20 / 55
1章 ダンジョンと少女
収穫祭②
しおりを挟む
村に行商がやってきて2日目、相変わらず持ち込まれた品々は飛ぶように売れているそうだ。
まとめて村がお買い上げなんてことはなく、最終的には売れ残った中からある程度はギルドがまとめて買い上げて、その売上で行商は村から仕入れを行い街へと戻る。
凍花もまた、反物や染料は気にしていたが、それほど金銭に余裕があるわけでもなく荷馬車に顔を出して翌日のイベントに向けての思案中であった。
「景品もみんなが欲しがるものの方が良いよねぇ。
元手があまりかからず作れるものっていったら、布の端切れで作った髪飾りとかかなぁ?」
「おっ、嬢ちゃんも買い物かい?
俺らは明日までしかいないからな。欲しいものがあったら早めにな」
ギルドに向かうついでに寄った一台には、いわゆる訳あり品が多いみたいだ。
様々な切れ端、傷があったり色の悪い果実、腹痛や痺れに効く薬などという怪しげなものが並んでいる。
「うーん……傷があってもジャムにすれば日持ちもするよね。
いや、砂糖入れないと糖度が低くて傷みやすいかなぁ。砂糖ってここじゃ希少なんだよね……」
凍花がそんなことをぶつぶつと呟いていたため、周囲は近寄り難い雰囲気を感じ取っていたのかもしれない。
オススメの品を案内していた男の声は、そこにはもう無かった。
そんな中、一人の女性が背後から凍花に声をかける。
その聞き覚えのある声に、凍花が振り返ると普段はギルドで受付をしている女性が立っていた。
手に持ったオレンジのような果物の置くと、女性は凍花に話しかける。
「何かお探しなのですか?
バレシアの実を品定めしてたようですが」
「あ、お疲れ様です。いやぁ、今からギルドに行こうと思ってたんですけど」
「そうなの?
丁度よかった、私もテバちゃんに用事だったのよ。それとさ……」
女性が耳打ちをすると、それを聞いた凍花は目を輝かせてギルドへと向かう。
「なんだったんだ、あの子……」
あまりに不思議なオーラにポカンとする店主。
「テバちゃんだろ? パン屋で働いてるんだが、あれで冒険者もやってるし時々変なことを思いついては誰かに相談してるって噂だぜ」
質問責めにされたり謎の言葉を浴びせられたりと、『それさえ無ければ可愛い少女なのに』なんて話がされていることを凍花は知らないでいた。
石レンガが並べられた広間を通り、その溝に生える草を眺めながら凍花は歩く。
除草剤、アスファルト、電柱……
何かしらの文化を異世界に持ち込もうと考えてはみるものの、思うことはいつも便利だった過去を何も考えずに過ごしていた自分の姿であった。
「さ、入って入って」
裏口であるギルドの木製のドアの鍵を開け、凍花は中へと招き入れられた。
「お、お邪魔しまーす……」
廊下があり、すぐ近くにある部屋はギルド長の職務室。
そこから発せられた声は廊下まで聞こえてくる。
「プリトか? どうだったんだ?」
「えぇ、テバちゃんを捕まえてきたので入りますよーっと」
『捕まえた』と聞いては不安になる凍花。
しかし、中に入ると書類に向かって忙しそうにしているギルド長は『少し待っててくれ』とお願いをするではないか。
どうやら悪い話というわけでも無さそうだと、プリトの淹れた茶をすすりながら座ってただ待つ凍花。
しばらくして、ギルド長がペンを置いたタイミングで、プリトは一枚の依頼書を凍花に差し出す。
「なんです、これ?」
目の前の紙には『調査依頼』と書かれており、更には村から5kmほど離れているであろう山のどこかにマークのされた地図も見せられる。
「プリト、説明は任せる」
「はいはい。じゃあちょっと長くなるけど、まずはダンジョンについての説明からね」
冒険者になった時、ダンジョンについては話は聞いていた。
魔物が次々と現れる洞窟であり、放置するとそれは徐々に成長していく。
そして、人々はダンジョンの成長を防ぐために、早期発見とダンジョンの消滅を必要とするのだと。
しかし、凍花が此度聞いた話には、それとは真逆のダンジョンを成長させるという内容の話。
魔物とダンジョン。
そして今回の依頼についての話は、その後1時間にも及んだのであった。
まとめて村がお買い上げなんてことはなく、最終的には売れ残った中からある程度はギルドがまとめて買い上げて、その売上で行商は村から仕入れを行い街へと戻る。
凍花もまた、反物や染料は気にしていたが、それほど金銭に余裕があるわけでもなく荷馬車に顔を出して翌日のイベントに向けての思案中であった。
「景品もみんなが欲しがるものの方が良いよねぇ。
元手があまりかからず作れるものっていったら、布の端切れで作った髪飾りとかかなぁ?」
「おっ、嬢ちゃんも買い物かい?
俺らは明日までしかいないからな。欲しいものがあったら早めにな」
ギルドに向かうついでに寄った一台には、いわゆる訳あり品が多いみたいだ。
様々な切れ端、傷があったり色の悪い果実、腹痛や痺れに効く薬などという怪しげなものが並んでいる。
「うーん……傷があってもジャムにすれば日持ちもするよね。
いや、砂糖入れないと糖度が低くて傷みやすいかなぁ。砂糖ってここじゃ希少なんだよね……」
凍花がそんなことをぶつぶつと呟いていたため、周囲は近寄り難い雰囲気を感じ取っていたのかもしれない。
オススメの品を案内していた男の声は、そこにはもう無かった。
そんな中、一人の女性が背後から凍花に声をかける。
その聞き覚えのある声に、凍花が振り返ると普段はギルドで受付をしている女性が立っていた。
手に持ったオレンジのような果物の置くと、女性は凍花に話しかける。
「何かお探しなのですか?
バレシアの実を品定めしてたようですが」
「あ、お疲れ様です。いやぁ、今からギルドに行こうと思ってたんですけど」
「そうなの?
丁度よかった、私もテバちゃんに用事だったのよ。それとさ……」
女性が耳打ちをすると、それを聞いた凍花は目を輝かせてギルドへと向かう。
「なんだったんだ、あの子……」
あまりに不思議なオーラにポカンとする店主。
「テバちゃんだろ? パン屋で働いてるんだが、あれで冒険者もやってるし時々変なことを思いついては誰かに相談してるって噂だぜ」
質問責めにされたり謎の言葉を浴びせられたりと、『それさえ無ければ可愛い少女なのに』なんて話がされていることを凍花は知らないでいた。
石レンガが並べられた広間を通り、その溝に生える草を眺めながら凍花は歩く。
除草剤、アスファルト、電柱……
何かしらの文化を異世界に持ち込もうと考えてはみるものの、思うことはいつも便利だった過去を何も考えずに過ごしていた自分の姿であった。
「さ、入って入って」
裏口であるギルドの木製のドアの鍵を開け、凍花は中へと招き入れられた。
「お、お邪魔しまーす……」
廊下があり、すぐ近くにある部屋はギルド長の職務室。
そこから発せられた声は廊下まで聞こえてくる。
「プリトか? どうだったんだ?」
「えぇ、テバちゃんを捕まえてきたので入りますよーっと」
『捕まえた』と聞いては不安になる凍花。
しかし、中に入ると書類に向かって忙しそうにしているギルド長は『少し待っててくれ』とお願いをするではないか。
どうやら悪い話というわけでも無さそうだと、プリトの淹れた茶をすすりながら座ってただ待つ凍花。
しばらくして、ギルド長がペンを置いたタイミングで、プリトは一枚の依頼書を凍花に差し出す。
「なんです、これ?」
目の前の紙には『調査依頼』と書かれており、更には村から5kmほど離れているであろう山のどこかにマークのされた地図も見せられる。
「プリト、説明は任せる」
「はいはい。じゃあちょっと長くなるけど、まずはダンジョンについての説明からね」
冒険者になった時、ダンジョンについては話は聞いていた。
魔物が次々と現れる洞窟であり、放置するとそれは徐々に成長していく。
そして、人々はダンジョンの成長を防ぐために、早期発見とダンジョンの消滅を必要とするのだと。
しかし、凍花が此度聞いた話には、それとは真逆のダンジョンを成長させるという内容の話。
魔物とダンジョン。
そして今回の依頼についての話は、その後1時間にも及んだのであった。
0
あなたにおすすめの小説
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる