45 / 67
気にするだけ損なのです
しおりを挟む
魔人が消え、路地裏は静寂に包まれた。
結構大きな音で戦闘していた気がするのだけど、特に人が集まってくる様子も無かったし……面倒を恐れた魔人が何かしていたのだろうか?
「まさか教会が魔人と繋がってやがるとはな。
いよいよもって教皇が実験しているってぇものが怪しくなってきたが……」
腕を組み、壁に寄りかかるフロックス。
ポーションを飲んだら、石ころでやられたことも忘れてシリアスな表情をしている。
フロックスには珍しく考え込んでいるようだけど、首を突っ込むつもりなのだろうか?
「それより大丈夫? 石の当たったところ……」
「うむ、やはり実験施設が怪しいな」
僕の言葉にかぶせるように、フロックスが言う。
ん……?
もしかして魔人に手も足も出なかったことが恥ずかしいのかな?
「ねぇ、怪我してない? 石が思いっきり当たったと思うんだけど……」
「石? なんのことだかわからんな。
いやーしかし教会がなぁ……うん、大変だ」
あれか、これは僕たちに『傷口に触れないでくれ』と暗に言っているのだろうか?
「まぁいいや……大丈夫ってことだね。
それよりやる気あるみたいだけど、もしかして教会に乗り込むつもりとか?」
僕が聞いてみると、フロックスは急に言葉を詰まらせる。
口が少しだけ開いていて、ちょっとだけ引きつっているような……
「あ、いや面倒ごとは……」
だと思ったよフロックス。
だけどもう遅い。魔人にはヤエのこともしっかり見られているからね。
それに僕もいずれはケリをつけたいと思っている。
今度現れる時は準備してやってくるだろうし、そうであれば魔人の襲撃を待つばかりでは勝ち目は薄いだろう。
今のところフロックスには関係の無いことでもあるし、残念だけど別々に行動した方がいいのかもしれないな……
路地裏から慎重に表通りに戻る。
どこからか別の奴らが見ているかもしれないし、魔人がいないとも限らない。
それだけ慎重にならざるを得ないのだし、いつまでもこんな調子では非常に辛い。
早く別の街に行くか、魔人を倒してしまうか……
これからのことを考えるため、僕たちは大勢の人で賑わう街の食堂へ。
これだけの視線があれば、むやみに干渉してくることもないだろう。
なんて言ったら、『お前本当はいくつなんだ?』とか言われたけど……別にいいじゃないですか、あはは……
「別行動? 馬鹿を言うな。
いくら俺が弱いといっても、お前たちだけじゃあ移動するのも不便だろうが」
馬は誰が引くのか、ギルドでちゃんと冒険者扱いしてもらえるのかと心配して言ってくれる。
「いや弱いとは思ってないし……
でも本当にいいの? 下手したら命の危険も……」
「ま、まぁそれはその……そうだ、クロウとヤエで護ってくれればいいじゃねーか」
少し話して、やっぱりフロックスも同行することに決まったのだった。
それと、僕の方を見て何か考えている様子のフロックス。
戦闘や謀略は僕たちに任せるからと言って、料理を口に運んでいた。
『作戦』ならわかるけれど、『謀略』と言われると少し引っかかる。
そんな悪巧みみたいなことをしているつもりは無いんだけどなぁ……
「まぁいいじゃないですの。
フロックスさんも、お二人のことを期待してらっしゃるんですよ……ね?」
「あぁ、そういうことだ。
俺なんかよりよっぽど強ぇからな」
サクアに言われて、自身満々に答えるフロックス。
どれだけ自分の実力に自信が無いんだよ……
「まっ、やっぱりフロックスさんは私には期待してないんですね。
……とっても残念です」
しかも『二人』というのに肯定するから、サクアが悲しんで……いるようではない?
「いや、そんなことは無いぞっ⁈」
慌てて否定するフロックスを見ていると少し面白い。
完全に遊ばれてるなーなんて思うわけだ。
「ふふっ、冗談ですよ。
フロックスさんが面白そうなことをしていたので、私も遊んでみただけです」
面白そうなことを……ねぇ。
一体何をしようとしていたのだろうか?
食事の時間くらいは楽しく、といった感じだろうか?
魔人のことも教会のことも少しの間だけ忘れることができ、自然と気持ちは落ち着いたみたいだ。
宿へ移動すると、再び話は教会のことに。
サクアとしても、このまま放置しておきたくはないそうだ。
「悪事の証拠を見つけたら、教会の権威が失われてくれないかしら?
奴隷の噂の真相とか、何の実験をしているかが分かればいいのだけど……」
裏取引や、市民に公表できない怪しい実験。
確かに、それが明るみに出れば教会も今後は動きづらくなるだろう。
それに、魔人が一枚噛んでいるとすれば、そのアジトでもあった可能性は大いにある。
魔人に一泡吹かせるにはちょうどいい……か。
「わたしが教会の地下をサーチすればいいんだよね?
どうせ壊しちゃうなら、そのままドッカーンっていうのは?」
ヤエが両手を大きく広げてアピールする。
「ううん、それじゃ僕たちが悪者にされちゃうからね。まぁそれでもバレないと思うけどさ。
しっかり証拠を見つけてからにしようね」
ヤエの頭を撫でながらそう言った僕は、少し悩んでいた。
「ねぇ、もしかして二人ともここで寝る気じゃないよね……?」
ベッドに腰掛ける僕の膝にはヤエが。
それに、僕が寝る場所には既にサクアが寝そべっている。
「あら、ダメだったのかしら?
だって私も命を狙われていたのですのに……」
「ヤエも顔を覚えられたー」
はぁ、いつになったら僕はゆっくりと寝かせてあたるのだろうか……
結構大きな音で戦闘していた気がするのだけど、特に人が集まってくる様子も無かったし……面倒を恐れた魔人が何かしていたのだろうか?
「まさか教会が魔人と繋がってやがるとはな。
いよいよもって教皇が実験しているってぇものが怪しくなってきたが……」
腕を組み、壁に寄りかかるフロックス。
ポーションを飲んだら、石ころでやられたことも忘れてシリアスな表情をしている。
フロックスには珍しく考え込んでいるようだけど、首を突っ込むつもりなのだろうか?
「それより大丈夫? 石の当たったところ……」
「うむ、やはり実験施設が怪しいな」
僕の言葉にかぶせるように、フロックスが言う。
ん……?
もしかして魔人に手も足も出なかったことが恥ずかしいのかな?
「ねぇ、怪我してない? 石が思いっきり当たったと思うんだけど……」
「石? なんのことだかわからんな。
いやーしかし教会がなぁ……うん、大変だ」
あれか、これは僕たちに『傷口に触れないでくれ』と暗に言っているのだろうか?
「まぁいいや……大丈夫ってことだね。
それよりやる気あるみたいだけど、もしかして教会に乗り込むつもりとか?」
僕が聞いてみると、フロックスは急に言葉を詰まらせる。
口が少しだけ開いていて、ちょっとだけ引きつっているような……
「あ、いや面倒ごとは……」
だと思ったよフロックス。
だけどもう遅い。魔人にはヤエのこともしっかり見られているからね。
それに僕もいずれはケリをつけたいと思っている。
今度現れる時は準備してやってくるだろうし、そうであれば魔人の襲撃を待つばかりでは勝ち目は薄いだろう。
今のところフロックスには関係の無いことでもあるし、残念だけど別々に行動した方がいいのかもしれないな……
路地裏から慎重に表通りに戻る。
どこからか別の奴らが見ているかもしれないし、魔人がいないとも限らない。
それだけ慎重にならざるを得ないのだし、いつまでもこんな調子では非常に辛い。
早く別の街に行くか、魔人を倒してしまうか……
これからのことを考えるため、僕たちは大勢の人で賑わう街の食堂へ。
これだけの視線があれば、むやみに干渉してくることもないだろう。
なんて言ったら、『お前本当はいくつなんだ?』とか言われたけど……別にいいじゃないですか、あはは……
「別行動? 馬鹿を言うな。
いくら俺が弱いといっても、お前たちだけじゃあ移動するのも不便だろうが」
馬は誰が引くのか、ギルドでちゃんと冒険者扱いしてもらえるのかと心配して言ってくれる。
「いや弱いとは思ってないし……
でも本当にいいの? 下手したら命の危険も……」
「ま、まぁそれはその……そうだ、クロウとヤエで護ってくれればいいじゃねーか」
少し話して、やっぱりフロックスも同行することに決まったのだった。
それと、僕の方を見て何か考えている様子のフロックス。
戦闘や謀略は僕たちに任せるからと言って、料理を口に運んでいた。
『作戦』ならわかるけれど、『謀略』と言われると少し引っかかる。
そんな悪巧みみたいなことをしているつもりは無いんだけどなぁ……
「まぁいいじゃないですの。
フロックスさんも、お二人のことを期待してらっしゃるんですよ……ね?」
「あぁ、そういうことだ。
俺なんかよりよっぽど強ぇからな」
サクアに言われて、自身満々に答えるフロックス。
どれだけ自分の実力に自信が無いんだよ……
「まっ、やっぱりフロックスさんは私には期待してないんですね。
……とっても残念です」
しかも『二人』というのに肯定するから、サクアが悲しんで……いるようではない?
「いや、そんなことは無いぞっ⁈」
慌てて否定するフロックスを見ていると少し面白い。
完全に遊ばれてるなーなんて思うわけだ。
「ふふっ、冗談ですよ。
フロックスさんが面白そうなことをしていたので、私も遊んでみただけです」
面白そうなことを……ねぇ。
一体何をしようとしていたのだろうか?
食事の時間くらいは楽しく、といった感じだろうか?
魔人のことも教会のことも少しの間だけ忘れることができ、自然と気持ちは落ち着いたみたいだ。
宿へ移動すると、再び話は教会のことに。
サクアとしても、このまま放置しておきたくはないそうだ。
「悪事の証拠を見つけたら、教会の権威が失われてくれないかしら?
奴隷の噂の真相とか、何の実験をしているかが分かればいいのだけど……」
裏取引や、市民に公表できない怪しい実験。
確かに、それが明るみに出れば教会も今後は動きづらくなるだろう。
それに、魔人が一枚噛んでいるとすれば、そのアジトでもあった可能性は大いにある。
魔人に一泡吹かせるにはちょうどいい……か。
「わたしが教会の地下をサーチすればいいんだよね?
どうせ壊しちゃうなら、そのままドッカーンっていうのは?」
ヤエが両手を大きく広げてアピールする。
「ううん、それじゃ僕たちが悪者にされちゃうからね。まぁそれでもバレないと思うけどさ。
しっかり証拠を見つけてからにしようね」
ヤエの頭を撫でながらそう言った僕は、少し悩んでいた。
「ねぇ、もしかして二人ともここで寝る気じゃないよね……?」
ベッドに腰掛ける僕の膝にはヤエが。
それに、僕が寝る場所には既にサクアが寝そべっている。
「あら、ダメだったのかしら?
だって私も命を狙われていたのですのに……」
「ヤエも顔を覚えられたー」
はぁ、いつになったら僕はゆっくりと寝かせてあたるのだろうか……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜
伽羅
ファンタジー
【幼少期】
双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。
ここはもしかして異世界か?
だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。
ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。
【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる