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3章 白髪の獣人
グレイトウルフ
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「やっぱり冷たいな川の水……。まぁ身体を洗えるだけでもありがたいと思うか。」
あれから1時間ほど経過し、近くに川を見つけた俺達は時間も夕方に差し掛かっていたため、ここで今夜は野宿しようと意見が一致した。
リーフが先に身体を洗い、俺は周りの見張りをしていたがリーフが川からあがってきたため交代し、今俺はパンツ一丁で川の水を使って身体を洗っているところだ。パンツがびしょびしょだが流石に外で全裸にはなりたくない。
「風呂入りたい」
髪に水をつけ洗って首を思いっきり振って水を飛ばし、あまりの冷たさに空を見ながら俺はポつりと呟いた。
あの温かい湯気のたつ風呂に入って1日の疲れを癒す、それを想像するだけでさらに風呂に入りたくなるが現実を見て冷たい水に身震いする。
「現実みないと……あー冷たい〈魔法のポケットよ〉、〈小さな火種よ〉」
素早く身体をゴシゴシと洗い、『マジックポケット』で大きめのタオルを身体に巻いて事前に集めておいた草木に『ファイア』を放って燃やし、前にしゃがんで身体を暖める。
この草木はリーフが絶対川から上がった後寒いからすぐに暖を取れるようにしましょう!と言って2人で集めたものだ。
「リーフが提案しなかったらどうなってたことか。」
「呼びました?」
「ギャァー!?」
「え?」
1人で呟いていたら急に後ろからリーフが話しかけてきて思わず変な声で絶叫してしまった。
「び、びっくりした……。」
「いやぁ、そろそろあがったかなと思って見に来たんですけど……ちょっと早かったですかね?」
チラッと俺の姿を見て視線を逸らす。
今の俺はパンツ一丁でタオルを体に巻いた状態だ。見られても別に恥ずかしくはないが、リーフは顔を赤らめている。
「大体身体は乾いたな。ちょっと着替えるから向こう向いててもらって構わないか?〈魔法のポケットよ〉」
「あっ、すみません。」
「別に謝ることでもないさ。」
俺の言葉でリーフは逆方面を向き、俺はそのうちに『マジックポケット』から着替えを取りだしてパパっと着替える。
「振り向いて大丈夫だぞ。さて、ちょっと早いがご飯にでもするか?」
「そうですね、ブラックボアのお肉……生のままで放置しておくのもまずいですしね。」
リーフはブラックボアの肉を取り出してそれを眺める。
水で洗ったことで血は綺麗に落とされている。
「結構小さく切ったと思いましたけど、こうして見るとやっぱりちょっと大きいですね。」
「そうだな、でかくてこのままじゃ中まで火が通らないだろうし……小さく切ろう。」
まな板が無いため川の近くまで行って大きな平らな石を見つけ、無限水筒の水で綺麗にしてリーフの元に戻り、短剣で肉を切る。今回食べる分以外は焼いた後『マジックポケット』に入れ、明日の朝に食べるつもりだ。
「調味料とかはないからこのまま味付け無しで食べるか。」
「なにか調味料があれば美味しく食べれたんですけどね。こればっかりは仕方ありません。あ、ブラックボアのお肉なので前に宿屋で食べて喉に引っ掛けたお肉と同じなので気をつけてくださいね。」
肉を切り終え、石のまな板を火の上に置こうとするとニコニコしながらリーフは注意してきた。
「思い出したくなかった……。」
あの時俺は喉にブラックボアの肉を引っ掛け、水がなかったためアレンの飲んでいた酒を一気に飲み、べろんべろんに酔って吐いてリーフの世話になってしまった。
「今は酒もないし、無限水筒があるからもし引っ掛けたとしても大丈夫だ……多分。……はぁ、もう焼くぞ。」
今度こそまな板を火の上に置こうとしたその瞬間、木々の間から凍りつくような冷たい風が流れてきた。
「寒っ、なんだ急に!?」
「奥の方から冷たい風……?」
リーフも気付いたようで腕をさすりながら風が吹いてきた方を見る。
「なにか聞こえるな、唸り声がする。この唸り声聞き覚えがあるな。多分グレイウルフか?」
聞き耳を立ててみるとグルルゥと、狼のようなものの唸り声が聞こえた。
「せっかく準備したけど離れた方がいいですかね?」
「ちょっと見に行かないか?1、2匹くらいなら倒せると思う。せっかく火も確保したのにここを離れるとなったらまた草木を集めないといけなくなる。」
「うーん、また集め直すとなると辺りが暗くなりますよね。分かりました。」
リーフは僅かに悩む素振りをするが、こくりと頷いて立ち上がる。
「じゃあ行くか。見つからないようなるべく静かに行くぞ。」
「了解です。」
肉を『マジックポケット』の中に戻し、グレイウルフの唸り声が聞こえた森の奥に俺とリーフは足音を極力消しながら進んで行った。
「やっぱりグレイウルフか……。って、なんかでかいのがいるな。」
茂みに隠れながら広い空間を見つけそこに唸り声の元凶を発見する。
かなり近くだったようで歩いて1分の所で唸り声の主であるグレイウルフを3匹見つけた。
「恐らくグレイトウルフですね。Cランクの魔物……もし見つかったらどうなるか。」
しかしそれだけではなく俺がこの前まで着ていた防具の元となったグレイトウルフが1匹いた。
灰色の毛皮に鋭い牙を持っているところはグレイウルフと見分けがつかないが、グレイトウルフはグレイウルフよりも二回り以上大きく、牙も爪も長く太くなっておりあれで攻撃されたらひとたまりもないだろう。
リーフはごくりと生唾を飲み僅かに手が震えさせる。
「あんなのと戦うのは危険だ。もう少しあいつらから離れてそこで野宿にしよう。」
「そうですね……ん、ユウキさんグレイウルフのそばになにか見えませんか?」
野宿場所を変更しようと、引き返そうとするとリーフが何かを見つけたらしく目を細めてグレイウルフのそばを見つめる。
「ユ、ユウキさんあれっ!」
グレイウルフ達に聞こえない程度にリーフは俺の肩を叩いてグレイウルフ達の近くにあるものを指差した。よく見ると白い髪をした人のようだ。うつ伏せで倒れているため性別は分からないが身長はリーフよりも少し小さいくらいだ。さらにその近くにいくつかのグレイウルフの死体がある。
「あれ人ですよ、血まみれで倒れてます、助けないとッ!」
リーフも人であることに気づいたようで表情に焦りを浮かべる。
「あの人がグレイウルフ達を倒したのか?……って助けるってまじ?」
グレイウルフは3匹、そしてグレイトウルフもいる。グレイウルフ3匹だけでも手こずるのにグレイトウルフはCランクの魔物。今の俺では勝てるかどうか怪しい上に、あの人を回収するとなるとかなり難しい。
「リーフ、無理じゃないか?助けようとしたら逆に俺達が殺られる。」
「で、でも見殺しになんてしたくないです。」
「とは言ってもな……って、やば!」
俺達に一番近いところにいたグレイウルフが鼻をヒクつかせ俺達の匂いに気がつき、俺達に向かって吠えかかってきた。それにつられて残りのグレイウルフ、グレイトウルフも気づき襲いかかってくる。
「こうなったら戦うしかない、俺がこいつらを引き付けるからリーフはあの人を回収してくれ!」
少しずつ力を取り戻しているとはいえグレイウルフ1匹ならまだしもFランクのリーフはこの数には勝てない。
「わ、分かりました!」
「ガルルルルッ!」
先頭に立つグレイトウルフは唸りながら近寄ってくる。
「〈黒煙の幻影よ〉!」
まともに戦っては普通に負ける。そう判断し『ダークスモーク』でグレイトウルフ達の視界を奪う。
「とりあえず一番厄介なグレイトウルフから……〈赤き炎を纏いし火矢よ・刺し射抜け〉!」
「ガルゥ――!」
『ファイアアロー』をグレイトウルフ目掛けて放つが、思ったよりもグレイトウルフは厄介なようで咄嗟に躱し、2本しか命中しなかった。
「ガルァッ!」
「〈護りし水膜よ〉!ぐっ――」
頭を振って『ダークスモーク』を振り払ったグレイトウルフはその大きな爪で俺を狙う。
デュアルアクションで2枚重ねした『ウォーターフィルム』で防ごうとするが2枚とも簡単に切り裂かれ浅く胸に傷を負わされる。
「いっった……革鎧着とけばよかったな。」
川で身体を洗う前までは着ていたが、あいにく身体を洗ったあとは普通の服しか着ていなかった。
「ガルルルルッ!」
「っ、ユウキさん!」
グレイトウルフに手こずっていると残りのグレイウルフがリーフに近寄っているのが見えた。リーフはちょうど倒れた人を抱えている最中で魔法を放つことは出来なさそうだ。
「リーフっ、すぐそこを離れろ!〈更なる力を求む〉、〈更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾〉!」
俺の声に反応したリーフは人を抱えたまま走り、それを追いかけようとした3匹のグレイウルフに向かってマルチターゲットを使用し3つに分裂した『マジックボム』を放つ。
「『マジックチャージ』で強化したけど……マルチターゲットで攻撃力が減少したから倒すのは無理か。」
グレイウルフを仕留めるのは無理だったが、グレイトウルフ含む4匹の犬共の注意を俺に引きつけることには成功する。
離れたリーフと目を合わせ俺達が来た方を一旦見てその方向に逃げろと軽く合図を送る。リーフは目を見開いて何か言いたそうにしているがその前にグレイトウルフ達が襲ってくる。
最後に俺はもう一度合図を送って戦闘態勢に戻る。
「『無は有に』、〈隔てよ土壁〉!」
一番先頭を走ってきたグレイウルフの目の前に『無は有に』で強度は土属性の、そして土属性のデメリットである魔法発動速度の遅さをなくした『アースウォール』を展開する。
魔法発動速度が無属性魔法並のため、ちょうどグレイウルフが飛びかかってきた瞬間に魔法は完成し、グレイウルフは驚きでバランスとタイミングを盛大に崩し『アースウォール』に激突する。
「リーフは……よし逃げれたようだな。〈更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾〉!」
一瞬だけリーフの方を見てちゃんとこの場を去ったことを確認して後ろにいるグレイトウルフ達の目の前を狙って『マジックボム』を放つ。
『マジックボム』は土と地面に落ちた木の葉を激しく撒き散らしグレイトウルフ達は僅かに怯み、視界を遮る。
「これで援護はできないだろ、〈赤き炎を纏いし火矢よ・刺し射抜け〉!」
「ガッ!?」
『アースウォール』に激突し態勢を直しかけていたグレイウルフ目掛け、『ファイアアロー』を5本全て命中させ、ようやく1体倒すことに成功する。
「グルッ……ガァァァッ!!」
視界が晴れ、俺が1体グレイウルフを倒したことに気付いたグレイトウルフは倒したグレイウルフを見て目を見開き牙になにか水色っぽいオーラのようなものを纏い、俺に襲いかかってきた。
「〈我は力を望む〉、〈小さな火球よ〉!」
直感的に噛まれたら不味いと感じ、両足を『パワーライズ』で強化し後ろに飛んでグレイトウルフの口に向かって『ファイア』を2発撃ち込む。
「ガルァ!?」
口内に直撃させることに成功し、グレイトウルフは転げ回っている。それを見た2匹のグレイウルフはグレイトウルフのそばに移動し唸り声をあげる。だが俺がグレイトウルフに決定的なダメージを与えたためか、近付いてこようとはしない。
「……リーフを追うか。」
一刻も早くリーフと合流しないとまた別の魔物に襲われるかもしれない。リーフ1人ならともかく回収した人を背負って対峙するのは危険すぎる。
俺はグレイウルフを見てこちらからなにかしない限り襲ってこなさそうな様子なのを確認するとリーフの元に向かって走り出した。
あれから1時間ほど経過し、近くに川を見つけた俺達は時間も夕方に差し掛かっていたため、ここで今夜は野宿しようと意見が一致した。
リーフが先に身体を洗い、俺は周りの見張りをしていたがリーフが川からあがってきたため交代し、今俺はパンツ一丁で川の水を使って身体を洗っているところだ。パンツがびしょびしょだが流石に外で全裸にはなりたくない。
「風呂入りたい」
髪に水をつけ洗って首を思いっきり振って水を飛ばし、あまりの冷たさに空を見ながら俺はポつりと呟いた。
あの温かい湯気のたつ風呂に入って1日の疲れを癒す、それを想像するだけでさらに風呂に入りたくなるが現実を見て冷たい水に身震いする。
「現実みないと……あー冷たい〈魔法のポケットよ〉、〈小さな火種よ〉」
素早く身体をゴシゴシと洗い、『マジックポケット』で大きめのタオルを身体に巻いて事前に集めておいた草木に『ファイア』を放って燃やし、前にしゃがんで身体を暖める。
この草木はリーフが絶対川から上がった後寒いからすぐに暖を取れるようにしましょう!と言って2人で集めたものだ。
「リーフが提案しなかったらどうなってたことか。」
「呼びました?」
「ギャァー!?」
「え?」
1人で呟いていたら急に後ろからリーフが話しかけてきて思わず変な声で絶叫してしまった。
「び、びっくりした……。」
「いやぁ、そろそろあがったかなと思って見に来たんですけど……ちょっと早かったですかね?」
チラッと俺の姿を見て視線を逸らす。
今の俺はパンツ一丁でタオルを体に巻いた状態だ。見られても別に恥ずかしくはないが、リーフは顔を赤らめている。
「大体身体は乾いたな。ちょっと着替えるから向こう向いててもらって構わないか?〈魔法のポケットよ〉」
「あっ、すみません。」
「別に謝ることでもないさ。」
俺の言葉でリーフは逆方面を向き、俺はそのうちに『マジックポケット』から着替えを取りだしてパパっと着替える。
「振り向いて大丈夫だぞ。さて、ちょっと早いがご飯にでもするか?」
「そうですね、ブラックボアのお肉……生のままで放置しておくのもまずいですしね。」
リーフはブラックボアの肉を取り出してそれを眺める。
水で洗ったことで血は綺麗に落とされている。
「結構小さく切ったと思いましたけど、こうして見るとやっぱりちょっと大きいですね。」
「そうだな、でかくてこのままじゃ中まで火が通らないだろうし……小さく切ろう。」
まな板が無いため川の近くまで行って大きな平らな石を見つけ、無限水筒の水で綺麗にしてリーフの元に戻り、短剣で肉を切る。今回食べる分以外は焼いた後『マジックポケット』に入れ、明日の朝に食べるつもりだ。
「調味料とかはないからこのまま味付け無しで食べるか。」
「なにか調味料があれば美味しく食べれたんですけどね。こればっかりは仕方ありません。あ、ブラックボアのお肉なので前に宿屋で食べて喉に引っ掛けたお肉と同じなので気をつけてくださいね。」
肉を切り終え、石のまな板を火の上に置こうとするとニコニコしながらリーフは注意してきた。
「思い出したくなかった……。」
あの時俺は喉にブラックボアの肉を引っ掛け、水がなかったためアレンの飲んでいた酒を一気に飲み、べろんべろんに酔って吐いてリーフの世話になってしまった。
「今は酒もないし、無限水筒があるからもし引っ掛けたとしても大丈夫だ……多分。……はぁ、もう焼くぞ。」
今度こそまな板を火の上に置こうとしたその瞬間、木々の間から凍りつくような冷たい風が流れてきた。
「寒っ、なんだ急に!?」
「奥の方から冷たい風……?」
リーフも気付いたようで腕をさすりながら風が吹いてきた方を見る。
「なにか聞こえるな、唸り声がする。この唸り声聞き覚えがあるな。多分グレイウルフか?」
聞き耳を立ててみるとグルルゥと、狼のようなものの唸り声が聞こえた。
「せっかく準備したけど離れた方がいいですかね?」
「ちょっと見に行かないか?1、2匹くらいなら倒せると思う。せっかく火も確保したのにここを離れるとなったらまた草木を集めないといけなくなる。」
「うーん、また集め直すとなると辺りが暗くなりますよね。分かりました。」
リーフは僅かに悩む素振りをするが、こくりと頷いて立ち上がる。
「じゃあ行くか。見つからないようなるべく静かに行くぞ。」
「了解です。」
肉を『マジックポケット』の中に戻し、グレイウルフの唸り声が聞こえた森の奥に俺とリーフは足音を極力消しながら進んで行った。
「やっぱりグレイウルフか……。って、なんかでかいのがいるな。」
茂みに隠れながら広い空間を見つけそこに唸り声の元凶を発見する。
かなり近くだったようで歩いて1分の所で唸り声の主であるグレイウルフを3匹見つけた。
「恐らくグレイトウルフですね。Cランクの魔物……もし見つかったらどうなるか。」
しかしそれだけではなく俺がこの前まで着ていた防具の元となったグレイトウルフが1匹いた。
灰色の毛皮に鋭い牙を持っているところはグレイウルフと見分けがつかないが、グレイトウルフはグレイウルフよりも二回り以上大きく、牙も爪も長く太くなっておりあれで攻撃されたらひとたまりもないだろう。
リーフはごくりと生唾を飲み僅かに手が震えさせる。
「あんなのと戦うのは危険だ。もう少しあいつらから離れてそこで野宿にしよう。」
「そうですね……ん、ユウキさんグレイウルフのそばになにか見えませんか?」
野宿場所を変更しようと、引き返そうとするとリーフが何かを見つけたらしく目を細めてグレイウルフのそばを見つめる。
「ユ、ユウキさんあれっ!」
グレイウルフ達に聞こえない程度にリーフは俺の肩を叩いてグレイウルフ達の近くにあるものを指差した。よく見ると白い髪をした人のようだ。うつ伏せで倒れているため性別は分からないが身長はリーフよりも少し小さいくらいだ。さらにその近くにいくつかのグレイウルフの死体がある。
「あれ人ですよ、血まみれで倒れてます、助けないとッ!」
リーフも人であることに気づいたようで表情に焦りを浮かべる。
「あの人がグレイウルフ達を倒したのか?……って助けるってまじ?」
グレイウルフは3匹、そしてグレイトウルフもいる。グレイウルフ3匹だけでも手こずるのにグレイトウルフはCランクの魔物。今の俺では勝てるかどうか怪しい上に、あの人を回収するとなるとかなり難しい。
「リーフ、無理じゃないか?助けようとしたら逆に俺達が殺られる。」
「で、でも見殺しになんてしたくないです。」
「とは言ってもな……って、やば!」
俺達に一番近いところにいたグレイウルフが鼻をヒクつかせ俺達の匂いに気がつき、俺達に向かって吠えかかってきた。それにつられて残りのグレイウルフ、グレイトウルフも気づき襲いかかってくる。
「こうなったら戦うしかない、俺がこいつらを引き付けるからリーフはあの人を回収してくれ!」
少しずつ力を取り戻しているとはいえグレイウルフ1匹ならまだしもFランクのリーフはこの数には勝てない。
「わ、分かりました!」
「ガルルルルッ!」
先頭に立つグレイトウルフは唸りながら近寄ってくる。
「〈黒煙の幻影よ〉!」
まともに戦っては普通に負ける。そう判断し『ダークスモーク』でグレイトウルフ達の視界を奪う。
「とりあえず一番厄介なグレイトウルフから……〈赤き炎を纏いし火矢よ・刺し射抜け〉!」
「ガルゥ――!」
『ファイアアロー』をグレイトウルフ目掛けて放つが、思ったよりもグレイトウルフは厄介なようで咄嗟に躱し、2本しか命中しなかった。
「ガルァッ!」
