35歳ニートがテストプレイヤーに選ばれたのだが、応募した覚えは全く無い。

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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23話

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「なによ、よくこの宿に泊まっているってわかったじゃないの」
 このアールフォートで一番の高級宿。
 少なくとも現実世界を知っている日本人が、ここ以外のボロ宿で我慢できるとは思えない。
 別に他の宿が悪いわけではなく、多分お風呂くらいは入りたいだろうと思うとここしかないのだ。

「まぁ、僕だってこの街で長いこと生活してるしさ」
 それに『こんな人を知らないか』と聞けば、そりゃあいくらでも教えてくれる。
 獣人の娘なんて、NPCにもほとんどいないのだから。

「で、一体なんなのよ?
 街から出てけって言われなくたって、準備ができたらすぐに出てくわよ」
 相変わらずの態度のチャッピーである。
 とりあえずは気になっていたラスボスの存在を訊ねてみたが、どうやら封印されている存在らしく、放っておいても世界の崩壊は考えられないそうだ。

 『だったら封印したままにしようよ』とは言いたかったが、きっと二人は何がなんでも現実に戻りたいのだろう。
 であれば、僕も協力はしたいとは思う。

 見た感じ、二人はそれほど強い装備は持っていなかった。
「いいわよ別に、どんな装備を持っているかは知らないけれど……
 どうせ空間収納も使えないような初心者の持ってる装備なんて知れてるわよ」

 さすがにワンピース姿でプレイヤーに会いたくはなかったので、今日は普通に布の服を着ていた。
 だからだろう、身につけているものは確かに性能は良くなかったからね。
 でも昨日はそこそこの性能の装備を身につけていたのだけど……
 きっとそれどころではなかったのだろう。

「空間収納だったらもうレベル10になっちゃったよ?
 なかなかレベルが上がりにくいスキルだったから苦労したんだけどさ」
 そう伝えると、まるで信じられないものでも見るかのように、二人が僕の姿を眺めている。
 いや、汚物でも……と言った感じだろうか?
 なにか変な事を言ってしまったのか?

「アンタ……そんな可愛らしい見た目の割に、やっている事は相当ゲスいわね……」
 なぜそんな事を言われなくてはいけないのか。
 意味もわからず僕は完全に硬直してしまった。

「えっと……スノウさんでしたよね?
 ちょっとだけ……幻滅しました……」
 茜にまで涙を浮かべて蔑まされた。
 これは絶対になにか理由があるはずだ。

 僕は考えた。
 空間収納、というスキルがきっと原因なのだろう。
 それは一体どうやって習得したのだったか……

「ちっ……違うよ!
 あれは不可抗力でたまたまそうなっただけでっ!!」
 ようやっと理解した。
 二人は、僕がわざとパーティーを死に追いやったと思っているのだろう。

 ボス戦以外で死ぬような冒険者は……いや、正直いってこの世界に来て死を目のあたりにしたのは一人だけ。
 毎日ギルドに入り浸っているが、誰もそんな危険な場所へは近づこうとしないから。

「本当かしらねぇ……
 まぁ、裏技を知っている人なんて関係者以外あり得ないし」
 疑いは晴れた……と思うのだが、ともかくもう一つの疑問を聞いてみる。

「私がプレイヤーとしている理由?
 そんなもん、秘密を部外者に喋っちゃったからよ。
 おかげで茜まで巻き込んじゃって、何がなんでも責任は私がとってみせるわよ」

 結構わがまま娘なのかと思ったけど、意外とちゃんと考えているのかもしれない。
 しばらく話をしていて、僕の持っているスキルが、やはり終盤に習得するようなスキルであることがわかった。

「ねぇ……もう一度聞きたいんだけど、私たちと一緒にラスボスを倒してくれない?」
 持っている素材では封印を解くには足りなかったそうだが、その足りない素材のレシピを僕は知っていたのだ。

 おそらくあと数週間も真剣にゲームをすれば、二人もラスボスの封印を解くことはできるのだろう。

 それにしても……

「レアスキルのためにわざと冒険者を見殺しにしたの……?」
 一定の距離を保ちながら、死にかけのパーティーが絶命するのをジッと待っていたと言うチャッピー。
「別にいいじゃないの!
 ゲームよ所詮ゲーム!」
 僕は先程与えられたような、汚物を見るような冷ややかな視線をチャッピーへと送る。

「そ、そんな目で見ないでよっ!」
 本人も少々嫌な気分ではあったのだろう。
 僕が見つめていると、その目に涙が浮かんできたのだった。
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