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美味しい
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次の日、ふと魔法薬の置かれた棚に、見たことの無い薬が置かれているのを見て、アウルは顔をしかめた。
「おいジャス、ここに勝手に余計なもん置くんじゃねえ」
「ああ、ごめん。ここが最適かな、と思ってたんだけど。どこに置けばいいかな、マリカの調合した薬なんだけど」
ジャスの言葉に、アウルはピタリと止まった。
「マリカの調合した薬?ならテメェのだろ」
「アウルに併せて調合したんだよ」
「俺に?」
アウルは棚から薬を取り出してじっと見つめた。
「確かに、テメェの体格には多少合わねえかもな。でも何で俺に調合した。マリカは俺のこと気に入らねえだろうに」
「ああ、会ったら臭い漢方ぶっかけるって言ってたぞ」
ジャスの答えに、アウルは少し笑った。
「それでも作ったのか」
「ああ」
アウルは黙って薬を見つめた。
「金は払う」
「は?いや、売りつけるつもりじゃないからね」
アウルの言葉に、ジャスは呆れたように言った。
「全く、僕にはむりやり食べ物とか色々受け取らせたくせに、自分は全然素直に受け取らないんだからな」
「以前なら受け取った」
アウルは不貞腐れたように言った。
「今は受け取れねえだろ」
アウルの言葉にジャスはハッとした。
――僕を手放そうとしているから。マリカの善意を受け取れないのか
ジワジワとアウルが覚悟しているのを感じ取ったジャワは、思わず下を向いた。しかしすぐに顔を上げてしっかりとアウルの顔を見つめて笑いかけた。
「むしろ、受け取ってくれよ。最後の、なんていうか餞別みたいな?」
「最後。そうか」
寂しそうににアウルが言う。
もう決まってるくせに。そんな寂しそうな顔するなよ。
アウルは手に持った薬を大事そうに懐にしまうと、真面目な顔でジャスを見つめて言った。
「ジャス、俺は明後日、何をするか決めた。明日はその準備をするから部屋に入ってくんな」
アウルの決心を感じ取り、ジャスは黙って頷いた。
その次の日、宣言通りアウルは部屋から出てこなかった。
色々と魔法薬やらなんやらを作っているのだろう。何度かきつい匂いが漂ってきた。
途中、一通の手紙が空中を舞って外へ出ていった。
誰への手紙だろうか。クロウ宛なのかそれとも別の人へなのか。
夕方近くになり、ジャスが食事の準備をしようと台所へ向かった時だった。
部屋のドアがバタンと開いて、アウルが顔を出した。
「ジャス、今日は俺の分も夕飯を作れ」
「へ?」
ジャスは驚いて目を見開いた。
「どうした?コーヒー無くなって無いだろ?」
「つべこべ言わずに作れ」
「はあ……何を食べたいの?」
「俺は人間の食事のメニューなんか知らねえ。適当に作れ。あ、薬草粥以外な」
「うーん、分かった……」
「出来たら呼べよ」
そう言うと、また部屋に閉じこもってしまった。
「何なんだ全く」
ジャスはそう呟きながら、食料を二人前取り出し、調理に取り掛かった。
二人前とはいえ、そう時間もかからずに完成し、ジャスはアウルを部屋に呼びに行った。
「うわっ、相変わらず部屋の散らかり具合半端ないな」
「仕方ねえだろ。片付けてる暇ねえんだよ」
「僕はもう片付けてやらないんだからね」
「ふん、テメェが来る前に戻るだけだ」
アウルはフィッと顔をそらして不貞腐れたように言った。
「もう食事出来たのか」
「ああ。急だったからそんな豪勢なもんじゃねえぞ」
ジャスは照れくさそうに言った。
「ねだられて作るの、初めてだからな」
アウルとジャスは向かい合って座った。互いに何となく恥ずかしくなって目をそらしてしまう。
「お前が魔法使えなかった時以来だな」
ジャスはそう言ってスプーンを差し出した。
「前よりは上手くスプーン使えるか?」
「馬鹿にすんじゃねえよ」
ジャスはそう言って、黙って食事に手を付け始めた。
「どうして急に食事なんて?もう食べられないと思ったら、僕の料理が恋しくなったか?」
ジャスは照れ隠しのようにたずねると、アウルは事も無げに答えた。
「テメェ、前に言ってただろ?肉を一人で食べるのは勿体ない、誰かと美味しいって言い合いながら食べてえって」
「……言ったっけ?」
「言った。初めてテメェの食料を買ってきて作った時。テメェは俺の分も作ったが、俺は人間の食事なんて何年も食べたことねえからって食べなかった」
「あー、そんなこともあったね」
ジャスは思い返しながら頷いた。
「俺はやっぱり、こんな時間のかかる食事を毎日なるなんて非合理的だと思ってる。だが……」
アウルは肉を一口食べてジャスの顔を見て言った。
「旨いぞ。テメェの料理は」
「あ、ありがとう」
ジャスは思わず赤くなる。
「たまにはこうして一緒に食べても良かったんじゃねえかと思ってな。魔法が使えるときでも」
「今更、だなあ」
ジャスは小さく言った。
「あ?今何て言った?」
「何でもないよ。美味しいな。ずっといい食材用意してもらって、感謝してるよ」
「ああ」
ジャスの言葉に、アウルは満足そうに頷いた。
「おいジャス、ここに勝手に余計なもん置くんじゃねえ」
「ああ、ごめん。ここが最適かな、と思ってたんだけど。どこに置けばいいかな、マリカの調合した薬なんだけど」
ジャスの言葉に、アウルはピタリと止まった。
「マリカの調合した薬?ならテメェのだろ」
「アウルに併せて調合したんだよ」
「俺に?」
アウルは棚から薬を取り出してじっと見つめた。
「確かに、テメェの体格には多少合わねえかもな。でも何で俺に調合した。マリカは俺のこと気に入らねえだろうに」
「ああ、会ったら臭い漢方ぶっかけるって言ってたぞ」
ジャスの答えに、アウルは少し笑った。
「それでも作ったのか」
「ああ」
アウルは黙って薬を見つめた。
「金は払う」
「は?いや、売りつけるつもりじゃないからね」
アウルの言葉に、ジャスは呆れたように言った。
「全く、僕にはむりやり食べ物とか色々受け取らせたくせに、自分は全然素直に受け取らないんだからな」
「以前なら受け取った」
アウルは不貞腐れたように言った。
「今は受け取れねえだろ」
アウルの言葉にジャスはハッとした。
――僕を手放そうとしているから。マリカの善意を受け取れないのか
ジワジワとアウルが覚悟しているのを感じ取ったジャワは、思わず下を向いた。しかしすぐに顔を上げてしっかりとアウルの顔を見つめて笑いかけた。
「むしろ、受け取ってくれよ。最後の、なんていうか餞別みたいな?」
「最後。そうか」
寂しそうににアウルが言う。
もう決まってるくせに。そんな寂しそうな顔するなよ。
アウルは手に持った薬を大事そうに懐にしまうと、真面目な顔でジャスを見つめて言った。
「ジャス、俺は明後日、何をするか決めた。明日はその準備をするから部屋に入ってくんな」
アウルの決心を感じ取り、ジャスは黙って頷いた。
その次の日、宣言通りアウルは部屋から出てこなかった。
色々と魔法薬やらなんやらを作っているのだろう。何度かきつい匂いが漂ってきた。
途中、一通の手紙が空中を舞って外へ出ていった。
誰への手紙だろうか。クロウ宛なのかそれとも別の人へなのか。
夕方近くになり、ジャスが食事の準備をしようと台所へ向かった時だった。
部屋のドアがバタンと開いて、アウルが顔を出した。
「ジャス、今日は俺の分も夕飯を作れ」
「へ?」
ジャスは驚いて目を見開いた。
「どうした?コーヒー無くなって無いだろ?」
「つべこべ言わずに作れ」
「はあ……何を食べたいの?」
「俺は人間の食事のメニューなんか知らねえ。適当に作れ。あ、薬草粥以外な」
「うーん、分かった……」
「出来たら呼べよ」
そう言うと、また部屋に閉じこもってしまった。
「何なんだ全く」
ジャスはそう呟きながら、食料を二人前取り出し、調理に取り掛かった。
二人前とはいえ、そう時間もかからずに完成し、ジャスはアウルを部屋に呼びに行った。
「うわっ、相変わらず部屋の散らかり具合半端ないな」
「仕方ねえだろ。片付けてる暇ねえんだよ」
「僕はもう片付けてやらないんだからね」
「ふん、テメェが来る前に戻るだけだ」
アウルはフィッと顔をそらして不貞腐れたように言った。
「もう食事出来たのか」
「ああ。急だったからそんな豪勢なもんじゃねえぞ」
ジャスは照れくさそうに言った。
「ねだられて作るの、初めてだからな」
アウルとジャスは向かい合って座った。互いに何となく恥ずかしくなって目をそらしてしまう。
「お前が魔法使えなかった時以来だな」
ジャスはそう言ってスプーンを差し出した。
「前よりは上手くスプーン使えるか?」
「馬鹿にすんじゃねえよ」
ジャスはそう言って、黙って食事に手を付け始めた。
「どうして急に食事なんて?もう食べられないと思ったら、僕の料理が恋しくなったか?」
ジャスは照れ隠しのようにたずねると、アウルは事も無げに答えた。
「テメェ、前に言ってただろ?肉を一人で食べるのは勿体ない、誰かと美味しいって言い合いながら食べてえって」
「……言ったっけ?」
「言った。初めてテメェの食料を買ってきて作った時。テメェは俺の分も作ったが、俺は人間の食事なんて何年も食べたことねえからって食べなかった」
「あー、そんなこともあったね」
ジャスは思い返しながら頷いた。
「俺はやっぱり、こんな時間のかかる食事を毎日なるなんて非合理的だと思ってる。だが……」
アウルは肉を一口食べてジャスの顔を見て言った。
「旨いぞ。テメェの料理は」
「あ、ありがとう」
ジャスは思わず赤くなる。
「たまにはこうして一緒に食べても良かったんじゃねえかと思ってな。魔法が使えるときでも」
「今更、だなあ」
ジャスは小さく言った。
「あ?今何て言った?」
「何でもないよ。美味しいな。ずっといい食材用意してもらって、感謝してるよ」
「ああ」
ジャスの言葉に、アウルは満足そうに頷いた。
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