35歳ニートがテストプレイヤーに選ばれたのだが、応募した覚えは全く無い。

紅柄ねこ(Bengara Neko)

文字の大きさ
24 / 41

20話

しおりを挟む
 この世界に来てどのくらい経っただろう?
 ふと現実を思いだすと、僕の身体は本当に大丈夫なのかと心配になってしまう。

「ゲーム前にトイレって行ったっけ……
 いやいや、そんなことより餓死したりしないのか?」
 一生ゲームから出られないというラノベを読んだことがあった。
 今頃僕の肉体はたくさんのチューブに繋がれているのか?
 はたまた、これはもはや現実世界から切り離された、別世界なのではないか……

「ねぇスノウ?
 今日の晩ご飯はどうしよっか?」
 このままこうやってアイズと生活するのも良いかもしれない。
 どうせ現実に戻ったって暗い部屋に引きこもるだけなのだから。

「ねぇスノウ?
 きーこーえーてーまーすーかー?
 ……ねえってば!」
「わっ⁈ ……あ、ごめんごめん。
 なんの話だっけ?」
 あまりにボケーっと考えに耽っていたものだから、アイズの呼び声に驚いてしまった。

「ちょっとぉ……どうしたのよ一体……」
「どうもしないよ。
 なにか美味しいものを食べたいなぁって考えてたんだよ」
「絶対に嘘ね、また私に黙って狩りに出かける計画でも立ててたんでしょ」

 カレーやラーメンが懐かしいなんて思ってもいたから、あながち嘘でもなかったのだけど。
 アイズから見れば、僕はいつでも狩りをしたがってる少年なのだろうな。
 確かに知り合いにそんな少年がいたなら、心配で心配で仕方ないのだろうけれど。

「違うよ、ラーメンでも食べたいなって思ってたんだよ。
 確か料理スキルで作れた……んだけど、素材が足りないんだよね」
 あれから僕のアイテム生成スキルは凄くレベルが上がり、そこから派生した料理生成スキルや装備生成スキルも習得していた。

「聞いたことのない料理ね、どこの地域の料理なの?
 そういえばスノウって、いつの間にそんなスキルを覚えたのよ?
 確か初めて会った時って……」
 そう、僕がアイズに出会ったのはこの世界に来てすぐのこと。
 全くと言っていいほどスキルは無く、今とは逆の意味で驚かれてしまうくらいの少年だったのだ。

「ねぇ、見てもいいよね?
 うん、ダメって言われても見ちゃうんだけどさ」
 アイズが、ぐっと顔を近づけてくる。
 鑑定眼を使うには、真剣に相手のことを見つめなければならないのだ。低レベルのうちは……

「ねぇ……スノウは私のこと嫌い?」
 おでこが当たりそうなくらい近づいたアイズが聞いてくる。
 嫌いなわけがない。
 こんなにも綺麗で優しい人を、なぜ嫌う必要があるのだろうか。

「そ、そんなわけないじゃん!」
 アイズの息が僕に当たる。
「うそよ……だったら証拠を見せてよ……」
 もう僕の顔は真っ赤になっていたと思う。
 アイズのその言葉が一体どういう意味かを必死に考えてみるが、答えは一つしか出てこない。

 く……唇が……
 ドキドキしながら、僕はアイズのぷっくりと膨らんだ口元を凝視してしまう。
 徐々に距離を縮め、今にも触れそうになった……のだが。

「ねぇ、スキルを見えなくするようなスキルって何?
 スノウが持ってるスキルが全然見えないんだけど!」
 グイッと僕の身体を引き離し、肩を掴んだままアイズが問いかける。
 その声色はかなりの怒気を含んでいるようでもあった。

 『内緒にされなきゃいけない関係なの?』なんて言われて、僕は目が泳いでしまう。
 だって、あまりにも無茶苦茶なスキルばかりで、見られたら絶対に怖がられてしまうんだもの。

 仮にだよ、【飛行5:戦闘時、地形効果ダメージを無効にする】なんてスキルがあるとしよう。
 あくまでも仮に……そのスキルを発動させると、戦闘中に常に空を飛ぶことが可能になる。
 そんなスキルを目のあたりにして、人は驚かずにいられるのだろうか?

「持っているのね……?」
「う、うん……なんでか空を飛べちゃうんだよね……」
 深いため息をつくアイズ。
 食欲が無くなったと言っていたのだが、僕が料理スキルでハンバーグを作ってあげたら、すっかり完食してしまうのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...