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完成したんですね
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よくわからないままに祥太が茉莉花にフラレてから、数日が経った。
その日、智紀が学校が終わって家に向かって歩いていると、ピロンとスマホが鳴った。見ると幸田からで、智紀の家の近くの公園で待っててくれとのメッセージだった。
とりあえず公園のベンチで待っていると、幸田と、なぜか暗い顔の茉莉花がやってきた。
「ど、どうしたんですか?」
智紀は茉莉花に駆け寄ると、茉莉花は怯えたような顔を向けた。
「……女子高生、怖かったよぅ」
「よしよし、怖かったですねぇ。ここまで来ればもう大丈夫ですよー」
「一体何が?」
智紀が困惑したままたずねると、茉莉花はおそるおそる言った。
「さっきね、弟ちゃんの高校の近く通りかかってね。またまた学校から出てくる弟ちゃん見かけたから、声かけたの。弟ちゃんって呼んでも気づいてくれなかったから、智紀くん、って呼んだら……急に校庭にいた女の子達が勢いよくこっち向いて……」
「はあ」
「智紀って、竹中智紀くんのコトですか?って一人の子に聞かれたから、そうだよ、って返したら、校舎裏に連れて行かれて……」
「校舎裏?」
なぜ茉莉花がうちの学校の女子達に校舎裏に連れて行かれるんだ?と智紀は首を傾げた。
茉莉花はブルブルと震えながら続ける。
「何か女子達が数人集まってきて……。竹中くんとどう言う関係ですかって問い詰められて……私これもしかしてリンチされる!?と思ったら……。
急に一斉にその女子達が土下座してきて」
「は?」
ストーリー展開についていけず、智紀は変な声が出た。
「そして、『竹中くんの趣味とか好きな食べ物とか、なんでもいいので情報を下さい』って必死な顔で言われて……。通りかかった梨衣ちゃんがうまいこと女子達の気をそらしてくれて逃げてきたんだけど」
「じ、情報……?待って、待ってまって。え?何で俺の情報求めて女子が土下座すんの?」
智紀はあわてて言った。別に自分は何も情報統制なんかしていない。
まあ、あんまり自分の事を喋ったりはしていないが、別に秘密にしているわけでもない。
「そんな、俺の好きな食べ物とかそんなの、友達とか普通に知ってるし。何でそんな茉莉花さんに?」
智紀が困惑気味に言うと、茉莉花をずっとさすさすと撫でていた幸田が、苦笑いしながらいった。
「竹中くんの友達、田中くんとか山田くんとかは、竹中クンを守ってくれてるんだよ。『お前ら、竹中の好きな食べ物とか知ったら、下駄箱にそれ詰め込む気だろ』って、秘密にしてくれてんの」
「へ?」
智紀はぽかんとした。
「た、たしかに入学当初、何かバナナが下駄箱にみっちり詰められる事件があったけど。あれは誰かのイタズラってことで先生が対処してくれて……。あ、そう言えばその時に、『あんまり◯◯が好き』とか言わないほうがいいかもなってやんわり先生に言われたんだっけ……」
「あのバナナ事件、智紀くんが何気なく『バナナ味って好きなんだよなー』って休み時間に山田くんに言ってたのが原因なんだよ……」
「嘘だろ……」
智紀は愕然とした。
「俺、女子から虐められてたのかよ……」
「何でそうなる!」
幸田は思わず強い口調でツッコんだ。
「とにかく、うちの女子は皆竹中くんの情報に飢えてるの!だから、竹中くんと仲良くしようものなら、ああやって土下座してまで情報を得ようとしてくるの。だから、私も竹中くんと仲良くしてるとこ見れたくないんだよね」
「そうだったんだ」
智紀は、幸田の説明に、なぜかホッとしていた。
「何だ、それならそうと言ってくれれば。俺、幸田さんに学校で話しかけるなっていわれて、ちょっと寂しかったんだよね。そういう理由があるなら嫌われてねえんだってちょっと安心したよ」
智紀はそう言って少し情けなさそうに微笑むと、なぜか幸田に勢いよくを顔を潰された。
「何!酷い!」
「本当に!私の母性本能を捻り潰すなってば!」
「ねえ、いちゃついてるとこ悪いんだけど、私の事忘れてないよね」
茉莉花は若い二人をジトッと睨んだ。そして、少し調子を取り戻したらしく、意味有りげな表情をしてみせた。
「まあ、それならこれが女子達に見つからなくて良かったよ。これが見つかったら、問い詰めどころじゃなかったね」
そう言って、手に持っていた紙袋をひらひらと智紀に見せた。
「今日はこれを受け取りに写真屋に行ってたの」
チラリと中身を取り出してみせる。
「も、もしかして完成したんですね」
智紀はゴクリと喉を鳴らしてその紙袋を見つめた。
「そ、編集作業が終わりました。そんでこちら、完成品のフォトブックになります」
茉莉花がにやりと笑った。
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