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そういえばヤエの実力は知らないのです?
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夜の明けないうちに小屋を出た。
僕としてはどのみち睡眠など取れそうにはなかったし、もうどうでもいい。
幸い馬車には何もされていなかった。
ちょっとだけ覚悟していたんだけど。
「お話はわかりました。
私たちも、きっとあの場所で全員殺されてしまう予定だったのでしょう……
それで姫様が助かるのであれば、出来る限りの協力をさせていただきたいと思います」
「良かった、そう言ってくれて」
少し離れたところで護衛の者たちが慌ただしく出てくるのを確認し、周囲を警戒しながら近付いた。
ここで見られていては意味がないからな。
護衛は全てガルム教の強者の中でも、革新派と呼ばれる者たちで構成されていたらしい。
天狐という種族に対し理解があり、今の形だけの幻獣姫様を良しとは思わない者たち。
「変だとは思ったのです。
急に改革を進めると言い出して、姫様が直接各地へ出向くなど……」
そうすれば、ガルム教に対する疑念なども払拭されるのではないか。
要点をまとめるとこんな感じだった。
「要するに目障りだからまとめて始末してしまおうってこと?」
僕は確認で護衛の一人に聞いてみる。
「はい……おそらくは。
しかし一体どのような力で……」
サイみたいな魔物が現れたのは襲撃の後だと言うし、馬車を壊された方法がわからない。
ヤエの使うような強力な魔法? もしくはそういう力もあるのだと思って行動しないといけないのか?
いやいや、余計なことに首を突っ込む気は……
両親の情報も欲しいけど、どこか別の街へ。
僕はそう思っていたのだけど、フロックスが聖地へ向かうと言う。
「幻獣姫様は死んだことにするんだろう?
聖地がどんな行動をとるのかも確認しておきたいし、変装でもして様子を見に行くか」
どうせ別の街に移動するほどの余裕資金は無いみたいだし、行かなくてはならないのか……
「じゃあ俺たちは先に行くぞ。
あぁ、そういえば俺も刺されたことになっているから」
「えっ、そ……それはどういう……」
困惑する護衛の男。
「情報の共有だ。頭に入れておいてくれ。
何が原因でバレるか分からないからな」
今度こそ聖地へ向かって出発。
馬車に揺られ、夜には到着するだろうと。
フロックスには申し訳なかったけど、眠気も限界に達していて、僕は先に馬車に乗り込むと、すぐに夢の中へと旅立ってしまっていたのだった……
…………
『ねぇレイブン……私、少しだけ心配してるのよ……』
こちらの世界に来て……3歳くらいだっただろうか?
『どうしたんだいカナリー……』
『時々大人びた事をするじゃない……ちゃんと周りが理解してあげられるのかなって……』
確かにそんな事を話していたな。
『心配ないさ、クロウなら……』
レイブン……元気でいるだろうか……
「……みたいだね」
「うん……寝顔も可愛くて好きかも」
ボーッとする中、ヤエとサクアの会話が聞こえてくる。
目を開けると、向かい側で僕を覗き込むように座るヤエの姿が。
「あっ起きた。
おはようクロウ!」
にぱっと笑って、耳もピコピコと動いて可愛らしいヤエ。
「あ、うんおはよう……」
グッと身体に力を入れて姿勢を正そうとする。
「もっと寝ていてくださればいいのに」
グイッと身体を引き寄せられ、再び寄りかかる体勢に。
どうやら、サクアが横に座って僕を支えていてくれたみたいだ。
おかげで気持ちよく寝れてはいたが……
「わ、わかったから少し離れよう、ね」
離れると言っても、狭い馬車の中では身体はくっつくのだけど。
というか、ヤエじゃなくてサクアが横に座っているとは思わなかったな……
何か心境の変化でもあったのか?
んー……まぁ、争っているよりは平和でいい事……かなぁ。
山は越えたようで、今はガルム湖と呼ばれる湖のほとりを走っているそうだ。
物見から覗いてみると、キラキラと輝く水面が見える。
「うわぁー、綺麗だねー!」
この世界に来て初めて見た景色だった。
「うん、ピカピカー!」
ヤエも身を乗り出して湖を眺めている。
「顔を出していると危ないわよ二人とも。
ここって最近、凶暴な魔物がたくさん現れるって話があるみたいですし」
「そうなの? じゃあ隠れてなきゃね」
さすがサクアは聖獣の地で暮らしているだけあって、この辺りは詳しいみたいだ。
「おいおい、俺のことも気にしてくれよ!」
御者台からフロックスが叫ぶ。
一匹や二匹ならともかく、大量にとなれば、あらかじめ戦闘できるよう身構えておいてほしいそうだ。
「魔物が出るなんて聞いてねぇし、そんな話を聞いたら怖くなっちまうじゃねーか」
「だったらさ、襲われる前に倒しちゃう?
その方が、ここを通る他の人のためにもなるんじゃない?」
「はぁっ⁈ ……いや、お前ならやれそうな気がしてきたな……クロウ」
僕もしっかり睡眠をとって絶好調だ。
それに、そろそろお腹も空いた。
ヤエの魔法の練習がてら、魔物を倒して料理ができないか試してみたい。
そういえばサクアは戦えるのだろうか?
まぁ仮にもお姫様だし、そんなわけはないだろうな。
「クロウ、見つけた!」
いつの間にか『さん』も取れているなぁ。
最初から呼び捨てでいいとは言っていたし、少し慣れてくれたということか。
「どの辺りにいるか分かるのですか⁈」
驚いた様子でサクアが声を上げる。
「うん、水の中にいっぱいいるよ。
あっちの方!」
湖を指差すヤエを見て、なんだか納得していない様子のサクア。
そりゃあ湖の中に魔物がいると言っておけば、確認のしようはないわけで……
というのはヤエでなければのお話。
「なんなのよ……その魔法……
ヤエってば本当に普通の獣人??」
ビックリだよね。
学院じゃ、こんな魔法使ったら速攻学院長に呼び出されちゃうよ。
それにしても、20体ほどの魔物が討伐できたわけだけど……
僕の目の前に、討伐した魔物が地面に置かれている。
どう見てもランカーサイズをゆうに超えた……ブラックバスが。
あれか?
外来種が繁殖しすぎて生態系を崩したとかそういうことか?
とりあえずお腹も空いたし、ミルをカリカリと。
臭みがどうのとは言うけれど、食えないことはないだろう……。
僕としてはどのみち睡眠など取れそうにはなかったし、もうどうでもいい。
幸い馬車には何もされていなかった。
ちょっとだけ覚悟していたんだけど。
「お話はわかりました。
私たちも、きっとあの場所で全員殺されてしまう予定だったのでしょう……
それで姫様が助かるのであれば、出来る限りの協力をさせていただきたいと思います」
「良かった、そう言ってくれて」
少し離れたところで護衛の者たちが慌ただしく出てくるのを確認し、周囲を警戒しながら近付いた。
ここで見られていては意味がないからな。
護衛は全てガルム教の強者の中でも、革新派と呼ばれる者たちで構成されていたらしい。
天狐という種族に対し理解があり、今の形だけの幻獣姫様を良しとは思わない者たち。
「変だとは思ったのです。
急に改革を進めると言い出して、姫様が直接各地へ出向くなど……」
そうすれば、ガルム教に対する疑念なども払拭されるのではないか。
要点をまとめるとこんな感じだった。
「要するに目障りだからまとめて始末してしまおうってこと?」
僕は確認で護衛の一人に聞いてみる。
「はい……おそらくは。
しかし一体どのような力で……」
サイみたいな魔物が現れたのは襲撃の後だと言うし、馬車を壊された方法がわからない。
ヤエの使うような強力な魔法? もしくはそういう力もあるのだと思って行動しないといけないのか?
いやいや、余計なことに首を突っ込む気は……
両親の情報も欲しいけど、どこか別の街へ。
僕はそう思っていたのだけど、フロックスが聖地へ向かうと言う。
「幻獣姫様は死んだことにするんだろう?
聖地がどんな行動をとるのかも確認しておきたいし、変装でもして様子を見に行くか」
どうせ別の街に移動するほどの余裕資金は無いみたいだし、行かなくてはならないのか……
「じゃあ俺たちは先に行くぞ。
あぁ、そういえば俺も刺されたことになっているから」
「えっ、そ……それはどういう……」
困惑する護衛の男。
「情報の共有だ。頭に入れておいてくれ。
何が原因でバレるか分からないからな」
今度こそ聖地へ向かって出発。
馬車に揺られ、夜には到着するだろうと。
フロックスには申し訳なかったけど、眠気も限界に達していて、僕は先に馬車に乗り込むと、すぐに夢の中へと旅立ってしまっていたのだった……
…………
『ねぇレイブン……私、少しだけ心配してるのよ……』
こちらの世界に来て……3歳くらいだっただろうか?
『どうしたんだいカナリー……』
『時々大人びた事をするじゃない……ちゃんと周りが理解してあげられるのかなって……』
確かにそんな事を話していたな。
『心配ないさ、クロウなら……』
レイブン……元気でいるだろうか……
「……みたいだね」
「うん……寝顔も可愛くて好きかも」
ボーッとする中、ヤエとサクアの会話が聞こえてくる。
目を開けると、向かい側で僕を覗き込むように座るヤエの姿が。
「あっ起きた。
おはようクロウ!」
にぱっと笑って、耳もピコピコと動いて可愛らしいヤエ。
「あ、うんおはよう……」
グッと身体に力を入れて姿勢を正そうとする。
「もっと寝ていてくださればいいのに」
グイッと身体を引き寄せられ、再び寄りかかる体勢に。
どうやら、サクアが横に座って僕を支えていてくれたみたいだ。
おかげで気持ちよく寝れてはいたが……
「わ、わかったから少し離れよう、ね」
離れると言っても、狭い馬車の中では身体はくっつくのだけど。
というか、ヤエじゃなくてサクアが横に座っているとは思わなかったな……
何か心境の変化でもあったのか?
んー……まぁ、争っているよりは平和でいい事……かなぁ。
山は越えたようで、今はガルム湖と呼ばれる湖のほとりを走っているそうだ。
物見から覗いてみると、キラキラと輝く水面が見える。
「うわぁー、綺麗だねー!」
この世界に来て初めて見た景色だった。
「うん、ピカピカー!」
ヤエも身を乗り出して湖を眺めている。
「顔を出していると危ないわよ二人とも。
ここって最近、凶暴な魔物がたくさん現れるって話があるみたいですし」
「そうなの? じゃあ隠れてなきゃね」
さすがサクアは聖獣の地で暮らしているだけあって、この辺りは詳しいみたいだ。
「おいおい、俺のことも気にしてくれよ!」
御者台からフロックスが叫ぶ。
一匹や二匹ならともかく、大量にとなれば、あらかじめ戦闘できるよう身構えておいてほしいそうだ。
「魔物が出るなんて聞いてねぇし、そんな話を聞いたら怖くなっちまうじゃねーか」
「だったらさ、襲われる前に倒しちゃう?
その方が、ここを通る他の人のためにもなるんじゃない?」
「はぁっ⁈ ……いや、お前ならやれそうな気がしてきたな……クロウ」
僕もしっかり睡眠をとって絶好調だ。
それに、そろそろお腹も空いた。
ヤエの魔法の練習がてら、魔物を倒して料理ができないか試してみたい。
そういえばサクアは戦えるのだろうか?
まぁ仮にもお姫様だし、そんなわけはないだろうな。
「クロウ、見つけた!」
いつの間にか『さん』も取れているなぁ。
最初から呼び捨てでいいとは言っていたし、少し慣れてくれたということか。
「どの辺りにいるか分かるのですか⁈」
驚いた様子でサクアが声を上げる。
「うん、水の中にいっぱいいるよ。
あっちの方!」
湖を指差すヤエを見て、なんだか納得していない様子のサクア。
そりゃあ湖の中に魔物がいると言っておけば、確認のしようはないわけで……
というのはヤエでなければのお話。
「なんなのよ……その魔法……
ヤエってば本当に普通の獣人??」
ビックリだよね。
学院じゃ、こんな魔法使ったら速攻学院長に呼び出されちゃうよ。
それにしても、20体ほどの魔物が討伐できたわけだけど……
僕の目の前に、討伐した魔物が地面に置かれている。
どう見てもランカーサイズをゆうに超えた……ブラックバスが。
あれか?
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