3 / 3
パンドラの箱
しおりを挟む
頭の中身がトルコアイスの如く、縦に勢いよく伸ばされたかのような心地の悪い感覚が襲う。意識はハッキリしている分、気分は最低だ。意識の転移がされたことには違いないが、通常Core内での意識転移でこのようなひどい感覚に陥ることはない。おそらくCore外のサーバーへの転移、それも転移時間の長さから複数の踏み台サーバーを経由していることが予想される。
やがて伸びきった意識がゴムのようにもとに戻り、自分という意識が顕在化される。
目の前には床、締まりの無い表情、かつ、じっとりとした目で辺りを見回す。
6畳間ほどのワンルームで、窓もなく、生活感の無い部屋。身を隠すためのアジトといった印象だ。
ようやく身を起こし、頭に散乱した情報から状況を整理しようと、頭の中のcpuがようやく稼働を始める。
謎の暴漢の突撃、知らないロリ少女、意識の転移、知らない部屋……
自分と少女の間に微妙な無言の間が生まれ、やや気まずさを感じていると、
「ここはしばらくは大丈夫じゃろ。」
ひとりごとか、問いかけるか判断つかない声量で少女が声を発する。
辺りを警戒しつつも、どこか余裕すら感じさせるような少女。何事もなかったかのような調子で問いかける。
「なんじゃぁ?おぬし、命の恩人に対して礼もなしかや?」
「ありがとう………ございます。」
反射的に言葉がでた。
「で。なぜ貴様が追われておるのか、心当たりはあるじゃろ?」
非日常的な状況。もっとパニックになったり、少女に質問攻めをしたりするのが自然なのかもしれない。しかし、少女ははじめから自分に対しての敵意は一切感じられなかったため、不思議と自然に心が非日常を受け入れる。
そして、何より心当たりがあった。
Coreのプライベートルームで偶然見つけた数字の羅列とキー情報。数字の羅列はCore内のプライベートアドレスを示し、その場所でデータの受け渡しがされた。データへのアクセスのためにはキー情報と生体意識認証が必要だった。
Coreのプライベートルームは生前の父が遺し、相続したもの。生体意識認証を設定しているということは確実に息子である自分以外の手に渡らないようにしている。つまり、父はこうも手の込んだやり口を使ってまで、何かを自分に伝えようとしていた。認証を突破したものの、肝心のデータ自体が暗号化されていた。復号するためのキー情報などの指示はなく、完全に暗礁に乗り上げた状況だった。データの暗号化がRSA暗号によるものと仮定して、ヒントなしで復号するにはスーパーコンピュータを使っても確実に寿命の方が早く尽きる。
その矢先にこのような状況。今である。
少女に敵意はないとはいっても、父がそこまでして隠したデータの中身が分からない以上、どこまで自身の現状を伝えようか思案する。
「開けたのだろう?パンドラの箱を。だが、箱の中身が何かまではわかっておらぬか。」
少女が口にした言葉に、思わず表情が歪む。
やがて伸びきった意識がゴムのようにもとに戻り、自分という意識が顕在化される。
目の前には床、締まりの無い表情、かつ、じっとりとした目で辺りを見回す。
6畳間ほどのワンルームで、窓もなく、生活感の無い部屋。身を隠すためのアジトといった印象だ。
ようやく身を起こし、頭に散乱した情報から状況を整理しようと、頭の中のcpuがようやく稼働を始める。
謎の暴漢の突撃、知らないロリ少女、意識の転移、知らない部屋……
自分と少女の間に微妙な無言の間が生まれ、やや気まずさを感じていると、
「ここはしばらくは大丈夫じゃろ。」
ひとりごとか、問いかけるか判断つかない声量で少女が声を発する。
辺りを警戒しつつも、どこか余裕すら感じさせるような少女。何事もなかったかのような調子で問いかける。
「なんじゃぁ?おぬし、命の恩人に対して礼もなしかや?」
「ありがとう………ございます。」
反射的に言葉がでた。
「で。なぜ貴様が追われておるのか、心当たりはあるじゃろ?」
非日常的な状況。もっとパニックになったり、少女に質問攻めをしたりするのが自然なのかもしれない。しかし、少女ははじめから自分に対しての敵意は一切感じられなかったため、不思議と自然に心が非日常を受け入れる。
そして、何より心当たりがあった。
Coreのプライベートルームで偶然見つけた数字の羅列とキー情報。数字の羅列はCore内のプライベートアドレスを示し、その場所でデータの受け渡しがされた。データへのアクセスのためにはキー情報と生体意識認証が必要だった。
Coreのプライベートルームは生前の父が遺し、相続したもの。生体意識認証を設定しているということは確実に息子である自分以外の手に渡らないようにしている。つまり、父はこうも手の込んだやり口を使ってまで、何かを自分に伝えようとしていた。認証を突破したものの、肝心のデータ自体が暗号化されていた。復号するためのキー情報などの指示はなく、完全に暗礁に乗り上げた状況だった。データの暗号化がRSA暗号によるものと仮定して、ヒントなしで復号するにはスーパーコンピュータを使っても確実に寿命の方が早く尽きる。
その矢先にこのような状況。今である。
少女に敵意はないとはいっても、父がそこまでして隠したデータの中身が分からない以上、どこまで自身の現状を伝えようか思案する。
「開けたのだろう?パンドラの箱を。だが、箱の中身が何かまではわかっておらぬか。」
少女が口にした言葉に、思わず表情が歪む。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる