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残酷な人
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ふとジャスは日の光で目を覚ました。
なんだか体がおかしい。
辺りを見渡し、ここはアウルの部屋だと気づいた。
「起きたか」
アウルの声がして、はっとジャスは起き上がろうとした。しかし上手く体が動かない。
「な、何だよこれ」
よく見ると、両手が縛られて柱に繋がれている。
「どういうつもりだ」
「逃げたやつが言うセリフか?」
アウルが見下しながら言う。
「これから俺は仕事に行かねえとならねえ。本当は昨日のテメェのやらかしたことについて、じっくり話してぇところだがな」
「僕は話したくない」
「まあいい。ともかく、また逃げられてもたまったもんじゃねえから、拘束だけはさせてもらった」
「外せよ」
ジャスはアウルをにらみつける。
しかしアウルは、ジャスが繋がれている紐を弄びながら口元だけ笑ってみせた。
「帰ってきたら外してやるよ」
「帰ってくるまでこのままってことか」
少し焦ったようなジャスの顔をみて、アウルはニヤリと笑った。
「ああそうだ。仕事をして、その後野暮用も済ませてからだからな……いつ帰るかわからねぇけど大人しくしてるんだぞ。逃げんじゃねえぞ」
「ふざけるなよ!外せ!」
怒りに満ちた目でアウルに怒鳴るが、アウルは一切気にしていないように笑った。
「ふざけてねえよ」
そう言ってアウルはジャスの顎を強く掴み、そのまま軽くキスをした。
思った以上、いつも以上に強い幸福感が脳内に流れ込んでくる。
ジャスは、とっさにアウルを蹴り上げた。
上手く急所には当たらなかったようで、アウルは軽く体をさすってジャスから離れただけだった。
「今日の分のキスだ」
「もう、しない。僕はやっぱり、お前と契を結ばない」
きっぱりとジャスは言うが、アウルは無表情にジャスを見下ろした。
「もう決めたっつってんだろ。大人しく俺の帰りを待ってるんだな」
それだけ言うと、ジャスは部屋を出ていった。
「くっそ!!」
ジャスの腹立たし気な声だけが部屋に響いた。
………
一人になったジャスは、必死で紐を取ろうとした。
さっきのキスのせいだろう、顔の赤みが治まらないし、心臓がバクバクしている一方で頭がぼーっとして上手く働かない。
何より考えてしまうのだ。アウルにまたキスしてもらいたいと。
冗談じゃない。また何か寝ている間に何かされたに違いない。
まだ、魔法で拘束されているわけでは無いのでなんとかなりそうだ、とジャスは必死になって、部屋の柱に紐を引っ掛けたりこすり付けたりしてどうにかならないかと頑張った。
その時だった。
「ジャスくん」
ドアを開けてクロウが部屋に入ってきた。
思わずジャスは後ずさる。
「何しにきた!」
「大人しくしてて。それ外してほしかったら」
クロウはジャスを縛っている紐を指差す。
「俺もすぐにアウルと一緒に行くから。時間無いから暴れないでよ」
そう言って、紐の結び目を軽く握った。
「結構固く結んであるね。ちょっと魔法使うから暴れないでね」
そう言って軽く結び目を指で叩く。
すぐに紐は外れた。
「何で……逃してくれるんだ」
ジャスは思わず尋ねたが、クロウは鼻で笑った。
「逃してるわけじゃないよ。君が逃げないようにアウルが家にも魔法をかけているはずだからね」
そう言って、クロウは外したばかりの紐を弄ぶ。
「アウルは考え無しのところがあるからね。紐縛っちゃって、飲み食いもトイレも行けないで放置しちゃったらジャス君がどうなるか、考えなかったんだろうね。あんなに、人間は食べなきゃ死ぬって言い張ってるくせに」
クロウの言葉にジャスはゾッとする。
「ま、いつ帰るのかわからないなんて脅してたけど、明日にはかえってくる予定だったからまあそこまで問題無いだろうけど。それでも」
クロウはそっとジャスの頬に手を添える。
「もし、帰ってきて少しでも弱ってしまったジャス君を見たら、アウルは自分を相当責めるだろうからね。
だから俺は、アウルの為に、ジャス君の紐を解いたんだよ」
「クロウは、アウルが好きなんだろう」
ジャスは、立ち去ろうとするクロウに慌てて呼びかけた。
「アウルに幸せになって欲しいって言ってたじゃないか。アウルが幸せになれるのは僕じゃないだろ」
その言葉に、クロウは振り向いた。その目は冷たく濁っているようだった。
「ジャス君は、本当に、残酷な人だね」
そう冷たく言うと、クロウはジャスに近づいた。
「何度言わせるんだい?魔法使い同士じゃあ意味がないんだって」
「そうは言っても……それでも」
「他の女のコ紹介するべきだって?進んで花嫁になってくれる子の方がいいって?そんなの分かってる。
それでもアウルは君を選んだんだ。決めたって言うんだ。
あの身勝手なアウルが、君が嫌がるからセックスしない契を選んでいるんだ。今どきあんな面倒な契をする魔法使いなんていないのに。
君が嫌がるからって誘惑魔法もかけないで、君から求めて来るのを待っているんだ!!」
見たことの無いクロウの顔に、ジャスは言葉が出なかった。
今にも泣き出しそうなクロウは、ふっと顔を反らした。
「ともかく、俺はジャス君の望むような事はしないよ。お願いだからアウルが帰ってくるまで大人しくしててよ」
クロウは反らした顔をまたこちらに向けた。今度はいつものにこやかなクロウの顔をしていたが、目の奥は全く笑っていなかった。ジャスの顔にそっと手を触れて口角だけニヤリと笑ってみせた。
「ま、アウルの魔力で十分身体も火照ってるようだし、逃げたりしないよね?戻ってきたアウルに、素直にキスを求めてみればとても喜ばれると思うよ」
ふざけるな、とジャスが言う前に、クロウはスッと姿を消した。
一人取り残されたジャスは、紐の解かれた手首をさすりながら、ぼんやりとドアの方を見つめていた。
なんだか体がおかしい。
辺りを見渡し、ここはアウルの部屋だと気づいた。
「起きたか」
アウルの声がして、はっとジャスは起き上がろうとした。しかし上手く体が動かない。
「な、何だよこれ」
よく見ると、両手が縛られて柱に繋がれている。
「どういうつもりだ」
「逃げたやつが言うセリフか?」
アウルが見下しながら言う。
「これから俺は仕事に行かねえとならねえ。本当は昨日のテメェのやらかしたことについて、じっくり話してぇところだがな」
「僕は話したくない」
「まあいい。ともかく、また逃げられてもたまったもんじゃねえから、拘束だけはさせてもらった」
「外せよ」
ジャスはアウルをにらみつける。
しかしアウルは、ジャスが繋がれている紐を弄びながら口元だけ笑ってみせた。
「帰ってきたら外してやるよ」
「帰ってくるまでこのままってことか」
少し焦ったようなジャスの顔をみて、アウルはニヤリと笑った。
「ああそうだ。仕事をして、その後野暮用も済ませてからだからな……いつ帰るかわからねぇけど大人しくしてるんだぞ。逃げんじゃねえぞ」
「ふざけるなよ!外せ!」
怒りに満ちた目でアウルに怒鳴るが、アウルは一切気にしていないように笑った。
「ふざけてねえよ」
そう言ってアウルはジャスの顎を強く掴み、そのまま軽くキスをした。
思った以上、いつも以上に強い幸福感が脳内に流れ込んでくる。
ジャスは、とっさにアウルを蹴り上げた。
上手く急所には当たらなかったようで、アウルは軽く体をさすってジャスから離れただけだった。
「今日の分のキスだ」
「もう、しない。僕はやっぱり、お前と契を結ばない」
きっぱりとジャスは言うが、アウルは無表情にジャスを見下ろした。
「もう決めたっつってんだろ。大人しく俺の帰りを待ってるんだな」
それだけ言うと、ジャスは部屋を出ていった。
「くっそ!!」
ジャスの腹立たし気な声だけが部屋に響いた。
………
一人になったジャスは、必死で紐を取ろうとした。
さっきのキスのせいだろう、顔の赤みが治まらないし、心臓がバクバクしている一方で頭がぼーっとして上手く働かない。
何より考えてしまうのだ。アウルにまたキスしてもらいたいと。
冗談じゃない。また何か寝ている間に何かされたに違いない。
まだ、魔法で拘束されているわけでは無いのでなんとかなりそうだ、とジャスは必死になって、部屋の柱に紐を引っ掛けたりこすり付けたりしてどうにかならないかと頑張った。
その時だった。
「ジャスくん」
ドアを開けてクロウが部屋に入ってきた。
思わずジャスは後ずさる。
「何しにきた!」
「大人しくしてて。それ外してほしかったら」
クロウはジャスを縛っている紐を指差す。
「俺もすぐにアウルと一緒に行くから。時間無いから暴れないでよ」
そう言って、紐の結び目を軽く握った。
「結構固く結んであるね。ちょっと魔法使うから暴れないでね」
そう言って軽く結び目を指で叩く。
すぐに紐は外れた。
「何で……逃してくれるんだ」
ジャスは思わず尋ねたが、クロウは鼻で笑った。
「逃してるわけじゃないよ。君が逃げないようにアウルが家にも魔法をかけているはずだからね」
そう言って、クロウは外したばかりの紐を弄ぶ。
「アウルは考え無しのところがあるからね。紐縛っちゃって、飲み食いもトイレも行けないで放置しちゃったらジャス君がどうなるか、考えなかったんだろうね。あんなに、人間は食べなきゃ死ぬって言い張ってるくせに」
クロウの言葉にジャスはゾッとする。
「ま、いつ帰るのかわからないなんて脅してたけど、明日にはかえってくる予定だったからまあそこまで問題無いだろうけど。それでも」
クロウはそっとジャスの頬に手を添える。
「もし、帰ってきて少しでも弱ってしまったジャス君を見たら、アウルは自分を相当責めるだろうからね。
だから俺は、アウルの為に、ジャス君の紐を解いたんだよ」
「クロウは、アウルが好きなんだろう」
ジャスは、立ち去ろうとするクロウに慌てて呼びかけた。
「アウルに幸せになって欲しいって言ってたじゃないか。アウルが幸せになれるのは僕じゃないだろ」
その言葉に、クロウは振り向いた。その目は冷たく濁っているようだった。
「ジャス君は、本当に、残酷な人だね」
そう冷たく言うと、クロウはジャスに近づいた。
「何度言わせるんだい?魔法使い同士じゃあ意味がないんだって」
「そうは言っても……それでも」
「他の女のコ紹介するべきだって?進んで花嫁になってくれる子の方がいいって?そんなの分かってる。
それでもアウルは君を選んだんだ。決めたって言うんだ。
あの身勝手なアウルが、君が嫌がるからセックスしない契を選んでいるんだ。今どきあんな面倒な契をする魔法使いなんていないのに。
君が嫌がるからって誘惑魔法もかけないで、君から求めて来るのを待っているんだ!!」
見たことの無いクロウの顔に、ジャスは言葉が出なかった。
今にも泣き出しそうなクロウは、ふっと顔を反らした。
「ともかく、俺はジャス君の望むような事はしないよ。お願いだからアウルが帰ってくるまで大人しくしててよ」
クロウは反らした顔をまたこちらに向けた。今度はいつものにこやかなクロウの顔をしていたが、目の奥は全く笑っていなかった。ジャスの顔にそっと手を触れて口角だけニヤリと笑ってみせた。
「ま、アウルの魔力で十分身体も火照ってるようだし、逃げたりしないよね?戻ってきたアウルに、素直にキスを求めてみればとても喜ばれると思うよ」
ふざけるな、とジャスが言う前に、クロウはスッと姿を消した。
一人取り残されたジャスは、紐の解かれた手首をさすりながら、ぼんやりとドアの方を見つめていた。
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