが正しいかもしれない。
こじんまりとしたちゃぶ台の上で、ボールペンをもち、とめ、はね、はらいを気をつけて書く。
足立美沙さんと、文通するようになってあれから二カ月あたり、こうやって自分の生活を振り返るとなかなか楽しい学校生活を送ってるんじゃと思うようになった。
毎日、楽しい友達と一緒にダラダラして笑う。
こう考えると、なかなかすごい。
なぜ、足立美沙さんと文通しているのか?それは、二カ月前に話を戻さないといけない。
あの、昼休みでの出来事だ。
足立咲さんに呼び出されて、俺は屋上に向かう。そして、メロンパンをもぐもぐと食べてた足立咲さんにこう言われた。
「手紙をさ書いてあげたらどうかな?」
普通の人ならこの出来事になんの問題があるのか?なんて思うかもしれない。でも、人見知りな性格が仇となり、なかなかそれができないのが俺だ。
そんなことを言われてもなどと口ごもってなかなか答えることができなかった。
そして、去っていった足立咲さんの後ろ姿を見ていた。
屋上の網にもたれかかり、天を仰いだ。
その日の空はひどく青かった。
足立咲さんに言われたその日の晩、俺はちゃぶ台の上で悩んでいた。
黒のボールペンと便箋の前で腕を組んでない頭で考えていた。
ここまで考える必要あるのか?と言われても仕方ない。
何せ手紙など書く機会もない。
どうやって切り出せばいいのか?前のように書くのも不自然だ。
こうやって悩んでいると、だんだんマイナス思考のスパイラルにはまりそうだ。
こうして、小1時間悩んだ結果、本の感想から入ろうという、なんとも最初に考えつきそうなものにした。
まぁこれで最初の1文が書けた。
そこから、スラスラと書けた。しかし、最後の最後でまたもや大きな壁にぶつかった。
まさか、締めの言葉があったとは、なんという盲点。
うなだれている余裕なんてあるはずがなく、またうんうんと悩む。
これだ!!そう思った言葉を締めの言葉にする。
『 拝啓、足立美沙さん。元気にしてますか?俺の方は元気です。
さて、最近読んだ本で、気になった本があるのですが、俺は昔この本を読んだような記憶があります。
題名は、『時空旅行』と言う本です。
ご存知でしょうか?なぜかこの本を懐かしいなんて思ってしまいました。
この本と足立美沙さんは何か関係があったりなんかしてと思い手紙を書きました。
それでは、お身体に気をつけて。
敬具 仲間悠。』
丁寧に手紙を折って便箋に入れる。
この手紙が届いたら、また、俺の知らない記憶が明らかになる。
そんな事を考えながら、杉さんに電話する。
「プルルルル」ワンコールで杉さんは電話に出た。
「もしもし、仲間様ですか?」
「は、はい」
「ご用件は?」
「あ、あの、手紙書いたんで、取りに来てくれませんか?」
「承知しました。では、明日取りに行きます」
「よろしくお願いします」
そう言って電話をきる。
もう、夜も8時もすぎた。そろそろ晩ご飯にしよう。
その日は、なぜかぐっすりと眠れた。これが俗に言ういい睡眠というやつなのだろうか?
アラームがなる前に目が覚めてしまった。
毎朝訪れる体のだるさもない。
今日はいい1日になるな。そんな事を考えながら、朝の支度をする。
朝ごはんは何にしようか。冷蔵庫をゴソゴソとあさる。
さてと、ハムと卵がある。ハムエッグ決定だな。
あとは、何かあるだろうか?うん、案の定何もない。
今日、買い物行くか。
そんな事を考えながら、ハムエッグを作る。
よし、ハムエッグができた。あとはご飯を持って朝食完成。あとは弁当だな。
いつもより時間に余裕があるため、じっくり考えることができる。
さてと、おむすびにしようかな。そんな事を考える。
いつもより余裕がある朝食。こんな日もいいな。
なんて事を考える朝だった。
青い空と、鳥達の鳴き声、車の音に囲まれたアスファルトの通学路を歩く。
学生服をきた違う高校生も登校中で、葉桜が咲き誇る河川敷を歩く。
いつもよりはやく目が覚めたおかげで、いつもより5分はやく家をでた。
杉さんは、あの手紙を回収したのだろうか?そんな事を考えながら、コツコツとローファーを鳴らしながら歩く。
俺なんかの手紙で本当に元気になるのかな?どうなんだろ。今度、足立咲さんに聞いてみよう。そしたら、咲さんはどんな反応をするのだろうか。
まさしく、口元がにやけきった顔をしたであろう、俺の顔を見て近くの人からヒソヒソ話が聞こえてきた。
こりゃいかんなと思い、両頬を力いっぱい叩いた。
『バチン』と鈍い音が響いて、じわじわと痛みが脳内を侵食する。
これで現実世界に戻ってこれた。さぁ学校だ。
スタスタと歩き始めた。
学校につくなり、俺の机の前に、足立咲さんがいた。
「あ、待ってたよ。仲間君」
そう言って、ニコニコと笑顔を向けてきた。
「う、うん」
俺は、苦笑いを向けて極力普段と同じ振りをした。
「何か用かな?」
「うん。実はね。」
「ゴクリ」と生唾を飲み込んだ。
自分の書いた手紙に何か不備があったのか?そんな妄想を抱いていた。
「お姉ちゃん喜んでたよ」
「えっ」
その言葉を聞いて、思わず驚いた変な声を出した。
「だって、朝起きてからずっと鼻歌とか歌って御機嫌だったんだよ」
「そうなんだ」
その言葉を聞いて、ほっと胸をなでおろした。
な、なんだろう。この、得も言えぬ満足感は。やけに久々な感じがする。
高揚感が胸の中を支配する。
俺は、自分でこの気持ちをどうにかしようと落ち着かせるが、どうやら制御できなかったらしい。
「仲間君。ふふっ。顔が面白いよ」
見事、表情に出てたらしい。
それからというもの週1のペースで、手紙を書いている。
この1週間なにがあったのか。今の自分の気持ちやら、いろいろと書いている。
普段は、メールなどで友達とやり取りしているために、こうやって紙に字を書いて送るという行為がとても新鮮で、楽しかった。
手紙を書いて送ると、その翌日に返事はくる。それがまた楽しい。
手紙の中の世界が、普段の自分の世界と違く、俺と足立美咲さんだけの世界で、会話もたくさん弾む。
楽しくて、毎週何を書こうかそれを考えて生活していた。
「最近、楽しそうだな」
「そうか?」
「あぁ」
そう言って、肉うどんをすする国木田を見る。
場所は、校舎から少し離れた学食だ。
生徒たちの喧騒が部屋中をつつなか、本間は、カレーを食べ国木田は、肉うどんをすすっていた。
俺は、自分で作った弁当をもぐもぐと、食べていた。
普段、食事をしている俺達に会話など存在せずに各々、黙々と昼飯を食べるのだが、急に国木田が話しかけて来たので、内心びっくりしながら、国木田の質問に答えた。
「なんか最近、いい事でもあったのか?」
「いんや、別に」
「そうか」
「なんだ、急に話しかけて来て、俺がなんか変だったのか?」
「そうだな」
「どこが」
「さぁな」
「そうか」
また食事に戻る。
いつもなら、いろんな会話に首を突っ込む本間は、カレーに夢中だった。
あの手紙は、俺だけの秘密だ。
なんでかって?疑問に思う人もいるだろう。
あそこは、俺と足立美咲さんだけの世界。
誰にも邪魔されたくない。2人だけの世界。
だから、いくら気心しれた友人でも、この事を邪魔されたくない。
これは、俺の独りよがりで残念な考えて方だと思うけど、これだけは絶対に教えたくない。
国木田は、感の鋭い奴だ。
最近の俺の様子を見て変だと思ったのだろう。
なんて、俺の考え過ぎか。
「ごっちそうさまぁぁ」
カレーを食い終えた国木田は、雄叫びとも呼べる大きな声で、ごちそうさまを言い、それに続いて、国木田も小さく、「ごちそうさま」と言った。俺もちょうど弁当を食べ終えて、弁当をつつみにつつんだ。
「昼休み何して遊ぶ?」
テンションの高い本間が、国木田に聞く。
「寝る。」
そう答えた国木田。
相変わらず、犬と猫見たいな関係だなと思った昼休みだった。
学校が終わり、スーパーによって、買い物をした。
買い物カゴを持って、野菜コーナーを物色していた。
今日は、野菜炒めにしようか?それとも、野菜たっぷりカレーにしようか?
頭の中にたくさんのレシピが思い浮かぶ。
「ねーねーおにーさん」
後ろから女の子の声がした。
後ろにいたのは、この前助けた女の子だった。
紺色のセーラー服を着ていて、胸の真ん中には、大きな赤いリボンがついていた。
「君は、この前の」
「あの時は、ありがとうございました」
ペコリと頭を下げて、お礼を言う。
「い、いや別にあれは、普通のことだから」
普段、お礼を言われる事になれてない俺は、どう反応していいかわからずあたふたしていると、「ふふっ」と笑い声がした。
「面白い人ですね」
そう言って微笑む姿は可憐だった。
それから、セーラー服の女の子と少し会話をした。
「ところでさ、君はなんて名前なの?」
「私の名前ですか?私は、市ノ瀬ますずといいます。」
「そうなんだ」
「あなたは?」
「俺は、仲間悠って言うんだ」
「仲間さんですか。よろしくです」
市ノ瀬さんはニコッと明るい笑顔で俺の顔を見た。
「うん、よろしく」
俺は笑顔で返した。
「仲間さんは、今日の夕飯は何にするんですか?」
「あ、ああ俺はひとり暮らしだから、献立考えてて」
「そうなんですか!」
「市ノ瀬さんは?」
「私は、お母さんのお手伝いで、玉ねぎと人参とか買いに来ました」
「とすると、今晩はカレー?」
「惜しいですね、肉じゃがです」
市ノ瀬さんはクスっと笑いながらそう言った。
「偉いですね。仲間さんは。」
「なんで?」
「私と年齢変わらないのに、ひとり暮らしだなんて。すごいです!」
尊敬の眼差しで見られてる気がするのは、気のせいだろうか?あつい視線を市ノ瀬さんから感じた。
「そんなことないよ。ひとり暮らししたいのはこっちのわがままでさ、全然すごくないよ」
俺は、苦笑いを浮かべながら返答した。
「いえ、ひとり暮らししてるだけでもすごいです!!」
市ノ瀬さんは、まゆをキリッとさせてそう言った。
「そうかな?」
「そうですよ」
どうやら市ノ瀬さんは、ものすごくひとり暮らしに憧れてるみたいだ。
それから、市ノ瀬さんと話した。
学校の事などたくさん。そして、後ろのおばさんから冷たい視線をかんじて、ようやく話を中断させて、晩御飯の話題になった。
俺の今日のメニューは何にするのかとか、自分達の得意料理とか、いろいろ話した。
そして、俺の今日の晩御飯は、カレーになった。
なぜかと言うと、市ノ瀬さんと話していたら、急にカレーが食べたくなったのだ。
理由は不明だが、人には、何かをむしょうにやりたくなる時がくる。
それが今回たまたまカレーになっただけだ。
一緒にレジを済ませ、スーパーの扉の前で、メアド交換してから解散になった。
今回の事を足立美咲さんとの手紙に書こう。
そう思った。
~とある街の病院~
「ふふっ。そんな事があったのね」
「あっ、お姉ちゃんまた、仲間君の手紙読んでる!」
「いいじゃないの。だっていつ読んでも面白いもの」
「別にいいけどさ、身体の事とか気おつけるんだよ」
「わかってるわよ。咲」
「うん、ならいいけどさ」
「それに」
「ん?」
「これは、私と仲間君との、唯一のつながりだもの」
「そうだね」
「そんな悲しい目をしないのよ。咲」
「うん、」
「あなたはまだ力があるでしょ?」
「あるけどさ」
「じゃあ、その力を大切に使いなさい。それが私とした約束事でしょ」
「うん、でも、もしも…」
「咲。この世の中にね、もしもはないのよ」
「…」
「あるのは、必然だけ。これは、お母さんも言ってたことでしょ」
「うん、でも、お姉ちゃんの力がもしも戻るのなら…」
「咲。私は巫女ではないのよ。そんな事できないわ」
「そうだね」
「えぇ」
「そろそろ時間だね。私、帰るね」
「うん、また明日ね」
「バイバイ、お姉ちゃん」
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