媚薬魔法の優しい使い方

りりぃこ

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自由に

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 その日の夜、自分の部屋で布団に入ったジャスは考えていた。

 もしかして、少し、アウルに対して冷たかっただろうか。

 あからさまに不機嫌になった時が何度かあった。確かに少し冷たすぎたような気もしないでもないが、アウルのことが大好きで花嫁になった、というわけでもないので、つい、振る舞いが消極的だったかもしれない。

「まあ、軟膏塗るくらいならしても良かったかな」

 そう思っていると、急激な眠気が襲ってきて、すぐに深い眠りについた。



 ――

 なんだか体が重い。そして暑い。

 ジャスはふと目を覚ました。

 まだ辺りは暗い。少しずつ頭がハッキリしてきて暗さにも目が慣れてくると……



「な、何してんだよアウル!!え?っていうか何で僕裸なの!?」

 ジャスは自分の横に座っているアウル、そして真っ裸になっている自分を見て、思わず飛び起きた。

 アウルはチッと舌打ちをした。

「弱めに催眠かけたせいで覚醒しちまったか」

「何で勝手に催眠かけてんだよ」

 憤るジャスに、アウルは真面目な表情で顔を近づけた。



「前も言ったが、俺はテメェを怖がらせたりしねえ。テメェの嫌がる事もなるべくしねえつもりだ」

「それは、えっと、うん、ありがとう」

「ただ、少しも俺の自由に出来ねえのは、腹が立つ」

「自由に」

 ジャスは思わずオウム返しした。自由に、とは。

「片方だけに好きにさせて、片方が我慢ばかりするっつーのは、不健全な関係だと思わねえか?」

「あー、えっとー」

 なんだか今日、何度かアウルは冷たい空気を醸し出していた気がしていたが、やっぱり気のせいでは無かったようだ。

「それで、俺は考えたわけだ。日中はテメェの言うとおりにしてやろう。キスも触れるだけ、甘え甘やかしもしねえ、他の奴とベタベタしてようがどうでもいい。
 ただ、夜は少しこちらの好きにさせてもらおう。なあに、催眠をかけて寝ている間に好きにさせてもらうだけだ。問題ねえだろう?」

 アウルは、妙に優しい声で同意を求める。その妙な優しさが怖すぎる。


「な、何するつもりだったんだよ」

 ジャスは後ずさりをしながら言った。そんなジャスの肩に手を伸ばして、引き寄せるようにしてアウルは言った。

「するつもり?もうしたぜ。わかるだろ?」

 アウルの言葉に、ジャスは自分の体が妙に重くて暑いのを思い出した。

 思わず自分の唇を抑え、そして自分の身体を見た。見える範囲だけでも相当な鬱血痕が散らばっていた。

 ジャス、慌ててアウルから顔をそらし、早口言った。

「あー、そうか。もうしたんだよな?じゃあ今日はこれでオシマイだよな?あとはゆっくり明日ちゃんと話し合おう、じゃ、おやすみ!アウルもちゃんと部屋で寝ろよ」

 そう言って、布団を頭から被ってしまおうとした瞬間、アウルに布団を奪われてしまった。

「そういえば、テメェの質問にちゃんと答えてなかったなぁ、『何してんだ』か。さっきしたこと、上手く口で説明できねえからな。再現してやるよ」

「結構です!」

 速攻で断ったジャスだったが、アウルは無視して近づいてきた。

 ジャスはアウルを押し返すが、アウルの方が多少力が強い。

「おい、本当にやめろって。おいっ、バカっ!どこ触ってんだよ変態っ!ちょっ!そこ、本当に!
 ……あっ……や……あっ……待っ……
 っておい!ちょっと!
 ……ひっ……あぁっ…触ん…やめっ……
 おいってば!!聞いてんのか!やめろって!」

「うるせえ!!さっきはもっと大人しかっただろうが!」

「寝せられてたからな!!」

「先にキスで酩酊させるぞ!」

「ふざけん……!」

 抵抗するジャスに、アウルは深くキスをする。強めに魔力を込めて、しつこく唇に噛み付いた。

 ジャスの抵抗はあっさり弱まってしまった。

「やっぱり起きてる時にされるのはテメェは恐いんだろう。酩酊して寝ててもいいぞ」

「……そういう、ことじゃねえよ……」

 力の抜けたジャスのツッコミは、アウルの耳には入らなかったようだ。


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