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拒否
しおりを挟むプテラが何故余裕をかましていたのかを知ったときにはもう遅かった……
「嘘っ、残像っ⁈ なんなのよ一体!」
精霊砲は間違いなくプテラを貫いた。
そして、その後突入した僕たちの攻撃もまた、確実にプテラを捉えていたのだ。
だが、精霊砲でポッカリと穴が空いた後に、僕たちの攻撃を受けたプテラは、ゆらゆらと煙となって消えてしまったのだ。
「クギャッ、クギャッ!」
気付けば上空で、僕たちを嘲笑うかのように飛んでいるプテラが見える。
まさかモンスターに騙されることになるとは思わなかった……
しかも、あろうことかプテラは街を目指して飛んでいく。
この距離だ、たまたま方向がそちらだったということもないだろう。
「ふっざ……!」
チャッピーと茜に声をかける間もなく、僕はプテラを追って駆け出した。
ふざけるな、あの街にはアイズやアラン、それに僕に良くしてくれた冒険者たちが大勢暮らしているのだ。
そんなところへ、目の前にいる僕たちを無視して向かって行くなんて許せない。
「待てぇぇ!」
気付いたら、僕は全力でプテラを追いかけていた。
身体強化のバフをかけたチャッピーが追いかけてきたようだが、それもすぐに見えなくなる。
僕が来るのを待っていたかのように、プテラは外壁を攻撃し始める。
壁の向こうで人々が騒いでいるのを感じ、これ以上ない怒りを覚えていた。
「アホウドリめ……すぐに消し去ってやるからな!」
クキャクキャと、まるで僕を嘲笑うかのようなプテラ。
ただそうは言っても外壁に登る手段はなく、僕はこれまた騒ぎになっている門へと向かい、すぐに街の中に入る。
「誰か……誰か助けてくださいっ……」
怪我をした少女と母親だろうか?
僕の想像以上に街の中は悲惨な状況であった。
数十メートルはある上空から、プテラの崩した外壁が落ちてくるのだ。
当然下には民家もあり、まるで狙いすまされたかのように、それがいくつも倒壊しかけていたのだ。
「みんなは早く避難をっ。
怪我をした人にはポーションを渡しますからっ!」
そう叫んで、僕は倒れた少女に駆け寄った。
「邪魔よっ!
誰か……誰かこの子を助けてよっ!」
……いくら有名だからって、僕は子供の姿をしている。
それこそ僕に対して『こんな時にふざけんじゃねぇ!』なんて罵声を浴びせてくる人もいた。
ポーションなんて気休めにしかならない。
それもまたこの世界の常識なのだ。
もしボジョレでもいたのなら、このポーションは市販のものとは違うのだと説明もしてくれたかもしれないが……
僕の中で、我慢していた何かが切れた気がした。
「ふざけてる……?
僕は至って真面目だよ。
そうだったな、いつだってみんな、人を……僕のことを見た目で決めつけてきた……」
現実では何度も挫折を味わった。
少し人と話すのが苦手で、少し見た目が人より劣っているだけで、僕の言うことなど誰も聞いてはくれないのだと、そう勝手に決めつけてしまっていた。
今回もまた、子供だという理由で僕の意見は無視されるのか?
僕は出来ることをさせてももらえずに、再び悲しい気持ちだけを与えられ続ければいいのだろうか?
もう、そんな風になりたくはない。
僕は母親を押し除けて、目の前の怪我をしていた少女にポーションを振りかけた。
本当は飲んだ方が数段効き目がいいのだが、ここからは好きにさせてもらおうと思うのだ。
「ちょっと!」
僕を突き飛ばして少女に駆け寄る母親。
「お、お母さん……ありがとう、痛いのがなくなったよ……」
まだ衰弱はしているようだから、グッタリとはしているが命には問題はないだろう。
母親が振り向いて、僕に何かを言おうとする。
だが、それを聞こうともせずに僕はその場を離れる。
「ポーションは置いておくよ。
また怪我をしている人がいたら使えばいい」
僕はなるべく高い建物へと登り、再びプテラの前に姿を見せた。
瓦礫をこれ見よがしに落下させるプテラ。
人の感情を逆撫でするような戦略か?
だが、こちら側に来てしまえば瓦礫くらい魔法でどうとでもできる。
僕は風の魔法で街を守りながら、ジリジリとプテラとの距離を縮めていたのだった。
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