「〈護りし水膜よ〉!ぐっ――」
頭を振って『ダークスモーク』を振り払ったグレイトウルフはその大きな爪で俺を狙う。
デュアルアクションで2枚重ねした『ウォーターフィルム』で防ごうとするが2枚とも簡単に切り裂かれ浅く胸に傷を負わされる。
「いっった……革鎧着とけばよかったな。」
川で身体を洗う前までは着ていたが、あいにく身体を洗ったあとは普通の服しか着ていなかった。
「ガルルルルッ!」
「っ、ユウキさん!」
グレイトウルフに手こずっていると残りのグレイウルフがリーフに近寄っているのが見えた。リーフはちょうど倒れた人を抱えている最中で魔法を放つことは出来なさそうだ。
「リーフっ、すぐそこを離れろ!〈更なる力を求む〉、〈更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾〉!」
俺の声に反応したリーフは人を抱えたまま走り、それを追いかけようとした3匹のグレイウルフに向かってマルチターゲットを使用し3つに分裂した『マジックボム』を放つ。
「『マジックチャージ』で強化したけど……マルチターゲットで攻撃力が減少したから倒すのは無理か。」
グレイウルフを仕留めるのは無理だったが、グレイトウルフ含む4匹の犬共の注意を俺に引きつけることには成功する。
離れたリーフと目を合わせ俺達が来た方を一旦見てその方向に逃げろと軽く合図を送る。リーフは目を見開いて何か言いたそうにしているがその前にグレイトウルフ達が襲ってくる。
最後に俺はもう一度合図を送って戦闘態勢に戻る。
「『無は有に』、〈隔てよ土壁〉!」
一番先頭を走ってきたグレイウルフの目の前に『無は有に』で強度は土属性の、そして土属性のデメリットである魔法発動速度の遅さをなくした『アースウォール』を展開する。
魔法発動速度が無属性魔法並のため、ちょうどグレイウルフが飛びかかってきた瞬間に魔法は完成し、グレイウルフは驚きでバランスとタイミングを盛大に崩し『アースウォール』に激突する。
「リーフは……よし逃げれたようだな。〈更なる魔力纏いて・爆ぜよ魔弾〉!」
一瞬だけリーフの方を見てちゃんとこの場を去ったことを確認して後ろにいるグレイトウルフ達の目の前を狙って『マジックボム』を放つ。
『マジックボム』は土と地面に落ちた木の葉を激しく撒き散らしグレイトウルフ達は僅かに怯み、視界を遮る。
「これで援護はできないだろ、〈赤き炎を纏いし火矢よ・刺し射抜け〉!」
「ガッ!?」
『アースウォール』に激突し態勢を直しかけていたグレイウルフ目掛け、『ファイアアロー』を5本全て命中させ、ようやく1体倒すことに成功する。
「グルッ……ガァァァッ!!」
視界が晴れ、俺が1体グレイウルフを倒したことに気付いたグレイトウルフは倒したグレイウルフを見て目を見開き牙になにか水色っぽいオーラのようなものを纏い、俺に襲いかかってきた。
「〈我は力を望む〉、〈小さな火球よ〉!」
直感的に噛まれたら不味いと感じ、両足を『パワーライズ』で強化し後ろに飛んでグレイトウルフの口に向かって『ファイア』を2発撃ち込む。
「ガルァ!?」
口内に直撃させることに成功し、グレイトウルフは転げ回っている。それを見た2匹のグレイウルフはグレイトウルフのそばに移動し唸り声をあげる。だが俺がグレイトウルフに決定的なダメージを与えたためか、近付いてこようとはしない。
「……リーフを追うか。」
一刻も早くリーフと合流しないとまた別の魔物に襲われるかもしれない。リーフ1人ならともかく回収した人を背負って対峙するのは危険すぎる。
俺はグレイウルフを見てこちらからなにかしない限り襲ってこなさそうな様子なのを確認するとリーフの元に向かって走り出した。
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