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呪い
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ちゃんとアウルはパン粥を食べた。不味すぎる、と半分しか食べなかったが。
その後、まだグチグチ言うアウルに、むりやり薬を飲ませると、熱冷ましが効いて楽になったようで、すぐに寝てしまった。
「さっきの嘘だからな。病気の奴の言う甘えなんて、めんどくさいなんて思わないから」
そう呟くと、ジャスは食器を片付けに部屋から出た。
次の日の朝、アウルの熱は薬が切れてまた上がってきた。
「症状的には普通の風邪なんだけどなぁ。なんでこんな長引くんだろう。面倒な菌とかにやられてんのかな……」
ブツブツ言いながら、ジャスはまたパン粥を作っていた。最後に薬草を入れる段階で、グッと腕を掴まれた。
「おい待て。その臭え草入れんじゃねえ」
アウルがジャスの持っていた薬草を取り上げた。
「ああ、結構効くのにそれ」
残念そうに言うジャスを無視して、アウルは戸棚を漁って小さな瓶を取り出した。そしてパン粥に全部投入した。
「な、何入れたの?」
気持ち悪い色になった粥をこわごわ覗き込みながらジャスはたずねる。
「解呪薬だ」
それだけ答えると、アウルは熱々のパン粥を一気に口に入れた。
「あっつっ!!」
「馬鹿じゃねぇの?そりゃそうでしょ!」
ジャスは慌てて水を持ってくる。
「どうしたの?急に?」
「よく寝たから頭回るようになった。んで、ちゃんと冷静に考えてみたら、俺が風邪引く訳ねぇな、と思ってな」
「はぁ。そうなの?」
「ああ、さすがに流行り病が横行していた街に行ったときには風邪引いたが、そうでなければ俺は風邪なんか引いたことねぇ」
なんだこの馬鹿みたいな理論。ジャスはポカンとしたが、そのままアウルの話を聞くことにした。
「だから、これは風邪じゃねえ。誰かが呪いでもかけたんだろうと思ってな」
「の、呪い?」
「ああ、結構かけられるぞ」
殺伐とした回答に、ジャスはあんぐりと口を開けた。
「いつも呪いかけられるから解呪薬は戸棚に常備しておいてんだよ」
「へ、へえ」
「ああ、でも今は家に結界が張っておいてるからな。この家の中は安心だ。心配しなくていいぞ」
「ああ、そう」
そういうことじゃないんだけど、とジャスは思った。
解呪薬……。戸棚に常備している?どれだった?さっきの解呪薬って……?
って、いうか、その解呪薬は誘惑の魔法にも効くのだろうか。
ジャスは緊張しながら戸棚をそっと目で探った。
「おい、テメェ何見てんだ?」
アウルの声にはっと我に返ったジャスは、慌てて戸棚から目線をそらして言った。
「で、呪いだったの?今回の風邪」
「ああ」
ほら、とアウルはジャスの手を取り、おでこを触らせた。確かに、さっきまであった熱はまるっきり下がったようだ。
「本当だ。……なんだ、じゃあ薬草粥も解熱剤も意味なかったんだな」
自虐的に笑うジャスに、アウルは首を振った。
「何いってんだよ。ちゃんと寝れたから頭が働くようになった。臭え粥と薬のおかげだ」
じっとアウルはジャスを見つめた。
「テメェの、おかげだ」
「そりゃ、よかった、です」
じっと見られながらそんなことを言われるので、ジャスは思わず顔を背けた。
「普段ならこんなにも呪い屁でもねえんだがな。タイミングよく俺が魔法使えねぇ時に呪いかけやがったんだろう」
アウルは独りでブツブツ言うと、グッと背伸びをした。
「あー、よくわからないけど、よかった。じゃ、僕水汲んでくるから」
そう言って、ジャスが家の外に出ようとしたとき、グッと襟首を掴まれて引き戻された。いつもの魔法ではなく、直接手で引っ張られた。
「何だよっ」
「俺が行く」
そう言ってジャスはアウルの手から桶をひったくった。アウルは慌てた。
「んな、病み上がりの奴は大人しくしてろよ。つーかアウル魔法無しで水汲みなんかしたことないだろ」
「ああ、無えな」
「ほらな。僕が行ったほうが絶対に早いんだから」
ジャスはそう言って桶を奪い返した。
アウルは不満そうな顔をするのでジャスはハァ、とため息をついて言った。
「家の中は結界が張ってあるんでしょ?家の外に出て、また呪いかけられたらどうすんのさ」
「また解呪薬のめばいい」
「そーいうことじゃないって」
ジャスは呆れたように言う。
しかしふと気付いた。
ちょっとアウルにこの場を離れてもらった方が少し好都合なのではないか?ゆっくり戸棚を探せるのではないか。
「……やっぱり任せようかな」
ジャスはそう呟いて、アウルに桶を渡した。
「初めから大人しくやらせればいいものを」
偉そうにアウルは言うと、いそいそと外に出ていった。
「何だあいつは。ずっと寝てたから体力が余ってんのか?」
ジャスは呆れたように呟いた。
「……よし」
ジャスは、アウルが行ってしまったのを確認すると、急いで戸棚の方へ向った。
戸棚には大小様々でいろんな色の瓶が並んでいた。
ジャスは先程アウルが入れた瓶のそこに僅かに残った液体を見ながら同じ様な薬を探す。
「駄目だ。全然わからない」
だいたい、同じような色だからといって同じ薬だとは限らないし、誘惑の魔法にもその解呪薬が効くとは分からない。勝手に用法を推測して薬を用いるなんて薬売りの子としてすることはできない。
