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呼笛②
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「これから生き返らせる女は、ドロップという女だ。俺が5年前、殺しかけた女だ」
「殺……!?」
アウルの言葉に、ジャスは言葉を失った。
そしてふと、思い出した。
以前、あの、パイソンという魔法使いが言ってた『アウルは花嫁にしようとした少女を殺しかけた事がある』という発言。あれは本当だったのか。
「どうして、殺しかけたなんて」
「5年前、俺はドロップを花嫁にしようと思った。だがアイツはいい顔をしなかった。だから誘惑の魔法をかけた。」
なかなか最低だ、とジャスは思ったが、今更誘惑魔法の是非をとやかく言う時ではないだろう。
「あいつの父親は寧ろ花嫁に積極的だった。まあ、魔法使いと関係を繋げて利益を得ようとしているのがあからさまだったがな」
アウルはため息をついた。
「んなわけで、ドロップは誘惑魔法がかかっているし、父親は賛成しているし、問題は無かった。
だが、ドロップが俺の所に向った日は、酷い大嵐だった。普通なら引き返すほどの嵐だったが、誘惑魔法がかかっているドロップは、一切引き返すことなくびしょ濡れで俺の所に来た」
誘惑魔法は、それ程に強いものなのか、とジャスは驚愕した。そして、シバの苦労が改めて感じられる。
「ドロップが俺の所に着いたときには、酷い肺炎を患っていた。呼吸もままならず、食べ物はおろか薬も吐き出すから、治療薬も飲ませれねえ。死ぬんじゃねぇかと思った」
アウルはそこまで言うと、静かに目を閉じた。
「それでもなんとか喉こじ開けて薬を飲ませて、回復させた。その時には誘惑魔法は解けていた」
ジャスは、はじめの頃にクロウが誘惑魔法の解呪方法を教えてくれた時の事を思い出していた。
そうだ、『肺炎で死にかけて解呪された子もいる』と言っていたではないか。それがもしかしてドロップという人のことなのではないか。
「もう一度、誘惑魔法をかけたりはしなかったの?」
ジャスは一応聞いてみる。
アウルは険しい顔をした。
「俺が、そこまで非人道的に見えんのか」
「誘惑魔法かけてる時点で人道的もくそもないだろう」
ジャスは思わず言った。
しかし、一応アウルにとっては線引があるのだろう。
「その、ドロップがさっき死んだ。そいつを生き返らせる」
アウルは青い顔をしていた。
ジャスは、真っ青な顔のアウルに近づいた。
「それで、何でそんな、酷い顔してんだよ」
「は?」
「アウルらしくない。そんな青い顔すんならやらなきゃいいじゃないか」
ジャスの言葉に、アウルは思わず立ち上がった。
「何がわかる。テメェに!」
怒った口調のアウルに、ジャスは慌てて言った。
「いやいや、煽ってるわけじゃなくて。本当に心配してんだって。酷い顔だし、何しでかすかわからないとか言うし」
ジャスの言葉に、アウルは少し怒りを抑えて言った。
「俺は生き返らせたくねぇ。奴は病死だった。生き返らせてもまたすぐに死ぬ」
「じゃあ尚更やらなきゃいいじゃないか」
「契約書がある」
アウルは吐き捨てるように言った。
「一応あの日、誘惑魔法の解けたドロップを家に返した日、詫びのつもりで渡した。いつでも、一度だけ、蘇りの魔法を使ってやる、と」
「その契約書のせいで断れないんだ」
ジャスは同情するように言った。
「まさかあの父親に使われるとは。名前を指定しとくんだった」
アウルはイライラと言う。
ジャスは困惑してしまった。
そのドロップという人の父親に何しでかすかわからない、ということだろう。こんなの、自分が一緒に行ったって、どうにもならないじゃないか。
それでも、一通り話すと、アウルはジャスに言った。
「テメェ、着いてこいよ。話したんだからな」
「勝手に話したんじゃないか」
ジャスは呆れたように言った。
しかしなんとなく、アウルは不安なのだろうか、と思った。
傍若無人で何も怖いものがなさそうなアウルでも、酷い顔になることがあるのだ。
「とりあえず行くけど、俺は何も出来ないからな」
ジャスはそれだけ言って、アウルの出発準備を手伝い始めた。
「殺……!?」
アウルの言葉に、ジャスは言葉を失った。
そしてふと、思い出した。
以前、あの、パイソンという魔法使いが言ってた『アウルは花嫁にしようとした少女を殺しかけた事がある』という発言。あれは本当だったのか。
「どうして、殺しかけたなんて」
「5年前、俺はドロップを花嫁にしようと思った。だがアイツはいい顔をしなかった。だから誘惑の魔法をかけた。」
なかなか最低だ、とジャスは思ったが、今更誘惑魔法の是非をとやかく言う時ではないだろう。
「あいつの父親は寧ろ花嫁に積極的だった。まあ、魔法使いと関係を繋げて利益を得ようとしているのがあからさまだったがな」
アウルはため息をついた。
「んなわけで、ドロップは誘惑魔法がかかっているし、父親は賛成しているし、問題は無かった。
だが、ドロップが俺の所に向った日は、酷い大嵐だった。普通なら引き返すほどの嵐だったが、誘惑魔法がかかっているドロップは、一切引き返すことなくびしょ濡れで俺の所に来た」
誘惑魔法は、それ程に強いものなのか、とジャスは驚愕した。そして、シバの苦労が改めて感じられる。
「ドロップが俺の所に着いたときには、酷い肺炎を患っていた。呼吸もままならず、食べ物はおろか薬も吐き出すから、治療薬も飲ませれねえ。死ぬんじゃねぇかと思った」
アウルはそこまで言うと、静かに目を閉じた。
「それでもなんとか喉こじ開けて薬を飲ませて、回復させた。その時には誘惑魔法は解けていた」
ジャスは、はじめの頃にクロウが誘惑魔法の解呪方法を教えてくれた時の事を思い出していた。
そうだ、『肺炎で死にかけて解呪された子もいる』と言っていたではないか。それがもしかしてドロップという人のことなのではないか。
「もう一度、誘惑魔法をかけたりはしなかったの?」
ジャスは一応聞いてみる。
アウルは険しい顔をした。
「俺が、そこまで非人道的に見えんのか」
「誘惑魔法かけてる時点で人道的もくそもないだろう」
ジャスは思わず言った。
しかし、一応アウルにとっては線引があるのだろう。
「その、ドロップがさっき死んだ。そいつを生き返らせる」
アウルは青い顔をしていた。
ジャスは、真っ青な顔のアウルに近づいた。
「それで、何でそんな、酷い顔してんだよ」
「は?」
「アウルらしくない。そんな青い顔すんならやらなきゃいいじゃないか」
ジャスの言葉に、アウルは思わず立ち上がった。
「何がわかる。テメェに!」
怒った口調のアウルに、ジャスは慌てて言った。
「いやいや、煽ってるわけじゃなくて。本当に心配してんだって。酷い顔だし、何しでかすかわからないとか言うし」
ジャスの言葉に、アウルは少し怒りを抑えて言った。
「俺は生き返らせたくねぇ。奴は病死だった。生き返らせてもまたすぐに死ぬ」
「じゃあ尚更やらなきゃいいじゃないか」
「契約書がある」
アウルは吐き捨てるように言った。
「一応あの日、誘惑魔法の解けたドロップを家に返した日、詫びのつもりで渡した。いつでも、一度だけ、蘇りの魔法を使ってやる、と」
「その契約書のせいで断れないんだ」
ジャスは同情するように言った。
「まさかあの父親に使われるとは。名前を指定しとくんだった」
アウルはイライラと言う。
ジャスは困惑してしまった。
そのドロップという人の父親に何しでかすかわからない、ということだろう。こんなの、自分が一緒に行ったって、どうにもならないじゃないか。
それでも、一通り話すと、アウルはジャスに言った。
「テメェ、着いてこいよ。話したんだからな」
「勝手に話したんじゃないか」
ジャスは呆れたように言った。
しかしなんとなく、アウルは不安なのだろうか、と思った。
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「とりあえず行くけど、俺は何も出来ないからな」
ジャスはそれだけ言って、アウルの出発準備を手伝い始めた。
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