祖母孝行したいけど、兄弟でキスはできない

りりぃこ

文字の大きさ
27 / 58

助けに来なきゃ……

しおりを挟む


「何も無いとは思うんだけどなー」

 家の前で、茉莉花がタクシーを降りながらブツブツと言った。

「タクシー代結構かかった。何もなかったらおばあちゃんからちょっと出してもらわないと」 

「何もなかったら、俺も出します。……あの、半分くらいなら……」

「いいって。高校生が無理すんなー」

 茉莉花は笑いながら、智紀の背中をポンポン叩く。

「じゃ、弟ちゃんは帰っても大丈夫だから。なんかあったら……何もなくても連絡するから」

 そう言って、茉莉花は家の玄関へ消えていった。

「帰ってもいいっていってもなぁ」

 茉莉花がそう言ったとは言え、ちょっと気になる。でも勝手に家を覗き込むのも忍びない。

 智紀は周りを何となくウロウロしていた。

 その時だった。


 勢いよく玄関のドアが開いて、茉莉花が飛び出してきた。

「あ、弟ちゃんまだいてくれた。ねえ、ちょっと手伝ってくれる?」

「あ、うん」

 茉莉花の勢いに押されて、智紀は家の中に入る。

 入ってすぐの階段の下に、人が倒れているのが見えた。

「えっ!大丈夫ですか?」

「この人、私のおばあちゃん。階段から転んで動けなかったっぽい。ちょっと運ぶの手伝って」

 この人が、さち子の入院中隣のベッドだった亮子さんか。その節はどうも、なんて挨拶できる雰囲気ではないのは明らかだが。

「動けなかった?救急車は呼びました?」

「そんなもの、呼ばなくていい!恥ずかしい!」

 茉莉花の祖母、亮子が叫んだ。

「転んで救急車?恥ずかしくて近所に顔向け出来ないよ」

「そんな事言っても!!」

「だいたい、茉莉花なんだその髪型は!いつそんな派手な色にしたんだ!それに、このガキは誰だ!」

「今そんな事言ってる場合!?」

 茉莉花は亮子に怒鳴った。

「いっつもそうだ!私が髪染めて何か迷惑かけてんの!?男連れてきてなんか文句あるの!?おばあちゃんなんか、助けに来なきゃよかっ……」

「タクシー呼びました!」

 智紀が茉莉花の言葉を遮るように言った。

「茉莉花さん、保険証とかおくすり手帳とか用意しておいて下さい。俺、玄関まで亮子さん連れていきます」

 有無を言わせぬ智紀の言葉に、茉莉花も亮子も黙り込んでしまった。


 智紀は、亮子の近くに座り込んだ。

「亮子さん、はじめまして。俺、竹中って言います。竹中さち子って覚えていますか?」

「またあの人の孫か」

 吐き捨てるように言われて、智紀はキョトンとした。

「えっと……」

「弟ちゃん、気にしないで。ばあちゃんと話してると気分悪くなるよ」

 居間から茉莉花が叫ぶ。

「あー……えっと、痛いところありませんか?」

 智紀は気を取り直してたずねる。

 亮子は黙ったまま、足首と肩に目線をやる。

「えっと、じゃあ、ちょっと動かしますけど……えっと大丈夫かな……怪我して動かせない人は、動かさないのが鉄則だって保健の時間に習った気がするけど……」

「どうしょうもないじゃん。救急車嫌なんだから」

 茉莉花は保険証を持って戻ってきた。

「内出血とか無さそうだし、そこまで酷い痛みでもないみたいだから、大丈夫だと思う。てか、万が一大変なことになっても弟ちゃんのせいではないから。確実にばあちゃんのせいだから」

 茉莉花がそう言い放った時、玄関の外にタクシーが到着した。

 智紀はとりあえず、茉莉花と協力して亮子を玄関まで運び、その後はタクシーの運転手とも協力して乗せた。

「ありがとう。ごめんね」

 茉莉花がそう言うと、タクシーは病院へ向けて出発した。


 残された智紀は、ふと振り返り、茉莉花の住む家を見つめた。

 この家はさち子の部屋に似ていた。

 家の造りの話ではない。小物一つ一つ似ていたし、壁に掛かっているのが家族写真なのも同じだ。小さな観葉植物の種類までも同じだった。

 多分、さち子と亮子は趣味が合うんだろう。だから入院中色んな話をしたはずだ。

 話をしたはずなのに、亮子はさち子のことを「あの人」と冷たく言った。

 ――もしかして、兄貴が様子がおかしかったのって……。

 智紀はぼんやりと思いながら、茉莉花の家を後にした。



 その日の夜、大したことは無かったけど、しばらく入院になった、と茉莉花から連絡が入った。

 大したことが無かったならよかった。


 更に後日、茉莉花から申し訳無さそうに言われた。

「ごめん、忙しくなるから、君たちのおばあちゃん孝行、協力出来なくなりそう」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...