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23.私の主人はワガママな神様(13)
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見つめ合うことたっぷり数秒。
七海は静かに立ち上がった。
「……ちょっと、待ってください」
晴太郎の返事も待たずに寝室に戻り、急いで皺の残るスーツに着替えた。鞄の中から、例の小さな箱を取り出し、急いで晴太郎の元へ戻る。
きょとんとした顔で待っている晴太郎の前で跪き、持ってきた小さな箱を彼に向けて開いた。
「私の人生は、すべてあなたに捧げます。なので……わ、私を……生涯のパートナーに、選んで頂けませんか?」
おそるおそる晴太郎の方を見上げると、彼は朗らかに笑っていた。
「ああ、もちろんだ」
すっ、と七海の前に差し出された彼の左手に、七海が選んだリングを七海の手で嵌める。それはするすると晴太郎の指を通し、すっぽりと指の付け根に収まった。
「ああ、嬉しい。嬉しくて、たまらない……どうしよう……なあ、七海」
「はい?」
「俺、みんなに自慢したい」
晴太郎が送った指輪の光る七海の手を、彼はそっと両手で包むように握った。
「七海が最高のパートナーだって、俺の最高の恋人だって、みんなに言いたい」
晴太郎の言う"みんな"が何を指すのか、七海はすぐに理解した。
日本を、世界を駆け巡り、音楽家として活躍する晴太郎には、多くのファンがいる。応援して支えてくれた人たちがたくさんいる。彼は、その人たちに七海というパートナーのことを伝えたいと言っているのだ。
それはすなわち、晴太郎が同性愛者であるということの公表。
「でもさ、俺……これでも、割と有名なピアニストで、テレビとかにも出たことあって、顔が割れてるから……もしかしたら、世間に受け入れられないかもしれない。そしたら、七海にも迷惑がかかるかもしれない……」
まだ、同性カップルへの世間の風当たりは冷たい。
名前の知られている自分が公表することで、少しでも世の中の考え方を変えられるのなら。同じことで悩んでいる人たちに、少しでも勇気を与えられるのなら。自分への風当たりが強くなっても、公表したいと彼は言った。
しかしその風は、晴太郎だけではなく、七海にも影響を及ぼすことになるだろう。彼はそのことを心配しているようだった。
「……それでも、俺と、一緒にいてくれるか?」
そんなこと、考えるまでもない。どんな逆風が自分たちに襲い掛かろうと、七海の答えはずっと前から決まっている。
「はい、もちろんです」
晴太郎と一緒なら、どんな試練も乗り越えていけると確信している。もし晴太郎から離れろと言われても、絶対に離れない。彼の手は、もう二度と離さないと遠い昔に決めたのだから。
「どんなことがあっても、私はあなたと一緒にいます」
晴太郎の左手を取って、薬指に口付けた。
——これは、彼の傍を一生離れないという、誓いのキス。
七海は静かに立ち上がった。
「……ちょっと、待ってください」
晴太郎の返事も待たずに寝室に戻り、急いで皺の残るスーツに着替えた。鞄の中から、例の小さな箱を取り出し、急いで晴太郎の元へ戻る。
きょとんとした顔で待っている晴太郎の前で跪き、持ってきた小さな箱を彼に向けて開いた。
「私の人生は、すべてあなたに捧げます。なので……わ、私を……生涯のパートナーに、選んで頂けませんか?」
おそるおそる晴太郎の方を見上げると、彼は朗らかに笑っていた。
「ああ、もちろんだ」
すっ、と七海の前に差し出された彼の左手に、七海が選んだリングを七海の手で嵌める。それはするすると晴太郎の指を通し、すっぽりと指の付け根に収まった。
「ああ、嬉しい。嬉しくて、たまらない……どうしよう……なあ、七海」
「はい?」
「俺、みんなに自慢したい」
晴太郎が送った指輪の光る七海の手を、彼はそっと両手で包むように握った。
「七海が最高のパートナーだって、俺の最高の恋人だって、みんなに言いたい」
晴太郎の言う"みんな"が何を指すのか、七海はすぐに理解した。
日本を、世界を駆け巡り、音楽家として活躍する晴太郎には、多くのファンがいる。応援して支えてくれた人たちがたくさんいる。彼は、その人たちに七海というパートナーのことを伝えたいと言っているのだ。
それはすなわち、晴太郎が同性愛者であるということの公表。
「でもさ、俺……これでも、割と有名なピアニストで、テレビとかにも出たことあって、顔が割れてるから……もしかしたら、世間に受け入れられないかもしれない。そしたら、七海にも迷惑がかかるかもしれない……」
まだ、同性カップルへの世間の風当たりは冷たい。
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しかしその風は、晴太郎だけではなく、七海にも影響を及ぼすことになるだろう。彼はそのことを心配しているようだった。
「……それでも、俺と、一緒にいてくれるか?」
そんなこと、考えるまでもない。どんな逆風が自分たちに襲い掛かろうと、七海の答えはずっと前から決まっている。
「はい、もちろんです」
晴太郎と一緒なら、どんな試練も乗り越えていけると確信している。もし晴太郎から離れろと言われても、絶対に離れない。彼の手は、もう二度と離さないと遠い昔に決めたのだから。
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晴太郎の左手を取って、薬指に口付けた。
——これは、彼の傍を一生離れないという、誓いのキス。
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