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あからさまに胡散臭い男②
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車の中で、茉莉花は黙ってスマホを握りしめていた。一応亮子に電話をしたようだがやっぱり出ないらしかった。
その後、スマホの通知音が何度か鳴り、それを確認して、隣で運転している祥太に言った。
「ごめん、せっかくだけど、やっぱり行かなくてよさそう。さっきお父さん行けないって言ってたから行こうと思ったけど、やっぱり来てくれるみたい」
「ほう、そうですか」
祥太はそう頷きながらも、そのまま運転を続けている。
「だからその、いいよ、ここで下してくれる?」
「どうせだからちゃんとお送りします。俺も亮子さんのことが心配だし」
「ちゃんとあとでどうだったか教えるから」
「遠慮なさらずに」
「遠慮じゃないんだけど」
茉莉花はそう言いながらもすでに若干諦めていた。短い付き合いだが、この竹中兄弟のたまに出る強引さには敵わないことは完全に理解している。
「……じゃ、いいけど。お父さんに余計な事言わないでよ」
「俺が余計な事言いそうに見えますか?」
「すっげー見えるよ」
そうしているうちに、車は茉莉花の家に到着した。
「おばあちゃん?いる?」
茉莉花は家に入るなり、亮子を呼ぶ。
声は聞こえない。その代わり、何やらガガガガガ、と機械の動く音だけが聞こえる。
茉莉花は急いで音のある部屋へ向かう。祥太もそのあとをついていく。
「おばあちゃん?」
「おう、茉莉花か。なんだ、今日は遊びに行って遅くなるかもって言ってたんじゃないのか」
そこには、居間の真ん中でミシンをかけている亮子が、平然と座っていた。
「おばあちゃん!もー、見守りアプリ、通知来てなかったんだけど!」
「え?ああ、作業してたら忘れていた。ミシンの音で何も気づかなかった」
亮子はケロリとした顔で答えた。
「何も無くて良かったじゃないですか」
祥太も顔を出してそう言うと、亮子はバツが悪そうな顔をした。
「ほらな、そんなことだろうと思ったよ」
急に後ろから声がして振り向くと、真面目そうな顔のスーツをきた男の人が立っていた。
「お父さん!」
茉莉花がそう呼びかける。
――この人が茉莉花さんのお父さんか。
厳しい祖母にうんざりして家に寄り付かなくなったと聞いていたので、もっと茉莉花のようなチャラチャラしたギャル男風の人を想像していたが、思ったより真面目そうなサラリーマン風の人だ。
茉莉花の父は、わざとらしい大きなため息をついてみせた。
「人にはちゃんとしろだのなんだのうるさいくせに、自分はやることをちゃんとしないでこうして迷惑をかける。昔からそうなんだ。それで何してるかと思えば、またゴミにしかならないものを作っているんだろう」
「お前に作っているわけじゃない」
亮子は、茉莉花の父を睨みつけながら言った。
「そうだよ。おばあちゃんは智紀くん……、前に助けてくれた高校生の子のために作ってるんだよ」
茉莉花がそう言うと、茉莉花の父は呆れたように半笑いした。
「その子だって、迷惑だろうに。家族以外に迷惑かけるなよ」
茉莉花の父の言葉に、いつも強気な亮子が動揺した顔になったのがはっきりと見えた。
「ちょっと失礼」
祥太は、彼らの間に割って入った。
茉莉花の父は、祥太を見ると、胡散臭そうな者を見るような目になった。祥太は慌ててポケットから名刺を取り出す。
「私は、茉莉花さんの友人で、竹中祥太と申します」
祥太から名刺を受け取ると、茉莉花の父は丁寧にそれをしまった。
「弁護士さんですか」
「まあ、今は肩書きは関係ないですけどね。名刺先に渡さないと、不思議なことに、ホストだの詐欺師など言われちゃうんですよ」
「でしょうね」
茉莉花の父は素っ気なく応じる。
祥太は、亮子の手にある作りかけの品を見て、ニッコリと笑ってみせた。
「多分、うちの智紀が作ってくれと亮子さんに我儘言ったんだと思います。愚弟がご迷惑かけて申し訳ございません」
「ちょっと!」
茉莉花が鋭い声で咎める。
ああ、また見損なったと言われるだろうな、と祥太は思いながらも、目の前の仕事をこなすのに集中することにした。
「一度お話させていただきたいと思ってたんです。よろしければ、二人で話させて頂けませんか?」
祥太はにやりと笑う。
茉莉花の父は、あからさまに胡散臭そうな男に不信感満載の顔をしていたが、早めに渡した弁護士の名刺が功を奏したようで、「ええ」と硬い笑顔で頷いた。
なんやかんや言っても、祥太には茉莉花の家庭の事情に深く立ち入るつもりはなかった。
またそこまでの仲ではないことは自覚している。
祥太の今日の目的は、『お金で解決』である。
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