35歳ニートがテストプレイヤーに選ばれたのだが、応募した覚えは全く無い。

紅柄ねこ(Bengara Neko)

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心の迷い

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「ねぇスノウ?
 ギルドに来ていた子たちと何かお話をしていたの?」
 家に帰ると、アイズが僕に聞いてくる。
 どうやら偶然僕たちの姿を見た冒険者が、アイズに告げ口をしたらしい。

 元々関係者だったチャッピー曰く、ラスボスを倒したとて、この世界が無くなるわけではないそうだ。
 数ある世界は常に変化し続けて、プレイヤーが消えても残された者たちの心にはその記憶が残されるらしい。
 逆を言えば、例え悪事を働いていても、この世界から脱出してしまえば本人にとっては無かったことにされてしまうのだ。

「ううん、珍しい素材があるからって見せてくれてたんだよ」
「そう……あの少女たち、あまり評判が良くなかったから心配だったのよ」
 本当のことはアイズには打ち明けられないでいた。
 僕もチャッピーたちと協力して、ラスボスを倒すと約束してしまったのだ。

 僕のことは構わない。
 むしろ、あの退屈な生活から救ってくれたゲームだといっても過言ではないからだ。

 話によると、特定の条件を満たした対象者をまとめて始末する計画が立てられていたそうだ。
 政府と聞いていたチャッピーだったが、そんな生温い組織ではないように思えて仕方ない。
 それになにより……

「今日はカレーうどんだよっ。
 ちゃーんとお揚げさんも入ってるんだから」
 食卓に用意された料理。
 今日は前々から試行錯誤を繰り返していたアイズお手製のカレーうどんだ。

「わぁーい、アイズの作るカレーって絶品だよね。
 これでお店を出したら、絶対に流行るのになぁ」
 子供みたいな言い方をしてしまうのだけど、本心からそんな気持ちでいっぱいだった。

 アイズは僕の好みを理解しようとして調味料を細かく分けて使っていたのだ。
 そんな気持ちのこもった料理が不味いわけがない。
 ゲームの中でも味はしっかりとわかるし、僕の見ていないところでもNPCはそれぞれの想いを胸に行動していた。

 そんなアイズと離れるのは辛かった……
 きっと、ラスボスを倒したら僕は現実に戻されてしまう。
 これまで、僕の事を本当の家族だと思って接してくれていたアイズ。
 親父さんやアランだって良い仲間だったと思う。
 再びこの世界に僕は来れるのか?
 ゲームなのだから、クリアしてももう一度プレイできるに違いない。
 だけどその時に来る世界がここだとは限らないのでは……

 チャッピーの前では、茜を想うチャッピーに共感して戦いを約束したのだが。
 それでも僕の心はまだ揺れ動いていたのだった。
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