祖母孝行したいけど、兄弟でキスはできない

りりぃこ

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いい子、いい子

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「祥太、おかえり」

 ふと気づくと、さち子の目が開いていた。

「あ、ゴメンな。もしかして起こした?」

「いや、自然に目が覚めたよ。どうした祥太、何か元気なさそうだな」

 目が覚めてすぐに元気が無いことに気づくさち子に、祥太は感心してしまった。

「ちょっと、ね」

「原因はなんだい?仕事か?女のコか?それとも智紀と喧嘩したか」

「智紀とは喧嘩してない。ばあちゃん、俺と智紀のイチャイチャ見たいんだろう。喧嘩している場合じゃないよ」

「雨降って地固まるのもまたいいじゃないか」

 さち子は真面目な顔で言った。


「なあ、ばあちゃん。BLにハマってるって何で智紀の方に言ったんだ?」

 祥太は、思わずたずねてしまった。

 何で自分じゃなくて智紀に?やっぱり智紀のほうが優しいから?自分は冷たいから?

「そりゃあ、智紀なら叶えてくれそうだったからね」

 さち子の答えに、やっぱり、と祥太は思った。ショックでは無かった。ただ、やっぱり、と思っただけだ。

「俺なら、叶えてくれなそうだった?」

「祥太なら、何言ってるんだ、って言うだろ?」

 さち子の言葉に、確かに、と祥太は頷いた。


「でも、祥太は優しいからな」

「優しい?」

 突然言われて祥太は首を傾げた。さち子はいたずらっ子のように笑った。

「そうだ。智紀は私の希望を叶えようとしてくれるし、祥太は優しいから、そんな智紀を手伝ってくれる。いつもそうだった。だからつい私は、智紀の方に甘えちまうんだよ。悪いババアだろ」

「なるほど、ずる賢いババアだ」

 祥太は笑った。


「気にしてたのか?もしかして」

 急に真面目な顔になってさち子は祥太の方を向いた。

「いや、そういうわけじゃ」

「そうか、気にしてたのか。悪かった」

 そう言って、さち子は祥太に手を伸ばした。

「祥太は優しい子だよ。本当はどっちに言っても良かったんだ。たまたま、あの時は祥太が仕事が忙しい時だったからたまたま智紀に言っただけだ」

「うん、分かってるよ」

 祥太は慌てて言った。

「気にしてたわけじゃないから」

「祥太はいい子だよ。いい子、いい子。とってもいい子だよ」

 さち子がそう言って祥太の頭を撫でようとするので、祥太はかがんで自分の頭を差し出した。



「遅いと思ったら、何やってんだよ。カレー出来てるぞ」

 さち子の部屋の入り口から、智紀が顔をのぞかせた。

「あっ、兄貴、さてはばあちゃん起こしちゃったな」

「ああ」

 口をとがらせている智紀に短く答えると、祥太はばあちゃんの耳元に口を寄せた。

「ばあちゃん、いい子いい子してくれたお礼するよ」

 そう言うと、入り口に突っ立っている智紀に声をかけた。

「智紀、こっちに来い。ばあちゃんに顔を見せろ」

「は?何?」

 智紀は訝しげな顔をしながらも素直にさち子のベッドに近づいた。その時だった。


 祥太が智紀の肩に手を置いたかと思うと、そのまま智紀の耳を甘噛みしたのだ。


 祥太は、ゾワッという音が聞こえるんじゃないかと思うくらいの鳥肌が立った。そして、智紀の方も、勢いよくブツブツと鳥肌が立ったのが分かった、


「な、な、な、何すんだよ!!」

 智紀は祥太から離れて鳥肌の立った両腕をさすっている。

 祥太は、自分のやったことに鳥肌が止まらなかっただが、気力を振り絞ってフッと笑ってみせた。


「ばあちゃんへのサービスだ。イチャイチャのな」


「は、はあ!?キスはできないとか言ったくせに、耳噛むのはやるって、価値観狂ってんだろ!!ばあちゃんも、こういうの見せられても……ば、ばあちゃん!?どうした!?」

「け、血圧が……動悸が……」

「おい、ばあちゃん落ち着いて。今血圧計持ってくるから。ってばあちゃん何で泣いてんの!?」

「嬉しくて……」

「何が!?」


 完全に現場はプチパニックとなったが、ちゃんと落ち着かせて、さち子の血圧は正常に戻った。


 祥太は後で智紀から、『ばあちゃん殺すなよ!』とめちゃくちゃに怒られた。

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