71 / 87
第3章 消えた街
第8話 壊れた魔石
しおりを挟む
結界を張ったお陰で2階層は随分と楽である。
結界は濃い魔素に反応して反発力が働く仕組みであり、大きくすればその力は弱くなる。
当然街を覆うほどまでも大きさにすれば、せいぜいゴブリン程度しか退けられなくなるのだが、今はたった4人を覆う程度である。
「凄いなぁ、上位種の攻撃もものともしない」
「なぁシュウ……うちにもポーションちょうだいや、エーテルの方」
ずっとエンチャントし消費した魔力を回復し続けて、それはそれは気持ち悪そうにしながらも、ローズはまだエンチャントをし続ける。
束でエンチャントするよりも1本ずつの方が効果的だからって、結界に入ってからもずっとやっているのだ。
「ローズお姉様、少々休まれては?」
ミドがそう言いながら、ローズの背中をさすっていた。
後で動けなくなってしまわれるのも困るので、俺もローズに休むよう促すと、ようやくその手が止まったのだ。
「せやなぁ、後で迷惑んなるかもしれへんし……」
だいぶ疲れている様子であった。
「で、レギのさっきの剣は?」
「これ、シロですよ」
レベル25で得た武器化のスキルだそうだ。確かに反った形状や毛をイメージしたのか鋸状になった峰に白い刀身。
言われる前から予想はしていたのだが、あの大きな白狼の武器化した姿であった。
「しかしデカいな、大丈夫か?」
「まぁちょっぴり重いですね、僕の力じゃ振り回すのは難しいです」
ちょっとだけ持たせてもらったのだが、見た目通りの重さで、俺でも振り回すのは大変そうであった。
「タマはどんな武器なんだ?」
「あ、そっちの方が重かったです。おっきなハンマーになっちゃって持ち上がりませんでした」
レギは笑いながらそう言っていた。
他のアクセサリーでも入手していれば色々と戦略は広がるのだろうなと思い、インベントリを見ていたのだが、またも入手したのは【魔獣の笛】、しかも4つである。
『同じものがいくつも有ってもなぁ』と言ったら、『もしかしたら付けた数だけ呼び出せるかもしれないのでください』とレギは言っていた。
今ここでは試せないので、ダンジョンを脱出してからになるのだが、ちょっと期待してしまった。
3階層、このダンジョンは初心者向けと言われており、ここが最下層となっている。
正確には、この次の階層は見つかってはいない。はずなのだが、降りてきてすぐの場所には次の階層への道がある。
おそらく、魔石から溢れ出た魔素の影響で、ダンジョンの構造に変化があったのだろうとミドは説明していた。
しかし、それまでここが最下層であったのならば、魔石はこの階層のどこかにあるだろうと言うので、俺たちは注意深く周りを見ながら進んで行ったのである。
「ミドちゃん、あそこに光ってるのが見えた!」
真っ先にそれを発見したのはローズだった。大きさは全く違えど、一度はノームのダンジョンで見ているものだったので自信もあるようであった。
ミドが結界内から目視で確認をし、それが間違いなく魔石であることがわかる。
「シュウさん……ちょっと相談いいかしら?」
ミドが改まって俺に声をかける。
また結界を解いて再度魔石を取り囲む間、周りを見ていてほしいとお願いされるのだと思った。そのつもりで準備もしていた。
「この魔石は通常ではありえないほどの大きさをしています。
もしもうまく魔水晶で取り込んだとしても、ひと月は魔素を放出し続けるのではと考えてしまいます。
もし……可能であればシュウさんが持つインベントリで保管はできないでしょうか?」
それは俺のインベントリが、状態も保存し続ける力を持つと知っての提案。
取り出さなければずっと中で眠り続けるだろう。だが間違っても取り出してはいけない危険なもの。
それは爆弾の比では無いのだが、頼めないか?と言うのだ。
「俺が断ると思うのか?」
「断らないと思うから辛いのです。シュウさんだけにそんなものを押し付けたくはなかったのですよ……」
ミドも悩んだ末の提案だったのだ。だから俺は迷わずに魔石に向かっていた。
まぁそうでなくても仲間のお願いであれば嫌とは言わなかっただろうが。
魔石は、俺のインベントリの中に収まった。
魔石の影響で新たに魔物が生まれることは止まった。
そしてまだ周りには多くの魔物達がいる中、俺たちの周りだけは異様に静かに感じられるのであった……。
【壊れた魔石(大)】
結界は濃い魔素に反応して反発力が働く仕組みであり、大きくすればその力は弱くなる。
当然街を覆うほどまでも大きさにすれば、せいぜいゴブリン程度しか退けられなくなるのだが、今はたった4人を覆う程度である。
「凄いなぁ、上位種の攻撃もものともしない」
「なぁシュウ……うちにもポーションちょうだいや、エーテルの方」
ずっとエンチャントし消費した魔力を回復し続けて、それはそれは気持ち悪そうにしながらも、ローズはまだエンチャントをし続ける。
束でエンチャントするよりも1本ずつの方が効果的だからって、結界に入ってからもずっとやっているのだ。
「ローズお姉様、少々休まれては?」
ミドがそう言いながら、ローズの背中をさすっていた。
後で動けなくなってしまわれるのも困るので、俺もローズに休むよう促すと、ようやくその手が止まったのだ。
「せやなぁ、後で迷惑んなるかもしれへんし……」
だいぶ疲れている様子であった。
「で、レギのさっきの剣は?」
「これ、シロですよ」
レベル25で得た武器化のスキルだそうだ。確かに反った形状や毛をイメージしたのか鋸状になった峰に白い刀身。
言われる前から予想はしていたのだが、あの大きな白狼の武器化した姿であった。
「しかしデカいな、大丈夫か?」
「まぁちょっぴり重いですね、僕の力じゃ振り回すのは難しいです」
ちょっとだけ持たせてもらったのだが、見た目通りの重さで、俺でも振り回すのは大変そうであった。
「タマはどんな武器なんだ?」
「あ、そっちの方が重かったです。おっきなハンマーになっちゃって持ち上がりませんでした」
レギは笑いながらそう言っていた。
他のアクセサリーでも入手していれば色々と戦略は広がるのだろうなと思い、インベントリを見ていたのだが、またも入手したのは【魔獣の笛】、しかも4つである。
『同じものがいくつも有ってもなぁ』と言ったら、『もしかしたら付けた数だけ呼び出せるかもしれないのでください』とレギは言っていた。
今ここでは試せないので、ダンジョンを脱出してからになるのだが、ちょっと期待してしまった。
3階層、このダンジョンは初心者向けと言われており、ここが最下層となっている。
正確には、この次の階層は見つかってはいない。はずなのだが、降りてきてすぐの場所には次の階層への道がある。
おそらく、魔石から溢れ出た魔素の影響で、ダンジョンの構造に変化があったのだろうとミドは説明していた。
しかし、それまでここが最下層であったのならば、魔石はこの階層のどこかにあるだろうと言うので、俺たちは注意深く周りを見ながら進んで行ったのである。
「ミドちゃん、あそこに光ってるのが見えた!」
真っ先にそれを発見したのはローズだった。大きさは全く違えど、一度はノームのダンジョンで見ているものだったので自信もあるようであった。
ミドが結界内から目視で確認をし、それが間違いなく魔石であることがわかる。
「シュウさん……ちょっと相談いいかしら?」
ミドが改まって俺に声をかける。
また結界を解いて再度魔石を取り囲む間、周りを見ていてほしいとお願いされるのだと思った。そのつもりで準備もしていた。
「この魔石は通常ではありえないほどの大きさをしています。
もしもうまく魔水晶で取り込んだとしても、ひと月は魔素を放出し続けるのではと考えてしまいます。
もし……可能であればシュウさんが持つインベントリで保管はできないでしょうか?」
それは俺のインベントリが、状態も保存し続ける力を持つと知っての提案。
取り出さなければずっと中で眠り続けるだろう。だが間違っても取り出してはいけない危険なもの。
それは爆弾の比では無いのだが、頼めないか?と言うのだ。
「俺が断ると思うのか?」
「断らないと思うから辛いのです。シュウさんだけにそんなものを押し付けたくはなかったのですよ……」
ミドも悩んだ末の提案だったのだ。だから俺は迷わずに魔石に向かっていた。
まぁそうでなくても仲間のお願いであれば嫌とは言わなかっただろうが。
魔石は、俺のインベントリの中に収まった。
魔石の影響で新たに魔物が生まれることは止まった。
そしてまだ周りには多くの魔物達がいる中、俺たちの周りだけは異様に静かに感じられるのであった……。
【壊れた魔石(大)】
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる