朧月

カフェ・オーレ

文字の大きさ
75 / 88
変わる世界

5.8

しおりを挟む

杏果と美菜と別れ、2人で家までの道のりをトボトボと歩く。
綺麗な夕暮れが、桜を照らしていた。

「ねぇ皐月」

朋美はカバンから小さな袋と手紙を取り出し、私に手渡す。
中を開けて見ると、そこにはミサンガが入っていて。

「手紙は照れ臭いから帰ってから見て、またね!」

くるっと私に背を向けて、家とは逆方向の道を走り去って行った朋美。
まあいいか、と思って一人で家に帰ると、そこには相原と竹内と道重の姿が。

「皐月の母ちゃんに呼ばれたんだよ~、ところでさ、美菜ちゃんと知り合いだったの?」

竹内はニヤニヤ笑みを浮かべて家の中でシャボン玉を膨らませていた。

「何で美菜の事知ってたの?」

「昔のバイト先が一緒だったからな!これで俺もリア充か~、くぅ~!!」

道重も最近彼女が出来たそうで。
自分だけ彼女が居ない事で、二人を妬んでいたと話した。

「いいだろ~」

相原は私に抱きつき、竹内の顔を見てニヤニヤと笑う。
竹内は悔しそうにシャボン玉を私達の顔面に向けて吹き、奇声を上げていた。

「あら、皐月帰ってたの」

お母さんは寝巻き姿のスッピンでお風呂場から出てきて、大量のオムライスを作ってくれた。

それを全員で食べながらテレビを見ていると、突然お母さんが口を開いた。

「そうだ、人を1人呼んでもいいかしら」

「いいっすよ!何人でも!」

まるで我が家に住んでいる様に受け答えする相原。
道重と竹内もウキウキしながらその人が来るのを待っていた。

しばらくして玄関のチャイムが鳴り、お母さんが受け答えする。

「初めまして、吉野と申します。」

中に入って来たのは、スーツ姿で髪の毛をビシッと整えた少し若目な男性。
軽く挨拶をして、その男性はお母さんの隣の席に座る。

「この人と結婚しようと思うんだけど、どうかしら?」

「「「「はぁ!!??」」」」

盛大にハモって声を出すと、吉野さんとお母さんは笑ってお互いの顔を見つめ合う。

「すぐにじゃ無いわ、結婚前提でお付き合いしている方なの」

何処でそんな人を捕まえたのだ、と内心パニックになって相原を見ると、放心状態で開いた口が塞がっていなくて。
竹内と道重は興奮して、吉野さんに質問攻めしていた。

「ずっと皐月ちゃんに挨拶をしたかったんだ、だけど色々大変だって話を聞いていたから。落ち着いたら挨拶をしようって話をしててね?」

照れ臭そうに微笑む吉野さん。
去年の冬から付き合い出したと話した。

「じゃあ、吉野さん送って行くから、ゆっくりご飯食べてなさい」

パタンと閉まった扉。
道重と竹内だけが、ひたすら興奮していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる

えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。 一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。 しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。 皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

処理中です...