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入学編
004
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「…はぁ!?誘拐計画!?」
「し、しー!声が、声が大きいですって!」
思いもしない出来事のオンパレードでとうとう頭の処理が追いつかなくなった我らがお嬢様こと、古賀志乃様。昔はよく日向と僕と美月様4人で遊んだ幼馴染。
お家同士の関係も当時は悪くなく、子供同士で庭で遊んでおいでと言われるほどに仲が良かったのだが…。
「それが今や、他家の子供を誘拐しようと、はぁ。我が親ながら情けなくなるわ」
「まだ古賀家の計画と決まったわけでは…」
なんにしろ今回の話はスケールが大きすぎる。
どこそこの誰が主犯なのかなんて一切見当がつかない。もしかしたらガセネタかもしれないし、そこらの下っ端か中役が勝手に計画したものかもしれない。
むしろそっちの可能性の方が大きい。
それでも万が一に備えて僕が入学させられたわけで何事もない、って場合も十分あり得るのだ。
「どうかしらねぇ。うちもうちでなんだか最近ゴタゴタしてるし。だから私もこの寮に越してきたのよ」
お嬢様の、古賀家の家は学院からほどほどには近い距離にある。
だから寮内で会うことはないだろうとたかを括っていたんだけどまさかである。
「まさか、こんなことになるなんて」
「それは私のセリフよ。男子禁制の女学院の寮で幼馴染(男)と再会だなんてどこの三文芝居よ」
少し時間をおいて志乃様もだいぶ落ち着いたようで会話にもいつものキレが戻ってきている。
「まぁそれはさておき、どうするの?」
「どうする、とは?」
「だーかーら、どうやってその誘拐計画潰すのかって聞いてるのよ」
「そりゃまぁ、影から日向からバレないようにお守りするだけですけど…」
「それ、ストーカーや変質者と同じ発言よ。気をつけなさい」
…いや、うん。
志乃様からしたら女学院にまで進入する男は十分その素質があるんだろう。決してそのつもりはないけど心にグサリと刺さるものがある。
「別に咎めるつもりはないわよ。まぁ、流石にあなた1人だとカバーできないところもあるでしょ?私も協力してあげるって言ってるのよ」
「まさか、志乃様も参加されるつもりですか?」
「なによ、計画元の家の子じゃあ信用ならないっての?」
「そんなこと、思うわけないじゃないですか」
だってお嬢様だ。
ある意味では日向よりも信用がおける。
ある意味では、ね。
「でも分かっていないようなので言いますが、これは危険な仕事なんですよ?」
「分かってるわよ、そのくらい」
「いいえ、分かっていません」
仮に、誰かが美月様の身代わりに囮となって誘拐されたとする。これが僕なら保険もちゃんと用意してるし絶対とは言い切れないけどある程度対応できる。でも、志乃様ではどうしようもない事態に陥ってしまうのだ。それに、危険なのは美月様だけじゃない。
「お嬢様が僕の計画に参加することで、余計に話がややこしくなる可能性があります。それこそ、美月様だけでなくお嬢様まで誘拐を、と企むものも出てくるやもしれません」
1人ならまだしも2人。
同時に守り切るのはとても難しい。
「なによ、私がそんな輩に遅れをとるとでも?」
「えぇ、念頭におくべきです。そして、僕は2人を守れるほど力があるとも…」
「私、あなたに守ってもらう必要なんてないわよ、みくびらないで!」
意図せず大きな声が出る。
一瞬寮の方を気にする様子をみせつつ、すぐに力強い視線はこちらに戻ってきた。
「…まぁいいわ、祐樹、あなたがここにいる理由も、目的もわかった。私もことがことだから誰かにバラすなんてことは言わないわ」
「それは、助かりますけど…」
「だから、バラされたくなかったら私も計画に組み込みなさい。1人よりも2人の方ができることも多いんだから」
ん、これは、もしかしなくても僕が1人だけで潜入したと思ってるのだろうか。
これは、後で日向を見た時にまた一悶着ありそうだと慌てて訂正しようとするが。
「じゃ、ひとまず私は寮に戻るわ。…変な汗掻いたからシャワーの一つでも浴びないとやってられないもの」
といってそそくさと行ってしまった。
(…まぁ、なるようになるか)
ーーー
ところで、日向は日向で荷解きで埃を被ったのでシャワーを浴びていたらしい。そんなところに志乃様がやってきたらしく。
どうなったかは、詳しくは知らない。
が、やたらと大きな悲鳴が館内に響き渡ったことだけはここに記しておこうと思う。
