24 / 120
24 屋台の食べ物と、
しおりを挟む
店を出て少し歩けば、先ほど見かけたにぎやかな市場についた。やはりハルタカはとても目立っていて、あちこちでハルタカを見てひそひそと話しをしている人がいる。無論何人かは直接声をかけてきて、商品を献上しようとしてきたりした。
ハルタカは周りでひそひそと話している人々の事は気に留めていないようだったが、何やら品物を献上しようとする者たちには丁寧な断りの言葉を述べていた。断られて残念そうな顔をする彼らを見て、マヒロは尋ねた。
「なんで全部断るの?要らないものばかりだった?」
顔を見上げてくるマヒロにふっと笑みを返しながら頭を撫でた。
「あの者たちはただ私に何かくれようとしているわけではない。龍人に何か献上したと、ここの領主に届け出れば報奨金がもらえる。また、私が受け取ったという噂が回ればその者の店は売り上げが上がるんだ。だから献上したいものが多い」
「‥え、何かそれって‥ちょっと、やな感じ」
そう少し不機嫌そうにつぶやくマヒロに、思わずふっと笑ってしまった。
「はは、マヒロはそう思うか。‥私は仕方のないことだと思っている。ヒトはみな必死に日々を生きてゆかねばならぬからな」
「‥そか‥」
「だが受け取っていてもきりがないのでな。献上に来るものからは、よほどのことがない限り受け取らぬようにしているのだ」
「なるほど」
では、今から市場とかで買ったりするぶんには大丈夫な感じかな。
正直なところ、珍しいものばかりが目に付いて手にしてみたいものばかりなのだ。別に全部買いたいという訳ではないが、とりあえず色々と近くで見てみたい。マヒロとしては初めて海外旅行に来たような気持ちだった。
市場には本当に雑多なものが様々並べられていた。ハルタカが来ると喧騒が少し収まるが、遠くでは人々の生活の音がかまびすしく聞こえてきている。それはここで生きているヒトがいるのだとマヒロにしっかりと感じさせてくれるものだった。
「わー、何かわかんないものばっか」
何に使うのかわからないものが多いが、武器や防具っぽいもの、衣服や衣料雑貨、生活雑貨や食べ物などは何となく見ているとわかる。
「何でも気になったものは手に取ってみていいぞ」
とハルタカが言ってくれたので、遠慮なく色々と見てみることにする。
かわいらしいボタンの縫い付けられた帯。
簪のような飾り。
髪を結ぶための飾り紐。
ごく寒い地域に行くときのための厚い毛皮。
異生物という怪物からとれるという珍しい素材。
獣を狩る時の獲物や、武器や防具。
色々見て回る中で、ハルタカが手にしたものを片っ端から買おうとするのを止めるのにも忙しい。止めようとするとお店の人がひどく悲しそうな顔でこちらを見てくるので、それにも耐えなければならないマヒロはだんだん疲れてきてしまった。
「ハルタカ、お腹すきました」
「そうか、では食べ物が売っているあたりに行こう」
そう言ってくれるハルタカについて少し市場を移動すると、ふわっと美味しいにおいが立ち込めてくる。甘いものもしょっぱいものも混じり合ったような複雑なにおいで、おお、市場っぽい!と思った。
そこで売っていた、何かの肉を揚げたものを買ってみる。揚げたてなので湯気が出ている。かぷりと噛んでみると肉汁が溢れてきてうまい。外側の衣は少し熱くてサクサクしているのもよかった。
「美味しいね!」
「サムラの揚げ物だな。私も時々食べる」
「あっ、あれ!食べたい!」
マヒロが指さしたのは、小さな木の入れ物に入れて売っている麺料理だった。傍によってよく見れば、麺と言っても一本が短く10cmくらいしかない。そこに細かく刻んだ野菜とひき肉を炒めたものをぶっかけ、温かいスープを少しかけた料理だった。
「マルーだな。アツレンの名物料理だ」
「食べたい!麺食べたい!」
ハルタカが頼めば、小さな木の入れ物と、先割れスプーンのようなものを一緒に渡してくれた。これも熱々でふうふう吹き冷ましながら口に入れてみる。少し香辛料のきいた甘じょっぱい味付けでマヒロの口に合った。瞬く間に食べてしまったマヒロに若い店員が「おまけです」と言って飲み物の入ったカップを渡してくれた。そして入れ物とスプーンを引き取っていく。カップに入っていたのは、少し甘みのあるお茶で美味しかった。
「入れ物とスプーンは返すんだね」
「返せばその分の料金も返ってくる。入れ物が欲しいものは返さなくてもいいんだ」
「へー!エコな感じだ」
「えこ?」
