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魔血女王
幼き依頼
死せる海魔を葬ったばかりの長剣を腰の鞘に納めた黒衣の麗人は、こちらを凝然と見るガランド、ラアク、アルニ、ミルラに向けていた瞳から悲哀の色をすぐに拭い去った。
分かっていた事だ。予想していた事だ。知っていた事だ。これまで何度も経験してきた事だ。
もう慣れている。だから大丈夫。例え慣れはしても痛みや悲しみを憶えないわけではないとしても。
「た、タンブル・ウィード……あんた、さっきの奴が」
大きな音を立てて生唾を飲み込み、ガランドが恐る恐るそうであって欲しくない、と言わんばかりの顔でタンブル・ウィードに問いかける。
タンブル・ウィードはつい先ほど自分が造り出したばかりの土の橋の上で、一度だけ頭上に輝く銀盆の如き月を見上げるとすぐに視線をガランド達へと戻した。
心を落ち着ける為か、それともガランド達に返すべき言葉を母なる月に問うていたのかもしれない。
「ええ、この身はバンパイア。月の女神と夜の神とが創り出した眷属の裔。先程の海魔の言葉に嘘も偽りもありはしませんよ、騎士ガランド」
月光の映える佳人の笑みはどこまでも透き通った美しいものであったが、それよりもたった今紡ぎ出された言葉の意味の方こそが、ガランド達の脳と精神とを強く打った。
バンパイア。人間と変わらぬ容姿を持ちながら、他者の血を吸う事で肉体と魂を呪い、同じ血を吸う魔性の存在へと変容させる恐ろしき夜の住人。
太陽の祝福を受ける事叶わず、水の流れを渡ろうとすればたちまちの内に弱体化するが、しかし夜の闇と共にある限り胴を二つにされ、首を落とされようとも死なぬ不死性と人間を紙屑のように引き千切る膂力を持つ人外。
バンパイアの存在それ自体は希少である事もあり、辺鄙な農村部の住人達に知られているものではない。
だがガランドとアルニは一定以上の教養を持つ騎士であり、ミルラは冒険者として時に傭兵として様々な魔物との戦いを経験し、知識神の神官であるラアクに至っては言うまでも無いだろう。
彼らはバンパイアと言う種族が亜人種の中でも屈指の身体能力と数々の異能、そして最も忌むべき他種族を同種族へと変質させる力を持っている事を知っていた。
そしてなによりこの大陸の住人に限って言えば、バンパイアの事を知らぬ者はほとんど存在していないと言って良かった。
なぜならこの惑星においてこの大陸に最も多くのバンパイアが住まい、大陸の西から北西部に掛けてバンパイア達の国家が存在しているのだから。
かつては始祖の直系である六つの王国とその衛星国家によって構成されていたバンパイアの勢力は、五つの王国とその衛星国家が尽く滅びて後に一度は統一されたが、つい最近統一を果たした国家の王とその子息が滅ぼされた事で再び勢力情勢が激変している。
かつてバンパイア達が治めていた大陸西方は、いまや自らを王とする大小無数の勢力がひしめき合う戦国時代に突入しつつある。
ガランド達の所属している人間種が住人のほとんどを占める国家と、バンパイアの勢力圏とはかなりの距離があるものの、いつ覇権争いに敗れたバンパイアや大陸東部に勢力を伸ばそうと画策するバンパイアの魔の手が伸びてくるとも限らない、という事で最近では厳戒態勢が敷かれていた。
ゾンビー達の出現を早期に発見し警戒態勢を取れていたのも、元々はバンパイアへの備えであったのだ。
なにより父祖の父祖のそのまた父祖とはるかな昔からバンパイアを隣人として歴史を重ねて来た彼らは、幼少の頃からバンパイアの恐ろしさ、忌まわしさを寝物語に聞かされていて、今、生まれて初めて見るバンパイアを前に恐怖を呼び起こしているのだった。
タンブル・ウィードがバンパイアであると言う事は、驚くほどすんなりとガランド達は納得する事が出来た。
彼らにどうしてと問えば、きっとこんな答えが返ってくる事だろう。
だってそうだろう。タンブル・ウィードは強すぎる。人間があんな風に化け物どもを相手に戦えるものか。
だってそうだろう。タンブル・ウィードは美しすぎる。人間があんなに美しい生き物であるものか。人間ではないから人間ではあり得ない美しさを持っているのだ。
ガランド達はひりひりと乾いた咽喉に不快感を覚えながら、それに数万倍する恐怖に突き動かされてそれぞれの武器へそろりそろりと手を伸ばす。
再生を阻害する呪いや聖なる神の祝福を受けた武器で無ければバンパイアに有効な傷を与える事は出来ないが、幸いにして知識神の神官であるラアクが居る。
技量ではタンブル・ウィードの足元はおろか足の裏にも届かぬ事は明白であったが、まったく抵抗できないわけではない、と思い至りガランドはほんのわずかに心が軽くなった。
そんなガランド達をタンブル・ウィードは沈黙を最良の友と選んだかのように、一言も口にする事無く見つめている。
その赤い視線を受け続ければ無機物でも恥じ入りそうなほどに妖艶なる瞳に、感情の色は無い。ただただ先程まで自分を頼りにしていた騎士の怯える顔が映し出されているのみ。
何を思うタンブル・ウィード。そして何をする? 月夜の愛し子、闇と影の寵児たるバンパイアよ。
「あんたがバンパイアだと言うのなら、こ、今回の死人の復活はあんたの仕業か? バンパイアは高位のアンデッドだ。なら死人をゾンビーにする位はできるだろう」
かちかちと鞘に何度も刃を当てながら長剣を抜いたガランドの問いに、タンブル・ウィードは小さく首を横に振るった。
ガランドの言う通りの事は出来るが、それは別にバンパイアで無くとも死霊魔法を修めた者なら可能な芸当でもある。
「それは違います。第一私の仕業であるのなら、先程の海魔に私の種族を明かさせはしませんし、あなた達を助けもしません。あなた達が死者達の仲間となるのを見ているだけでよいのですから」
タンブル・ウィードの言う事は事実であり、そして至極もっともな事だ。
だが一度バンパイアと言う偏見と恐怖を植え付けられたガランド達にとっては、タンブル・ウィードの言う事は何であれ信用のならない、あるいは何かしら裏のある言動としか捕らえられなくなってしまう。
タンブル・ウィードがバンパイアだというたったそれだけの事で、タンブル・ウィードを擁護していたガランドさえも猜疑心に自ら絡め取られてしまっている。
続いてミルラが既にタンブル・ウィードを敵として認めた声で畳みかけた。
「そんな事はどうだっていいのさ。問題なのはあんたがバンパイアだってことだ。ここら辺の人間にとって、バンパイアってのはなによりもおっかない相手だ。
あんたらにとっちゃ、あたしら人間や他の種族は皆食べ物なんだろう。
昔、バンパイア達が食糧と下僕を求めてこの大陸中の人間や亜人をさらって行った時の事を、あたし達は忘れちゃいないし忘れられない。
あんただって人間の血を吸った事はあるんだろう? 咽喉に牙を立てて自分達と違う温かい血を飲んだ事はあるんだろう!」
ミルラは尻尾を逆立てた猫のようにタンブル・ウィードにぎらつく瞳を向ける。
そして彼女が口にした過去の出来事こそが、この大陸の住人達がバンパイアを恐れる最大の理由の一つでもあった。
通常、バンパイアは人間や亜人を対等な存在と見ない。
それは彼らにとって他種族が食糧であり、同じ姿形をしていて心もそうは変わらないからと感情移入をすれば、吸血行為に大きな弊害が生じる事を彼らの本能が危険視しているかだろう。
他の種族にとって吸血行為によってバンパイアに変えられる事は忌むべき行為であっても、バンパイアからすれば自分達と同じ種族に成り上がらせてやる、つまりは祝福と考えられている事からも両者の価値観、倫理観の違いが窺い知れる。
バンパイアの中にも他種族に対する吸血行為に罪悪感を覚え、吸血しても下僕にはしない者、牙を使わずに刃などで皮膚を傷つけて血を得る者、血の対価に財貨や技術などを与える者、といわゆる穏健派、共生派と呼ばれる者達も居たがこれはごく少数の例外に過ぎない。
実際、ミルラが言ったようにこの大陸の歴史を紐解けば、バンパイア達が新たな食糧と下僕を求めて周辺の他種族を浚うなり戦争を仕掛けた事は幾度となくある。
そうして産み出された過去の犠牲者達とそれに付随する悲劇は、今も色褪せることなく伝えられて、ガランド達のような反応を取らせている。
無理もない、とタンブル・ウィードは心中で呟く。
吸血によって犠牲者がバンパイア化するのには、たった一度の吸血で変わる事もあれば数回の吸血を経てからバンパイアと化すなどいくつかのパターンに分けられる。
吸血を何度も行うのは主に徐々にバンパイアと化して行く犠牲者の肉体と魂の変調、そして美味なる血の味をバンパイアが楽しむ為、という嗜虐的な理由がほぼ全てを占める。
徐々に肌から血の気が引き、瞳は虚ろになり、心臓の鼓動が少なくなり、まるで死人のように冷たくなってゆく犠牲者。
そしてその犠牲者を前にして何も出来ずにただ悲嘆にくれて絶望するしかない犠牲者の家族や友人、恋人。
悲しみと怒りの涙がこぼれ、憎しみと恨みの歌が響き渡り、大切な者を守ろうと刃を手に立ちあがった者達を無惨に殺し、あるいは彼らが守ろうとした者達の手で葬らせる。
そうした悲劇の一幕を引き起こし、演出する事に喜びや優越感を覚えるバンパイアは、タンブル・ウィードにとっては残念な事に決して少なくは無い。
他種族を食料と見る価値観やその悲劇を楽しむ残虐さは、いかんともしがたくバンパイア達の魂の深い所に根付いているのだ。
タンブル・ウィードはそんなバンパイア達の中にあって、極めて稀な心を持って生まれた例外であったが、そんな事はガランド達に分かる筈もないし、また今の彼らの心理状態では関係が無かっただろう。
彼らにとってタンブル・ウィードは、素性は知れないが腕の立つ護衛ではなく、バンパイアと言う伝説の悪鬼でしかないのだから。
主へ敵意を向けるガランド達にスレイプニルが反応し、ぶるる、と嘶きを上げるがそれをタンブル・ウィードは手で制止し、こちらへと手招いた。
スレイプニルは不敬で恩知らずなガランド達の振る舞いにたいそう憤慨している様ではあったが、タンブル・ウィードの瞳に懇願の光が揺らめくのを見ると渋々主に従い、橋を渡って主の傍らで六本の足を止める。
スレイプニルの手綱を握り、首を撫でて宥めながらタンブル・ウィードはガランド達を見てこう言った。
「どうやら私はここであなた達とお別れした方が良さそうです。
今回の事態に私は関わりが無いと御始祖と偉大なる創造神に誓って明言しますが、それでもあなた達にとって私は信用ならぬ様子。
これでは共に行く事など到底叶いはしないでしょう。けれどせめてこの橋はお使いなさい。
今のあなた達にとって時が徒に浪費すべきものでは無いのなら、この橋がどれだけ有用かお分かりでしょう。
もっとも私の言葉など何一つ信用ならぬと言うのなら、無理に勧めはしません」
タンブル・ウィードがこの場から去ろうとしている事を悟り、ガランド達は言葉なくタンブル・ウィードが去ろうとするのを見送った。
冷静になって考えてみればここでタンブル・ウィードが抜ける事は、避難民達を守る上で絶対的に欠かせぬ要素の喪失なのだが、バンパイアであるタンブル・ウィードが同道する事はガランド達に留まらず避難民達も拒否の姿勢を見せるだろう。
かつてバンパイアに血を吸われ下僕と化しつつあった家族をこのままバンパイアになる位ならと心臓に杭を打った者、またあるいは密かに匿っていた犠牲者によって血を吸われた家族が更に村の仲間を襲い、瞬く間に壊滅した村落。
過去に実在した悲劇の数々は生々しさとその恐怖を今に至るまで連綿と伝え、人々の心に暗黒の恐怖を根付かせている。
バンパイアと一緒に行動する位なら、死んだ方がマシと口にする者は決して少なくは無いだろう。
こうしてタンブル・ウィードが背を向けた瞬間にダートを投げつけそうなミルラを制止するガランドやアルニ、ラアク達とタンブル・ウィードの間に決定的な別れが生じようとした瞬間、距離を置いていた避難民達の間から細い影が走ってきた。
真っ先にその影――ニックに気付いたタンブル・ウィードが足を止める。
ニックはガランド達の間を縫う様に進み、ガランド達から何歩か前に出た所で足を止める。
ニックは先程まで避難民達と一緒にタンブル・ウィードが土の橋を掛け、姿を見せた異形の魚や海魔達を相手に戦う姿に驚愕と興奮と畏敬の念を向けていた。
海魔マッガランの発した言葉を皮切りにガランド達の雰囲気が一触即発のものになった事に気付き、居てもたっても居られずに祖母や父母の止める声を振り切って駆けて来たのである。
「待ってよ、タンブル・ウィード。どこに行くんだよ!」
あらん限りに声を絞って叫ぶニックに、タンブル・ウィードは少し悲しげに、しかしどこか嬉しそうに笑みを返す。
タンブル・ウィードは、出会った時から憧憬の念を向けて来るこの少年の事が嫌いでは無かったし、だからこそニックにバンパイアであるからと恐怖の目を向けられる事が嫌だった。
タンブル・ウィードは自分の心の動きの単純さと幼さに、思わず呆れていた。
「ニック、どうやら私は歓迎されていないようです。あなた達を御領主殿の街まで送り届けると言う約束ですが、反故する事になってしまい、ごめんなさい」
「そんな、ガランドさん、どうしてタンブル・ウィードが」
純粋な子供の目と問いに、ガランドは真っ直ぐに目を見て答える事は出来ずに、視線を逸らした。
理性ではタンブル・ウィードが言ったように彼女が関わっている可能性は、極めて低いと分かってはいる。
分かっているのだが、それでもそれ以上にバンパイアへの恐怖と忌避の念があまりにも強すぎた。
「ニック、お前達にも聞こえていたんじゃないか? あのマッガランとかいうアンデッドが言っていただろう。タンブル・ウィードは、その……バンパイアだって」
「聞こえてたよ」
「だったら分かるだろう? バンパイアが、吸血鬼がどんなに恐ろしい存在か、お前だってもっと小さい頃から聞かされて来た筈だ。そんな相手と一緒に行ける筈が無いだろう」
「そりゃあ、おれだって知っているけど、でもさ、タンブル・ウィードのお陰でおれ達の命は助かったじゃないか。おれは二回、ガランドさんは一回、皆だってさっき助けられた。
今のを入れればもっとだ。タンブル・ウィードはおれ達に何の貸しも借りも無いのに、助けてくれているんだよ。それをバンパイアだからって追い出すなんてひどいじゃないか」
「だが、バンパイアである以上、何時血の欲求にかられておれ達に牙を剥くか分かったもんじゃないんだ。そうなったらもう止められない。
次から次へとバンパイアが増えて行って、ゾンビー達の代わりにバンパイアの群れが出来上がっちまうぞ」
「タンブル・ウィードはそんなことしないよ!」
理屈もなにも無いニックの言葉は、それだけタンブル・ウィードに対する信頼のあらわれであったが、それを宥めたのはラアクだった。
幼い子供をなだめようと、ラアクはその大きな手をニックの両肩に乗せ、重く通りの良い声をかける。
「ニック、君が彼女の事を信頼する気持ちは分かります。ですがバンパイアにとって血を吸うと言う事は、私達が水を飲み、パンを食べるのと同じ事。
君も私も咽喉が渇き、腹が空けば飲み食いをせずには居られません。どう気持ちを持った所でどうしようもない事なのです。
例えタンブル・ウィードが決して私達の血を飲むまいとしても、生きようとする体がそれを許しはしないでしょう」
感情による感情の否定では無く、ニックにも分かりやすい例えで諭してくるラアクに、普段から世話になっている相手と言う事もあり、ニックの反攻の狼煙は見る間に小さくなっていく。
このままニックが大人達の言い分に言い負かされて、タンブル・ウィードと彼らの交わった道は離れるものかと思われた。
「分かったでしょ、ニック。自分達の隣にいつ牙を剥いてくる分からない危険人物を連れてゆくわけにはいかないのよ。
ただでさえ分けのわからない死人どもから追いかけ回されているんだから、これ以上面倒なのはごめんよ。
ここで心臓に杭を打ち込まないだけでもありがたいと思って貰わなくっちゃ」
「ミルラ、流石に言い過ぎだぞ」
舌鋒が激しくなるミルラをこれまで沈黙を守り、タンブル・ウィードの動きに対応できる神経を研ぎ澄ませているアルニが窘める。
ニックの登場によってタンブル・ウィードの纏う雰囲気が柔らかになった事で、口を挟む余裕が出来たのだが、ミルラの敵意をむき出しにした発言に肝を冷やして思わず口が出たらしい。
タンブル・ウィードがその気になれば自分達が十と数える間もなく首を飛ばされる事を、ミルラとて理解しているだろうにとんでもない事を口にしてくれたものだ。
タンブル・ウィードが気分を害した様子が無い事が、アルニの緊張と不安を大きく和らげてくれた。
ラアクに諭されミルラにきつく叱られて意気消沈したと見えたニックだったが、なにやら妙案を思いついた様子で明るい表情を浮かべると、正面から美しすぎる黒衣の妖人を見る。
「そうだ。だったらタンブル・ウィード、タンブル・ウィードは傭兵もやっているんでしょう?」
「ええ、そう、ですね。新米も良い所ではありますが……」
わずかにタンブル・ウィードが言葉を濁したのは、傭兵や冒険者であるというのがガランドの問いに咄嗟についた方便であったからに他ならない。
実の所タンブル・ウィードは自分を傭兵や冒険者として売り出してはいないし、その手の依頼や仕事をこなした事は無い。
だがそんな事はニックに関係無かった。ニックにとってタンブル・ウィードが傭兵である事を否定しなかった事こそが重要だったのだ。
「だったらタンブル・ウィードをおれが雇うよ。それならタンブル・ウィードはおれ達と一緒に行けるだろう!」
これ以上の妙案は無いと言わんばかりのニックの言葉に、しばし周囲は呆然として言葉も無かったがニックのとんでもないと言えばとんでもない発言に真っ先に噛みついたのは、ミルラであった。
「ばっかじゃないの! こいつが傭兵だなんて言ったのは嘘だってあんたも分かっているでしょ。その場で吐いたとっさの嘘よ、ウ・ソ!
第一ねえ、あんたに傭兵を雇えるだけのお金があるわけないでしょう。どんな報酬が用意できるってのよ。いっちばん安い傭兵だって、子供のあんたじゃ一年働いたって稼げない額を払わなきゃなの。払えるの、ニック?」
「お、男に二言は無えやい。ええっとこんだけある!」
苛立ちを隠さないミルラに煽られたニックが引くに引けずズボンのポケットや、括りつけている小袋をあさってミルラにつき出した手には十枚の銅貨が乗せられていた。
日々の農作業の手伝いや、時に訪れる旅人や商人にお金になる果実や木工細工を物々交換や売買する事で貯めたニックのとっておきである。
それを見て、ミルラはほら見た事か、と鼻で笑う。
これでは最底辺の傭兵を一日だって雇う事は出来やしない。これならゲルドーラへ向かう途中の保存食でも分ける方がまだましだ。
本来ここまで苛烈な性格をした少女ではないが、ニックの甘い考えを否定する事こそがこの少年の為だと考えている部分もあるのだろう。
「やっぱりこれっぽっちしか持ってないじゃない。これじゃどんな傭兵や冒険者だって雇えっこないわ。あたしだって同郷のよしみがあっても断るわよ。
ほらほら、分かったらさっさと戻りなさい。あんたのお気に入りの吸血鬼はもうあたしらとは別の所に行くのよ」
ニックが項垂れて踵を返そうとした時、いつの間にか音も無く近づいてきていたタンブル・ウィードがニックの傍らに立ち、膝を折ってニックと目線を合わせる。
救いの女神が訪れたみたいに輝くニックの顔を見ながら、タンブル・ウィードは年齢の離れた弟に対する姉のように優しく声をかける。
ミルラもガランドも誰も声をかける事が出来なかった。タンブル・ウィードが恐るべきバンパイアと知っていても、ニックに近づくなと言う事も出来ない。
そうする気にもならないほど、タンブル・ウィードの纏う雰囲気が優しいものであったから。
「ニック、これはあなたが貯めたお金ですね。豊饒祭の為に貯めていたものではないのですか?
それに私はバンパイアです。私を雇ったとなれば村の皆に嫌われてしまうかもしれません。それでも私を雇いますか?」
「これは、たしかにタンブル・ウィードの言う通りに祭りの為に貯めたお金さ。だけどよ、祭りは生きてればまた行けるし、お金だってまた貯めれば良いよ。
村の皆に何か言われるのだって構うもんか。だってこのままだった皆死んじまうかもしれないだろう。
だったらおれがどんな嫌われたって皆が生きていられる方が良いじゃないか。タンブル・ウィードなら、皆の事を守れるんだろう、ねえ」
タンブル・ウィードは黙ってニックの掌の上に載せられた銅貨を手に取った。
「この依頼、確かに承りました。必ず貴方の御家族と村の皆さんをゲルドーラまで無事にお連れしましょう」
「本当、本当かい、タンブル・ウィード!」
「約束します。ここに居る誰ひとり、あの者達に殺させはしません。私の持てるすべての力を持って、守って見せます」
笑顔を輝かせるニックとそれに応じて力強く真摯に頷くタンブル・ウィードに慌てたのは、事の成り行きを見守っていたガランド達であった。
「ちょ、ちょっと待ってくれタンブル・ウィード。子供の言う事だぞ。真に受けるのか!?」
危険なバンパイアを遠ざけられるという安堵と、これ以上ない護衛を失うという不安とがないまぜになっていた心理状態であったガランドだが、よもやタンブル・ウィードがニックの依頼を受けるなど考えもしていなかったから、泡を食って問いかける。
それに対してタンブル・ウィードは澄ました顔でガランドと、ラアクやアルニ、ミルラに答える。
「私は傭兵です。報酬が用意され、傭兵である私がそれに満足して依頼を受諾した以上、既に契約は成立しています。
後は私が依頼主の意思を尊重し、傭兵としての役割を全うするだけの話。なにか問題がありますか?」
「い、いや、だが報酬はこれだけだぞ。それに君が守るって言うおれ達は君の事を追いだそうとしているしだな。ああ、もうなんて言えばいいんだ、くそ。おい、アルニ、お前も何とか言ってくれ」
「そうだね。さっきまでは単なる口約束だったから、私達が拒絶すればそれでおしまいだったけど、傭兵としての契約だからね。
それにタンブル・ウィードは傭兵団や組合にも所属していないモグリ、というかなんちゃって傭兵だし個人で結ばれた契約にどうこう言える権利は、理屈の上では無いねえ」
「おい!」
「そういう事です。依頼を受けた以上はそれを全うすべく行動させていただきます。御心配無く、目ざわりにならないように距離は開けておきますので」
ニックから前払いされた報酬を胸の内ポケットに仕舞いながらしれっと言うタンブル・ウィードに、ガランドは地団太踏みそうな顔をしたがどことなくホッとして見えるのは、やはりタンブル・ウィードという戦力を手離す事に不安を覚えていたからだろう。
それにまっすぐで人の良い青年だ。命を救ってくれた相手に対する仕打ちに、少なからず忸怩たるものを覚えていたに違いない。
「ねえ、ちょっと」
だが一人だけ氷の冷たさの声でタンブル・ウィードに声を掛けた者が居た。ミルラである。
先程からのバンパイアに対する敵意の苛烈さから、ともすれば冒険者家業をしていた時にバンパイアに仲間を傷つけられるかなにかしているのかもしれない。
「なんでしょう」
「あたしらを勝手に護衛するってのは構わないけど、あんた、もし血を吸いたくなったらどうするわけ? まずは手近なニックの咽喉に噛みつくのかしら」
挑発するにしても度を越えたミルラの言葉に、ガランドやニック、アルニらが背筋に冷たいものを覚えてミルラの口を閉ざそうとするが、それよりもタンブル・ウィードが答える方が早かった。
「いざとなれば自分の腕に歯を立てて、血への渇望を治める事としましょう。あなた達と共に行く限り、決して人間の血は吸わないと誓います」
「ふん、口でなら何とでも言えるわ。覚えていらっしゃい。怪しい動きを見せたらあんたの心臓を串刺しにしてやるから」
そう言って背をむせて避難民の方へと歩いてゆくミルラに、ガランドらが慌てて声をかけて後を追って行く。
マッガランの声は避難民達にも届いていただろうから、避難民達にバンパイアであるタンブル・ウィードが変わらず護衛として着いてくる事も説明しなければならない。
避難民達はタンブル・ウィードを雇ったニックを余計な事をしたと責めるだろうか、それともあれほど強力な護衛が去らなかった事を喜ぶか。前者で無ければよい、とタンブル・ウィードは祈らずには居られなかった。
「ニック」
「なんだい、タンブル・ウィード」
「私を雇った事で色々と言われるかもしれませんが、泣きたくなったら私の所においでなさい。好きに泣かせて上げる位の度量はあるつもりです」
「はは、タンブル・ウィードは男心が分かっちゃいないなあ。男が女の前で泣けるかい。情けないったらありゃしない。
それにおれは皆に感謝して欲しくってタンブル・ウィードを雇ったんじゃないんだ。
だから何を言われたっていいさ。皆がゲルドーラに無事に辿りつけられればね」
「ふふ、そうですか。恥ずかしながらこの年になるまで殿方とまともにお付き合いした事が無いのです。ですから男心が分からないと言うのはニックの言う通りですね」
「へえ、こんなに美人なのに? タンブル・ウィードの周りの男は見る眼が無いなあ。それとも高嶺の花すぎるからかな」
「あら、ニックは難しい言葉を知っているのですね」
「まあね、ラアクさんに色々教えて貰っていたんだよ。ねえ、タンブル・ウィードは誰か好きな男はいないのかい? タンブル・ウィードならどんな男だって言い寄ればイチコロだろ」
「それは、その……」
おやおや、とニックはタンブル・ウィードの反応に思わずにはいられない。
もしタンブル・ウィードが美女で無ければこの世に美女が居なくなるほどの美貌の主が、バンパイアであるが故に透けるように白い肌を赤らめて、視線を彼方に彷徨わせているではないか。
まだ幼いニックでさえ分かる。これは恋する女の顔に他ならない。ニックは急にタンブル・ウィードに対する親近感が湧いてきて、にやにやと笑みを浮かべながら問いを重ねる。
「あらら、その顔は好きな男がいる顔だな。ねえ、どんな奴なんだい。
タンブル・ウィードが惚れる位だから、とんでもない良い男でタンブル・ウィードと同じ位に腕が立つんだろう。もう告白したの? それともされた? 結婚は?」
「ニック、もうそこまでにして。あまり人の事を根掘り葉掘り聞くのは礼を失した行いですよ」
「へへへ、照れてらあ。なんだバンパイアって言っても誰かを好きになるのはおれらと一緒なんだなあ。おれ、なんだかタンブル・ウィードを身近に感じるよ」
「もう。でも、そうですね。ニックがそう感じてくれるのなら私にとっても嬉しい事です」
優しくそう言って、タンブル・ウィードはニックから視線を離し、ゲルドーラの存在する方向へ視線を向けた。
二日と掛らぬ距離ではあるが、それまでの間に安寧の眠りに着いた筈の死者を操り、生者を襲わせている悪しき者からの襲撃は幾度となくある事だろう。
はたして如何にタンブル・ウィードとて一人の犠牲者も無く避難民達を守れるものかどうか……。
分かっていた事だ。予想していた事だ。知っていた事だ。これまで何度も経験してきた事だ。
もう慣れている。だから大丈夫。例え慣れはしても痛みや悲しみを憶えないわけではないとしても。
「た、タンブル・ウィード……あんた、さっきの奴が」
大きな音を立てて生唾を飲み込み、ガランドが恐る恐るそうであって欲しくない、と言わんばかりの顔でタンブル・ウィードに問いかける。
タンブル・ウィードはつい先ほど自分が造り出したばかりの土の橋の上で、一度だけ頭上に輝く銀盆の如き月を見上げるとすぐに視線をガランド達へと戻した。
心を落ち着ける為か、それともガランド達に返すべき言葉を母なる月に問うていたのかもしれない。
「ええ、この身はバンパイア。月の女神と夜の神とが創り出した眷属の裔。先程の海魔の言葉に嘘も偽りもありはしませんよ、騎士ガランド」
月光の映える佳人の笑みはどこまでも透き通った美しいものであったが、それよりもたった今紡ぎ出された言葉の意味の方こそが、ガランド達の脳と精神とを強く打った。
バンパイア。人間と変わらぬ容姿を持ちながら、他者の血を吸う事で肉体と魂を呪い、同じ血を吸う魔性の存在へと変容させる恐ろしき夜の住人。
太陽の祝福を受ける事叶わず、水の流れを渡ろうとすればたちまちの内に弱体化するが、しかし夜の闇と共にある限り胴を二つにされ、首を落とされようとも死なぬ不死性と人間を紙屑のように引き千切る膂力を持つ人外。
バンパイアの存在それ自体は希少である事もあり、辺鄙な農村部の住人達に知られているものではない。
だがガランドとアルニは一定以上の教養を持つ騎士であり、ミルラは冒険者として時に傭兵として様々な魔物との戦いを経験し、知識神の神官であるラアクに至っては言うまでも無いだろう。
彼らはバンパイアと言う種族が亜人種の中でも屈指の身体能力と数々の異能、そして最も忌むべき他種族を同種族へと変質させる力を持っている事を知っていた。
そしてなによりこの大陸の住人に限って言えば、バンパイアの事を知らぬ者はほとんど存在していないと言って良かった。
なぜならこの惑星においてこの大陸に最も多くのバンパイアが住まい、大陸の西から北西部に掛けてバンパイア達の国家が存在しているのだから。
かつては始祖の直系である六つの王国とその衛星国家によって構成されていたバンパイアの勢力は、五つの王国とその衛星国家が尽く滅びて後に一度は統一されたが、つい最近統一を果たした国家の王とその子息が滅ぼされた事で再び勢力情勢が激変している。
かつてバンパイア達が治めていた大陸西方は、いまや自らを王とする大小無数の勢力がひしめき合う戦国時代に突入しつつある。
ガランド達の所属している人間種が住人のほとんどを占める国家と、バンパイアの勢力圏とはかなりの距離があるものの、いつ覇権争いに敗れたバンパイアや大陸東部に勢力を伸ばそうと画策するバンパイアの魔の手が伸びてくるとも限らない、という事で最近では厳戒態勢が敷かれていた。
ゾンビー達の出現を早期に発見し警戒態勢を取れていたのも、元々はバンパイアへの備えであったのだ。
なにより父祖の父祖のそのまた父祖とはるかな昔からバンパイアを隣人として歴史を重ねて来た彼らは、幼少の頃からバンパイアの恐ろしさ、忌まわしさを寝物語に聞かされていて、今、生まれて初めて見るバンパイアを前に恐怖を呼び起こしているのだった。
タンブル・ウィードがバンパイアであると言う事は、驚くほどすんなりとガランド達は納得する事が出来た。
彼らにどうしてと問えば、きっとこんな答えが返ってくる事だろう。
だってそうだろう。タンブル・ウィードは強すぎる。人間があんな風に化け物どもを相手に戦えるものか。
だってそうだろう。タンブル・ウィードは美しすぎる。人間があんなに美しい生き物であるものか。人間ではないから人間ではあり得ない美しさを持っているのだ。
ガランド達はひりひりと乾いた咽喉に不快感を覚えながら、それに数万倍する恐怖に突き動かされてそれぞれの武器へそろりそろりと手を伸ばす。
再生を阻害する呪いや聖なる神の祝福を受けた武器で無ければバンパイアに有効な傷を与える事は出来ないが、幸いにして知識神の神官であるラアクが居る。
技量ではタンブル・ウィードの足元はおろか足の裏にも届かぬ事は明白であったが、まったく抵抗できないわけではない、と思い至りガランドはほんのわずかに心が軽くなった。
そんなガランド達をタンブル・ウィードは沈黙を最良の友と選んだかのように、一言も口にする事無く見つめている。
その赤い視線を受け続ければ無機物でも恥じ入りそうなほどに妖艶なる瞳に、感情の色は無い。ただただ先程まで自分を頼りにしていた騎士の怯える顔が映し出されているのみ。
何を思うタンブル・ウィード。そして何をする? 月夜の愛し子、闇と影の寵児たるバンパイアよ。
「あんたがバンパイアだと言うのなら、こ、今回の死人の復活はあんたの仕業か? バンパイアは高位のアンデッドだ。なら死人をゾンビーにする位はできるだろう」
かちかちと鞘に何度も刃を当てながら長剣を抜いたガランドの問いに、タンブル・ウィードは小さく首を横に振るった。
ガランドの言う通りの事は出来るが、それは別にバンパイアで無くとも死霊魔法を修めた者なら可能な芸当でもある。
「それは違います。第一私の仕業であるのなら、先程の海魔に私の種族を明かさせはしませんし、あなた達を助けもしません。あなた達が死者達の仲間となるのを見ているだけでよいのですから」
タンブル・ウィードの言う事は事実であり、そして至極もっともな事だ。
だが一度バンパイアと言う偏見と恐怖を植え付けられたガランド達にとっては、タンブル・ウィードの言う事は何であれ信用のならない、あるいは何かしら裏のある言動としか捕らえられなくなってしまう。
タンブル・ウィードがバンパイアだというたったそれだけの事で、タンブル・ウィードを擁護していたガランドさえも猜疑心に自ら絡め取られてしまっている。
続いてミルラが既にタンブル・ウィードを敵として認めた声で畳みかけた。
「そんな事はどうだっていいのさ。問題なのはあんたがバンパイアだってことだ。ここら辺の人間にとって、バンパイアってのはなによりもおっかない相手だ。
あんたらにとっちゃ、あたしら人間や他の種族は皆食べ物なんだろう。
昔、バンパイア達が食糧と下僕を求めてこの大陸中の人間や亜人をさらって行った時の事を、あたし達は忘れちゃいないし忘れられない。
あんただって人間の血を吸った事はあるんだろう? 咽喉に牙を立てて自分達と違う温かい血を飲んだ事はあるんだろう!」
ミルラは尻尾を逆立てた猫のようにタンブル・ウィードにぎらつく瞳を向ける。
そして彼女が口にした過去の出来事こそが、この大陸の住人達がバンパイアを恐れる最大の理由の一つでもあった。
通常、バンパイアは人間や亜人を対等な存在と見ない。
それは彼らにとって他種族が食糧であり、同じ姿形をしていて心もそうは変わらないからと感情移入をすれば、吸血行為に大きな弊害が生じる事を彼らの本能が危険視しているかだろう。
他の種族にとって吸血行為によってバンパイアに変えられる事は忌むべき行為であっても、バンパイアからすれば自分達と同じ種族に成り上がらせてやる、つまりは祝福と考えられている事からも両者の価値観、倫理観の違いが窺い知れる。
バンパイアの中にも他種族に対する吸血行為に罪悪感を覚え、吸血しても下僕にはしない者、牙を使わずに刃などで皮膚を傷つけて血を得る者、血の対価に財貨や技術などを与える者、といわゆる穏健派、共生派と呼ばれる者達も居たがこれはごく少数の例外に過ぎない。
実際、ミルラが言ったようにこの大陸の歴史を紐解けば、バンパイア達が新たな食糧と下僕を求めて周辺の他種族を浚うなり戦争を仕掛けた事は幾度となくある。
そうして産み出された過去の犠牲者達とそれに付随する悲劇は、今も色褪せることなく伝えられて、ガランド達のような反応を取らせている。
無理もない、とタンブル・ウィードは心中で呟く。
吸血によって犠牲者がバンパイア化するのには、たった一度の吸血で変わる事もあれば数回の吸血を経てからバンパイアと化すなどいくつかのパターンに分けられる。
吸血を何度も行うのは主に徐々にバンパイアと化して行く犠牲者の肉体と魂の変調、そして美味なる血の味をバンパイアが楽しむ為、という嗜虐的な理由がほぼ全てを占める。
徐々に肌から血の気が引き、瞳は虚ろになり、心臓の鼓動が少なくなり、まるで死人のように冷たくなってゆく犠牲者。
そしてその犠牲者を前にして何も出来ずにただ悲嘆にくれて絶望するしかない犠牲者の家族や友人、恋人。
悲しみと怒りの涙がこぼれ、憎しみと恨みの歌が響き渡り、大切な者を守ろうと刃を手に立ちあがった者達を無惨に殺し、あるいは彼らが守ろうとした者達の手で葬らせる。
そうした悲劇の一幕を引き起こし、演出する事に喜びや優越感を覚えるバンパイアは、タンブル・ウィードにとっては残念な事に決して少なくは無い。
他種族を食料と見る価値観やその悲劇を楽しむ残虐さは、いかんともしがたくバンパイア達の魂の深い所に根付いているのだ。
タンブル・ウィードはそんなバンパイア達の中にあって、極めて稀な心を持って生まれた例外であったが、そんな事はガランド達に分かる筈もないし、また今の彼らの心理状態では関係が無かっただろう。
彼らにとってタンブル・ウィードは、素性は知れないが腕の立つ護衛ではなく、バンパイアと言う伝説の悪鬼でしかないのだから。
主へ敵意を向けるガランド達にスレイプニルが反応し、ぶるる、と嘶きを上げるがそれをタンブル・ウィードは手で制止し、こちらへと手招いた。
スレイプニルは不敬で恩知らずなガランド達の振る舞いにたいそう憤慨している様ではあったが、タンブル・ウィードの瞳に懇願の光が揺らめくのを見ると渋々主に従い、橋を渡って主の傍らで六本の足を止める。
スレイプニルの手綱を握り、首を撫でて宥めながらタンブル・ウィードはガランド達を見てこう言った。
「どうやら私はここであなた達とお別れした方が良さそうです。
今回の事態に私は関わりが無いと御始祖と偉大なる創造神に誓って明言しますが、それでもあなた達にとって私は信用ならぬ様子。
これでは共に行く事など到底叶いはしないでしょう。けれどせめてこの橋はお使いなさい。
今のあなた達にとって時が徒に浪費すべきものでは無いのなら、この橋がどれだけ有用かお分かりでしょう。
もっとも私の言葉など何一つ信用ならぬと言うのなら、無理に勧めはしません」
タンブル・ウィードがこの場から去ろうとしている事を悟り、ガランド達は言葉なくタンブル・ウィードが去ろうとするのを見送った。
冷静になって考えてみればここでタンブル・ウィードが抜ける事は、避難民達を守る上で絶対的に欠かせぬ要素の喪失なのだが、バンパイアであるタンブル・ウィードが同道する事はガランド達に留まらず避難民達も拒否の姿勢を見せるだろう。
かつてバンパイアに血を吸われ下僕と化しつつあった家族をこのままバンパイアになる位ならと心臓に杭を打った者、またあるいは密かに匿っていた犠牲者によって血を吸われた家族が更に村の仲間を襲い、瞬く間に壊滅した村落。
過去に実在した悲劇の数々は生々しさとその恐怖を今に至るまで連綿と伝え、人々の心に暗黒の恐怖を根付かせている。
バンパイアと一緒に行動する位なら、死んだ方がマシと口にする者は決して少なくは無いだろう。
こうしてタンブル・ウィードが背を向けた瞬間にダートを投げつけそうなミルラを制止するガランドやアルニ、ラアク達とタンブル・ウィードの間に決定的な別れが生じようとした瞬間、距離を置いていた避難民達の間から細い影が走ってきた。
真っ先にその影――ニックに気付いたタンブル・ウィードが足を止める。
ニックはガランド達の間を縫う様に進み、ガランド達から何歩か前に出た所で足を止める。
ニックは先程まで避難民達と一緒にタンブル・ウィードが土の橋を掛け、姿を見せた異形の魚や海魔達を相手に戦う姿に驚愕と興奮と畏敬の念を向けていた。
海魔マッガランの発した言葉を皮切りにガランド達の雰囲気が一触即発のものになった事に気付き、居てもたっても居られずに祖母や父母の止める声を振り切って駆けて来たのである。
「待ってよ、タンブル・ウィード。どこに行くんだよ!」
あらん限りに声を絞って叫ぶニックに、タンブル・ウィードは少し悲しげに、しかしどこか嬉しそうに笑みを返す。
タンブル・ウィードは、出会った時から憧憬の念を向けて来るこの少年の事が嫌いでは無かったし、だからこそニックにバンパイアであるからと恐怖の目を向けられる事が嫌だった。
タンブル・ウィードは自分の心の動きの単純さと幼さに、思わず呆れていた。
「ニック、どうやら私は歓迎されていないようです。あなた達を御領主殿の街まで送り届けると言う約束ですが、反故する事になってしまい、ごめんなさい」
「そんな、ガランドさん、どうしてタンブル・ウィードが」
純粋な子供の目と問いに、ガランドは真っ直ぐに目を見て答える事は出来ずに、視線を逸らした。
理性ではタンブル・ウィードが言ったように彼女が関わっている可能性は、極めて低いと分かってはいる。
分かっているのだが、それでもそれ以上にバンパイアへの恐怖と忌避の念があまりにも強すぎた。
「ニック、お前達にも聞こえていたんじゃないか? あのマッガランとかいうアンデッドが言っていただろう。タンブル・ウィードは、その……バンパイアだって」
「聞こえてたよ」
「だったら分かるだろう? バンパイアが、吸血鬼がどんなに恐ろしい存在か、お前だってもっと小さい頃から聞かされて来た筈だ。そんな相手と一緒に行ける筈が無いだろう」
「そりゃあ、おれだって知っているけど、でもさ、タンブル・ウィードのお陰でおれ達の命は助かったじゃないか。おれは二回、ガランドさんは一回、皆だってさっき助けられた。
今のを入れればもっとだ。タンブル・ウィードはおれ達に何の貸しも借りも無いのに、助けてくれているんだよ。それをバンパイアだからって追い出すなんてひどいじゃないか」
「だが、バンパイアである以上、何時血の欲求にかられておれ達に牙を剥くか分かったもんじゃないんだ。そうなったらもう止められない。
次から次へとバンパイアが増えて行って、ゾンビー達の代わりにバンパイアの群れが出来上がっちまうぞ」
「タンブル・ウィードはそんなことしないよ!」
理屈もなにも無いニックの言葉は、それだけタンブル・ウィードに対する信頼のあらわれであったが、それを宥めたのはラアクだった。
幼い子供をなだめようと、ラアクはその大きな手をニックの両肩に乗せ、重く通りの良い声をかける。
「ニック、君が彼女の事を信頼する気持ちは分かります。ですがバンパイアにとって血を吸うと言う事は、私達が水を飲み、パンを食べるのと同じ事。
君も私も咽喉が渇き、腹が空けば飲み食いをせずには居られません。どう気持ちを持った所でどうしようもない事なのです。
例えタンブル・ウィードが決して私達の血を飲むまいとしても、生きようとする体がそれを許しはしないでしょう」
感情による感情の否定では無く、ニックにも分かりやすい例えで諭してくるラアクに、普段から世話になっている相手と言う事もあり、ニックの反攻の狼煙は見る間に小さくなっていく。
このままニックが大人達の言い分に言い負かされて、タンブル・ウィードと彼らの交わった道は離れるものかと思われた。
「分かったでしょ、ニック。自分達の隣にいつ牙を剥いてくる分からない危険人物を連れてゆくわけにはいかないのよ。
ただでさえ分けのわからない死人どもから追いかけ回されているんだから、これ以上面倒なのはごめんよ。
ここで心臓に杭を打ち込まないだけでもありがたいと思って貰わなくっちゃ」
「ミルラ、流石に言い過ぎだぞ」
舌鋒が激しくなるミルラをこれまで沈黙を守り、タンブル・ウィードの動きに対応できる神経を研ぎ澄ませているアルニが窘める。
ニックの登場によってタンブル・ウィードの纏う雰囲気が柔らかになった事で、口を挟む余裕が出来たのだが、ミルラの敵意をむき出しにした発言に肝を冷やして思わず口が出たらしい。
タンブル・ウィードがその気になれば自分達が十と数える間もなく首を飛ばされる事を、ミルラとて理解しているだろうにとんでもない事を口にしてくれたものだ。
タンブル・ウィードが気分を害した様子が無い事が、アルニの緊張と不安を大きく和らげてくれた。
ラアクに諭されミルラにきつく叱られて意気消沈したと見えたニックだったが、なにやら妙案を思いついた様子で明るい表情を浮かべると、正面から美しすぎる黒衣の妖人を見る。
「そうだ。だったらタンブル・ウィード、タンブル・ウィードは傭兵もやっているんでしょう?」
「ええ、そう、ですね。新米も良い所ではありますが……」
わずかにタンブル・ウィードが言葉を濁したのは、傭兵や冒険者であるというのがガランドの問いに咄嗟についた方便であったからに他ならない。
実の所タンブル・ウィードは自分を傭兵や冒険者として売り出してはいないし、その手の依頼や仕事をこなした事は無い。
だがそんな事はニックに関係無かった。ニックにとってタンブル・ウィードが傭兵である事を否定しなかった事こそが重要だったのだ。
「だったらタンブル・ウィードをおれが雇うよ。それならタンブル・ウィードはおれ達と一緒に行けるだろう!」
これ以上の妙案は無いと言わんばかりのニックの言葉に、しばし周囲は呆然として言葉も無かったがニックのとんでもないと言えばとんでもない発言に真っ先に噛みついたのは、ミルラであった。
「ばっかじゃないの! こいつが傭兵だなんて言ったのは嘘だってあんたも分かっているでしょ。その場で吐いたとっさの嘘よ、ウ・ソ!
第一ねえ、あんたに傭兵を雇えるだけのお金があるわけないでしょう。どんな報酬が用意できるってのよ。いっちばん安い傭兵だって、子供のあんたじゃ一年働いたって稼げない額を払わなきゃなの。払えるの、ニック?」
「お、男に二言は無えやい。ええっとこんだけある!」
苛立ちを隠さないミルラに煽られたニックが引くに引けずズボンのポケットや、括りつけている小袋をあさってミルラにつき出した手には十枚の銅貨が乗せられていた。
日々の農作業の手伝いや、時に訪れる旅人や商人にお金になる果実や木工細工を物々交換や売買する事で貯めたニックのとっておきである。
それを見て、ミルラはほら見た事か、と鼻で笑う。
これでは最底辺の傭兵を一日だって雇う事は出来やしない。これならゲルドーラへ向かう途中の保存食でも分ける方がまだましだ。
本来ここまで苛烈な性格をした少女ではないが、ニックの甘い考えを否定する事こそがこの少年の為だと考えている部分もあるのだろう。
「やっぱりこれっぽっちしか持ってないじゃない。これじゃどんな傭兵や冒険者だって雇えっこないわ。あたしだって同郷のよしみがあっても断るわよ。
ほらほら、分かったらさっさと戻りなさい。あんたのお気に入りの吸血鬼はもうあたしらとは別の所に行くのよ」
ニックが項垂れて踵を返そうとした時、いつの間にか音も無く近づいてきていたタンブル・ウィードがニックの傍らに立ち、膝を折ってニックと目線を合わせる。
救いの女神が訪れたみたいに輝くニックの顔を見ながら、タンブル・ウィードは年齢の離れた弟に対する姉のように優しく声をかける。
ミルラもガランドも誰も声をかける事が出来なかった。タンブル・ウィードが恐るべきバンパイアと知っていても、ニックに近づくなと言う事も出来ない。
そうする気にもならないほど、タンブル・ウィードの纏う雰囲気が優しいものであったから。
「ニック、これはあなたが貯めたお金ですね。豊饒祭の為に貯めていたものではないのですか?
それに私はバンパイアです。私を雇ったとなれば村の皆に嫌われてしまうかもしれません。それでも私を雇いますか?」
「これは、たしかにタンブル・ウィードの言う通りに祭りの為に貯めたお金さ。だけどよ、祭りは生きてればまた行けるし、お金だってまた貯めれば良いよ。
村の皆に何か言われるのだって構うもんか。だってこのままだった皆死んじまうかもしれないだろう。
だったらおれがどんな嫌われたって皆が生きていられる方が良いじゃないか。タンブル・ウィードなら、皆の事を守れるんだろう、ねえ」
タンブル・ウィードは黙ってニックの掌の上に載せられた銅貨を手に取った。
「この依頼、確かに承りました。必ず貴方の御家族と村の皆さんをゲルドーラまで無事にお連れしましょう」
「本当、本当かい、タンブル・ウィード!」
「約束します。ここに居る誰ひとり、あの者達に殺させはしません。私の持てるすべての力を持って、守って見せます」
笑顔を輝かせるニックとそれに応じて力強く真摯に頷くタンブル・ウィードに慌てたのは、事の成り行きを見守っていたガランド達であった。
「ちょ、ちょっと待ってくれタンブル・ウィード。子供の言う事だぞ。真に受けるのか!?」
危険なバンパイアを遠ざけられるという安堵と、これ以上ない護衛を失うという不安とがないまぜになっていた心理状態であったガランドだが、よもやタンブル・ウィードがニックの依頼を受けるなど考えもしていなかったから、泡を食って問いかける。
それに対してタンブル・ウィードは澄ました顔でガランドと、ラアクやアルニ、ミルラに答える。
「私は傭兵です。報酬が用意され、傭兵である私がそれに満足して依頼を受諾した以上、既に契約は成立しています。
後は私が依頼主の意思を尊重し、傭兵としての役割を全うするだけの話。なにか問題がありますか?」
「い、いや、だが報酬はこれだけだぞ。それに君が守るって言うおれ達は君の事を追いだそうとしているしだな。ああ、もうなんて言えばいいんだ、くそ。おい、アルニ、お前も何とか言ってくれ」
「そうだね。さっきまでは単なる口約束だったから、私達が拒絶すればそれでおしまいだったけど、傭兵としての契約だからね。
それにタンブル・ウィードは傭兵団や組合にも所属していないモグリ、というかなんちゃって傭兵だし個人で結ばれた契約にどうこう言える権利は、理屈の上では無いねえ」
「おい!」
「そういう事です。依頼を受けた以上はそれを全うすべく行動させていただきます。御心配無く、目ざわりにならないように距離は開けておきますので」
ニックから前払いされた報酬を胸の内ポケットに仕舞いながらしれっと言うタンブル・ウィードに、ガランドは地団太踏みそうな顔をしたがどことなくホッとして見えるのは、やはりタンブル・ウィードという戦力を手離す事に不安を覚えていたからだろう。
それにまっすぐで人の良い青年だ。命を救ってくれた相手に対する仕打ちに、少なからず忸怩たるものを覚えていたに違いない。
「ねえ、ちょっと」
だが一人だけ氷の冷たさの声でタンブル・ウィードに声を掛けた者が居た。ミルラである。
先程からのバンパイアに対する敵意の苛烈さから、ともすれば冒険者家業をしていた時にバンパイアに仲間を傷つけられるかなにかしているのかもしれない。
「なんでしょう」
「あたしらを勝手に護衛するってのは構わないけど、あんた、もし血を吸いたくなったらどうするわけ? まずは手近なニックの咽喉に噛みつくのかしら」
挑発するにしても度を越えたミルラの言葉に、ガランドやニック、アルニらが背筋に冷たいものを覚えてミルラの口を閉ざそうとするが、それよりもタンブル・ウィードが答える方が早かった。
「いざとなれば自分の腕に歯を立てて、血への渇望を治める事としましょう。あなた達と共に行く限り、決して人間の血は吸わないと誓います」
「ふん、口でなら何とでも言えるわ。覚えていらっしゃい。怪しい動きを見せたらあんたの心臓を串刺しにしてやるから」
そう言って背をむせて避難民の方へと歩いてゆくミルラに、ガランドらが慌てて声をかけて後を追って行く。
マッガランの声は避難民達にも届いていただろうから、避難民達にバンパイアであるタンブル・ウィードが変わらず護衛として着いてくる事も説明しなければならない。
避難民達はタンブル・ウィードを雇ったニックを余計な事をしたと責めるだろうか、それともあれほど強力な護衛が去らなかった事を喜ぶか。前者で無ければよい、とタンブル・ウィードは祈らずには居られなかった。
「ニック」
「なんだい、タンブル・ウィード」
「私を雇った事で色々と言われるかもしれませんが、泣きたくなったら私の所においでなさい。好きに泣かせて上げる位の度量はあるつもりです」
「はは、タンブル・ウィードは男心が分かっちゃいないなあ。男が女の前で泣けるかい。情けないったらありゃしない。
それにおれは皆に感謝して欲しくってタンブル・ウィードを雇ったんじゃないんだ。
だから何を言われたっていいさ。皆がゲルドーラに無事に辿りつけられればね」
「ふふ、そうですか。恥ずかしながらこの年になるまで殿方とまともにお付き合いした事が無いのです。ですから男心が分からないと言うのはニックの言う通りですね」
「へえ、こんなに美人なのに? タンブル・ウィードの周りの男は見る眼が無いなあ。それとも高嶺の花すぎるからかな」
「あら、ニックは難しい言葉を知っているのですね」
「まあね、ラアクさんに色々教えて貰っていたんだよ。ねえ、タンブル・ウィードは誰か好きな男はいないのかい? タンブル・ウィードならどんな男だって言い寄ればイチコロだろ」
「それは、その……」
おやおや、とニックはタンブル・ウィードの反応に思わずにはいられない。
もしタンブル・ウィードが美女で無ければこの世に美女が居なくなるほどの美貌の主が、バンパイアであるが故に透けるように白い肌を赤らめて、視線を彼方に彷徨わせているではないか。
まだ幼いニックでさえ分かる。これは恋する女の顔に他ならない。ニックは急にタンブル・ウィードに対する親近感が湧いてきて、にやにやと笑みを浮かべながら問いを重ねる。
「あらら、その顔は好きな男がいる顔だな。ねえ、どんな奴なんだい。
タンブル・ウィードが惚れる位だから、とんでもない良い男でタンブル・ウィードと同じ位に腕が立つんだろう。もう告白したの? それともされた? 結婚は?」
「ニック、もうそこまでにして。あまり人の事を根掘り葉掘り聞くのは礼を失した行いですよ」
「へへへ、照れてらあ。なんだバンパイアって言っても誰かを好きになるのはおれらと一緒なんだなあ。おれ、なんだかタンブル・ウィードを身近に感じるよ」
「もう。でも、そうですね。ニックがそう感じてくれるのなら私にとっても嬉しい事です」
優しくそう言って、タンブル・ウィードはニックから視線を離し、ゲルドーラの存在する方向へ視線を向けた。
二日と掛らぬ距離ではあるが、それまでの間に安寧の眠りに着いた筈の死者を操り、生者を襲わせている悪しき者からの襲撃は幾度となくある事だろう。
はたして如何にタンブル・ウィードとて一人の犠牲者も無く避難民達を守れるものかどうか……。
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