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1章 ダンジョンと少女
収穫祭②
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村に行商がやってきて2日目、相変わらず持ち込まれた品々は飛ぶように売れているそうだ。
まとめて村がお買い上げなんてことはなく、最終的には売れ残った中からある程度はギルドがまとめて買い上げて、その売上で行商は村から仕入れを行い街へと戻る。
凍花もまた、反物や染料は気にしていたが、それほど金銭に余裕があるわけでもなく荷馬車に顔を出して翌日のイベントに向けての思案中であった。
「景品もみんなが欲しがるものの方が良いよねぇ。
元手があまりかからず作れるものっていったら、布の端切れで作った髪飾りとかかなぁ?」
「おっ、嬢ちゃんも買い物かい?
俺らは明日までしかいないからな。欲しいものがあったら早めにな」
ギルドに向かうついでに寄った一台には、いわゆる訳あり品が多いみたいだ。
様々な切れ端、傷があったり色の悪い果実、腹痛や痺れに効く薬などという怪しげなものが並んでいる。
「うーん……傷があってもジャムにすれば日持ちもするよね。
いや、砂糖入れないと糖度が低くて傷みやすいかなぁ。砂糖ってここじゃ希少なんだよね……」
凍花がそんなことをぶつぶつと呟いていたため、周囲は近寄り難い雰囲気を感じ取っていたのかもしれない。
オススメの品を案内していた男の声は、そこにはもう無かった。
そんな中、一人の女性が背後から凍花に声をかける。
その聞き覚えのある声に、凍花が振り返ると普段はギルドで受付をしている女性が立っていた。
手に持ったオレンジのような果物の置くと、女性は凍花に話しかける。
「何かお探しなのですか?
バレシアの実を品定めしてたようですが」
「あ、お疲れ様です。いやぁ、今からギルドに行こうと思ってたんですけど」
「そうなの?
丁度よかった、私もテバちゃんに用事だったのよ。それとさ……」
女性が耳打ちをすると、それを聞いた凍花は目を輝かせてギルドへと向かう。
「なんだったんだ、あの子……」
あまりに不思議なオーラにポカンとする店主。
「テバちゃんだろ? パン屋で働いてるんだが、あれで冒険者もやってるし時々変なことを思いついては誰かに相談してるって噂だぜ」
質問責めにされたり謎の言葉を浴びせられたりと、『それさえ無ければ可愛い少女なのに』なんて話がされていることを凍花は知らないでいた。
石レンガが並べられた広間を通り、その溝に生える草を眺めながら凍花は歩く。
除草剤、アスファルト、電柱……
何かしらの文化を異世界に持ち込もうと考えてはみるものの、思うことはいつも便利だった過去を何も考えずに過ごしていた自分の姿であった。
「さ、入って入って」
裏口であるギルドの木製のドアの鍵を開け、凍花は中へと招き入れられた。
「お、お邪魔しまーす……」
廊下があり、すぐ近くにある部屋はギルド長の職務室。
そこから発せられた声は廊下まで聞こえてくる。
「プリトか? どうだったんだ?」
「えぇ、テバちゃんを捕まえてきたので入りますよーっと」
『捕まえた』と聞いては不安になる凍花。
しかし、中に入ると書類に向かって忙しそうにしているギルド長は『少し待っててくれ』とお願いをするではないか。
どうやら悪い話というわけでも無さそうだと、プリトの淹れた茶をすすりながら座ってただ待つ凍花。
しばらくして、ギルド長がペンを置いたタイミングで、プリトは一枚の依頼書を凍花に差し出す。
「なんです、これ?」
目の前の紙には『調査依頼』と書かれており、更には村から5kmほど離れているであろう山のどこかにマークのされた地図も見せられる。
「プリト、説明は任せる」
「はいはい。じゃあちょっと長くなるけど、まずはダンジョンについての説明からね」
冒険者になった時、ダンジョンについては話は聞いていた。
魔物が次々と現れる洞窟であり、放置するとそれは徐々に成長していく。
そして、人々はダンジョンの成長を防ぐために、早期発見とダンジョンの消滅を必要とするのだと。
しかし、凍花が此度聞いた話には、それとは真逆のダンジョンを成長させるという内容の話。
魔物とダンジョン。
そして今回の依頼についての話は、その後1時間にも及んだのであった。
まとめて村がお買い上げなんてことはなく、最終的には売れ残った中からある程度はギルドがまとめて買い上げて、その売上で行商は村から仕入れを行い街へと戻る。
凍花もまた、反物や染料は気にしていたが、それほど金銭に余裕があるわけでもなく荷馬車に顔を出して翌日のイベントに向けての思案中であった。
「景品もみんなが欲しがるものの方が良いよねぇ。
元手があまりかからず作れるものっていったら、布の端切れで作った髪飾りとかかなぁ?」
「おっ、嬢ちゃんも買い物かい?
俺らは明日までしかいないからな。欲しいものがあったら早めにな」
ギルドに向かうついでに寄った一台には、いわゆる訳あり品が多いみたいだ。
様々な切れ端、傷があったり色の悪い果実、腹痛や痺れに効く薬などという怪しげなものが並んでいる。
「うーん……傷があってもジャムにすれば日持ちもするよね。
いや、砂糖入れないと糖度が低くて傷みやすいかなぁ。砂糖ってここじゃ希少なんだよね……」
凍花がそんなことをぶつぶつと呟いていたため、周囲は近寄り難い雰囲気を感じ取っていたのかもしれない。
オススメの品を案内していた男の声は、そこにはもう無かった。
そんな中、一人の女性が背後から凍花に声をかける。
その聞き覚えのある声に、凍花が振り返ると普段はギルドで受付をしている女性が立っていた。
手に持ったオレンジのような果物の置くと、女性は凍花に話しかける。
「何かお探しなのですか?
バレシアの実を品定めしてたようですが」
「あ、お疲れ様です。いやぁ、今からギルドに行こうと思ってたんですけど」
「そうなの?
丁度よかった、私もテバちゃんに用事だったのよ。それとさ……」
女性が耳打ちをすると、それを聞いた凍花は目を輝かせてギルドへと向かう。
「なんだったんだ、あの子……」
あまりに不思議なオーラにポカンとする店主。
「テバちゃんだろ? パン屋で働いてるんだが、あれで冒険者もやってるし時々変なことを思いついては誰かに相談してるって噂だぜ」
質問責めにされたり謎の言葉を浴びせられたりと、『それさえ無ければ可愛い少女なのに』なんて話がされていることを凍花は知らないでいた。
石レンガが並べられた広間を通り、その溝に生える草を眺めながら凍花は歩く。
除草剤、アスファルト、電柱……
何かしらの文化を異世界に持ち込もうと考えてはみるものの、思うことはいつも便利だった過去を何も考えずに過ごしていた自分の姿であった。
「さ、入って入って」
裏口であるギルドの木製のドアの鍵を開け、凍花は中へと招き入れられた。
「お、お邪魔しまーす……」
廊下があり、すぐ近くにある部屋はギルド長の職務室。
そこから発せられた声は廊下まで聞こえてくる。
「プリトか? どうだったんだ?」
「えぇ、テバちゃんを捕まえてきたので入りますよーっと」
『捕まえた』と聞いては不安になる凍花。
しかし、中に入ると書類に向かって忙しそうにしているギルド長は『少し待っててくれ』とお願いをするではないか。
どうやら悪い話というわけでも無さそうだと、プリトの淹れた茶をすすりながら座ってただ待つ凍花。
しばらくして、ギルド長がペンを置いたタイミングで、プリトは一枚の依頼書を凍花に差し出す。
「なんです、これ?」
目の前の紙には『調査依頼』と書かれており、更には村から5kmほど離れているであろう山のどこかにマークのされた地図も見せられる。
「プリト、説明は任せる」
「はいはい。じゃあちょっと長くなるけど、まずはダンジョンについての説明からね」
冒険者になった時、ダンジョンについては話は聞いていた。
魔物が次々と現れる洞窟であり、放置するとそれは徐々に成長していく。
そして、人々はダンジョンの成長を防ぐために、早期発見とダンジョンの消滅を必要とするのだと。
しかし、凍花が此度聞いた話には、それとは真逆のダンジョンを成長させるという内容の話。
魔物とダンジョン。
そして今回の依頼についての話は、その後1時間にも及んだのであった。
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