28 / 41
心の迷い
しおりを挟む
「ねぇスノウ?
ギルドに来ていた子たちと何かお話をしていたの?」
家に帰ると、アイズが僕に聞いてくる。
どうやら偶然僕たちの姿を見た冒険者が、アイズに告げ口をしたらしい。
元々関係者だったチャッピー曰く、ラスボスを倒したとて、この世界が無くなるわけではないそうだ。
数ある世界は常に変化し続けて、プレイヤーが消えても残された者たちの心にはその記憶が残されるらしい。
逆を言えば、例え悪事を働いていても、この世界から脱出してしまえば本人にとっては無かったことにされてしまうのだ。
「ううん、珍しい素材があるからって見せてくれてたんだよ」
「そう……あの少女たち、あまり評判が良くなかったから心配だったのよ」
本当のことはアイズには打ち明けられないでいた。
僕もチャッピーたちと協力して、ラスボスを倒すと約束してしまったのだ。
僕のことは構わない。
むしろ、あの退屈な生活から救ってくれたゲームだといっても過言ではないからだ。
話によると、特定の条件を満たした対象者をまとめて始末する計画が立てられていたそうだ。
政府と聞いていたチャッピーだったが、そんな生温い組織ではないように思えて仕方ない。
それになにより……
「今日はカレーうどんだよっ。
ちゃーんとお揚げさんも入ってるんだから」
食卓に用意された料理。
今日は前々から試行錯誤を繰り返していたアイズお手製のカレーうどんだ。
「わぁーい、アイズの作るカレーって絶品だよね。
これでお店を出したら、絶対に流行るのになぁ」
子供みたいな言い方をしてしまうのだけど、本心からそんな気持ちでいっぱいだった。
アイズは僕の好みを理解しようとして調味料を細かく分けて使っていたのだ。
そんな気持ちのこもった料理が不味いわけがない。
ゲームの中でも味はしっかりとわかるし、僕の見ていないところでもNPCはそれぞれの想いを胸に行動していた。
そんなアイズと離れるのは辛かった……
きっと、ラスボスを倒したら僕は現実に戻されてしまう。
これまで、僕の事を本当の家族だと思って接してくれていたアイズ。
親父さんやアランだって良い仲間だったと思う。
再びこの世界に僕は来れるのか?
ゲームなのだから、クリアしてももう一度プレイできるに違いない。
だけどその時に来る世界がここだとは限らないのでは……
チャッピーの前では、茜を想うチャッピーに共感して戦いを約束したのだが。
それでも僕の心はまだ揺れ動いていたのだった。
ギルドに来ていた子たちと何かお話をしていたの?」
家に帰ると、アイズが僕に聞いてくる。
どうやら偶然僕たちの姿を見た冒険者が、アイズに告げ口をしたらしい。
元々関係者だったチャッピー曰く、ラスボスを倒したとて、この世界が無くなるわけではないそうだ。
数ある世界は常に変化し続けて、プレイヤーが消えても残された者たちの心にはその記憶が残されるらしい。
逆を言えば、例え悪事を働いていても、この世界から脱出してしまえば本人にとっては無かったことにされてしまうのだ。
「ううん、珍しい素材があるからって見せてくれてたんだよ」
「そう……あの少女たち、あまり評判が良くなかったから心配だったのよ」
本当のことはアイズには打ち明けられないでいた。
僕もチャッピーたちと協力して、ラスボスを倒すと約束してしまったのだ。
僕のことは構わない。
むしろ、あの退屈な生活から救ってくれたゲームだといっても過言ではないからだ。
話によると、特定の条件を満たした対象者をまとめて始末する計画が立てられていたそうだ。
政府と聞いていたチャッピーだったが、そんな生温い組織ではないように思えて仕方ない。
それになにより……
「今日はカレーうどんだよっ。
ちゃーんとお揚げさんも入ってるんだから」
食卓に用意された料理。
今日は前々から試行錯誤を繰り返していたアイズお手製のカレーうどんだ。
「わぁーい、アイズの作るカレーって絶品だよね。
これでお店を出したら、絶対に流行るのになぁ」
子供みたいな言い方をしてしまうのだけど、本心からそんな気持ちでいっぱいだった。
アイズは僕の好みを理解しようとして調味料を細かく分けて使っていたのだ。
そんな気持ちのこもった料理が不味いわけがない。
ゲームの中でも味はしっかりとわかるし、僕の見ていないところでもNPCはそれぞれの想いを胸に行動していた。
そんなアイズと離れるのは辛かった……
きっと、ラスボスを倒したら僕は現実に戻されてしまう。
これまで、僕の事を本当の家族だと思って接してくれていたアイズ。
親父さんやアランだって良い仲間だったと思う。
再びこの世界に僕は来れるのか?
ゲームなのだから、クリアしてももう一度プレイできるに違いない。
だけどその時に来る世界がここだとは限らないのでは……
チャッピーの前では、茜を想うチャッピーに共感して戦いを約束したのだが。
それでも僕の心はまだ揺れ動いていたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる