私の主人はワガママな神様

どろろ

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7.誕生日(6)

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 七海は仰向けに寝ていた晴太郎を抱え、うつ伏せの体制にした。

「え……?」
「坊ちゃん、すみません。失礼します」

 腰を少し上げさせて、彼のズボンと下着を下ろした。さすがに驚いたのか、晴太郎は困惑して七海の名前を呼ぶ。

「な、七海……?! なんで、こんな……」
「坊ちゃん、力を抜いていて下さい」
「え……っ、んんぅ!」

 晴太郎の双丘の間に、ぐっと薬を押し込んだ。

「ひ、ぅ……な、なみ! いたいっ、やだ、ななみぃ……っ!」
「少しだけ、我慢を」

 中に入れたものが出て来ないように、ぐっと入り口を抑える。晴太郎は痛みと違和感と気持ち悪さで、バタバタと足を暴れさせる。

「や、だっ、きもちわるい……ななみ、やだぁ……!」
「じっとして居たら、すぐ気持ち悪く無くなります。少し我慢してください」
「うぐっ、うぅ……」

 痛みに耐えるような、吐息混じりの声が晴太郎の口から溢れる。
 そんな声を出されてしまうと、とても悪いことをしているような気がして、何だか変な気分になってしまう。このままぐっと指に力を入れたら、彼は一体どんな反応をするのだろうか。
 いくら反応が可愛くても、一体自分は主人に対して何てことを考えているんだ。これは医療行為だと自身に言い聞かせ心を無にするよう心掛ける。

 晴太郎はぐずぐずと鼻を啜りながら枕に顔を埋める。暫くすると違和感が無くなったのか、晴太郎はすっかり大人しくなったので、七海は抑えていた手を離した。

「よく出来ましたね。暫くしたら、熱が下がりますよ」
「うう……ななみぃ、これ、やだ……」

 か細い声で言う晴太郎を見ていると、罪悪感が湧いてくる。七海は全く悪いことをしていないのに、なんだか虐めてしまったような気がしてならない。

「すみません、次はもっと痛くならないように……」
「痛いからやだとか……そういうんじゃ、ない……」
「はい?」
「…………恥ずかしいから、やだ」

 ぎゅうっ、と心臓を見えない手で鷲掴みされたように胸が締まった。だって、主人が可愛い。
 やだって、そんな子供のような愛らしい言い方をされてしまったら、何でも言うことを聞きたくなってしまう。たまに見せる主人の可愛らしい姿に、ここ最近七海の感情は振り回されてばかりだ。
 高熱のせいで赤くなった頬、潤んだ瞳。そして甘えるような声。頭がくらりとした。
 ほとんど大人の男性になった主人に対し、可愛いなんて感情を持つのは良いのだろうか。いや、良くない気がする。

「……ななみ?」
「…………いえ、何でもありません」

 何も言わない七海を不安に思ったのか、晴太郎が七海を見上げて声をかける。潤んだ瞳と上目遣いのダブルパンチ。また心臓がぎゅうっとなった。

「……水を、持ってきます」
「え……うん」

 失礼します、と言って晴太郎の部屋を出る。急に出て行くから彼は不審に思っていたようだが、仕方がない。一度頭を冷やさないと、もっと変なことを考えてしまいそうだ。

 この心臓がぎゅうっとなる現象が何なのか、七海はまだ気付いていない。
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