媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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契 ※

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 恐ろしい、やめてくれ、と思ったのは初めの一瞬だった。

 アウルの唇がジャスの唇に触れた瞬間、頭が働かなくなった。

 ジャスは、ああ、これが酩酊か……と回らない頭でぼんやりと考えた。


 アウルは抵抗の無くなったのをいい事に、少し後頭部を抑える手を緩めた。そして唇の角度を変えて何度も口付けを繰り返す。

「やめ、やめてくれ…」

 唇が離れる少ない瞬間に、何度も弱々しい声でジャスは訴えた。

「ほん、と、に…!あ、んぁ、ほんとうに…やめ、んん…」

 ジャスの声を無視してアウルは続けた。何度めかのやめてくれと口を開いた瞬間を見計らい、ジャスの口の中に舌を侵入させた。

「ばっ!な、に!はぁ、む」

 思わず酩酊状態から理性で我に返ったジャスは強い力でアウルの顔を離そうとしたが、アウルの力の方が強かった。

 抵抗むなしく、アウルはジャスの口内を舌で撫で回す。

 ――噛み付いてやればいいんだ

 ジャスは思ったが、深いキスをされればされるほど、力が入らなくなり、思考能力も低下していく。

 ――あれ?僕は何で拒否しようとしていたんだっけ?こんなに気持ちいいのに?

 ――何言ってんだ!!こんなやつにこんな好き勝手されて!早く抵抗するんだ!

 相反する気持ちがジャスを支配する。



 アウルはキスしながらジャスの顔を見つめた。

 憎しみの篭ったような険しい目と、明らかに快感を感じている赤く染まった頬は、アウルの加虐心を刺激した。


 アウルは唇を離した。

 ジャスは力が抜けたように布団の上にしゃがみこんだ。下を向いて荒くなった息を整えながら、この場から逃げようと体を背けると、またアウルの魔法で襟首を捕まえられた。

 思わずひっくり返ったジャスを、アウルは無理やり仰向けにして、両手をおさえつけた。

「やめろ。もうやめてくれ」

 ジャスは荒い息のまま、必死でアウルに訴えかける。しかしアウルは冷たい目のままだ。

「これくらいで何を言っている。まだキスを試しただけだ。契はもっと凄いぞ」

「ふざけるな!契なんて結ばない!」

「ふざけたことを言っているのはどちらだ」

 アウルはもう一度口付けをする。今度はすぐに舌をいれる。

 ジャスが酩酊状態になるやいなや、次は首筋、耳などを甘噛していく。媚薬の魔法を込めながら。

「はぁ、や、やだ、あっ」

 媚薬効果が発揮され、抵抗が弱くなっていく。あまり強く魔力を込めるとジャスの精神が壊れるかもしれないので少し加減をする。

「契るか?今ここで」

 アウルはジャスの耳元で囁くように尋ねた。ジャスはアウルの声だけで、ビクンと体を跳ねさせた。もう媚薬効果が相当身体を蝕んでいるはずだ。

「あ……い、いや……」

 酩酊状態の顔で未だに抵抗の様子をみせるジャスに、アウルは小さく舌打ちをした。

「もう一度、聞くぞ。花嫁の契を結ぶか?イエスといえば、今よりもっと気持ちよくしてやる」

「……あ……、きもち、よく、なんて」

 アウルはもう一度媚薬の魔力を込めながら首筋を舐める。ジャスはまた身体を震わせる。

「あぁっ!!」

「どうだ?」

「契、結んで、ほしい」

 ぼやんとした顔で、ジャスはとうとう、そう言った。

 アウルはニヤリと笑った。

「ようやく素直になった」

 正気を失ってしがみついてきたジャスに、アウルは思わず口角を上げた。

「俺が好きか」

「嫌いだ」

 間髪入れずにジャスは答える。

 明らかに意地を張る余裕は無さそうなので、嫌いというのは本音だろう。

 アウルは忌々しげに舌打ちをした。その一方で、好きかと問うてしまった自分にも苛ついてしまった。

 ――アイツが俺のことを好きなはず無いだろうに。何をふざけたことを言ったんだ。

 そもそも好きでも嫌いでもどちらでもいいはずだ。

 つい、つい。しがみついてきたジャスを見て、多少混乱してしまったようだ、とアウルは思った。


 アウルはもう一度だけジャスが正気を取り戻さないように、深くキスをすると、ゆっくりと服を脱がし始めた。

 大して筋肉のついていない、薄い身体が現れた。
 興味の向くままにジャスの胸に手を触れてみた。息は荒いが特に何も反応しない。

 キスしてみたらどうだろうか、とアウルは思いついて、少し乱暴に胸の突起に口をつけてみた。

「あっ……」

 ジャスはプルプルと顔を震わせて身体をはねさせた。

「ふん、こうなるのか。口にキスするよりもいい反応じゃねえか。なあテメェも楽しそうだなぁ」

 アウルはそう呟いてそのまま遊ぶようにジャスの身体中にキスの嵐を降らす。

 そのたびにビクビクするジャスに、アウルは完全に興奮していた。

 ふと、下半身の硬いものに気づく。アウルは躊躇なく下を脱がせ、陰茎を露わにさせた。
 そしてそこにもキスしてみた。ピクリとジャスが跳ねたのを見て、そのまま咥えてみた。

「やだっ」

 ジャスが弱々しい悲鳴を上げたのと同時に、アウルの顔に白濁した液体がかかった。

「ほう、早いな」
 半笑いでアウルはグッタリしているジャスを見つめた。

「この状態なら、契を結ぶのに問題ねえな。ほら、解してやるから穴見せろ」

 そう言って、アウルがジャスをうつ伏せに転がした、その時だった。

 ジャスが何かを言いたそうに口をパクパクさせてきた。

「何だ」

 手を止めてジャスの言葉を促す。

「……っかった……と」

「もっとハッキリ言え」

「少し、だけ、悪かった、と思って、る」

「は?」

「あ……あゆみ、…全然、歩み、よる、気が、無かったのは、少しだけ、ごめん……」

 ジャスはぼんやりとした目のままそう言うと、またアウルにしがみつこうと手を伸ばしてきた。



 だらしなく開けた口、焦点の定まらない目、赤く染まった頬、それと相反する拒絶の言葉と、絞り出すような謝罪の言葉……。

 アウルは急に冷静になって、ジャスの身体から手を離した。

「何で……」

 すがりつくジャスを無理やり引き剥がしたアウルは、立ち上がって冷たく言った。

「テメェの言うとおりにしてやるのも面白く無え」

「なん、で……そんな……」

「今日は寂しく一人でいるんだな」

 そう言い捨てて、アウルは部屋を出た。



 さっきまで必死にすがっていたジャスが、部屋から出てアウルを追いかけてくることはなかった。一人でいろと命令されて素直に従っているのか、それとも理性が戻ってきているのか。

 どちらでもいいが、とアウルは思い、自分も寝る支度をするのだった。眠れそうも無い、と思いながら。


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