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【第6話】マナ暴走と神界
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パティは綿毛を一つ摘み取って、説明をし始める。
「そもそも魔物は餌など食わん。
あいつらはプログラムされた通りに行動しているだけに過ぎんのだよ」
「そんな話、聞いたことないですけど……」
さすがのシンもこれには納得できない。
パティもまた、いつも通り素直に信じると思っていたのか、少しばかり機嫌が悪くなる。
「ムッ……私が嘘を言っているとでも?」
「あ、いや、ちょっとビックリしちゃって。
すぐには信じられないなーって……」
「まぁ仕方ないな。誰にも言ったことなどないし、信じてくれると思っていた私が馬鹿だったよ」
「そ、そういうんじゃなくて……」
パティは少しだけ後悔する。
教えても良いと思えたのは何故だったのだろうか?
シンという人物に気を許しすぎたのだろうか?
自分のことを知ってしまったらシンも剣を向けてくるのだろうか?
ずっと心の中で押さえ込んでいた感情が、少しだけ表に出てしまう。
「私は町に戻るよ……
そうそう、強い魔物がいると弱い魔物がいなくなると教えたな」
「え? はい……」
「あれがヒントだ。ピアラビットを捕まえたいのならどうしたらいいのか、ゆっくり考えてみるといい」
パティはそう言ってさっさと歩き出してしまう。
どうしたらピアラビットがやってくるのか……ではなく、シンはパティの機嫌を損ねてしまったことばかり考えていた。
「プログラムって言ったって……
誰かに命令されてるってことだよね?
わざわざ人を襲うようなものを誰かが作ってる?
だとしてもそれを知ってるっていうのも変な話だよなぁ……」
ぶつぶつと呟きながら考えるシン。
わかるわけがない。
今のパティの言葉以外にヒントは一切無かったのだ。
どこから発生して何故世界中に存在するのか。
悩んだ挙句、その日は結局1匹も捕まえることなく町に戻ることとなってしまったのだった。
「ダメダメっ! せめて薬草だけでも採取してお金にしなきゃ!
っ⁈ 痛つつ……」
先日は銭貨一枚も稼ぐことはできず、収穫といえば袋に入れられた綿毛と脛のアザである。
ボーッと突っ立っていれば、そりゃ魔物に襲われても仕方がない。
ピアラビットで助かったと言うべきか、とにかく体当たりされた脛の痛みは立てないほどにズキズキと響いてくるのだった。
マテリア水にマナを満たした小瓶を一本手に取る。
パティに教わって作った痛みと炎症を抑えるポーションだ。
そこそこ貴重なものなので、これを売っても幾ばくかのお金は手に入る。
それでも数日は生活できるのだが、シンは悩んだ挙句手にしたそれを、グイと飲み干した。
「ピアラビットを捕まえると決めたんだからな。
……よしっ、さすがパティに教えてもらって作っただけあるなぁ」
気持ちを切り替え、立ち上がるシン。
一方のパティはというと、シンにとった態度を今更ながら後悔してしまっていた。
「うー……なんであんなこと言っちゃうかなぁ……
別に何も悪いこと言ってないじゃん……もう……」
厚手の布に包まって、部屋の隅で悩んでいるパティ。
魔道具を作る気力もなく、アビルマからシンが来たことを聞かされても無視をした。
とにかく出て行きたくないと思ったのだ。
(それでもきっとあーちゃんは手を引っ張って外に放り出すんだろうなぁ……)
そう確信しつつ、もやもやは晴れないまま目を閉じる。
されど声は聞こえなくなり、次第にパティは不安になってくる。
どうして上がってこないのか、呆れられてしまったのだろうか?
夕方になってもシンと顔を合わすこともなく、その日は遂に部屋から出ることはなかったパティであった……
「そもそも魔物は餌など食わん。
あいつらはプログラムされた通りに行動しているだけに過ぎんのだよ」
「そんな話、聞いたことないですけど……」
さすがのシンもこれには納得できない。
パティもまた、いつも通り素直に信じると思っていたのか、少しばかり機嫌が悪くなる。
「ムッ……私が嘘を言っているとでも?」
「あ、いや、ちょっとビックリしちゃって。
すぐには信じられないなーって……」
「まぁ仕方ないな。誰にも言ったことなどないし、信じてくれると思っていた私が馬鹿だったよ」
「そ、そういうんじゃなくて……」
パティは少しだけ後悔する。
教えても良いと思えたのは何故だったのだろうか?
シンという人物に気を許しすぎたのだろうか?
自分のことを知ってしまったらシンも剣を向けてくるのだろうか?
ずっと心の中で押さえ込んでいた感情が、少しだけ表に出てしまう。
「私は町に戻るよ……
そうそう、強い魔物がいると弱い魔物がいなくなると教えたな」
「え? はい……」
「あれがヒントだ。ピアラビットを捕まえたいのならどうしたらいいのか、ゆっくり考えてみるといい」
パティはそう言ってさっさと歩き出してしまう。
どうしたらピアラビットがやってくるのか……ではなく、シンはパティの機嫌を損ねてしまったことばかり考えていた。
「プログラムって言ったって……
誰かに命令されてるってことだよね?
わざわざ人を襲うようなものを誰かが作ってる?
だとしてもそれを知ってるっていうのも変な話だよなぁ……」
ぶつぶつと呟きながら考えるシン。
わかるわけがない。
今のパティの言葉以外にヒントは一切無かったのだ。
どこから発生して何故世界中に存在するのか。
悩んだ挙句、その日は結局1匹も捕まえることなく町に戻ることとなってしまったのだった。
「ダメダメっ! せめて薬草だけでも採取してお金にしなきゃ!
っ⁈ 痛つつ……」
先日は銭貨一枚も稼ぐことはできず、収穫といえば袋に入れられた綿毛と脛のアザである。
ボーッと突っ立っていれば、そりゃ魔物に襲われても仕方がない。
ピアラビットで助かったと言うべきか、とにかく体当たりされた脛の痛みは立てないほどにズキズキと響いてくるのだった。
マテリア水にマナを満たした小瓶を一本手に取る。
パティに教わって作った痛みと炎症を抑えるポーションだ。
そこそこ貴重なものなので、これを売っても幾ばくかのお金は手に入る。
それでも数日は生活できるのだが、シンは悩んだ挙句手にしたそれを、グイと飲み干した。
「ピアラビットを捕まえると決めたんだからな。
……よしっ、さすがパティに教えてもらって作っただけあるなぁ」
気持ちを切り替え、立ち上がるシン。
一方のパティはというと、シンにとった態度を今更ながら後悔してしまっていた。
「うー……なんであんなこと言っちゃうかなぁ……
別に何も悪いこと言ってないじゃん……もう……」
厚手の布に包まって、部屋の隅で悩んでいるパティ。
魔道具を作る気力もなく、アビルマからシンが来たことを聞かされても無視をした。
とにかく出て行きたくないと思ったのだ。
(それでもきっとあーちゃんは手を引っ張って外に放り出すんだろうなぁ……)
そう確信しつつ、もやもやは晴れないまま目を閉じる。
されど声は聞こえなくなり、次第にパティは不安になってくる。
どうして上がってこないのか、呆れられてしまったのだろうか?
夕方になってもシンと顔を合わすこともなく、その日は遂に部屋から出ることはなかったパティであった……
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