媚薬魔法の優しい使い方

寂しくなる

　その後、ジャスのさっき少し勃ってしまった自分自身は、こっそりアウルにバレないように鎮めようとしたが、あっさりバレて口でされてしまった。

　真面目な雰囲気だったのに、恥ずかしくて死にそうだと文句を言うジャスを、アウルは抱きしめたままベットから起き上がる気配もなく眠ろうとした。

「ちょっと、また明るいぞ。もう何もしないなら起きろよ」

「起きねえ。テメェも起きるな。このまま寝ろ」

「眠くないし」

「俺は眠い。昨日よく寝れなかったからな」

　不貞腐れたようにアウルが言うので、ジャスはため息をついて大人しく抱きしめられたままになった。

「どうすりゃいいんだろうな」

　アウルは、ボソリと呟いた。

「……俺は無理だぞ。人間になるのは」

「だろうね」

「魔法が使えなくなったら俺には存在価値がねえからな」

　アウルはいじけたように言ったので、ジャスはバツが悪そうに呟いた。

「あー。それは言葉のアヤだから、気にしないで」

「いや、本気で言っただろ」

「う～……あの…」

「まあいい」

　アウルはそう言い切ると、ジャスの頭を軽く撫で、そして顔を見つめた。

「寝て起きたら、考える。俺もちゃんと覚悟を決めてやる。テメェの事は……」

「僕の事は気にしないで。アウルの決断に文句は言わないよ。ま、どうせ文句つけたってアウルが聞くはずないしね」

　ジャスがそう方をすくめて答えると、アウルは少しニヤリと笑って静かに目を閉じて、あっという間に寝てしまった。



　アウルが寝たのを確認すると、ジャスはゆっくりとベットを抜け出した。

「さすがにこの時間からは寝れないよ」

　ジャスは自分の部屋に行くと、片付けを始めた。


　アウルはクロウを選ぶ。多分これは確実だ。

　ということはジャスはここを出ていく事になるはずだ。

　部屋に置いておいた自分の服や道具、そしてマリカの作った薬。アウルの為にマリカが作った薬は置いておこう。アウルはマリカの薬を気に入っているからきっと自分のためにつくられたと知ったら喜ぶだろう。



　一通り部屋を片付けると、ジャスは家の外に出た。

　苦くて生で食べられなかった野草、気の迷いを起こしたときにお世話になった泉……そういえばアウルが泉に落ちそうになったときもあった。やっぱりあいつ魔法使えないとだめだな。ジャスはそう思って思わず一人で笑った。



　ああ、少しだけ、ほんの少しだけ寂しくなるな。



　煩わしさから解放されるはずなのに。