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基本は何よりも大事なのです
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「凄かったね、クロウ君の魔法っ!」
「ふ、ふんっ……私も少しだけ見直したわよっ」
ヤンのやつを、ちょっと懲らしめただけで英雄扱いみたいになってしまった。
二人しかいない女子が僕の元に来てしまうと、他の男子の視線が痛いんだけどな……
結局、魔法が使えるのはヤンバルクイナの三人と、今隣にいるヒガラお嬢様だけだった。
僕のは……魔法じゃないし。
それにしても、意外と学院生活も有りかもしれない。
母も父もいなければ、魔法と見せかけてスキルを色々と試せるかもしれないのだ。
今の僕にこの先の学院生活をやっていけるのか考えてしまう。
風魔法の授業では……何も思いつかない。
いやしかし土魔法なら……なにがある?
火魔法だったらお湯を出すことはできる。
そういえば火魔法は危険だから最後に学ぶんだったか……
体験授業を終え教室に戻ったのだが、ヤン一人だけは少し遅れて入ってくる。
席に着く前に、一瞬だけこちらを睨んでいたが、文句を言わないところをみるに先生からの注意でもあったのだろう。
「それでだー……」
最初の授業は『魔法とは何か?』である。
全部は分からないけれど、魔力をエネルギーに変える技術のこととか説明してるんじゃないだろうか?
魔素がどうの、性質がどうのと……
あとは、水が細かな粒の集合体であるような言い方をしていたが、つまりは水素と酸素の事を言っているのだろう。
そういえば水素と酸素から水を作るのは、すごく金がかかるのだったか?
最初の授業では水は形を変えていろいろな場所に存在する事を伝えていた。
「まぁ君たちが理解するには何年もかかるような、難しい技術が詰め込まれている。
適当に魔法を使うと、最悪暴発して命を落とす危険もあるものだ」
今日の授業は最後の言葉だけを理解しろということだった。
もし仮に、今日の授業の前半全て理解したのなら、もはや学院にくる意味も無い。
しかも、中庭で魔法を使うことができた子供に対しては、『運が良かったなぁ』なんて言う。
魔法の暴発は自らの魔力を把握できていない若い頃に起きやすいらしい。
おいそれと使うものではない、という意味だろうけど、三人組の一番大人しいクイナという子供は涙を浮かべている。
「うわー……もう全然分からないわよっ。
こんなんで学院生活、ついていけるのかしら……」
まぁ前半部分は1日で理解できる内容では無かったから、そりゃあ無理だろう。毎日がアレだったら。
「大丈夫だよきっと。
これから何年もかけて今日言った事を教えてくれるって意味だったみたいだし」
ヒガラお嬢様も、僕がそう言うと『ふぅん……』と少し納得した様子。
チョロチョロっと文字の書かれていたノートが見えるが、途中で手が止まってしまったようだ。
「すっごーい!
私なんて最後に先生が爆発しちゃうのかと思ってたよー」
……ツグミはどういう解釈の仕方をしたらそう思ったもだろうか?
同じくこちらもノートには箇条書きで数行。
あとはリスっぽい上手な絵とかがちらほら。
ちょっと可愛らしいけど、やや人間よりで動物とは言い難い。
「なぁお前……」
席で座って、帰る前のおしゃべりをしていた。
そこにやってきたのが、三人組の少年たちだった。
「ど、どうしたの?」
なんだろう?
きっと文句を言いたくて来たのだろうけれど。
さすがに僕一人で歳上三人の相手はしたくない……というか、子供と喧嘩なんてそもそもしたくない。
「さっきの魔法、どうやったんだ?
俺たちにも教えてくれないか……?」
手前の少年、ヤンがそう言って頭を下げてきた。
あぁ、なるほど。
意外にも、こと魔法に関しては、本気で学びたいと思っているのだろう。
誰よりも上手に魔法を使いたいというだけだとしても立派だと思う。
そう考えると三人とも口は悪いし性格も悪いし、女の子にモテそうではないけれど、可愛らしく感じてしまう。
……まぁ僕も彼女ができたことはないけどさ……
「先生もいっていたじゃないか。
無理に強力な魔法を使おうとするのは危険だって」
多分、今日の授業で言っていた総魔力量や、魔力操作のことが関係しているのだろう。
魔法は使えずとも、初日から小難しい講義をしてくれたおかげで、僕にも魔法を使うための基礎知識くらいは身についてしまったと思う。
そんなこと言ったところで、僕が魔法を使えるわけではないのだけど……
「ちゃんと自分の魔力を高める特訓をしなきゃ、強い魔法が使えるようになっても意味がないよ。
瞑想をしながら、体内のそういう力を感じることが大切だって言っていたじゃないか」
僕は三人組に、卒業したときの自分を想像することが大切だと説いてみた。
小手先の技だけ身につけたって、力が伴っていなければ誰も君たちを必要としないだろう。
剣術だって、技術は大切だけど、基礎体力がなければ……
いや、漫画とかだと病弱の剣士がめちゃくちゃ強いパターンあるよね。
それを思うとどうなんだろうな?
「どうしたんだ?」
「ううん、なんでもない。
やっぱり魔力を強める訓練をした方が良いよ」
というか、僕まだ5歳だし。
……あれ?
自分でそんな事を言っていて、僕は父になんと言っただろうか。
剣術を早く習いたい?
この小さな身体で、本当に剣術の指導についていけるのか?
大きな怪我をして、二度と剣を持つなと言われたり……
うん。自分こそ、しっかりと基礎体力を身に付けるべきなんだろうなぁ。
それにスキルを授かって、身体も軽くなってから僕のステータスは全く伸びていない。
あれだけ鍛えることに必死だったはずなのに、ここ数日は全くトレーニングしていなかった。
こんなことではダメになってしまいそうだ……
「ふ、ふんっ……私も少しだけ見直したわよっ」
ヤンのやつを、ちょっと懲らしめただけで英雄扱いみたいになってしまった。
二人しかいない女子が僕の元に来てしまうと、他の男子の視線が痛いんだけどな……
結局、魔法が使えるのはヤンバルクイナの三人と、今隣にいるヒガラお嬢様だけだった。
僕のは……魔法じゃないし。
それにしても、意外と学院生活も有りかもしれない。
母も父もいなければ、魔法と見せかけてスキルを色々と試せるかもしれないのだ。
今の僕にこの先の学院生活をやっていけるのか考えてしまう。
風魔法の授業では……何も思いつかない。
いやしかし土魔法なら……なにがある?
火魔法だったらお湯を出すことはできる。
そういえば火魔法は危険だから最後に学ぶんだったか……
体験授業を終え教室に戻ったのだが、ヤン一人だけは少し遅れて入ってくる。
席に着く前に、一瞬だけこちらを睨んでいたが、文句を言わないところをみるに先生からの注意でもあったのだろう。
「それでだー……」
最初の授業は『魔法とは何か?』である。
全部は分からないけれど、魔力をエネルギーに変える技術のこととか説明してるんじゃないだろうか?
魔素がどうの、性質がどうのと……
あとは、水が細かな粒の集合体であるような言い方をしていたが、つまりは水素と酸素の事を言っているのだろう。
そういえば水素と酸素から水を作るのは、すごく金がかかるのだったか?
最初の授業では水は形を変えていろいろな場所に存在する事を伝えていた。
「まぁ君たちが理解するには何年もかかるような、難しい技術が詰め込まれている。
適当に魔法を使うと、最悪暴発して命を落とす危険もあるものだ」
今日の授業は最後の言葉だけを理解しろということだった。
もし仮に、今日の授業の前半全て理解したのなら、もはや学院にくる意味も無い。
しかも、中庭で魔法を使うことができた子供に対しては、『運が良かったなぁ』なんて言う。
魔法の暴発は自らの魔力を把握できていない若い頃に起きやすいらしい。
おいそれと使うものではない、という意味だろうけど、三人組の一番大人しいクイナという子供は涙を浮かべている。
「うわー……もう全然分からないわよっ。
こんなんで学院生活、ついていけるのかしら……」
まぁ前半部分は1日で理解できる内容では無かったから、そりゃあ無理だろう。毎日がアレだったら。
「大丈夫だよきっと。
これから何年もかけて今日言った事を教えてくれるって意味だったみたいだし」
ヒガラお嬢様も、僕がそう言うと『ふぅん……』と少し納得した様子。
チョロチョロっと文字の書かれていたノートが見えるが、途中で手が止まってしまったようだ。
「すっごーい!
私なんて最後に先生が爆発しちゃうのかと思ってたよー」
……ツグミはどういう解釈の仕方をしたらそう思ったもだろうか?
同じくこちらもノートには箇条書きで数行。
あとはリスっぽい上手な絵とかがちらほら。
ちょっと可愛らしいけど、やや人間よりで動物とは言い難い。
「なぁお前……」
席で座って、帰る前のおしゃべりをしていた。
そこにやってきたのが、三人組の少年たちだった。
「ど、どうしたの?」
なんだろう?
きっと文句を言いたくて来たのだろうけれど。
さすがに僕一人で歳上三人の相手はしたくない……というか、子供と喧嘩なんてそもそもしたくない。
「さっきの魔法、どうやったんだ?
俺たちにも教えてくれないか……?」
手前の少年、ヤンがそう言って頭を下げてきた。
あぁ、なるほど。
意外にも、こと魔法に関しては、本気で学びたいと思っているのだろう。
誰よりも上手に魔法を使いたいというだけだとしても立派だと思う。
そう考えると三人とも口は悪いし性格も悪いし、女の子にモテそうではないけれど、可愛らしく感じてしまう。
……まぁ僕も彼女ができたことはないけどさ……
「先生もいっていたじゃないか。
無理に強力な魔法を使おうとするのは危険だって」
多分、今日の授業で言っていた総魔力量や、魔力操作のことが関係しているのだろう。
魔法は使えずとも、初日から小難しい講義をしてくれたおかげで、僕にも魔法を使うための基礎知識くらいは身についてしまったと思う。
そんなこと言ったところで、僕が魔法を使えるわけではないのだけど……
「ちゃんと自分の魔力を高める特訓をしなきゃ、強い魔法が使えるようになっても意味がないよ。
瞑想をしながら、体内のそういう力を感じることが大切だって言っていたじゃないか」
僕は三人組に、卒業したときの自分を想像することが大切だと説いてみた。
小手先の技だけ身につけたって、力が伴っていなければ誰も君たちを必要としないだろう。
剣術だって、技術は大切だけど、基礎体力がなければ……
いや、漫画とかだと病弱の剣士がめちゃくちゃ強いパターンあるよね。
それを思うとどうなんだろうな?
「どうしたんだ?」
「ううん、なんでもない。
やっぱり魔力を強める訓練をした方が良いよ」
というか、僕まだ5歳だし。
……あれ?
自分でそんな事を言っていて、僕は父になんと言っただろうか。
剣術を早く習いたい?
この小さな身体で、本当に剣術の指導についていけるのか?
大きな怪我をして、二度と剣を持つなと言われたり……
うん。自分こそ、しっかりと基礎体力を身に付けるべきなんだろうなぁ。
それにスキルを授かって、身体も軽くなってから僕のステータスは全く伸びていない。
あれだけ鍛えることに必死だったはずなのに、ここ数日は全くトレーニングしていなかった。
こんなことではダメになってしまいそうだ……
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