私の主人はワガママな神様

どろろ

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7.誕生日(5)

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「すみません、黒木さん。お待たせしてしまって……」
「さほど待っていない、大丈夫だ。これを」

 黒木からビニール袋を受け取る。中には薬の他にも、ゼリーや桃缶、うどんなど晴太郎が口にできそうなものが入っていた。

「こんなにたくさん……ありがとうございます。助かります」
「ああ、このくらい気にするな。七海も外に出られないだろうと思ってな。足りない物があったら言ってくれ」

 黒木も晴太郎を心配してくれているのだろうか、気遣いが心に沁みる。
 彼は強面で身体が大きいので怖がられがちだが、七海は彼が優しいことを良く知っている。使用人としての生活に不慣れだった頃、彼に何度助けられた事か。
 受け取ったものの中にある、薬の入った紙袋を確認する。その中から解熱剤を見つけた七海が、急に手を止めた。

「黒木さん……どうして、座薬なんですか?」

 紙袋にはしっかりと座薬と書かれていた。ここ最近ではほとんど見なくなった物が、なぜここに。

「お嬢様が、将来のためにと」
「………将来?」
「何事も経験した方が良い、ということなんじゃないか」

 晴太郎は絶対に嫌がるに決まっている。今すぐに普通の飲む薬に変えてくれと言いたかった。しかしこれ以上この人たちに迷惑をかける訳にもいかず、七海は口を継ぐんだ。

「駄目そうだったらまた連絡をくれ。では」
「……はい。ありがとうございました」

 またすぐに連絡をすることになりそうだ、と七海は思った。

 すぐに晴太郎の部屋に戻り、額のタオルを新しいものに変える。顔に触れてみると朝より熱く感じる。体温計で測ってみると39度を超えていた。
 これはもう、例の解熱剤を使うしかない。

「坊ちゃん、薬を挿れましょう」
「……え、飲む……じゃ、なくて?」
「その、お姉様から頂いたのは……座薬なのです」
「ざ、やく……?」

 なんだそれは、と晴太郎は首を傾げた。

「わからん……七海がやってくれ……」

 絶対そうなると思った、と七海は頭を抱えた。
 動くのも億劫な彼に自分でやらせるのなんて無理に決まっている。七海自身は良いのだ。だが、晴太郎はどうだ。思春期の難しい年頃に尻から薬を入れられるなんて、恥ずかしくて嫌に決まっている。
 だが、これを挿れてやらないと晴太郎はいつまでも楽にならない。苦しむ時間が長引くだけ。七海は意を決した。
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