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【第8話】ルマンドの手記
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フィリア……名前を改めアビルマとなった女性は1人、薄暗い部屋で手記を読んでいる。
『アビゲイル……私は絶対に認めない。
目的のために地球と魔界をこんな状態にしてもいいハズがない……』
ルマンドの投げ捨てた上着には、計画が事細かに書いた手記が残されていたのだ。
魔界から逃げる際に持っていたのだが、そこに書かれていたのは『神殺し』という記述。
はるか昔から存在するとされる『空と大地と大海原を司る神々』の伝承が、魔界にはあった。
地球上にも多くの神々は偶像されてきたわけだが、魔界のそれに合致するものも少なからずあったわけだ。
その中の一つに興味深いものを見つけたと記されていた。
3体の神は、自らを生贄とし地球を見守ることにしたのだと。
世界の中心にあるとされる大きな大樹の元で眠り続け、魔界へは大いなるマナを、地球にはそれを必要としない新しい生命を生み出した。
『3体の神々は、それぞれダルヴァー・シルフィード・ミーディアといい、各々が神具を用いて世界を……弄った』
弄ったという書き方に疑問は残る。
こんなものは後付けで作られた物語でしかないのが常識的だ。
それならば『見守っている』や『創造した』などと書いておけばいい。
リアリティを持たせたかったのか、それ以外に思うことがあったのか。
ルマンドという地球人は魔族のアビゲイルに誘われて、どうやらフィリアの知らぬ内に何度か世界を行き来していたようだった。
地球のみならず、マナの溢れる神界という新地を得て、魔族の英雄になろうと考えたアビゲイル。
地球での生活に不満を感じていたルマンドは、神界を目指すことでまた別の目的を持っていた。
地上の生物の多くを処分し、世界を新しく作り直そうとしたのだ。
利権や派閥しかり、言いたいことも言えず、些細なことで追い詰められる日々。
弱者に非情で強者を優遇する世界。
真面目にやれば損をするということばかりだと感じていた。
なぜそんな彼が選ばれたのかは不明だが、おそらく魔族が地球に来る際に、人口を減らすということは利害が一致する行動だったのではないだろうか?
そしてそれから数十年が経ち、世界は見事に崩壊してしまった……
濃いマナの影響で、アビルマは半魔物化したような状態だったのだろうか?
老いる速度は急激に落ち、食欲はそれほど湧かなくなってしまった。
それ以降は料理を美味しいとも思えず、ただ一つ、パティとヴァルのために生きることを決意したのだ。
アビゲイル、そしてルマンドは計画段階の続きを途中まで記している。
3体の神を破壊し、神具を用いて魔界と地球に干渉を及ぼす。
マナの制御は失い、魔界には大量のマナが満ち始める。
それにはダンジョンコアの作成が一番手っ取り早く、そのゲートを通じて神界のマナを送ろうというのだ。
マナが豊富な魔界には、次々とゲートが出現して世界を飲み込んでいくだろう。
いずれ地球にもマナは満ち、3つの世界は次第に引き合い、一つの世界となるだろう。
『我々が神となれば……いや、それでも私は世界を壊してみせよう』
……馬鹿なことを考えたものだとつくづく思う。
死ぬ覚悟で向かったのだろうが、その気持ちがあったのなら何かできたのではないか?
偶然にもそのような機会が与えられた時、人とは簡単に行動を起こしてしまうものなのだな……
より楽な方法を、と……
『アビゲイル……私は絶対に認めない。
目的のために地球と魔界をこんな状態にしてもいいハズがない……』
ルマンドの投げ捨てた上着には、計画が事細かに書いた手記が残されていたのだ。
魔界から逃げる際に持っていたのだが、そこに書かれていたのは『神殺し』という記述。
はるか昔から存在するとされる『空と大地と大海原を司る神々』の伝承が、魔界にはあった。
地球上にも多くの神々は偶像されてきたわけだが、魔界のそれに合致するものも少なからずあったわけだ。
その中の一つに興味深いものを見つけたと記されていた。
3体の神は、自らを生贄とし地球を見守ることにしたのだと。
世界の中心にあるとされる大きな大樹の元で眠り続け、魔界へは大いなるマナを、地球にはそれを必要としない新しい生命を生み出した。
『3体の神々は、それぞれダルヴァー・シルフィード・ミーディアといい、各々が神具を用いて世界を……弄った』
弄ったという書き方に疑問は残る。
こんなものは後付けで作られた物語でしかないのが常識的だ。
それならば『見守っている』や『創造した』などと書いておけばいい。
リアリティを持たせたかったのか、それ以外に思うことがあったのか。
ルマンドという地球人は魔族のアビゲイルに誘われて、どうやらフィリアの知らぬ内に何度か世界を行き来していたようだった。
地球のみならず、マナの溢れる神界という新地を得て、魔族の英雄になろうと考えたアビゲイル。
地球での生活に不満を感じていたルマンドは、神界を目指すことでまた別の目的を持っていた。
地上の生物の多くを処分し、世界を新しく作り直そうとしたのだ。
利権や派閥しかり、言いたいことも言えず、些細なことで追い詰められる日々。
弱者に非情で強者を優遇する世界。
真面目にやれば損をするということばかりだと感じていた。
なぜそんな彼が選ばれたのかは不明だが、おそらく魔族が地球に来る際に、人口を減らすということは利害が一致する行動だったのではないだろうか?
そしてそれから数十年が経ち、世界は見事に崩壊してしまった……
濃いマナの影響で、アビルマは半魔物化したような状態だったのだろうか?
老いる速度は急激に落ち、食欲はそれほど湧かなくなってしまった。
それ以降は料理を美味しいとも思えず、ただ一つ、パティとヴァルのために生きることを決意したのだ。
アビゲイル、そしてルマンドは計画段階の続きを途中まで記している。
3体の神を破壊し、神具を用いて魔界と地球に干渉を及ぼす。
マナの制御は失い、魔界には大量のマナが満ち始める。
それにはダンジョンコアの作成が一番手っ取り早く、そのゲートを通じて神界のマナを送ろうというのだ。
マナが豊富な魔界には、次々とゲートが出現して世界を飲み込んでいくだろう。
いずれ地球にもマナは満ち、3つの世界は次第に引き合い、一つの世界となるだろう。
『我々が神となれば……いや、それでも私は世界を壊してみせよう』
……馬鹿なことを考えたものだとつくづく思う。
死ぬ覚悟で向かったのだろうが、その気持ちがあったのなら何かできたのではないか?
偶然にもそのような機会が与えられた時、人とは簡単に行動を起こしてしまうものなのだな……
より楽な方法を、と……
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