不審げにこちらを見てくるハルタカに、何といって説明しようか考える。
「んーと、ものを大事に使おう、って感じ?」
「それは当たり前ではないのか。ものは作るものや売るもの、色々な人々の手を経てなるものだ。大事にするのは当然だろう」
マヒロの頭の中に、世界史で習った産業革命が思い起こされる。まだこの世界は大量生産大量消費の世界ではないのだろう。明治維新前の日本も同じような感じだったかもしれない。
「‥そうだね、でも私のいたところでは物は使い捨て、っていうのもたくさんあって‥結構よくないものの使い方してたかも」
「ふむ。興味深いな。またその事は別の機会に詳しく教えてくれ。外ではない方がいいだろう」
「‥あ、そっか、わかった」
そう返事をして甘いお茶を啜った。タピオカミルクティーも好きだったけど、これもおいしくて好きだ。タピオカっぽい食べ物ってあるのかな。
そう思いながら歩いていると、甘い匂いが強くなった。何の匂いだろうと思って見回すと、また小さな木の入れ物に何か入れて売っている屋台が見える。看板に何か字が書いてあるが読めないのでわからない。だが客層は若者が多いように見えた。
「ハルタカ、あれ何?」
ハルタカは指さされた看板の文字を読んで答えた。
「ああ、ピルカだな。菓子だ、甘い汁の中に柔らかい団子が入っている」
お汁粉っぽいものだろうか。
「ハルタカ食べたことある?」
「‥‥ここ何十年かは食べていない、と思う」
スパンが長い!そうかこのヒト三百歳オーバーだった。見た目が若いからいつも忘れてしまうけど。
「じゃ一緒に食べてみようよ」
そう言って屋台に並び、菓子を手にした。白くとろりとした汁の中に、桃色の親指くらいの団子が入っていて、団子の真ん中は指で押したようにくぼんでいる。フォークのようなもので挿して食べてみると、強い甘みがあって美味しい。汁の方に甘みがあり、団子の方にはほとんど味はないが食べ応えが餅に似ている。
「美味しい!ハルタカはどう?」
もそもそと咀嚼しながらハルタカが答えた。
「うまいな」
よかった~と思いながら食べているとふっと目の前が暗くなった。ふと見上げれば、目の前にハルタカと同じくらいの背丈の男が二人立っている。どちらも重そうな甲冑のようなものを身につけていて、背に大きな剣を担いでいた。
「龍人ハルタカ様」
ハルタカは周りでひそひそと話している人々の事は気に留めていないようだったが、何やら品物を献上しようとする者たちには丁寧な断りの言葉を述べていた。断られて残念そうな顔をする彼らを見て、マヒロは尋ねた。
「なんで全部断るの?要らないものばかりだった?」
顔を見上げてくるマヒロにふっと笑みを返しながら頭を撫でた。
「あの者たちはただ私に何かくれようとしているわけではない。龍人に何か献上したと、ここの領主に届け出れば報奨金がもらえる。また、私が受け取ったという噂が回ればその者の店は売り上げが上がるんだ。だから献上したいものが多い」
「‥え、何かそれって‥ちょっと、やな感じ」
そう少し不機嫌そうにつぶやくマヒロに、思わずふっと笑ってしまった。
「はは、マヒロはそう思うか。‥私は仕方のないことだと思っている。ヒトはみな必死に日々を生きてゆかねばならぬからな」
「‥そか‥」
「だが受け取っていてもきりがないのでな。献上に来るものからは、よほどのことがない限り受け取らぬようにしているのだ」
「なるほど」
では、今から市場とかで買ったりするぶんには大丈夫な感じかな。
正直なところ、珍しいものばかりが目に付いて手にしてみたいものばかりなのだ。別に全部買いたいという訳ではないが、とりあえず色々と近くで見てみたい。マヒロとしては初めて海外旅行に来たような気持ちだった。
市場には本当に雑多なものが様々並べられていた。ハルタカが来ると喧騒が少し収まるが、遠くでは人々の生活の音がかまびすしく聞こえてきている。それはここで生きているヒトがいるのだとマヒロにしっかりと感じさせてくれるものだった。
「わー、何かわかんないものばっか」
何に使うのかわからないものが多いが、武器や防具っぽいもの、衣服や衣料雑貨、生活雑貨や食べ物などは何となく見ているとわかる。
「何でも気になったものは手に取ってみていいぞ」
とハルタカが言ってくれたので、遠慮なく色々と見てみることにする。
かわいらしいボタンの縫い付けられた帯。
簪のような飾り。
髪を結ぶための飾り紐。
ごく寒い地域に行くときのための厚い毛皮。
異生物という怪物からとれるという珍しい素材。
獣を狩る時の獲物や、武器や防具。
色々見て回る中で、ハルタカが手にしたものを片っ端から買おうとするのを止めるのにも忙しい。止めようとするとお店の人がひどく悲しそうな顔でこちらを見てくるので、それにも耐えなければならないマヒロはだんだん疲れてきてしまった。
「ハルタカ、お腹すきました」
「そうか、では食べ物が売っているあたりに行こう」
そう言ってくれるハルタカについて少し市場を移動すると、ふわっと美味しいにおいが立ち込めてくる。甘いものもしょっぱいものも混じり合ったような複雑なにおいで、おお、市場っぽい!と思った。
そこで売っていた、何かの肉を揚げたものを買ってみる。揚げたてなので湯気が出ている。かぷりと噛んでみると肉汁が溢れてきてうまい。外側の衣は少し熱くてサクサクしているのもよかった。
「美味しいね!」
「サムラの揚げ物だな。私も時々食べる」
「あっ、あれ!食べたい!」
マヒロが指さしたのは、小さな木の入れ物に入れて売っている麺料理だった。傍によってよく見れば、麺と言っても一本が短く10cmくらいしかない。そこに細かく刻んだ野菜とひき肉を炒めたものをぶっかけ、温かいスープを少しかけた料理だった。
「マルーだな。アツレンの名物料理だ」
「食べたい!麺食べたい!」
ハルタカが頼めば、小さな木の入れ物と、先割れスプーンのようなものを一緒に渡してくれた。これも熱々でふうふう吹き冷ましながら口に入れてみる。少し香辛料のきいた甘じょっぱい味付けでマヒロの口に合った。瞬く間に食べてしまったマヒロに若い店員が「おまけです」と言って飲み物の入ったカップを渡してくれた。そして入れ物とスプーンを引き取っていく。カップに入っていたのは、少し甘みのあるお茶で美味しかった。
「入れ物とスプーンは返すんだね」
「返せばその分の料金も返ってくる。入れ物が欲しいものは返さなくてもいいんだ」
「へー!エコな感じだ」
「えこ?」
不審げにこちらを見てくるハルタカに、何といって説明しようか考える。
「んーと、ものを大事に使おう、って感じ?」
「それは当たり前ではないのか。ものは作るものや売るもの、色々な人々の手を経てなるものだ。大事にするのは当然だろう」
マヒロの頭の中に、世界史で習った産業革命が思い起こされる。まだこの世界は大量生産大量消費の世界ではないのだろう。明治維新前の日本も同じような感じだったかもしれない。
「‥そうだね、でも私のいたところでは物は使い捨て、っていうのもたくさんあって‥結構よくないものの使い方してたかも」
「ふむ。興味深いな。またその事は別の機会に詳しく教えてくれ。外ではない方がいいだろう」
「‥あ、そっか、わかった」
そう返事をして甘いお茶を啜った。タピオカミルクティーも好きだったけど、これもおいしくて好きだ。タピオカっぽい食べ物ってあるのかな。
そう思いながら歩いていると、甘い匂いが強くなった。何の匂いだろうと思って見回すと、また小さな木の入れ物に何か入れて売っている屋台が見える。看板に何か字が書いてあるが読めないのでわからない。だが客層は若者が多いように見えた。
「ハルタカ、あれ何?」
ハルタカは指さされた看板の文字を読んで答えた。
「ああ、ピルカだな。菓子だ、甘い汁の中に柔らかい団子が入っている」
お汁粉っぽいものだろうか。
「ハルタカ食べたことある?」
「‥‥ここ何十年かは食べていない、と思う」
スパンが長い!そうかこのヒト三百歳オーバーだった。見た目が若いからいつも忘れてしまうけど。
「じゃ一緒に食べてみようよ」
そう言って屋台に並び、菓子を手にした。白くとろりとした汁の中に、桃色の親指くらいの団子が入っていて、団子の真ん中は指で押したようにくぼんでいる。フォークのようなもので挿して食べてみると、強い甘みがあって美味しい。汁の方に甘みがあり、団子の方にはほとんど味はないが食べ応えが餅に似ている。
「美味しい!ハルタカはどう?」
もそもそと咀嚼しながらハルタカが答えた。
「うまいな」
よかった~と思いながら食べているとふっと目の前が暗くなった。ふと見上げれば、目の前にハルタカと同じくらいの背丈の男が二人立っている。どちらも重そうな甲冑のようなものを身につけていて、背に大きな剣を担いでいた。
「龍人ハルタカ様」
10
あなたにおすすめの小説
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる