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はじめての訓練
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それから数日して、無事に目標の300匹を納品し終えたシンは、闇市に出向いて剣を買った。
銅貨30枚で手に入れたそれは、魔物の核の中でエンチャントされた物のようで、効果はわかりづらいものだったのだ。
「珍しいな。グラビティ系の付与は結構なレアものだぞ」
物見部屋で剣を手にすると、これまでの経験をもとに鑑定をするパティ。
マナの質や感じ方は、大きく十数種類に分けられるそうだ。
その複合ともなるとややこしすぎてパティでもハッキリとはわからないと言う。
「簡単に言うと、物と物は互いに引き合うという法則があってだな……」
簡単に、と言われたパティの説明は全く理解ができなかった。
とにかく空間を弄り、まるで引き寄せたり引き離したりという事ができるようになるらしい。
この世界の者達が『魔道具の仕組みを理解せずに使っている』とパティが言っていたのは、つまりそういうことなのだろう。
「早速試しに行ってみるか、ものは試しだ。
魔道具は周囲に存在するマナを利用して効果を発動するのだが……
マナを感じる事ができるシンなら、そう難しいことではないだろうさ」
パティに誘われ街の外へと向かうことになり、早速ピアラビットがいる……はずの草むらにやって来たわけだが。
「また全然いないし……
強い魔物らしいのも見当たらないし、何が原因なんだろう?」
どれだけ捕獲してもいなくなることはなかったのに、これで近くの草むらにいなくなるのは二度目である。
「今回は私のせいではないからな。
いや、私のせい『だけ』ではないと言うべきだな」
「えっ? ……あー、もしかしてパティが強いマナを持っているから……だったりするの?」
「言っただろう、似た質のマナ同士で引き寄せ合い、強いマナからは遠ざかるようになっている。
ちなみにその剣にもそれなりにマナが含まれているわけだが……」
「もしかしてこの剣を持っている限り、ピアラビットみたいな弱い魔物とは戦えないってこと⁈」
察しがいいと誉められるシン。
狩りができないのでは全く嬉しくはなかったが、良いように考えれば魔物に邪魔をされずに剣を振ることもできるわけだ。
グラビティソードと安直な名前を付けてはみたが、他の冒険者にはとてもじゃないが恥ずかしくて言えやしない。
エンハンスならともかく、エンチャントされた効果はイマイチ冒険者達には伝わり辛いのだ。
それでもようやく使うことのできるグラビティソード。
魔道具の扱いなどこれまでにほとんど経験がない。
パティに教えてもらった簡単な物とは、全く勝手が違っていた。
「魔道具は意志を形にする道具だ。
使い手のシンがハッキリと思い描かないと、ちゃんと効果は現れないぞ」
「そ、そう言われても難しいんですけどっ」
水を出したり火を出すのとはわけが違っていた。
武器として成立する様に、空間に及ぼす効果を思い描かなくてはならないのだ。
比較的簡単だったのが……いや、これ以外は全く理解ができていなかったのだが、ひとまず物質の質量を増すという効果。
地表へ向かって発生している重力の効果を高めるのだが、そればかりに集中すると剣の動きが鈍くなる。
まぁもともと剣など得意でもなんでもないのだから、多少鈍くなったところで変わりやしないのだろうけれど……
草むらに向かって使用してみると、意外にも簡単にペタリと倒れてしまう。
「なかなか上手じゃないか。
あの背の高いやつもできないか?」
「ん……もうちょっとでいけそうなんだけど……」
そんなことを試しながら、シンは思っていた。
これでは効果がわかっていたとしても、売れなくて当然なのかもしれない。
ちょこっと草花が倒れるくらいで、どれほど役に立つものか。
それでもパティは素直に感心してくれた。
それは他の誰に認められるよりも、シンにとっては嬉しく思えることだったのだ。
銅貨30枚で手に入れたそれは、魔物の核の中でエンチャントされた物のようで、効果はわかりづらいものだったのだ。
「珍しいな。グラビティ系の付与は結構なレアものだぞ」
物見部屋で剣を手にすると、これまでの経験をもとに鑑定をするパティ。
マナの質や感じ方は、大きく十数種類に分けられるそうだ。
その複合ともなるとややこしすぎてパティでもハッキリとはわからないと言う。
「簡単に言うと、物と物は互いに引き合うという法則があってだな……」
簡単に、と言われたパティの説明は全く理解ができなかった。
とにかく空間を弄り、まるで引き寄せたり引き離したりという事ができるようになるらしい。
この世界の者達が『魔道具の仕組みを理解せずに使っている』とパティが言っていたのは、つまりそういうことなのだろう。
「早速試しに行ってみるか、ものは試しだ。
魔道具は周囲に存在するマナを利用して効果を発動するのだが……
マナを感じる事ができるシンなら、そう難しいことではないだろうさ」
パティに誘われ街の外へと向かうことになり、早速ピアラビットがいる……はずの草むらにやって来たわけだが。
「また全然いないし……
強い魔物らしいのも見当たらないし、何が原因なんだろう?」
どれだけ捕獲してもいなくなることはなかったのに、これで近くの草むらにいなくなるのは二度目である。
「今回は私のせいではないからな。
いや、私のせい『だけ』ではないと言うべきだな」
「えっ? ……あー、もしかしてパティが強いマナを持っているから……だったりするの?」
「言っただろう、似た質のマナ同士で引き寄せ合い、強いマナからは遠ざかるようになっている。
ちなみにその剣にもそれなりにマナが含まれているわけだが……」
「もしかしてこの剣を持っている限り、ピアラビットみたいな弱い魔物とは戦えないってこと⁈」
察しがいいと誉められるシン。
狩りができないのでは全く嬉しくはなかったが、良いように考えれば魔物に邪魔をされずに剣を振ることもできるわけだ。
グラビティソードと安直な名前を付けてはみたが、他の冒険者にはとてもじゃないが恥ずかしくて言えやしない。
エンハンスならともかく、エンチャントされた効果はイマイチ冒険者達には伝わり辛いのだ。
それでもようやく使うことのできるグラビティソード。
魔道具の扱いなどこれまでにほとんど経験がない。
パティに教えてもらった簡単な物とは、全く勝手が違っていた。
「魔道具は意志を形にする道具だ。
使い手のシンがハッキリと思い描かないと、ちゃんと効果は現れないぞ」
「そ、そう言われても難しいんですけどっ」
水を出したり火を出すのとはわけが違っていた。
武器として成立する様に、空間に及ぼす効果を思い描かなくてはならないのだ。
比較的簡単だったのが……いや、これ以外は全く理解ができていなかったのだが、ひとまず物質の質量を増すという効果。
地表へ向かって発生している重力の効果を高めるのだが、そればかりに集中すると剣の動きが鈍くなる。
まぁもともと剣など得意でもなんでもないのだから、多少鈍くなったところで変わりやしないのだろうけれど……
草むらに向かって使用してみると、意外にも簡単にペタリと倒れてしまう。
「なかなか上手じゃないか。
あの背の高いやつもできないか?」
「ん……もうちょっとでいけそうなんだけど……」
そんなことを試しながら、シンは思っていた。
これでは効果がわかっていたとしても、売れなくて当然なのかもしれない。
ちょこっと草花が倒れるくらいで、どれほど役に立つものか。
それでもパティは素直に感心してくれた。
それは他の誰に認められるよりも、シンにとっては嬉しく思えることだったのだ。
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