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24話 りりいから ききました
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数日後、俺はリリーの企画書を読み「なるほど」と唸った。
「ゴーレムメーカー……たしかに工作部隊が使っていた。そうか、魔王城で死蔵されてたのか」
ゴーレムメーカーとは、その名の通りゴーレムを生み出す魔道具だ。
材料を集めて起動するとゴーレムとなり、主に許可を受けた工事現場で用いられている。
もともとゴーレム生産は錬金術の秘奥であり、これを魔道具化したゴーレムメーカーは大変に高価なものだ。
サイズは大中小あるが、一般的にゴーレムでイメージする人の1.5倍くらいあるゴツいので中サイズ。
DPで換算すれば中型で10000だ。
企画書によると、このゴーレムメーカーが魔王城で8年近く死蔵されているらしい。
さきの戦争で地方軍を解体させたおりに没収した物だそうだ。
ゴーレムは単純な作業しかせず動きも緩慢だが、大量に集めればそれなりの戦力にはなる。
反乱を起こした者から取り上げるのは自然な話だ。
「だが、この死蔵させているゴーレムメーカーをダンジョン公社に払い下げ、それをさらにダンジョンに配備というのは……これは俺の裁量をはるかに超えている。許可を出せるのは、この企画を上申するとこまでになるな」
そりゃそうである。
ダンジョンとは魔王城の外郭団体のさらに下部組織だ。
ダブついてるからと在庫を譲ってもらえるような立場ではない。
「それでですね、企画書を作るときに姉に少し相談したんです」
この姉が魔王様なわけだ。
よく考えたら、リリーにとっては実家の倉庫で眠ってる不要物の処分を姉と相談したとも言える。
「軍縮が問題になってる時期ですから、姉は喜んでしまって……軍の死蔵品が民間で活用されるわけですし」
「ああ、なるほど。そういう見方もできるわけか」
死蔵品とはいえゴーレムメーカーを民間に払い下げれば書類上では『保有数の削減』『予算の確保』とでも書けるだろう。
その予算を退役軍人への一時金にでもすれば、無理なく軍縮を進めることも可能かもしれない。
軍縮は魔王軍の懸案事項だし、これで魔王様も軍縮派に顔がたつ。
(リリーは国策を左右する相談を家でしてたわけか……)
なんともスケールの大きな姉妹である。
「軍縮か……見事な目のつけどころだ。公社の都合もあるだろうし、一朝一夕にとはいかんだろうが上申すべきだな」
「いえ、この話を聞いた姉は大変喜びまして、公社と内務卿に下話をつけてしまったみたいなんです。ですから、この企画はエドに見せる前に動いてしまいました」
リリーは申し訳なさそうに「こんなことになるとは思いませんでした」と頭を下げる。
「本来はエドから公社に上申されるべきでした。それを無視するような形になってしまって……」
確かにこれは俺の頭を飛び越えるどころか、国家元首まで話がいったわけだからリリーの抜け駆けみたいな形になってしまったわけだ。
しかし、彼女の場合は家族が国家元首なわけで、家庭の会話が罰の対象かと言われれば難しい。
それにこの企画が進めばウチのダンジョンが得するわけだ。
言い出しっぺのリリーがいるダンジョンにゴーレムメーカーが来る可能性は高い。
(よし、ならば毒を喰らわば皿までだ!)
俺はニヤリと笑い、企画書の手直しを決めた。
「上の話は俺には分からない。だから知らないことにして今日中に上申してしまおう」
俺の言葉にリリーが不思議そうな顔をする。
ピンと来ないようだ。
「企画が表沙汰になる前に上申して、このゴーレムメーカー計画の立案者面して優先配備を狙うのさ。そうだな……追加する項目は新規ダンジョンにおけるゴーレムメーカー運用テストの実施とでもするか。リリー、細かい数字などは気にせずすぐにまとめてくれ」
こんなのはダメで元々、うまくいけばラッキーでいいだろう。
俺だって聖人ではない。
働くならやりがいのある仕事がいいし、給料だって高いほうがいい。
ポイントを稼げるとこでセコく稼ぐのも大事なことだ。
(できれば蓄えて、老後はいい養老院に行きたいしな)
ダンジョンマスターは功績を積めば内務卿にすらなれるのだから、やりがいは十分だ。
まあ、そこまでの出世は別にしても、俺の立場が高くなれば部下だっていい目が見れるだろう。
俺はチラッとモニターを見る。
そこにはペンキをふき取っているゴルン、タック、アンの姿が映っていた。
「どうしたんですか?」
「いや、ゴーレムメーカーの運用を考えていたよ。企画書、よろしく頼むよ」
俺は適当に誤魔化し、メーラーを取り出した。
使えるコネは使っておくべきだろう。
『りりいから ききました こおれむめえかあ の けん よろしく おねかいします』
俺が魔王様に送信すると、すぐに返信が来た。
『おけおけ』
たぶん、話は通ったはずである。
あとはリリーに手直しした企画書を本社に提出してもらう。
さて、これでゴーレムメーカーがこれば2階層のモンスター問題は解決するのだが……さて、どうなることやら。
「ゴーレムメーカー……たしかに工作部隊が使っていた。そうか、魔王城で死蔵されてたのか」
ゴーレムメーカーとは、その名の通りゴーレムを生み出す魔道具だ。
材料を集めて起動するとゴーレムとなり、主に許可を受けた工事現場で用いられている。
もともとゴーレム生産は錬金術の秘奥であり、これを魔道具化したゴーレムメーカーは大変に高価なものだ。
サイズは大中小あるが、一般的にゴーレムでイメージする人の1.5倍くらいあるゴツいので中サイズ。
DPで換算すれば中型で10000だ。
企画書によると、このゴーレムメーカーが魔王城で8年近く死蔵されているらしい。
さきの戦争で地方軍を解体させたおりに没収した物だそうだ。
ゴーレムは単純な作業しかせず動きも緩慢だが、大量に集めればそれなりの戦力にはなる。
反乱を起こした者から取り上げるのは自然な話だ。
「だが、この死蔵させているゴーレムメーカーをダンジョン公社に払い下げ、それをさらにダンジョンに配備というのは……これは俺の裁量をはるかに超えている。許可を出せるのは、この企画を上申するとこまでになるな」
そりゃそうである。
ダンジョンとは魔王城の外郭団体のさらに下部組織だ。
ダブついてるからと在庫を譲ってもらえるような立場ではない。
「それでですね、企画書を作るときに姉に少し相談したんです」
この姉が魔王様なわけだ。
よく考えたら、リリーにとっては実家の倉庫で眠ってる不要物の処分を姉と相談したとも言える。
「軍縮が問題になってる時期ですから、姉は喜んでしまって……軍の死蔵品が民間で活用されるわけですし」
「ああ、なるほど。そういう見方もできるわけか」
死蔵品とはいえゴーレムメーカーを民間に払い下げれば書類上では『保有数の削減』『予算の確保』とでも書けるだろう。
その予算を退役軍人への一時金にでもすれば、無理なく軍縮を進めることも可能かもしれない。
軍縮は魔王軍の懸案事項だし、これで魔王様も軍縮派に顔がたつ。
(リリーは国策を左右する相談を家でしてたわけか……)
なんともスケールの大きな姉妹である。
「軍縮か……見事な目のつけどころだ。公社の都合もあるだろうし、一朝一夕にとはいかんだろうが上申すべきだな」
「いえ、この話を聞いた姉は大変喜びまして、公社と内務卿に下話をつけてしまったみたいなんです。ですから、この企画はエドに見せる前に動いてしまいました」
リリーは申し訳なさそうに「こんなことになるとは思いませんでした」と頭を下げる。
「本来はエドから公社に上申されるべきでした。それを無視するような形になってしまって……」
確かにこれは俺の頭を飛び越えるどころか、国家元首まで話がいったわけだからリリーの抜け駆けみたいな形になってしまったわけだ。
しかし、彼女の場合は家族が国家元首なわけで、家庭の会話が罰の対象かと言われれば難しい。
それにこの企画が進めばウチのダンジョンが得するわけだ。
言い出しっぺのリリーがいるダンジョンにゴーレムメーカーが来る可能性は高い。
(よし、ならば毒を喰らわば皿までだ!)
俺はニヤリと笑い、企画書の手直しを決めた。
「上の話は俺には分からない。だから知らないことにして今日中に上申してしまおう」
俺の言葉にリリーが不思議そうな顔をする。
ピンと来ないようだ。
「企画が表沙汰になる前に上申して、このゴーレムメーカー計画の立案者面して優先配備を狙うのさ。そうだな……追加する項目は新規ダンジョンにおけるゴーレムメーカー運用テストの実施とでもするか。リリー、細かい数字などは気にせずすぐにまとめてくれ」
こんなのはダメで元々、うまくいけばラッキーでいいだろう。
俺だって聖人ではない。
働くならやりがいのある仕事がいいし、給料だって高いほうがいい。
ポイントを稼げるとこでセコく稼ぐのも大事なことだ。
(できれば蓄えて、老後はいい養老院に行きたいしな)
ダンジョンマスターは功績を積めば内務卿にすらなれるのだから、やりがいは十分だ。
まあ、そこまでの出世は別にしても、俺の立場が高くなれば部下だっていい目が見れるだろう。
俺はチラッとモニターを見る。
そこにはペンキをふき取っているゴルン、タック、アンの姿が映っていた。
「どうしたんですか?」
「いや、ゴーレムメーカーの運用を考えていたよ。企画書、よろしく頼むよ」
俺は適当に誤魔化し、メーラーを取り出した。
使えるコネは使っておくべきだろう。
『りりいから ききました こおれむめえかあ の けん よろしく おねかいします』
俺が魔王様に送信すると、すぐに返信が来た。
『おけおけ』
たぶん、話は通ったはずである。
あとはリリーに手直しした企画書を本社に提出してもらう。
さて、これでゴーレムメーカーがこれば2階層のモンスター問題は解決するのだが……さて、どうなることやら。
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