もう少し情報を集めてからだ、と思いながら、ジャスは、僅かに残っているさっきの解呪薬の瓶を、こっそり自分の部屋に持っていった。少しでも手がかりになれば、と思って。
その後、まだグチグチ言うアウルに、むりやり薬を飲ませると、熱冷ましが効いて楽になったようで、すぐに寝てしまった。
「さっきの嘘だからな。病気の奴の言う甘えなんて、めんどくさいなんて思わないから」
そう呟くと、ジャスは食器を片付けに部屋から出た。
次の日の朝、アウルの熱は薬が切れてまた上がってきた。
「症状的には普通の風邪なんだけどなぁ。なんでこんな長引くんだろう。面倒な菌とかにやられてんのかな……」
ブツブツ言いながら、ジャスはまたパン粥を作っていた。最後に薬草を入れる段階で、グッと腕を掴まれた。
「おい待て。その臭え草入れんじゃねえ」
アウルがジャスの持っていた薬草を取り上げた。
「ああ、結構効くのにそれ」
残念そうに言うジャスを無視して、アウルは戸棚を漁って小さな瓶を取り出した。そしてパン粥に全部投入した。
「な、何入れたの?」
気持ち悪い色になった粥をこわごわ覗き込みながらジャスはたずねる。
「解呪薬だ」
それだけ答えると、アウルは熱々のパン粥を一気に口に入れた。
「あっつっ!!」
「馬鹿じゃねぇの?そりゃそうでしょ!」
ジャスは慌てて水を持ってくる。
「どうしたの?急に?」
「よく寝たから頭回るようになった。んで、ちゃんと冷静に考えてみたら、俺が風邪引く訳ねぇな、と思ってな」
「はぁ。そうなの?」
「ああ、さすがに流行り病が横行していた街に行ったときには風邪引いたが、そうでなければ俺は風邪なんか引いたことねぇ」
なんだこの馬鹿みたいな理論。ジャスはポカンとしたが、そのままアウルの話を聞くことにした。
「だから、これは風邪じゃねえ。誰かが呪いでもかけたんだろうと思ってな」
「の、呪い?」
「ああ、結構かけられるぞ」
殺伐とした回答に、ジャスはあんぐりと口を開けた。
「いつも呪いかけられるから解呪薬は戸棚に常備しておいてんだよ」
「へ、へえ」
「ああ、でも今は家に結界が張っておいてるからな。この家の中は安心だ。心配しなくていいぞ」
「ああ、そう」
そういうことじゃないんだけど、とジャスは思った。
解呪薬……。戸棚に常備している?どれだった?さっきの解呪薬って……?
って、いうか、その解呪薬は誘惑の魔法にも効くのだろうか。
ジャスは緊張しながら戸棚をそっと目で探った。
「おい、テメェ何見てんだ?」
アウルの声にはっと我に返ったジャスは、慌てて戸棚から目線をそらして言った。
「で、呪いだったの?今回の風邪」
「ああ」
ほら、とアウルはジャスの手を取り、おでこを触らせた。確かに、さっきまであった熱はまるっきり下がったようだ。
「本当だ。……なんだ、じゃあ薬草粥も解熱剤も意味なかったんだな」
自虐的に笑うジャスに、アウルは首を振った。
「何いってんだよ。ちゃんと寝れたから頭が働くようになった。臭え粥と薬のおかげだ」
じっとアウルはジャスを見つめた。
「テメェの、おかげだ」
「そりゃ、よかった、です」
じっと見られながらそんなことを言われるので、ジャスは思わず顔を背けた。
「普段ならこんなにも呪い屁でもねえんだがな。タイミングよく俺が魔法使えねぇ時に呪いかけやがったんだろう」
アウルは独りでブツブツ言うと、グッと背伸びをした。
「あー、よくわからないけど、よかった。じゃ、僕水汲んでくるから」
そう言って、ジャスが家の外に出ようとしたとき、グッと襟首を掴まれて引き戻された。いつもの魔法ではなく、直接手で引っ張られた。
「何だよっ」
「俺が行く」
そう言ってジャスはアウルの手から桶をひったくった。アウルは慌てた。
「んな、病み上がりの奴は大人しくしてろよ。つーかアウル魔法無しで水汲みなんかしたことないだろ」
「ああ、無えな」
「ほらな。僕が行ったほうが絶対に早いんだから」
ジャスはそう言って桶を奪い返した。
アウルは不満そうな顔をするのでジャスはハァ、とため息をついて言った。
「家の中は結界が張ってあるんでしょ?家の外に出て、また呪いかけられたらどうすんのさ」
「また解呪薬のめばいい」
「そーいうことじゃないって」
ジャスは呆れたように言う。
しかしふと気付いた。
ちょっとアウルにこの場を離れてもらった方が少し好都合なのではないか?ゆっくり戸棚を探せるのではないか。
「……やっぱり任せようかな」
ジャスはそう呟いて、アウルに桶を渡した。
「初めから大人しくやらせればいいものを」
偉そうにアウルは言うと、いそいそと外に出ていった。
「何だあいつは。ずっと寝てたから体力が余ってんのか?」
ジャスは呆れたように呟いた。
「……よし」
ジャスは、アウルが行ってしまったのを確認すると、急いで戸棚の方へ向った。
戸棚には大小様々でいろんな色の瓶が並んでいた。
ジャスは先程アウルが入れた瓶のそこに僅かに残った液体を見ながら同じ様な薬を探す。
「駄目だ。全然わからない」
だいたい、同じような色だからといって同じ薬だとは限らないし、誘惑の魔法にもその解呪薬が効くとは分からない。勝手に用法を推測して薬を用いるなんて薬売りの子としてすることはできない。
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