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防犯はしっかりした方が良いと思うのです
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「本当にこんな時間から行くの?」
サクアが心配そうに後ろを歩く。
一眠りして、作戦は深夜に決行されたのだ。
獣人たちもあまり活動のしていない頃。
日本で言うなら丑三つ時にあたる時間帯だ。
「ふぁっ……眠いよぉ……」
ゴシゴシを目を擦るヤエ。
「だから早く寝ておくんだよって言ったのに」
「だって横にクロウがいるのに、そんなの無理だよぉ……」
もう僕は何も言わないでおこう……そうしよう。
とにかく、僕たちはそのまま教会の裏口まで移動する。
サクアの話では、この建物に教皇をはじめとする幹部たちが住んでいると聞いたのだが……
「これって大聖堂とか、宮殿ってやつじゃないの……?」
「なによそれ?
教会の一番大きな建物は信者のみんながお祈りする場所で、向こうの大きな建物が教皇ディストと枢機卿マルドールのいる場所。
こっちは、いつもならアルビナ司教がいる場所なんだけど……」
サクアが、建物の詳細を次々に説明してくれる。
まるでどこかの城か宮殿かと思われる大きな建物が、敷地の中にいくつも立ち並んでいる。
というか、名前を言われてもよくわからないし、ちょっと困る。
ともかく、地下の実験施設は裏口近くのアルビナ司教がいる建物の中。
「じゃあ、早速中に入ろうよ。よろしく」
僕はサクアに向かってドアの開錠をお願いする。
だが、裏口の鍵はサクアが持っているのかと思ったのだけど、そんなことはなかったのだ。
「一応お姫様だったんだよ。
私が持ってたら変だと思うけど?」
「そう……だよね、そんな気がしてきた」
まぁ形だけの姫だったし、そうでなくても普通はあり得ないよなぁ。
「じゃあ私の魔法で開けちゃう?」
次はヤエが僕に聞いてくる。
風魔法火魔法氷魔法、なんでもござれとか。
ドアを壊すのは避けたいと言ったら、地面を抉って塀の下から侵入しようかとも言い出した。
多分、そんなことをするくらいなら、空を飛んで行った方が早いと思う。
ヤエの魔法なら、実はできてしまうんじゃないかと……
「ちょっと待って……塀の向こうに誰かの気配がするわ……」
サクアが小声でそう言い、フードの中では耳をピクピクと動かして、何かを感じ取っているようだ。
「あの歩き方……セドリック様だわ。
アルビナ司教に何か用事なのかしら……?」
ごめん、僕には歩く音すら感じ取れなかったよ。
ヤエも、サーチの魔法で人が歩いているのは感じ取れたそうだが、それが誰かまではわからない。
そりゃあ誰が教会にいるのかも知らないのだから当然だけど。
建物の中に入っていったセドリック大司教。
サクアはその大司教様が出てくるのを待って声をかけるつもりだと言う。
「教会の人に声をかけて大丈夫なの?」
「えぇ、セドリック様は革新派寄りの方なのよ。
私を見ても嫌悪感なんて抱いていないし、多分説明すれば協力してくれるはず……」
とは言っても、普段から繋がりが深かったわけではないそうで、少しだけ心配らしい。
だがその心配も、扉を軽くノックした直後に吹き飛んでしまった。
「さ、サクア様……よかった、生きていらっしゃったのですね……」
「当然よ、今の私にはクロウっていう心強いボディーガードがいるんだから」
「は、はぁ……左様でございますか……
確かにお強そうだ」
チラッとフロックスに目をやって、納得されてしまった。
別にいいけど……
アルビナ司教には、次の姫候補が見つかったと聞いて話をしに来たのだと言う。
僕たちがその地下にある実験施設に入りたいのだと言うと、セドリック大司教は快く協力すると言ってくれた。
「実は、私も気になっていたのですよ。
おそらくヒューマンの若い奴隷を幾人も……」
革新派の中でもそういった噂はされていて、いずれは問い詰めたいと考えていたのだとか。
「そうだ、以前信者より預かったアレが……
今でしたら私もアルビナを訪ねた理由がありますし、少々お待ちいただけますでしょうか?」
セドリック大司教は、自分の部屋にある首輪を持ってくると言う。
安物の、魔力を抑えるための首輪は、アルビナのいる建物の近くで見つかったものだそうだ。
戻ってきたセドリック大司教が見せてくれたものは、間違いなく魔力封じの首輪。
『お任せ下さい』と言って、セドリック大司教は再びアルビナ司教の元へ向かっていった。
アレをどう使うのだろうか?
少し離れた植え込みの近くに隠すように置くと、建物の扉を叩いてアルビナを呼び出すセドリック。
何やら話をすると、慌てた様子で植え込みの方に走っていったようだ。
ジェスチャーでセドリックが合図を送っている。
今のうちに建物の中に入ってしまえということだろう。
「セドリック様、どうやってアルビナを誘き出したのかしら?」
「きっと、どこかに奴隷でも隠れているんじゃないかと思わせたんだよ。
多分拾った首輪っていうのも、アルビナが連れ込んだ奴隷のものだったんじゃないかと思うし」
『なるほどね』なんて言いながら、サクアは隠されている地下への入り口へ案内してくれる。
本棚を手前に引っ張ると、意外にもアッサリと階段のある部屋へ。
こんな単純な仕掛けで、よく今までごまかしてきたものだ。
こう、下段の本が鍵になっていて並べ替えないと開かないとか、僕なら色々と考えたくなるものだけど……
とにかくアルビナの戻らないうちに、僕たちは地下への階段を進むことにした。
仕掛けが単純なお陰で、裏からでも戻すのは容易いな。
アルビナって司教は、こんなシチュエーション考えてもいなかったんだろうなぁ……
サクアが心配そうに後ろを歩く。
一眠りして、作戦は深夜に決行されたのだ。
獣人たちもあまり活動のしていない頃。
日本で言うなら丑三つ時にあたる時間帯だ。
「ふぁっ……眠いよぉ……」
ゴシゴシを目を擦るヤエ。
「だから早く寝ておくんだよって言ったのに」
「だって横にクロウがいるのに、そんなの無理だよぉ……」
もう僕は何も言わないでおこう……そうしよう。
とにかく、僕たちはそのまま教会の裏口まで移動する。
サクアの話では、この建物に教皇をはじめとする幹部たちが住んでいると聞いたのだが……
「これって大聖堂とか、宮殿ってやつじゃないの……?」
「なによそれ?
教会の一番大きな建物は信者のみんながお祈りする場所で、向こうの大きな建物が教皇ディストと枢機卿マルドールのいる場所。
こっちは、いつもならアルビナ司教がいる場所なんだけど……」
サクアが、建物の詳細を次々に説明してくれる。
まるでどこかの城か宮殿かと思われる大きな建物が、敷地の中にいくつも立ち並んでいる。
というか、名前を言われてもよくわからないし、ちょっと困る。
ともかく、地下の実験施設は裏口近くのアルビナ司教がいる建物の中。
「じゃあ、早速中に入ろうよ。よろしく」
僕はサクアに向かってドアの開錠をお願いする。
だが、裏口の鍵はサクアが持っているのかと思ったのだけど、そんなことはなかったのだ。
「一応お姫様だったんだよ。
私が持ってたら変だと思うけど?」
「そう……だよね、そんな気がしてきた」
まぁ形だけの姫だったし、そうでなくても普通はあり得ないよなぁ。
「じゃあ私の魔法で開けちゃう?」
次はヤエが僕に聞いてくる。
風魔法火魔法氷魔法、なんでもござれとか。
ドアを壊すのは避けたいと言ったら、地面を抉って塀の下から侵入しようかとも言い出した。
多分、そんなことをするくらいなら、空を飛んで行った方が早いと思う。
ヤエの魔法なら、実はできてしまうんじゃないかと……
「ちょっと待って……塀の向こうに誰かの気配がするわ……」
サクアが小声でそう言い、フードの中では耳をピクピクと動かして、何かを感じ取っているようだ。
「あの歩き方……セドリック様だわ。
アルビナ司教に何か用事なのかしら……?」
ごめん、僕には歩く音すら感じ取れなかったよ。
ヤエも、サーチの魔法で人が歩いているのは感じ取れたそうだが、それが誰かまではわからない。
そりゃあ誰が教会にいるのかも知らないのだから当然だけど。
建物の中に入っていったセドリック大司教。
サクアはその大司教様が出てくるのを待って声をかけるつもりだと言う。
「教会の人に声をかけて大丈夫なの?」
「えぇ、セドリック様は革新派寄りの方なのよ。
私を見ても嫌悪感なんて抱いていないし、多分説明すれば協力してくれるはず……」
とは言っても、普段から繋がりが深かったわけではないそうで、少しだけ心配らしい。
だがその心配も、扉を軽くノックした直後に吹き飛んでしまった。
「さ、サクア様……よかった、生きていらっしゃったのですね……」
「当然よ、今の私にはクロウっていう心強いボディーガードがいるんだから」
「は、はぁ……左様でございますか……
確かにお強そうだ」
チラッとフロックスに目をやって、納得されてしまった。
別にいいけど……
アルビナ司教には、次の姫候補が見つかったと聞いて話をしに来たのだと言う。
僕たちがその地下にある実験施設に入りたいのだと言うと、セドリック大司教は快く協力すると言ってくれた。
「実は、私も気になっていたのですよ。
おそらくヒューマンの若い奴隷を幾人も……」
革新派の中でもそういった噂はされていて、いずれは問い詰めたいと考えていたのだとか。
「そうだ、以前信者より預かったアレが……
今でしたら私もアルビナを訪ねた理由がありますし、少々お待ちいただけますでしょうか?」
セドリック大司教は、自分の部屋にある首輪を持ってくると言う。
安物の、魔力を抑えるための首輪は、アルビナのいる建物の近くで見つかったものだそうだ。
戻ってきたセドリック大司教が見せてくれたものは、間違いなく魔力封じの首輪。
『お任せ下さい』と言って、セドリック大司教は再びアルビナ司教の元へ向かっていった。
アレをどう使うのだろうか?
少し離れた植え込みの近くに隠すように置くと、建物の扉を叩いてアルビナを呼び出すセドリック。
何やら話をすると、慌てた様子で植え込みの方に走っていったようだ。
ジェスチャーでセドリックが合図を送っている。
今のうちに建物の中に入ってしまえということだろう。
「セドリック様、どうやってアルビナを誘き出したのかしら?」
「きっと、どこかに奴隷でも隠れているんじゃないかと思わせたんだよ。
多分拾った首輪っていうのも、アルビナが連れ込んだ奴隷のものだったんじゃないかと思うし」
『なるほどね』なんて言いながら、サクアは隠されている地下への入り口へ案内してくれる。
本棚を手前に引っ張ると、意外にもアッサリと階段のある部屋へ。
こんな単純な仕掛けで、よく今までごまかしてきたものだ。
こう、下段の本が鍵になっていて並べ替えないと開かないとか、僕なら色々と考えたくなるものだけど……
とにかくアルビナの戻らないうちに、僕たちは地下への階段を進むことにした。
仕掛けが単純なお陰で、裏からでも戻すのは容易いな。
アルビナって司教は、こんなシチュエーション考えてもいなかったんだろうなぁ……
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