ーーー
「まったく、女生徒がお風呂場で悲鳴だなんて一体何事かと思ったわよ」
「その、すみませんでした…」
その日の夕方、食卓には渚さんをはじめ現在寮に在籍する渚さん、雪菜さん、志乃様、そして僕と日向の計5人全員が揃っている。
「ま、今後は聖桜の生徒の志をちゃんと持ってちょうだいね?常に冷静に、優雅に、ってね」
詩の一節を諳んじるように唱える渚さん。
学生手帳にも書かれていた学生の心得の一つだ。
「わかってますってば。…ほんと、あんなの不意打ちよ不意打ち」
かくいう志乃様はというと不貞腐れたようにほっぺを膨らませている。
「明日からは新入生も来るんだからほんと頼むわよ?」
「聖桜の規範となるように、ですよね。わかってますってば」
そう、明日からとうとう新入生がやってくる。
在籍した期間だけで言えば僕と大差ない、どころか中等部の子も来るから色々と教えてもらう立場になりそうだ。
「入学式や始業式に向けた準備もあるからこれから忙しくなるわね。2人とも頼むわよ?」
「わかってますってば」
渚さんの言葉に億劫そうに答える志乃様。
「寮生で何か出し物でもするんですか?」
渚さんは学長室でも入学式の話があったし生徒会との関わりで何かあるのだろうと思うが…。
「えぇまぁね。昔からの伝統、というやつかしら。入学式では寮生が事務の仕事を請け負ったりしてるのよ」
「つまりは便利屋扱いされてるってわけ。渚さんは特に生徒会の仕事もあるしすんごい大変なのよ」
それはまた…。
思えば学長と渚さんと出会った日も休みの日だった。
「もし何かできることがあれば、私たちも是非お手伝いさせてくれませんか?」
不意に、口を突いて出た言葉。
これから僕らも寮生になるのだから。そういうつもりで考えると自然に口を突いて出てきた。
「それは助かるけど、荷解きとか大丈夫なの?まだ大物の荷物とかはこれからなんでしょ」
「まぁそこは何とかなりますよ。制服や衣類の類は届いているので着た切り雀になることはないですし、後は大物と言っても本棚や段ボールに詰め込んだ教科書とかですから」
すぐすぐ必要になるものはすでにあらかた整えられている。
それは日向も同じ様子で、一緒に手伝う気十分だ。
「それなら、是非お願いしたいわ。正直人ではいくらあっても足りないくらいなの」
「お任せください、こう見えましても私は力仕事にも自信がありますから」
何たって男だから。
か弱い女性よりかよっぽど力がある。
志乃様も何か頼みたいことがあるのかこちらをじっと物欲しそうに見つめている。
「へぇ、そうなんだ。夕陽さんて運動も得意だったりするの?」
「運動は…そうですね、単純な体を動かすものであればそこそこは。難しい動作が必要だったり道具が必要だったりするとあまり得意では…」
大の得意です!なんていうわけにもいかないし、でも力はあるのは本当だしで上手な言い訳がパッと思い浮かばないから、中途半端な回答になってしまう。
それに対して雪菜さんは面白いものを見つけたかのように目を細めている。
「ふーん…」
意味深気味に、一体なんだっていんですか。
その後の食事は特に何も起こらず和やかに進んでいった。
食事が終われば各々リビングでのんびりしたり、部屋に戻って作業をしたりと自由に過ごしていいらしいが…
「あぁ、疲れた…。身に染みるなぁ」
1人湯船に浸かりながら大きなため息をついた。
(まさか、志乃お嬢様が寮にいるなんて聞いてませんよお父様…)
あの人のことだ、寮に誰がいるのか、誰が入ろうとしているのか事前に調査しているはずだ。
それなのにお嬢様がいるって情報が回ってこなかったてことは面白がってあえて教えなかったに違いない。
(次の報告の時には絶対文句言ってやるんだ)
何はともあれ。
入寮して最初の1日は大きな出来事自体はあったけれど男とバレるようなこともなく、無事過ごすことができた。
(案外バレないものだな…)
化粧に、長い髪、そして何より大きめの詰め物。
鏡や写真などでみるとどこからどう見てもお嬢様育ちの女の子。
あとは、作法とか所作とか立ち回り次第。
(気を引き締めないと、な)
ーーー
「おはようございます、皆さん。早いんですね」
朝、ばっちりと化粧をして部屋を出ると他のみんなはもう着替えも済ませて勢揃いしていた。
「まぁね。今日は生徒会の手伝いもあるし。夕陽さんも手伝ってくれるんでしょ?」
「えぇ、力仕事なら任せてください」
「頼りにしてるわ」
食事は寮母の方が用意してくれるので、各自好きなだけの量を自分で盛り付ける形のようだ。
「あら、夕陽さんどうかしたの?足りなかった?」
「いえ、そんなことはないんですが…」
他に人が見ている場所でガッツリ食べるわけにもいかず、腹4分目といったところだろうか。
「そう?今日はたくさん働いてもらうことになるから食べれるうちにたくさん食べておいた方が身のためよ」
「それもそうですね。…もう少しだけおかわりいただいてきますね」
しかし、それでどさっとお代わりするわけにもいかない。
小鉢をいくつかとって、その日の朝ごはんはおしまいになった。
仕事がでてくるのらもう少し経ってからだとのことでしばらくは各自自由時間になるらしい。
「それならもう少し部屋の片付けでもしてきましょうか」
「えぇ、いいわよ。時間になったら呼ぶからそれまでは自由にしててちょうだい」
さて、昼前にはまた呼びにくるとのことだから
先も言った通り荷解きでもしておこうか。
「と、言っても正直ほとんどもう片付け終わってるんだよなぁ…」
みる人が見れば、随分と殺風景なと言われそうだけど私物のほとんどが男物で持って来れなかったのだからしょうがない。
「夕陽、開けてもいい?」
と、ぼんやりしているとドアの外から声がする。
「志乃様?どうぞ、入っても大丈夫ですよ」
「お邪魔します、って随分とさっぱりした部屋ね。あなたミニマリストだったの?」
「違いますよ…。転入の話しが結構急で荷物用意できなかったんです」
「あー、そっか。だって夕陽の私服なんて持ってきた日には」
「えぇ、一発です」
「なら、今度買い出しにでも付き合ってあげようかしら。女の子として持っておいた方がいいものとかもあるし」
「正直それは助かりますね…いいんですか?」
「いいわよ、気にしなくて。私も無関係じゃないんだし…って、そうよ。ここにきた理由忘れるところだったわ。ちょっと手伝ってくれない?今模様替えしてるんだけど箪笥の位置が気に入らなくてね」
「いいですけど…でも、天童寺さんが迎えにきたらそっちに向かいますので中途半端になるかもしれませんよ?」
「大丈夫よ、箪笥ひとつ動かすだけだから、すぐ終わるわ」
そう言って連れられたのはもちろん志乃様の私室。
「今更ですけど、男の僕を部屋に入れても良かったんですか?」
「何言ってるの、ここにいるのは祐樹じゃなくて夕陽なんでしょ?なら何も問題ないじゃない」
「そうは言いましても…」
「いいから早く、ほらそっち持って」
ーーー
「あら、そろそろ声をかけようと思えばこんなところに。何をしてるの、2人とも」
「その、部屋の模様替えを少々…」
「に、しては随分と散らかっているように見えるのだけど」
「あ、あははは…。いやー、なんと言いますか、その。うん、いわゆる片付けが進まないというやつでね」
「おおかた、志乃さんが懐かしい雑誌か何かを見つけて夕陽さんを連れ込んだんでしょ?」
「ご明察です、渚お姉様…」
ほんの少しタンスを動かすだけの作業のはずが、いつの間にやら雑誌の展覧会となってしまっていたのだ。
そして、部屋を見に行ってもいない僕を探していると床に雑誌を広げた志乃様と僕を見つけたわけで。
「にしたって、床に広げるのは淑女としてどうなのよ」
「おっしゃる通りです…」
ーーー
「それでは、よろしくお願いします」
「はい、お任せください」
ところ変わって講堂へ。
細かいものはボランティアの生徒に、大きすぎるものは業者に依頼して残った中途半端に大きいものなどの運搬を手伝う。
制服だと埃などで汚れてしまうとのことで、みんな体操服なのだが…。
「夕陽さん、あなた随分線が細いけど、ほんとに重たいもの持てるの…?」
「えぇ、お任せください」
よいしょっと、指定されたものを持ち上げる。
残っていたものの中では比較的大きなものでそれでもまだ余裕はありそうだ。
「あるすごい、やるじゃない」
「いえいえ、それほどでも」
「それじゃ、次はこっちの手伝いをよろしくね」
ーーー
「はい、お疲れ様」
差し出されたのは缶コーヒー。
冷たい缶が熱った体に心地よい。
「ありがとうございます、渚さん」
「いいのよ、私のほうこそ助かっちゃったんだからそのお礼よ」
あの後もあれやこれやを運んだり、もしくは意見を求められたりとかなりのてんてこまいだった。
それでも無事日が落ち切る前に終わったのはひとえに渚さんの判断力や采配力によるものが多いと思う。
「それこそ買い被りよ。どれも私じゃなくても判断がつくものばかり、でも不安だから生徒会の私に聞きに来た、ただそれだけよ」
「私は…、それだけ渚さんが頼りにされてるのだと思いますが」
「頼りに、って言い方実はあまり好きじゃないの」
「そうなんですか?」
手元で空いた缶を回しながら、言葉を転がして行く。
渚さんの目は何処か悲しげだ。
「えぇ。だって頼りにって言ったって度を過ぎればそれは依存に変わりがないでしょ?」
「そう、ですね」
その言葉に、一瞬心がずきりと痛む。
依存、か。
「変な空気になっちゃったわね…、そろそろ戻りましょうか。このままだと体が冷えるわ。お腹も空いたし」
ーーー
「あら、みなさんどうされたんですか?」
寮に帰ると、そこには死屍累々…、青い顔をした寮のみんながいた。
そろそろ御飯時だというのに、一体どうしたんだろうと思っていると、どこから「きゅー」と可愛らしい音がする。
「…夕陽、あなた料理できたりする?」
雪菜さんがのそりと顔を上げながらそう呟いた。
どうやらお腹が空いて力が出ない様子。
話し方にいつもの覇気がない。
「その、あまりしたことはありませんが…?」
同じく顔色のよろしくない志乃様が続く。
「寮母さんがね、お母様が階段で転んだって連絡が来て帰らないといけなくなったの」
普段、朝食と夕食は寮母さんが作りたてを用意してくれるらしい。
それが今日は突然の連絡で何の用意もできずいなくなってしまったと。
ことがことだけにみんな快く送り出したそうだけど空腹は後から後からどんどん迫ってきて、とのことらしい。
偏見になるかもしれないが、良家のお嬢様なら手料理の一つや二つできそうなものなのだが。。。
まぁ、僕も料理はできないから人のことは言えない。
「日向、お願いできる?」
「はい、お任せください」
そんなわけで日向の料理が振わまれた。
食材は冷蔵庫のものから取ったため有り合わせだったらしいが、その味はまさしく筆舌にしがたい美味しさだった。
つまり、寮生みんなに快く受け入れられたわけだ。
ーーー
「いやー、まさか日向ちゃんみたいな逸材がうちに来るなんて…願ったり叶ったりだね!」
「これで週末の度にひもじい思いをしなくて済むわ」
時は移って食事後の団欒。
みんなでティーカップを傾けつつ談笑中、話題は週末のたびに訪れる自炊が中心になる。
「アレはアレでダイエットにもなって私は良かったと思うのだけれど?」
「なら雪菜さんだけはお昼はいらないってことでよろしくて?」
「いや、それは…ごめんなさい、私もぜひ食べたいわ」
寮母さんの定休日、つまり週末の食事の心配がなくなったと渚さんをはじめ寮生みんなが大喜びなのだ。
「日向、本当に大丈夫なの?」
「はい。元々週末に食事が出てこないのは事務の方から伺っておりましたので。冷蔵庫の中の食材も自由に使用して良いのであれば私としては何も問題はありません」
「んー、日向ちゃん大好き!」
「な、渚様…」
腹ペコ集団に日向はそれこそ女神か何かに見えたのだろう。
まるで崇拝の眼差しを受けて本人もタジタジだ。
「ちなみに、今まで週末はどうされてたんですか?それこそ、自炊をする良い機会だと思うのですが聞いている限りですとどなたもされないご様子ですが…」
「そうねぇ、基本…食べないわね」
「え」
「全くしないわけじゃないけど、やっぱりほら…その、火とか刃物って怖いじゃない?そうすると食卓に並ぶのはどうしても卵かけご飯とか簡単なものばかりになっちゃって、それならもういいかなぁ~と」
「れ、冷凍食品とか、即席麺とかは…?」
それこそ即席麺なんかはファストフード店でいくつか隠し持っていると聞いたような気がする。
「冷凍食品は一時期置いてたんだけど…ねぇ」
ジロリと雪菜さんの方を見つめる渚さん。
その視線のはじっとりしてて恨みがこもっている。
「そ、そんなこっち見ないでよ渚さん。悪かったって思ってるんだから」
「この子ね、運動部だからって冷蔵庫とか戸棚にある、手頃な食べ物どんどん食べちゃうのよ」
「あぅあぅあ…」
「しかも、それでいて体重は私より軽いとか!ほんっとーーに、許せないわ!」
…そ、それは食べ物を取られたことに対しての怒りなのかはたまた体質についての不満なのか。
あまり突っ込まないでおいた方が良さそうだ。
「そんなわけで、冷凍食品も以前は買ってたけど今は全くね。ついでにダイエットってことで週末はみんなで断食だったのよ」
「それはそれは辛かったんだ。部活から帰って、お腹が空いたと戸棚を探しても何もなく、冷蔵庫に食べ物は入っていても調理の仕方もわからず…」
「しまいには野菜の丸齧りなんかしてたわよね、あなた」
「意外と美味しかったです」
…お嬢様って案外大変かも、なのかも。
それに随分と人間じみた生活してるんだと思い知らされる。
「でもこれからは日向ちゃんがいるから大丈夫!」
「はい、お任せください。流石にそこまでお聞きしては私としても置いておくわけにはまいりませんので」
「し、しー!声が、声が大きいですって!」
思いもしない出来事のオンパレードでとうとう頭の処理が追いつかなくなった我らがお嬢様こと、古賀志乃様。昔はよく日向と僕と美月様4人で遊んだ幼馴染。
お家同士の関係も当時は悪くなく、子供同士で庭で遊んでおいでと言われるほどに仲が良かったのだが…。
「それが今や、他家の子供を誘拐しようと、はぁ。我が親ながら情けなくなるわ」
「まだ古賀家の計画と決まったわけでは…」
なんにしろ今回の話はスケールが大きすぎる。
どこそこの誰が主犯なのかなんて一切見当がつかない。もしかしたらガセネタかもしれないし、そこらの下っ端か中役が勝手に計画したものかもしれない。
むしろそっちの可能性の方が大きい。
それでも万が一に備えて僕が入学させられたわけで何事もない、って場合も十分あり得るのだ。
「どうかしらねぇ。うちもうちでなんだか最近ゴタゴタしてるし。だから私もこの寮に越してきたのよ」
お嬢様の、古賀家の家は学院からほどほどには近い距離にある。
だから寮内で会うことはないだろうとたかを括っていたんだけどまさかである。
「まさか、こんなことになるなんて」
「それは私のセリフよ。男子禁制の女学院の寮で幼馴染(男)と再会だなんてどこの三文芝居よ」
少し時間をおいて志乃様もだいぶ落ち着いたようで会話にもいつものキレが戻ってきている。
「まぁそれはさておき、どうするの?」
「どうする、とは?」
「だーかーら、どうやってその誘拐計画潰すのかって聞いてるのよ」
「そりゃまぁ、影から日向からバレないようにお守りするだけですけど…」
「それ、ストーカーや変質者と同じ発言よ。気をつけなさい」
…いや、うん。
志乃様からしたら女学院にまで進入する男は十分その素質があるんだろう。決してそのつもりはないけど心にグサリと刺さるものがある。
「別に咎めるつもりはないわよ。まぁ、流石にあなた1人だとカバーできないところもあるでしょ?私も協力してあげるって言ってるのよ」
「まさか、志乃様も参加されるつもりですか?」
「なによ、計画元の家の子じゃあ信用ならないっての?」
「そんなこと、思うわけないじゃないですか」
だってお嬢様だ。
ある意味では日向よりも信用がおける。
ある意味では、ね。
「でも分かっていないようなので言いますが、これは危険な仕事なんですよ?」
「分かってるわよ、そのくらい」
「いいえ、分かっていません」
仮に、誰かが美月様の身代わりに囮となって誘拐されたとする。これが僕なら保険もちゃんと用意してるし絶対とは言い切れないけどある程度対応できる。でも、志乃様ではどうしようもない事態に陥ってしまうのだ。それに、危険なのは美月様だけじゃない。
「お嬢様が僕の計画に参加することで、余計に話がややこしくなる可能性があります。それこそ、美月様だけでなくお嬢様まで誘拐を、と企むものも出てくるやもしれません」
1人ならまだしも2人。
同時に守り切るのはとても難しい。
「なによ、私がそんな輩に遅れをとるとでも?」
「えぇ、念頭におくべきです。そして、僕は2人を守れるほど力があるとも…」
「私、あなたに守ってもらう必要なんてないわよ、みくびらないで!」
意図せず大きな声が出る。
一瞬寮の方を気にする様子をみせつつ、すぐに力強い視線はこちらに戻ってきた。
「…まぁいいわ、祐樹、あなたがここにいる理由も、目的もわかった。私もことがことだから誰かにバラすなんてことは言わないわ」
「それは、助かりますけど…」
「だから、バラされたくなかったら私も計画に組み込みなさい。1人よりも2人の方ができることも多いんだから」
ん、これは、もしかしなくても僕が1人だけで潜入したと思ってるのだろうか。
これは、後で日向を見た時にまた一悶着ありそうだと慌てて訂正しようとするが。
「じゃ、ひとまず私は寮に戻るわ。…変な汗掻いたからシャワーの一つでも浴びないとやってられないもの」
といってそそくさと行ってしまった。
(…まぁ、なるようになるか)
ーーー
ところで、日向は日向で荷解きで埃を被ったのでシャワーを浴びていたらしい。そんなところに志乃様がやってきたらしく。
どうなったかは、詳しくは知らない。
が、やたらと大きな悲鳴が館内に響き渡ったことだけはここに記しておこうと思う。
ーーー
「まったく、女生徒がお風呂場で悲鳴だなんて一体何事かと思ったわよ」
「その、すみませんでした…」
その日の夕方、食卓には渚さんをはじめ現在寮に在籍する渚さん、雪菜さん、志乃様、そして僕と日向の計5人全員が揃っている。
「ま、今後は聖桜の生徒の志をちゃんと持ってちょうだいね?常に冷静に、優雅に、ってね」
詩の一節を諳んじるように唱える渚さん。
学生手帳にも書かれていた学生の心得の一つだ。
「わかってますってば。…ほんと、あんなの不意打ちよ不意打ち」
かくいう志乃様はというと不貞腐れたようにほっぺを膨らませている。
「明日からは新入生も来るんだからほんと頼むわよ?」
「聖桜の規範となるように、ですよね。わかってますってば」
そう、明日からとうとう新入生がやってくる。
在籍した期間だけで言えば僕と大差ない、どころか中等部の子も来るから色々と教えてもらう立場になりそうだ。
「入学式や始業式に向けた準備もあるからこれから忙しくなるわね。2人とも頼むわよ?」
「わかってますってば」
渚さんの言葉に億劫そうに答える志乃様。
「寮生で何か出し物でもするんですか?」
渚さんは学長室でも入学式の話があったし生徒会との関わりで何かあるのだろうと思うが…。
「えぇまぁね。昔からの伝統、というやつかしら。入学式では寮生が事務の仕事を請け負ったりしてるのよ」
「つまりは便利屋扱いされてるってわけ。渚さんは特に生徒会の仕事もあるしすんごい大変なのよ」
それはまた…。
思えば学長と渚さんと出会った日も休みの日だった。
「もし何かできることがあれば、私たちも是非お手伝いさせてくれませんか?」
不意に、口を突いて出た言葉。
これから僕らも寮生になるのだから。そういうつもりで考えると自然に口を突いて出てきた。
「それは助かるけど、荷解きとか大丈夫なの?まだ大物の荷物とかはこれからなんでしょ」
「まぁそこは何とかなりますよ。制服や衣類の類は届いているので着た切り雀になることはないですし、後は大物と言っても本棚や段ボールに詰め込んだ教科書とかですから」
すぐすぐ必要になるものはすでにあらかた整えられている。
それは日向も同じ様子で、一緒に手伝う気十分だ。
「それなら、是非お願いしたいわ。正直人ではいくらあっても足りないくらいなの」
「お任せください、こう見えましても私は力仕事にも自信がありますから」
何たって男だから。
か弱い女性よりかよっぽど力がある。
志乃様も何か頼みたいことがあるのかこちらをじっと物欲しそうに見つめている。
「へぇ、そうなんだ。夕陽さんて運動も得意だったりするの?」
「運動は…そうですね、単純な体を動かすものであればそこそこは。難しい動作が必要だったり道具が必要だったりするとあまり得意では…」
大の得意です!なんていうわけにもいかないし、でも力はあるのは本当だしで上手な言い訳がパッと思い浮かばないから、中途半端な回答になってしまう。
それに対して雪菜さんは面白いものを見つけたかのように目を細めている。
「ふーん…」
意味深気味に、一体なんだっていんですか。
その後の食事は特に何も起こらず和やかに進んでいった。
食事が終われば各々リビングでのんびりしたり、部屋に戻って作業をしたりと自由に過ごしていいらしいが…
「あぁ、疲れた…。身に染みるなぁ」
1人湯船に浸かりながら大きなため息をついた。
(まさか、志乃お嬢様が寮にいるなんて聞いてませんよお父様…)
あの人のことだ、寮に誰がいるのか、誰が入ろうとしているのか事前に調査しているはずだ。
それなのにお嬢様がいるって情報が回ってこなかったてことは面白がってあえて教えなかったに違いない。
(次の報告の時には絶対文句言ってやるんだ)
何はともあれ。
入寮して最初の1日は大きな出来事自体はあったけれど男とバレるようなこともなく、無事過ごすことができた。
(案外バレないものだな…)
化粧に、長い髪、そして何より大きめの詰め物。
鏡や写真などでみるとどこからどう見てもお嬢様育ちの女の子。
あとは、作法とか所作とか立ち回り次第。
(気を引き締めないと、な)
ーーー
「おはようございます、皆さん。早いんですね」
朝、ばっちりと化粧をして部屋を出ると他のみんなはもう着替えも済ませて勢揃いしていた。
「まぁね。今日は生徒会の手伝いもあるし。夕陽さんも手伝ってくれるんでしょ?」
「えぇ、力仕事なら任せてください」
「頼りにしてるわ」
食事は寮母の方が用意してくれるので、各自好きなだけの量を自分で盛り付ける形のようだ。
「あら、夕陽さんどうかしたの?足りなかった?」
「いえ、そんなことはないんですが…」
他に人が見ている場所でガッツリ食べるわけにもいかず、腹4分目といったところだろうか。
「そう?今日はたくさん働いてもらうことになるから食べれるうちにたくさん食べておいた方が身のためよ」
「それもそうですね。…もう少しだけおかわりいただいてきますね」
しかし、それでどさっとお代わりするわけにもいかない。
小鉢をいくつかとって、その日の朝ごはんはおしまいになった。
仕事がでてくるのらもう少し経ってからだとのことでしばらくは各自自由時間になるらしい。
「それならもう少し部屋の片付けでもしてきましょうか」
「えぇ、いいわよ。時間になったら呼ぶからそれまでは自由にしててちょうだい」
さて、昼前にはまた呼びにくるとのことだから
先も言った通り荷解きでもしておこうか。
「と、言っても正直ほとんどもう片付け終わってるんだよなぁ…」
みる人が見れば、随分と殺風景なと言われそうだけど私物のほとんどが男物で持って来れなかったのだからしょうがない。
「夕陽、開けてもいい?」
と、ぼんやりしているとドアの外から声がする。
「志乃様?どうぞ、入っても大丈夫ですよ」
「お邪魔します、って随分とさっぱりした部屋ね。あなたミニマリストだったの?」
「違いますよ…。転入の話しが結構急で荷物用意できなかったんです」
「あー、そっか。だって夕陽の私服なんて持ってきた日には」
「えぇ、一発です」
「なら、今度買い出しにでも付き合ってあげようかしら。女の子として持っておいた方がいいものとかもあるし」
「正直それは助かりますね…いいんですか?」
「いいわよ、気にしなくて。私も無関係じゃないんだし…って、そうよ。ここにきた理由忘れるところだったわ。ちょっと手伝ってくれない?今模様替えしてるんだけど箪笥の位置が気に入らなくてね」
「いいですけど…でも、天童寺さんが迎えにきたらそっちに向かいますので中途半端になるかもしれませんよ?」
「大丈夫よ、箪笥ひとつ動かすだけだから、すぐ終わるわ」
そう言って連れられたのはもちろん志乃様の私室。
「今更ですけど、男の僕を部屋に入れても良かったんですか?」
「何言ってるの、ここにいるのは祐樹じゃなくて夕陽なんでしょ?なら何も問題ないじゃない」
「そうは言いましても…」
「いいから早く、ほらそっち持って」
ーーー
「あら、そろそろ声をかけようと思えばこんなところに。何をしてるの、2人とも」
「その、部屋の模様替えを少々…」
「に、しては随分と散らかっているように見えるのだけど」
「あ、あははは…。いやー、なんと言いますか、その。うん、いわゆる片付けが進まないというやつでね」
「おおかた、志乃さんが懐かしい雑誌か何かを見つけて夕陽さんを連れ込んだんでしょ?」
「ご明察です、渚お姉様…」
ほんの少しタンスを動かすだけの作業のはずが、いつの間にやら雑誌の展覧会となってしまっていたのだ。
そして、部屋を見に行ってもいない僕を探していると床に雑誌を広げた志乃様と僕を見つけたわけで。
「にしたって、床に広げるのは淑女としてどうなのよ」
「おっしゃる通りです…」
ーーー
「それでは、よろしくお願いします」
「はい、お任せください」
ところ変わって講堂へ。
細かいものはボランティアの生徒に、大きすぎるものは業者に依頼して残った中途半端に大きいものなどの運搬を手伝う。
制服だと埃などで汚れてしまうとのことで、みんな体操服なのだが…。
「夕陽さん、あなた随分線が細いけど、ほんとに重たいもの持てるの…?」
「えぇ、お任せください」
よいしょっと、指定されたものを持ち上げる。
残っていたものの中では比較的大きなものでそれでもまだ余裕はありそうだ。
「あるすごい、やるじゃない」
「いえいえ、それほどでも」
「それじゃ、次はこっちの手伝いをよろしくね」
ーーー
「はい、お疲れ様」
差し出されたのは缶コーヒー。
冷たい缶が熱った体に心地よい。
「ありがとうございます、渚さん」
「いいのよ、私のほうこそ助かっちゃったんだからそのお礼よ」
あの後もあれやこれやを運んだり、もしくは意見を求められたりとかなりのてんてこまいだった。
それでも無事日が落ち切る前に終わったのはひとえに渚さんの判断力や采配力によるものが多いと思う。
「それこそ買い被りよ。どれも私じゃなくても判断がつくものばかり、でも不安だから生徒会の私に聞きに来た、ただそれだけよ」
「私は…、それだけ渚さんが頼りにされてるのだと思いますが」
「頼りに、って言い方実はあまり好きじゃないの」
「そうなんですか?」
手元で空いた缶を回しながら、言葉を転がして行く。
渚さんの目は何処か悲しげだ。
「えぇ。だって頼りにって言ったって度を過ぎればそれは依存に変わりがないでしょ?」
「そう、ですね」
その言葉に、一瞬心がずきりと痛む。
依存、か。
「変な空気になっちゃったわね…、そろそろ戻りましょうか。このままだと体が冷えるわ。お腹も空いたし」
ーーー
「あら、みなさんどうされたんですか?」
寮に帰ると、そこには死屍累々…、青い顔をした寮のみんながいた。
そろそろ御飯時だというのに、一体どうしたんだろうと思っていると、どこから「きゅー」と可愛らしい音がする。
「…夕陽、あなた料理できたりする?」
雪菜さんがのそりと顔を上げながらそう呟いた。
どうやらお腹が空いて力が出ない様子。
話し方にいつもの覇気がない。
「その、あまりしたことはありませんが…?」
同じく顔色のよろしくない志乃様が続く。
「寮母さんがね、お母様が階段で転んだって連絡が来て帰らないといけなくなったの」
普段、朝食と夕食は寮母さんが作りたてを用意してくれるらしい。
それが今日は突然の連絡で何の用意もできずいなくなってしまったと。
ことがことだけにみんな快く送り出したそうだけど空腹は後から後からどんどん迫ってきて、とのことらしい。
偏見になるかもしれないが、良家のお嬢様なら手料理の一つや二つできそうなものなのだが。。。
まぁ、僕も料理はできないから人のことは言えない。
「日向、お願いできる?」
「はい、お任せください」
そんなわけで日向の料理が振わまれた。
食材は冷蔵庫のものから取ったため有り合わせだったらしいが、その味はまさしく筆舌にしがたい美味しさだった。
つまり、寮生みんなに快く受け入れられたわけだ。
ーーー
「いやー、まさか日向ちゃんみたいな逸材がうちに来るなんて…願ったり叶ったりだね!」
「これで週末の度にひもじい思いをしなくて済むわ」
時は移って食事後の団欒。
みんなでティーカップを傾けつつ談笑中、話題は週末のたびに訪れる自炊が中心になる。
「アレはアレでダイエットにもなって私は良かったと思うのだけれど?」
「なら雪菜さんだけはお昼はいらないってことでよろしくて?」
「いや、それは…ごめんなさい、私もぜひ食べたいわ」
寮母さんの定休日、つまり週末の食事の心配がなくなったと渚さんをはじめ寮生みんなが大喜びなのだ。
「日向、本当に大丈夫なの?」
「はい。元々週末に食事が出てこないのは事務の方から伺っておりましたので。冷蔵庫の中の食材も自由に使用して良いのであれば私としては何も問題はありません」
「んー、日向ちゃん大好き!」
「な、渚様…」
腹ペコ集団に日向はそれこそ女神か何かに見えたのだろう。
まるで崇拝の眼差しを受けて本人もタジタジだ。
「ちなみに、今まで週末はどうされてたんですか?それこそ、自炊をする良い機会だと思うのですが聞いている限りですとどなたもされないご様子ですが…」
「そうねぇ、基本…食べないわね」
「え」
「全くしないわけじゃないけど、やっぱりほら…その、火とか刃物って怖いじゃない?そうすると食卓に並ぶのはどうしても卵かけご飯とか簡単なものばかりになっちゃって、それならもういいかなぁ~と」
「れ、冷凍食品とか、即席麺とかは…?」
それこそ即席麺なんかはファストフード店でいくつか隠し持っていると聞いたような気がする。
「冷凍食品は一時期置いてたんだけど…ねぇ」
ジロリと雪菜さんの方を見つめる渚さん。
その視線のはじっとりしてて恨みがこもっている。
「そ、そんなこっち見ないでよ渚さん。悪かったって思ってるんだから」
「この子ね、運動部だからって冷蔵庫とか戸棚にある、手頃な食べ物どんどん食べちゃうのよ」
「あぅあぅあ…」
「しかも、それでいて体重は私より軽いとか!ほんっとーーに、許せないわ!」
…そ、それは食べ物を取られたことに対しての怒りなのかはたまた体質についての不満なのか。
あまり突っ込まないでおいた方が良さそうだ。
「そんなわけで、冷凍食品も以前は買ってたけど今は全くね。ついでにダイエットってことで週末はみんなで断食だったのよ」
「それはそれは辛かったんだ。部活から帰って、お腹が空いたと戸棚を探しても何もなく、冷蔵庫に食べ物は入っていても調理の仕方もわからず…」
「しまいには野菜の丸齧りなんかしてたわよね、あなた」
「意外と美味しかったです」
…お嬢様って案外大変かも、なのかも。
それに随分と人間じみた生活してるんだと思い知らされる。
「でもこれからは日向ちゃんがいるから大丈夫!」
「はい、お任せください。流石にそこまでお聞きしては私としても置いておくわけにはまいりませんので」
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