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戦闘訓練
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グラビティソードを入手した以上は、やはり戦ってみたいという気持ちも多少はあった。
シンはパティにお願いをして、ストライクバードの発生する林へと足を伸ばすことになった。
「要するに、マナで強化された装備を身につければ、それ以上の強さになった魔物としか戦えない。
不定形であるスライムは、まだ未熟な状態で発生すると考えて良い。あれはプログラムなど関係なくただ居るだけだな」
極端に強い武器を持つのはオススメしない。
全身をなるべく同じ程度の強さで揃えるのが理想なのだとパティは言う。
「そうは言っても、もうお金も残ってないですし……
他の装備を見つけるのも大変そうだなぁ」
「だからこうしてお金稼ぎに来てるんじゃないか。
なっ、ヴァルも教えがいがあるだろ?」
隣にいたヴァルの肩をポンポンと叩くパティ。
剣のことならば、わざわざギルドに戻って呼び出したのだ。
「全く……いつも自分勝手なんですから。
体力作りも基礎も教えてませんのに、いきなりストライクバードなんて」
不安そうにするヴァル。
そんなヴァルを見て、シンはストライクバードについて聞いてみる。
大きさは30cmほど、木の上から滑空してぶつかってくる。
本来は熊や猪が町に降りてくるのを防ぐプログラムが組まれているらしいのだが、なぜかマナの発生源に向かって突撃するようになっているそうだ。
魔物の中には、パティ達の知らない行動を取るものも多い。
UMと読んでいたらしいのだが、誤動作なのかバグなのか……制御装置が生きているのかどうかさえわからないと。
「この辺りでいいですかね?」
少し開けた場所で、ヴァルは1人前に立つ。
正攻法で戦うのならば、木を背にして飛んでくる方向を絞るのが良いそうだ。
だが、剣の練習となればそんな甘いことはできないとヴァルは言う。
何やらカサっと音がしてシンが見上げると、次の瞬間には核が割れる音がする。
「すご……ぃ。全然見えなかったよ」
驚きと感心しかない。
自分にできるものかと不安になるが、ヴァルはそんなシンに見込みがあると言う。
「この雑音だらけの中で、ストライクバードの発する音を聞き分けられるのですから。
コツさえ掴めばあっという間に倒せちゃいますよ」
「そ、そうなのかな……?」
そう言われたところでストライクバードの姿もほとんど見えなかったわけで、シンは不安そうにパティへ視線を移す。
「ん? ヴァルがそう言うならそうなんだろう?
私は剣のことなどてんでわからんからな。
安心しろ、コイツらの攻撃は受けても死にはしないからどんどん受けても良いぞ」
ヴァルはそれを聞いて反論する。
「死なないのは熊とか猪基準ですっ!
人間が受けたら相当ヤバいんですよ?」
「なにっ? そうだったのか……
追い返す程度のプログラムだったと思っていたが……」
なんやかんやと言い合ってはいたが、不安そうに2人を見守るシンを差し置いて、訓練の続行は決定してしまった。
「や、やっぱりやるんですね……」
少し離れたところでヴァルが見守る。
「その剣の力があれば確かに致命傷は防げるかもしれませんし。
まぁ、私もあなたの実力を見てみたいですから……」
パティはともかく、ヴァルには良識があると思っていた。
そんなことを思うも時すでに遅し。
やむを得ずシンは剣を構えて、ストライクバードを待ち構える姿勢を取った。
カサっと音がする方向から飛んでくる。
が、あまりの速さに剣を振る手が追いつかない。
「うわっ⁈」
ギリギリのところで攻撃をなんとかかわし、ストライクバードはそのまま別の木へと飛んでいく。
「目で追ってから振ったのでは間に合いませんわ。
予測して動作を行い、見えた時に修正が効くようにするのがコツですの。
それに、グラビティソードの効果も使えてないですわね。
一回一回を真剣にやらないとマジで死にますわよ」
さらっとキツいことを言うヴァル。
剣の効果と言われても、集中してようやく草が倒れる程度。
死の恐怖に怯えながらできるものではない。
シンは、ヴァルの方がパティより数段キツいんじゃないかと、この時ばかりは思ったのだった。
シンはパティにお願いをして、ストライクバードの発生する林へと足を伸ばすことになった。
「要するに、マナで強化された装備を身につければ、それ以上の強さになった魔物としか戦えない。
不定形であるスライムは、まだ未熟な状態で発生すると考えて良い。あれはプログラムなど関係なくただ居るだけだな」
極端に強い武器を持つのはオススメしない。
全身をなるべく同じ程度の強さで揃えるのが理想なのだとパティは言う。
「そうは言っても、もうお金も残ってないですし……
他の装備を見つけるのも大変そうだなぁ」
「だからこうしてお金稼ぎに来てるんじゃないか。
なっ、ヴァルも教えがいがあるだろ?」
隣にいたヴァルの肩をポンポンと叩くパティ。
剣のことならば、わざわざギルドに戻って呼び出したのだ。
「全く……いつも自分勝手なんですから。
体力作りも基礎も教えてませんのに、いきなりストライクバードなんて」
不安そうにするヴァル。
そんなヴァルを見て、シンはストライクバードについて聞いてみる。
大きさは30cmほど、木の上から滑空してぶつかってくる。
本来は熊や猪が町に降りてくるのを防ぐプログラムが組まれているらしいのだが、なぜかマナの発生源に向かって突撃するようになっているそうだ。
魔物の中には、パティ達の知らない行動を取るものも多い。
UMと読んでいたらしいのだが、誤動作なのかバグなのか……制御装置が生きているのかどうかさえわからないと。
「この辺りでいいですかね?」
少し開けた場所で、ヴァルは1人前に立つ。
正攻法で戦うのならば、木を背にして飛んでくる方向を絞るのが良いそうだ。
だが、剣の練習となればそんな甘いことはできないとヴァルは言う。
何やらカサっと音がしてシンが見上げると、次の瞬間には核が割れる音がする。
「すご……ぃ。全然見えなかったよ」
驚きと感心しかない。
自分にできるものかと不安になるが、ヴァルはそんなシンに見込みがあると言う。
「この雑音だらけの中で、ストライクバードの発する音を聞き分けられるのですから。
コツさえ掴めばあっという間に倒せちゃいますよ」
「そ、そうなのかな……?」
そう言われたところでストライクバードの姿もほとんど見えなかったわけで、シンは不安そうにパティへ視線を移す。
「ん? ヴァルがそう言うならそうなんだろう?
私は剣のことなどてんでわからんからな。
安心しろ、コイツらの攻撃は受けても死にはしないからどんどん受けても良いぞ」
ヴァルはそれを聞いて反論する。
「死なないのは熊とか猪基準ですっ!
人間が受けたら相当ヤバいんですよ?」
「なにっ? そうだったのか……
追い返す程度のプログラムだったと思っていたが……」
なんやかんやと言い合ってはいたが、不安そうに2人を見守るシンを差し置いて、訓練の続行は決定してしまった。
「や、やっぱりやるんですね……」
少し離れたところでヴァルが見守る。
「その剣の力があれば確かに致命傷は防げるかもしれませんし。
まぁ、私もあなたの実力を見てみたいですから……」
パティはともかく、ヴァルには良識があると思っていた。
そんなことを思うも時すでに遅し。
やむを得ずシンは剣を構えて、ストライクバードを待ち構える姿勢を取った。
カサっと音がする方向から飛んでくる。
が、あまりの速さに剣を振る手が追いつかない。
「うわっ⁈」
ギリギリのところで攻撃をなんとかかわし、ストライクバードはそのまま別の木へと飛んでいく。
「目で追ってから振ったのでは間に合いませんわ。
予測して動作を行い、見えた時に修正が効くようにするのがコツですの。
それに、グラビティソードの効果も使えてないですわね。
一回一回を真剣にやらないとマジで死にますわよ」
さらっとキツいことを言うヴァル。
剣の効果と言われても、集中してようやく草が倒れる程度。
死の恐怖に怯えながらできるものではない。
シンは、ヴァルの方がパティより数段キツいんじゃないかと、この時ばかりは思ったのだった。
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