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第41話 疲弊する精神
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ロック画面に映っていたのは、柳くんからのメッセージの通知だった。
『お疲れ様です! あいつまだいます!
とりあえず店長が警察に相談して、ひとまず見回り強化してくれるみたいです』
送られてきたメッセージを見てびっくりした。まさか店長が警察に相談してくれているとは思わなかった。朝にやり取りした間にも、そんなことは全く言っていなかったのに。きっと、私がこれ以上気にしないように気を使ってくれたのだろう。店長の心遣いはありがたかったけれど、でもそれと同じくらい柳くんからそのことを教えてもらえてホッとした。
『お疲れ様。
そうなんだ! 店長にお礼言っておかないとだね。教えてくれてありがとう』
『あ、もしかして内緒だったかな……。まあでも南さんも警察動いてるってわかった方がいいかなって思ったんで!
って南さんに言い訳してもしょうがないな……。』
柳くんは休憩時間なのか、メッセージを送るとすぐに返事がきた。柳くんが慌てている様子が目に浮かび、笑いがこみ上げる。口角が自然と上がった。
『笑笑
大丈夫だよ、私から店長に言っておく』
『怒られたら次会った時になぐさめてください』
そんな言葉と共に、柳くんは泣いている猫のスタンプを送ってくる。その可愛らしい絵柄のスタンプを柳くんが送ってくるのがおかしくて、同時になんだか愛おしかった。弟がいたらこんな感じなんだろうか、なんてことを考える。
『休憩終わったんで戻ります! もしなんかあったらメッセ入れておいてください!』
そうやり取りをしているうちに、いつのまにか一時間ほど経っていたらしい。
『行けなくてごめんね。頑張って~』
ずっと家に1人だったから気が滅入っていたけれど、文字とはいえいつも通りの会話をしたことでなんだか心が落ち着いた。それに、店長も柳くんも私のことを気遣ってくれていることが嬉しく、1人じゃないという実感が湧く。
けれど、これだけ迷惑をかけていながら、詳しい事情を話すことのできないもどかしさが増した。きっと仕事仲間は「月島ヨナ」の活動のことを言っても馬鹿にしたりすることはないだろう。でも、そうだとしても話せない。
どうしようもない葛藤に唸りながら、店長とのトークルームを開く。まずは警察に相談してくれたことにお礼が言いたい。
『店長、柳くんから聞いたんですけど、警察に相談してくれたそうで、本当にありがとうございます。
度々ご迷惑をおかけしてすみません……!』
そう書いて送信する。仕事中だから返信は遅くなるだろう。そう思い、スマホを置いて立ち上がる。
少ない家事を片づけながら返信を待っていると、数時間後に通知が来た。そこには警察には相談したけれど私に実害がない以上すぐに何かできることはないこと、相手の本名や住んでいる場所もわからないなら見回りを増やすこと以外とにかく現状はどうしようもないと言われたということが書かれていた。
『南さんの力になりたいのはやまやまなんだけど……正直、俺もこれ以上どうしたらいいのかわからなくて』
『いえ、大丈夫です! そこまでしていただいただけで十分です、ありがとうございます!』
文面でも店長が申し訳ないと思っているのが伝わる。正直自分でも今すぐどうにかできるとは思っていなかったから、これくらいは予想の範疇だ。
それから3日間仕事を休んだ。警察の見回りこそ増えたものの、山田はそれを把握して、警察のいない時間に店を見張っていることにしたらしい。私が出勤していないことはわかっているらしく、店の前に立っているだけじゃなく、周辺を歩き回っているそうだ。
それを聞いて、仕事に行けないだけでなく出かけることすら出来なくなった。外に出てばったり遭遇するわけにはいかない。仕事に行けず、家からも出られない原因が近くにいるかもしれないと思うと、恐怖で心がずっと緊張していた。
『お疲れ様です! あいつまだいます!
とりあえず店長が警察に相談して、ひとまず見回り強化してくれるみたいです』
送られてきたメッセージを見てびっくりした。まさか店長が警察に相談してくれているとは思わなかった。朝にやり取りした間にも、そんなことは全く言っていなかったのに。きっと、私がこれ以上気にしないように気を使ってくれたのだろう。店長の心遣いはありがたかったけれど、でもそれと同じくらい柳くんからそのことを教えてもらえてホッとした。
『お疲れ様。
そうなんだ! 店長にお礼言っておかないとだね。教えてくれてありがとう』
『あ、もしかして内緒だったかな……。まあでも南さんも警察動いてるってわかった方がいいかなって思ったんで!
って南さんに言い訳してもしょうがないな……。』
柳くんは休憩時間なのか、メッセージを送るとすぐに返事がきた。柳くんが慌てている様子が目に浮かび、笑いがこみ上げる。口角が自然と上がった。
『笑笑
大丈夫だよ、私から店長に言っておく』
『怒られたら次会った時になぐさめてください』
そんな言葉と共に、柳くんは泣いている猫のスタンプを送ってくる。その可愛らしい絵柄のスタンプを柳くんが送ってくるのがおかしくて、同時になんだか愛おしかった。弟がいたらこんな感じなんだろうか、なんてことを考える。
『休憩終わったんで戻ります! もしなんかあったらメッセ入れておいてください!』
そうやり取りをしているうちに、いつのまにか一時間ほど経っていたらしい。
『行けなくてごめんね。頑張って~』
ずっと家に1人だったから気が滅入っていたけれど、文字とはいえいつも通りの会話をしたことでなんだか心が落ち着いた。それに、店長も柳くんも私のことを気遣ってくれていることが嬉しく、1人じゃないという実感が湧く。
けれど、これだけ迷惑をかけていながら、詳しい事情を話すことのできないもどかしさが増した。きっと仕事仲間は「月島ヨナ」の活動のことを言っても馬鹿にしたりすることはないだろう。でも、そうだとしても話せない。
どうしようもない葛藤に唸りながら、店長とのトークルームを開く。まずは警察に相談してくれたことにお礼が言いたい。
『店長、柳くんから聞いたんですけど、警察に相談してくれたそうで、本当にありがとうございます。
度々ご迷惑をおかけしてすみません……!』
そう書いて送信する。仕事中だから返信は遅くなるだろう。そう思い、スマホを置いて立ち上がる。
少ない家事を片づけながら返信を待っていると、数時間後に通知が来た。そこには警察には相談したけれど私に実害がない以上すぐに何かできることはないこと、相手の本名や住んでいる場所もわからないなら見回りを増やすこと以外とにかく現状はどうしようもないと言われたということが書かれていた。
『南さんの力になりたいのはやまやまなんだけど……正直、俺もこれ以上どうしたらいいのかわからなくて』
『いえ、大丈夫です! そこまでしていただいただけで十分です、ありがとうございます!』
文面でも店長が申し訳ないと思っているのが伝わる。正直自分でも今すぐどうにかできるとは思っていなかったから、これくらいは予想の範疇だ。
それから3日間仕事を休んだ。警察の見回りこそ増えたものの、山田はそれを把握して、警察のいない時間に店を見張っていることにしたらしい。私が出勤していないことはわかっているらしく、店の前に立っているだけじゃなく、周辺を歩き回っているそうだ。
それを聞いて、仕事に行けないだけでなく出かけることすら出来なくなった。外に出てばったり遭遇するわけにはいかない。仕事に行けず、家からも出られない原因が近くにいるかもしれないと思うと、恐怖で心がずっと緊張していた。
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