12 / 58
提案書になります
しおりを挟む「こちら、私の提案書になりまーす」
あの初対面の日から一週間後、茉莉花は智紀と祥太に連絡を入れてきたので、また以前と同じ喫茶店で落ち合うことにしたのだ。
幸田も、面白そうだからと来たがってはいたが、小テストでひどい点数を取って補習の目にあっていたので来れなかった。
「梨衣ちゃんに勉強教えてやれよ。お前だって色々はじめの頃漫画本の事とか教わったんだろう」
祥太は智紀を叱るように言ったが、智紀は口を尖らせた。
「でも、幸田さん、学校では話しかけるなって言うんだ」
話しかけようとすると必ず睨んでくる。あれにはどうも慣れない。
「でも、梨衣ちゃんの気持ちわかるよー。私もさ、高校までスクールカースト下位の地味ガールだったからさ。弟ちゃんみたいなモテそうなイケメンと仲良くしたら、弟ちゃん狙ってる人に何て思われるかと思っちゃって気が気じゃないんだよねー」
茉莉花がウンウンと勝手に理解して頷いた。
「別に俺はモテててねえし」
智紀は不貞腐れてそっぽを向く。
「ま、智紀の事は放っておこう。茉莉花さん、提案について教えてください」
祥太が言うと、茉莉花は自作の提案書を二人に渡してきた。
「写真集?」
「そうです!!」
茉莉花はキラキラした顔で頷いた。
「さっちんは、君たち兄弟がイチャイチャするところを見たい、そのイチャイチャっていうのは、勿論ラブラブ恋人っぽいイチャイチャなわけでしょ?でも君たちはしたくないわけだ」
「まあ」
そう言われると、智紀は我儘を言っているみたいでちょっと罪悪感を感じてしまう。しかし、祥太はケロリとした顔で「そのとおりだ」と頷いた。
「だ・か・ら、イチャイチャしているように見せかけた写真集を作って、さっちんにプレゼントするのはどうかな?ほら、よく孫の晴れ姿の写真とかおじいちゃんおばあちゃん棚に飾ってたりするじゃん?アレのBLバージョンっていうか」
「ほう」
祥太は茉莉花の作った提案書を見つめながら、真剣に聞いている。
「で、まあ普通に撮影してもいいんだけど……。2ページ目をご覧くださぁーい」
茉莉花に促されて、智紀と祥太は提案書をめくった。
「コ、コスプレ……?」
「そ!お二人さん、良かったたらコスプレしない?」
茉莉花の言葉に、思わず智紀と祥太は顔を見合わせた。
「コスプレって、何の?」
「勿論、初恋の杜の登場人物、ハルとナツでしょ」
そう言って、茉莉花は、自分の私物であろう初恋の杜を取りだした。
「まあコスプレって言っても、初恋の杜は異世界ファンタジー系じゃないから衣装もエグい手間がかかるやつじゃないし。むしろ普段着っぽくてオッケーなわけ。髪型とメイクをちょいちょいするだけで結構イケると思うんだよね。二人共イケメンだし」
そう言って、茉莉花はページをめくった。
「そうだなぁ、お兄様が主人公のハルで弟ちゃんが美少年のナツかなー。まぁ逆でもいいけど……」
「待って、待って」
智紀は慌てて茉莉花の説明を止めた。
「ごめん、えーっと、俺ちょっと詳しくないんだけど、コスプレはちょっと大袈裟じゃない?」
「ナルホド、弟ちゃんはコスプレするよりお兄様とキスしたい派か」
「語弊!!」
智紀は真っ赤になった。
「俺はキスしたくない派だから、続きのプレゼンを頼みます」
祥太の方は一切動じること無く茉莉花に続きを促した。そうなると智紀も黙るしか無い。
茉莉花は意気揚々と続けた。
「ま、写真ならさ、角度でどうとでもなるじゃない?別にいちゃついて無くてもいちゃついてるように出来る写真も撮れるし、フォトショ使えば色々加工も出来るし。
BLって一種のファンタジーだからね。リアルなイチャつきよりもある意味加工されたイチャつきの方がキレイだったりするし。まあ好みは人それぞれだから、さっちんの好みかどうかはわからないけど」
「あの、ごめん何回も」
智紀は往生際が悪く口を挟む。
「あの、別にコスプレが嫌とかじゃなくてですね。その、ばあちゃんの基本的な感情としては、やっぱり俺と兄貴に仲良くしてもらいたいってことなんだと思うんだ。だからその、作られたイチャイチャって、何か違うんじゃないかなって……思います」
一応、せっかく茉莉花が提案してくれたことなのであまり真っ向から否定するのも良くない気がして、必死で言葉を選ぶ。
智紀の訴えに、茉莉花はにやりと笑った。
「弟ちゃんの言う通り。でもさ、こういうのやる事に意味があると思うんだよね」
「やる事?」
「前にお兄様言ってたじゃん。二人共、年も離れてるし共通の話題も無いって。でも、これをやったら共通の話題も出来るでしょ?それって、自然に仲良くする機会になるし、多分さっちんにもそういうの伝わると思うんだよね」
「な、成る程」
茉莉花の提案は、思った以上にちゃんと考えられているようで、智紀は感心してしまった。確かに最近は、さち子の件でよく話すようになっている。
「費用の事も聞きたい。あまり俺は詳しくないが、コスプレ写真集を作るとなると、結構費用がかからないか?」
祥太は真剣な顔でたずねる。こちらはこちらであまりにもビジネスライクすぎやしないか。
茉莉花は提案書の次のページをめくるよう二人に促した。
「こちらの一番上に載ってるの、私のコスプレ専用アカウントなので、よかったら後で見てね」
「コスプレ専用アカウント?」
「うん、趣味に合わせていっぱいアカウント持ってるからさ。私、コスプレ趣味なんだ。だから、材料も機材もノウハウもあるよ。だから二人は費用はいらない」
「それは駄目だ」
祥太はすぐに険しい顔で言った。
「ちゃんと費用は払います。こちらが頼んでいる立場なのに、茉莉花さんのノウハウにタダ乗りするわけにはいかない。ちゃんと予算を提示してもらいたい」
「あー……その、違うんだ……」
茉莉花は、祥太の勢いに、ちょっと言いづらそうに目を泳がせた。
「その、費用は、いらないのでぇ……その写真量産させてもらって、イベントで頒布させてもらえないかなあって……」
「は、頒布?」
智紀はぽかんとして聞き返した。何やら嫌な予感がする。
10
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる