隠しスキルを手に入れた俺のうぬ惚れ人生

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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第3章 消えた街

第13話 消えた街④

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 ひかりの洞窟では、街中の者がウィスプの灯りで生活をしていた。
 何もしなければ害は無いものの、魔物は魔物である。間隔を開け数名の冒険者が配置されている。

 その内の1人。
「よぉ、さすがスライムマニアだな。聞いたぜ?超巨大なスライムを討伐したんだろ?」
 そう話しかけるのは門番のウェルコ。彼も優秀な冒険者の1人であり、簡単な魔法であれば使うこともできるのであった。街では冒険者の傷を癒したりして日銭を稼いでいたらしい。

「あれはほとんどミドがやってくれたんだよ。俺は何もやってねぇ」
「へぇ、あのお嬢様がねぇ」
 そう、皆もこの洞窟での生活を共にし、ミドもまた例外ではなかった。
 ここに来て早4日、弓術や豊富な知識だけでなく、ヤードさんに勝るとも劣らない料理の腕前を披露したミドは、皆の人気者になっていた。
 時折、調味料が足りないと言っては洞窟の奥でウィスプを退治していたので、一部の者には怖れられてもいるようなのだが。

「じゃあシュウ、行ってくるか!」
「おぅ!」
 俺とドルヴィンはと言うと、材料集めである。主に建築用の木材になるのだが。
 細かい材料は別の冒険者たちが請け負っている。重たい物は俺のインベントリで運んでしまおうってわけだ。

 平原を越え森に入る。木を伐採するのはほぼドルヴィンの役割である。
 俺は崖下の洞窟に向かいゴブリン退治である。その為にミドから弓も借りていた。
 初期装備品だが、ゴブリンからのドロップアイテムもなかなか便利なものだったのだ。
 護身用や生活用とはいえ、さすがに見境なしに強力な武器を手渡すのもどうかと思っていたので……。

 伐採や採掘を行うと、アイテム入手扱いになるようで、木が倒れ始めたと同時に俺のインベントリに収納されてくれる。おかげでドルヴィンも、何も気にせずに伐採が進められると言っていた。
 わざわざオークキングからドロップした装備品を全て身につけて。どうやらその方が力が湧いてくるらしかった。

 レギとローズはというと、シロに乗って南の山岳地帯を越えた先で魔物退治である。
 ヤードさんに場所を教えてもらい、食材を取りに行っているそうである。ついでにその近くの街で、香草も頼まれていた。
 腕利きの冒険者でも、なかなか山岳地帯を越えることは難しいとされているのだが、何往復もすればリキングバウトの民をここに移住させられるかもしれないと、話を聞きに行く役割も担っている。

 みんなは大丈夫だろうか?と思っているうちに、ドルヴィンもほぼほぼ終了のようだったので、俺も手を止めドルヴィンの方に振り返っていた。
「シュウ!危ない!」
「えっ?」

 突如背後から襲いかかる衝撃、一瞬意識を持っていかれそうになる程であった。
 ゴブリンロード、そしてゴブリンキング。隠れながらじわじわと崖の上まで登って来ていたようであった。

 別に苦戦したわけではない。命の実のおかげで体力を一気に持っていかれる事も無かったし、ドルヴィンがロードの方を相手にしてくれていた。
 念のため持っていた状態異常のエンチャントをされた矢は、聖弓ウェヌスとの相性が良すぎるのである。

 ゴブリンキングは眠りの矢と毒の矢を受け、ピクリとも動かなくなってしまう。面倒なので魔剣を取り出しサクッと倒してしまったのだが、ドルヴィンには後から『いつだって油断はするな』と怒られてしまった。

 移民計画も順調のようである。
 集まった資材は全て俺のインベントリに仕舞われ、シロとビアンコに乗せられ順次南西にある街へ移された。

 リキングバウトが消え去って約20日。
 この街【ガーデニア】もリキングバウトと同じような街だったので、どうやら冒険者たちもすんなりと馴染めそうである。
 もともと、銀狼亭で食べていた肉はこの街の特産品なのだそうだ。全く同じものが出てきて驚いたものだった。

 建築に必要な資材の一式と金銭を幾許いくばくか、それに、俺のインベントリからも適当なアイテムを提供し、俺たちの大移動は幕を閉じた。

「で、あの話なんだが……」
 俺は共に行動していた5人を集め、旅に出る事になった。
 この世界の二つの大陸を、精霊と龍を巡る旅へと……。
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