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目覚め

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 暗闇に沈む意識、重い鉛を頭に詰め込んだような感覚。自分が寝ていることはわかる。だた自分ではどうしようもないくらい体が重い。そして、何も考えられない。どこか心地が良いような、酷く不快なような、相反する感覚が頭の中で喧嘩する。

「起きよ……」

耳からではなく、頭に直接届くような声が聞こえる。

「早く起きよ!寝ている場合ではない!!」

何やら必死に響く声が聞こえる。だが、意識は沈んでいく。何より頭が反応することを拒否する。

!?

鈍い痛みが襲い、意識が重いままの状態で、強制的に覚醒した。

酷く不快な目覚めであった。頭は重く、酷い吐き気、そして腹部の鈍痛。
モヤのかかった視界が回復し、最初に飛び込んてきたものは幼女であった。

!?

ぱっと見た印象は幼稚園~小学校低学年くらい。幼い面影が強いが、どこか人を小馬鹿にしたような、達観したような目はその面影とは矛盾していた。ただ、その幼女に見覚えがないことは確かだった。

「だれ!?」

かすれた声でようやく発声する。重い頭を働かせ、知らない幼女が目の前にいる状況で、ようやく振り絞って出た言葉であった。
次の瞬間、幼女の頭が眼前に迫ってきた。

ゴっ!?

鈍い音が響くとともに、痛みで体が飛び起きる。

「よし、動けるな。」

幼女は何事もなかったかのような表情だが、やや早口で話を続ける。

「悪いが状況を説明している時間はない。すぐにここを脱出する。これを。」

幼女はカギを手渡す。

頭と体は覚醒したが、依然コンディションは最悪。考えることも面倒で、言われるがまま差し出されたカギを手にする。

バキッ!!

部屋の壁に巨大な何かがぶつかったような衝撃。
やがて、その衝撃は連続する。

「早いな。もう来たか。」

幼女はまるでこの衝撃の発生源がわかっているような口ぶり。
自分は変化する状況に頭がついていかない。

「このプライベートルームの非常用アクセスポイントから飛ぶぞ。」

幼女は押入れを一切の迷いなく開け、そこに自分を蹴り入れる。

「さっさとアクセスキーをさせ。非常用プライベートルームに移動する。」

外部からの衝撃で壁が破壊され、自分は急いで目の前のアクセスキーを鍵穴にさす。
その瞬間、シュッと頭から意識が抜き出されるような感覚とともに、目前の景色がブラックアウトした。

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